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【ガチガチで痛い】腕が後ろに回らない原因と対処法【五十肩 他】

「は?そのエクササイズ、そのストレッチが良いとする根拠は?」

今回は腕が後ろに回らない原因と対処法【完全版】をお届けします。
医学的には肩関節の内旋だけじゃなく、伸展内転が大事な動きなんですが、それなら、これだろう!っていう原因と特効薬になって欲しいストレッチをご紹介しています!

※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。
ときどき出てくる「ふんぞり男」とは、その名の通り、ふんぞり返って態度がデカい患者さんです。



ふんぞり男1「マジでまわらねぇんだよ、痛ぇしよぉ!背中に手が回らないのがこんなに辛いとは思わなかったぞ、どうしてくれる!?」

どうしてくれると言われましても・・・。

でも、本当に多くの方が悩まれるのが、背中に腕が回らないという症状で、こちらの動画はとても好評いただいております。

そして、ゆーさんからいただいたコメントを紹介します。

これは、本当にすごい!
ここ2週間ほど腕が後ろに周らず肩、腕の痛みが取れませんでした。
整体やマッサージに何度も通い、一時的には良くなるのですが直ぐに元通り。
しかし、この動画に出会い、観ながら半信半疑で試してみると数分で以前の平常時、もしくは整体・マッサージの直後の状態よりも良くなりました。
身体の硬い私ですが、上からの手と下からの手が繋げそうなほどにまで改善しました!!
驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。歌島先生、ありがとうございます。
まだ肩甲骨周りがごりごりなので、引き続き先生の動画を拝見し知人などにシェアしたいと思います。

ありがとうございます!嬉しい限りですね。
整体やマッサージで一時的に良くなるけど、元通りっていうのは本当に多いですよね。

だからダメというよりは、そういうことが多いからこそ、その後のセルフエクササイズ、セルフストレッチ、生活習慣などが大事になってくるわけですよね。
そして、僕のところで学んでくださる治療家さんにも、そのご指導をすることの重要性をお伝えしております。

しかし、そのご指導にも医学的根拠が必要ですし、医学に対して学び続けていないと無理なので、現時点でそれが適切にできる治療家さんも医師も多くないのが現状です。
僕も成長過程、勉強中です。

このようなポジティブなご意見やご報告はめちゃくちゃ嬉しいですね。
いつもありがとうございます。
しかし、このようなセルフエクササイズをやられたり、またリハビリに通われたりしても、なかなか改善せずに手術をご提案することになる方もおられます。

どこまで行っても「これさえやっておけば大丈夫」っていうものはないんですよね。
改善率100%の治療プログラムなんてあり得ませんから。

しかし、さまざまな状況、さまざまな重症度にある患者さんの改善率100%を目指す努力は続けなくてはいけません。

これは、われわれ治療する側のお話ですね。
そして、今回はご好評いただいた先ほどの動画の続編というか、パワーアップ版です。

全く同じ話はしませんので、まだご覧いただいてない方は動画をご覧いただいたあとに見てみてください。
ということで、今回は題して「腕が後ろに回らない原因と対処法【完全版】」ですから、これさえ見ればネットやYouTubeで「腕が背中に回らない」という検索をする必要はなくなるという状態になっていただけます。

ふんぞり男「ほぉ、自信満々だが、いきなり矛盾してるぞ。さっき、この動画の後に別の動画をお勧めしてただろうが」

う〜、正論。
まったく、同じ話はしないにしても、お忙しい方はこの動画だけでいいようにうまく盛り込んでみますので、まずはこの動画を繰り返し最後までご覧ください。

この動画では、まず肩が痛くて後ろに回せない時の原因を3つ、頻度が多い順番にTOP3でお伝えします。

ここが完全版たる所以の一つです。
僕がいつもお伝えしている「診断が大事」っていうのが、このTOP3の解説でもご理解いただけるかと思います。

それぞれの原因ごとに対策をお伝えいたしますが、やはり原因ごとに対策は異なるわけですね。
それなのに「後ろに回らないならこれやれ!」は雑すぎるんです。
と、自分にも言い聞かせながらやっていきますね。
そういう意味では、ノリーさんからいただいたコメントも興味深いし、解説が必要かもと思いました。

ノリーさん

色々な人の参考にしていますが、話が長くポイントまで早回ししてみました
簡潔にして貰えればリピートありなんですが、、、、、

リピートをぜひしてもらいたいですね。
しかし・・これ以上簡潔にすることは許されません。

もちろん、医療従事者の方が対象で専門用語バリバリで、前提知識を共有している上で解説するなら、もっと簡潔に「こうで、こうで、こうだから、この場合はこのストレッチですよね」って言えると思うんです。

しかし、お伝えしたいのは、一般の方であり、患者さんになります。
治療家さんも対象なんですが、治療家さんと整形外科医では育ってきた環境、学んできたものが違いますから、やはり、丁寧な解説、説明は必須だと思っています。

簡潔な説明ですぐストレッチを紹介している動画は僕から見ると

「は?そのエクササイズ、そのストレッチが良いとする根拠は?」って突っ込みたくなるんです。

これでもだいぶオブラートに包んで言ってます。
少しずつでも伝えられたらと思います。

話は戻りますが、この動画の最後には今回初めてご紹介するストレッチをぜひやってみましょう。
今まではあんまりご指導してこなかったストレッチなんですが、研究結果を拝見すると、第1位の原因の人はみんなやったほうがいいんじゃないかと考えるに至りました。
ぜひ、マスターしてみてください。

では、肩が痛くて後ろに回せない時の原因と対策TOP3を見ていきましょう。

第3位 腱板断裂

腱板断裂は腕が上がらなくなるというイメージをお持ちの人が多いですが、全然上がることもあるってことはいつもお伝えしております。
その一方で、腕を背中側に回すときに痛い、回らないというケースの原因が腱板断裂にあることも少なくないんですね。

これもあんまり知られていないですね。
僕自身、腱板断裂の手術を最も多くやっておりますが、後ろに手が回せない、痛いという症状は本当に多いです。

ふんぞり男3「腱板断裂って腕が上がらなくなるんじゃないのか?」

いいですね、典型的な間違いをありがとうございます。
もちろん、上がらなくなる腱板断裂もあるんですよ。

でも、よっぽど炎症が強いか、よっぽど断裂が大きいときなんです。
むしろ、通常の腱板断裂は肩関節の回旋運動に問題がでるんですね。

回旋運動というのは、外側に回旋する外旋と

内側に回旋する内旋で

この内旋をすると手が背中に回っていくんですね。

余談ですが、腱板って英語で「rotator cuff」と表現され、直訳すると「回旋腱板」になります。
つまり、腱板断裂をより厳密に言うなら回旋腱板断裂なんです。

まあ、そんな回りくどい言葉は使いませんが、そう考えると、この内旋で痛いとか回らなくなるというのも納得ですよね。
この腱板断裂で腕が背中に回らない場合の、わかりやすい2つの断裂パターンを解説いたします。

まずは「棘上筋・棘下筋腱断裂」です。

とくに棘下筋は肩関節の外旋を司どる筋肉で、手を背中に回すのは逆の動きの内旋です。
ですから、背中に手を回そうとすると棘下筋腱はストレッチされるんですね。

そこでもし断裂があったとしたら、その穴が広がる方向に動かしてしまっていると言えます。
そこで悲鳴が上がるわけですね。

なんで棘下筋腱だけじゃなく、棘上筋腱も含めたかと言うと、棘上筋腱と棘下筋腱は綺麗に境界があるわけじゃなくて、一緒になって骨にくっついています。
ですから、断裂も棘下筋腱断裂なのか、棘上筋腱断裂なのか、キレイに区別できるわけじゃないってことです。

そして、腱板断裂術後も腕を背中に持っていく動作が最もストレッチされるので、動きの回復が遅いことも知られています。

ふんぞり男4「じゃあ、この場合は手術しかないし、手術後も時間がかかるってことか?」

そういうケースも多々ありますね。
ただ、腱板断裂で手術をするかどうかは常に患者さんと医師のコミュニケーションにおいて納得の上、進めていくべきだと思います。

その中で、この手を後ろに回す動きでの痛みや制限にフォーカスを当てて対策を考えるなら、まず痛いうちは無理ができないですよね。
痛いってことは、腱板が引っ張られて悲鳴を上げているサインの可能性を考えないといけないわけですから。

それを無理したら、腱板断裂の穴が広がってしまうかもしれないわけです。
その状態が続くなら、やっぱり手術で修復する方がより望ましいかもしれません。

ただし、それ以外にも第2位で説明する原因も絡んでくることが多く、修復するほどでもない腱板損傷でも痛みが出ることもあります。
その場合の対処法は、第2位のところでご説明いたします。

もう1つの腱板断裂のパターンを解説いたします。
それは「肩甲下筋腱断裂」です。

腱板の中でも前の筋肉です。

これはさっきの棘下筋の逆で、内旋を司る筋肉なんですね。
ですから、手を後ろにもっていく内旋動作の時はストレッチはされません。
むしろ、自力で持っていく時には頑張って収縮する筋肉なんです。

どうでしょう・・。
それはそれで痛いですよね。
切れている筋肉を働かせないといけないわけですから。

ふんぞり男「は?結局、どっちがわの筋肉だろうが痛いんじゃねぇか」

そうなんですよ。
傷んでいる筋肉って伸ばされても痛いし、自分の力で収縮して力が入っても痛い。
そりゃそうですよね。

ただ、違いがあるとすれば、もし肩甲下筋腱がかなりしっかり断裂していたら、痛みが引いても力が入らないという症状になりがちです。
「内旋筋力」と言います。

つまり、痛みが少ないけど背中に回せないときは、内旋筋力を調べてみることをお勧めします。
調べ方としては、2つ有名なテストがあります。

1つが「bear hugテスト」と言って、手で逆側の肩を押す力を測るテストです。

こういう力ですね。

診察ではわれわれ医師がこの肩と手の間に手を入れて、力比べをして測りますが、1人でやるときは、力の入り具合を右と左で比べてみましょう。

もう1つのテストが「belly pressテスト」と呼ばれています。
お腹を押すような動きをした時に、ちゃんと肩関節の内旋動作を使って押せるかってことなんです。

通常、お腹を押そうとすると

肘が前に来てテコの原理っぽく押すんですが

内旋筋力が落ちていると、腕全体で押そうとするので、むしろ肘は背中側に移動します。

つまり「bear hugでは力が入らず、belly pressでもお腹を押そうとしたら肘が前に来るどころか背中側にいってしまう」というのが、肩甲下筋腱断裂による筋力低下を疑うサインです。

この場合は流石に手術で修復した上で、リハビリするというのが根本的な対策になりますが、一方で腱板断裂の中でも肩甲下筋腱断裂はMRIなどの精密検査でも診断が難しいと言われていますので、肩専門医の診察は必須かなと思います。

第2位 肩峰下インピンジメント

第3位の腱板断裂とも関連があるのが、この肩峰下インピンジメントです。

このチャンネルでは結構おなじみなんですが、なかなか聞かない言葉ですよね。
あらためて解説しますと、肩甲骨は結構複雑な形をしていて、肩の屋根みたいになっているところがあるんですね。

ここを肩峰と言います。


そして、この肩峰という屋根の下に肩関節があって、特に腱板がすぐ下にあるんです。

この肩峰の下のスペースが炎症を起こしていたりすると、圧が高まります。
この圧の高まりが痛みの原因になると言われていて、腕を挙げるとさらに圧が高まったり、ぶつかって痛みが出ます。
特に腕を挙げて回旋させると、腱板と肩峰が擦れやすいことが知られていて、それは痛いですよね。

これをインピンジメントと言います。
そして、シンプルに腕を後ろに持っていこうとしたときに、こういう動きになりませんか?

まさにインピンジメントを起こす動きなんですよね。
ですから、この時点で激痛が走ってとても後ろに持っていけない。
これは典型的なインピンジメントが原因です。

そういう場合に試してみて欲しいのは「肘をできるだけ身体から離さないで後ろに持っていくという動き」です。

そうなると、腕が上がらずに後ろに持っていけるので、インピンジメントがおきにくいです。
逆にこれでも全然変わらずに痛くて無理な場合は、やはり第3位か第1位が原因である可能性が高いです。

さて、この肩峰下インピンジメントが原因で後ろに手を持っていけないという場合の対処法ですが、まず一番大事なのは先ほどのチェックです。
肘を身体から離さずに後ろに手を持っていくという動きを習慣化してください。

そうすることで、インピンジメントで痛みを発生させる回数を減らせます。
その結果、炎症が治まったりというポジティブな効果が期待できます。

そして、さらに大事なのが診断です。
肩峰下インピンジメントっていうのは、そういう症候群がある通り病名でもありますが、一方で現象の名前でもあります。

つまり、インピンジメントが起こる病気、原因はいくつかあるんですね。
典型的なのは、先ほどの「腱板断裂」が1つ。
これは腱板周りに炎症が起こるわけで、腱板周りは肩峰の下ですから当然です。

もう1つ大事なのが「石灰沈着性腱板炎」です。
腱板にカルシウムの結晶が沈着するので、インピンジメントが起こりやすいんです。
もうこの時点で、治療法が違うのは当然ですよね。

さらに、腱板断裂もないし、石灰もないけど、インピンジメントが起こってしまうこともあるんです。
それは「腱板炎」という腱板の炎症だったり「肩峰下滑液包炎」という肩峰の下の滑膜と呼ばれる膜の炎症だったり様々です。

そういった、まずは診断がめっちゃ大事だってことはいつもお伝えしています。
が、その上で、炎症が原因なら、その炎症を沈静化しないといけませんね。

その基本対策は2つです。

1つは安静。
これがテッパンで、痛みが出る動作はしない。
これに尽きますが、もう少し積極的に炎症を抑えたいとなったら、ステロイド注射になります。

ステロイドは炎症を抑える強力な作用がありますが、一方で多くの副作用があります。
例えば、腱板に対しては腱板自体を弱くしてしまうような作用があって「ステロイドを2回以上打ったあとに腱板修復手術を受けた場合の再断裂率が上がった」とする報告もあるくらいです。

ですから、ステロイドを打つなら1回試す程度をオススメしたいです。
となると、炎症を抑える基本は安静という所に戻るわけですが、さらに1つのメカニズムを考えたいです。

それは何かというと、肩峰の下の圧力です。
インピンジメントっていうのは、圧が高まって痛みが出ると言いましたが、それならなんとか圧を下げたいじゃないですか。

そこで、こちらの研究結果(*1)が参考になります。

肩峰の下の圧力を測定しているんですが、肩関節を内旋すると肩峰下の圧が高まり、その逆、外旋は圧が下がるということを示してくれています。

さらに、外旋筋力が強いと肩峰の下の圧力が低くなる傾向があることを報告しています。
ということは、肩の外旋筋である棘下筋のエクササイズをかなり期待したいですよね。

こちらの動画で詳細は解説していますが、外旋の基本エクササイズはシンプルです。

なるべく弱い強度の市販のゴムバンドを選んでください。

このように一方を固定したチューブの反対側を、肘を90度に曲げて脇を締めた状態のまま外に引っ張るだけです。
外旋の動きに張力をかけて、戻すときはゆっくりがいいですね。

これを30回くらいで、肩の後ろの棘下筋の辺りに熱くなる感覚が得られたらちょうど良いと説明しています。

ここら辺の感覚は個人差がありますので、最低限エクササイズ中とエクササイズ後、両方とも痛くないという状態は徹底してください。
もし、どちらかで痛い場合はもっと負荷を弱くしたり、回数を減らしたりしてください。

また、そもそも可動域が狭くて痛い場合は、痛くない範囲で動かすべきですので、そこも調整が必要です。

第1位 五十肩・凍結肩

これが一番多いです。
以前も、この五十肩で後ろに手が回せないというお悩みに関する動画をお届けしましたが、今回はさらにその先をお伝えしたいと思っています。

まず、なんで五十肩で肩を後ろに回せないかということについて、2段階、2ステップのメカニズムをお伝えします。

五十肩の特に重症型である凍結肩の場合、肩の中で起こっているのは肩関節包という膜の炎症です。

これはこれまで解説した腱板や滑液包よりも深いところ、まさに肩のコアみたいな部分にある膜だと思ってください。
この膜の炎症が何らかの原因で起こってしまい、炎症の結果、カサブタのようにカタい線維になってしまうと動きが悪くなってしまうという流れです。

そして、多くの場合は最初に炎症が起こりカタくなるのが、腱板疎部という部位です。

この腱板疎部というのは、腱板がうすくなっている場所という意味ですが、肩甲下筋腱と棘上筋腱の間のスペースを表します。
本来、うすくなっている場所が炎症の結果、かさぶたのようにぶ厚くカタくなるわけです。

ここがカタくなるとまずシンプルに外旋という動きがカタくなります。

これは外と内という意味で内旋の逆の動きですから、今回のテーマとは逆です。
でも、背中に手が回らないっていう動きの時って、単なる内旋運動じゃないんですね。

腕を背中側に真っ直ぐ持っていく伸展という動きが入ります。

その上で内旋するっていうのが、背中に手を持っていく動きなわけです。
そして、この伸展と内旋の邪魔をするのが、カタくなった腱板疎部なんです。

ですから、この腱板疎部が炎症を起こして痛みが出たり、カタくなってきた段階で外旋も制限されますが、背中に手も回らないという状態に陥りやすいです。

そして、最終的には腱板疎部のみならず、関節包全体がカタくなったときに、内旋という動きも思いっきりカタくなるので、全然手が背中に回らないという状態が完成します。
この2ステップを理解すると、改善策も立てやすいと考えます。

最初の動画では「関節包全体がカタくなり、特に後ろの関節包が硬いから、内旋という動きがカタくなっているんですよ」という、今回の2ステップ目の状態に対するストレッチをご紹介しました。
具体的には「内旋押しストレッチ」という、普通の内旋ストレッチにユニークな特徴を加えました。

手を背中に持っていく時に、反対の手で肩甲骨を後ろから前に引き出しながらやりましょう。

なぜ、この肩甲骨を引き出すことが良いのかと言うと、肩甲骨が前に来るってことは、相対的に上腕骨、腕の骨は後ろにいくわけです。

この位置関係と方向性は、結果的に肩関節の前にある腱板疎部に対する圧迫力が落ちる
つまり、腱板疎部にかかる負担が減るので痛みが出にくいというメカニズムを狙っています。

そこから、カタい人でも少しずつ、ゆっくり真ん中まで手をもっていきます。

そして、真ん中まできたら、今度はゆっくり上に上げていきます。

実際、冒頭でお伝えしたように、効果を感じてくださっている人はたくさんおられます。
しかし逆に言うと、これは腱板疎部のストレッチにはならないってことでもあるんですね。

そこで、1ステップ目の腱板疎部に対するストレッチとして、今回新たにご紹介したいのが「肘引っ張りストレッチ」です。
完全に独自のネーミングで、我ながら鈍くさい名前だなぁと思いますが、わかりやすさ重視でいきます。
要は肘を体幹に沿わせて背中側にいけるところまで持っていきましょうということです。

まず、痛くない方の手を背中側に回し、痛い方の肘をひたすら引っ張ります。

このとき、痛い方の手のひらが外を向くように外旋していきます。

その状態で、さらに手を背中に沿って上に上げていくことでストレッチしていくわけです。
10秒ほどやって休み、また10秒を繰り返すのがオススメです。

この動きでお分かりいただけたと思いますが、内旋ストレッチではなくなります。
むしろ、外旋ストレッチですよね。
それによって、より腱板疎部がストレッチされるんです。

腱板疎部の炎症が強いときは痛みを伴うので、痛みが出る手前までにとどめてください。
そして、ストレッチ後に痛みが増すようなら、さらに負荷を減らすという感じで調節をしていただけると安全性が高いです。

ちょっと痛いところまで攻めるというやり方もありますが、その場合は医師と相談してください。

2段階、2ステップとお伝えした通り、最初に腱板疎部が炎症したのちに硬くなるケースが多いですから、五十肩の前半からやるべき基礎ストレッチと言えます。
そして、完全に凍結肩になってしまったとしても、やるべきストレッチと言えるのではないかなと思います。

ふんぞり男「これじゃ、腱板疎部を伸ばしたくても、外旋しにくいじゃないか。外旋っていうのは、こういう動きだろうが。お前がよく動画でやってるじゃないか。」

いいですね。
素晴らしいご質問です。

こちらの研究(*2)では、このストレッチのように肩を伸展、内転した状態だとほんの10度外旋しただけで腱板疎部にある靱帯、烏口上腕靱帯がちゃんと伸ばされることが示されています。

ですから、ご安心ください。
むしろ、この動画のテーマである腕が背中に回らないという課題を考えた時には、単に外旋するストレッチより、これをやるべきだろうって思いますよね。

後ろに手を回すための動きの2つの要素、伸展と内転のストレッチでもあるわけですから。
ただ、通常の外旋ストレッチも大事ですし、通常の内旋ストレッチや内旋押しストレッチも併用してもらえるとより良いかなと思います。


ということで、ここまでTOP3の原因と対策をそれなりに丁寧に解説してきましたので、最後にまとめスライドをご提示していきます。

肩が痛くて後ろに回せない時の原因と対策 TOP3 まとめスライド

第3位 腱板断裂

第2位 肩峰下インピンジメント 

第1位 五十肩

本日の一言

手が背中に回らないときには、まず肘引っ張りストレッチをやってみてください。


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参考論文

(*1)Clément M L Werner et al. J Shoulder Elbow Surg. 2006
Subacromial pressures in vivo and effects of selective experimental suprascapular nerve block

(*2)Tomoki Izumi , et al. Sports Med Arthrosc Rehabil Ther Technol. 2011
Stretching positions for the coracohumeral ligament: Strain measurement during passive motion using fresh/frozen cadaver shoulders





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