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ワクチン後にいつまでも肩・痛い時の治し方 TOP3【新型コロナ】

「ワクチン後の肩の痛み・・・多いんです。」
今回はワクチン後の肩の痛みが何なのか?がテーマです。
ワクチン後にいつまでも肩が痛い時の治し方 TOP3 をお届けします。

※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。


ワクチンを打った後に続いてしまう肩の痛みの正体とは!?

私は肩を専門とする外来をやっています。
ワクチンを打ってから肩が痛くなったという患者さんは、このご時世ですから、毎日のようにいらっしゃいます。
もしかしたら、整形外科で「ワクチンは関係ない」と一蹴されて、悲しい気持ちになったご経験をお持ちの方も、多くいらっしゃるのではないでしょうか。

私も外来では「ワクチンとは関係ないかもしれないけど、もしかしたら・・・」という方まで含めれば、数えきれません。
「絶対ワクチンのせいだ」というお気持ちで受診され、MRIによる精密検査をした患者さんの数も100人は越えています。

このように、診断から治療までを行った経験や最新の論文などから、ワクチン後の肩の痛みをどう治すか?ということをランキング形式で解説していきます。

この記事を読むことで、ワクチンを打った後に続いてしまう肩の痛みの正体に辿り着き、適切な治療法を選べるようになることを目指した内容となっています。
ぜひ最後までご覧ください。

それでは、第3位を発表します。

第3位 筋肉注射後の緊張状態をほぐしていく

筋肉注射のワクチンを肩の部分、つまり三角筋に受けた場合に、筋肉は緊張することがあります。
ワクチンの副反応で、三角筋が痛いというのは、よくあることです。
痛みは筋肉の緊張につながり「緊張が長引いてしまう・・」これはある意味、クセになっているような状態が起こっています。

筋肉の緊張は連鎖します。
肩こりのような症状になることもあれば、腕の方まで痛くなることもあります。
痛みの原因が、このような筋肉の緊張状態の場合、肩関節は動くことが多いです。
このようなときは、筋肉をほぐす系の治療が適応になります。

こちらのように、肩こりの時に行うエクササイズや整形外科クリニック・治療院などで行われる、電気治療・マッサージなども効果がある可能性があります。
ただ、実際に僕の外来で悩みに悩んでいらっしゃる患者さんは、次以降の症状です。

第2位 肩専門の医師の診察を受ける

肩専門の医師の診察を受けて、肩のなかで何が起こっているのかをしっかり診断してもらいましょう。
これをオススメしたい症状は、次のような場合です。

  • 肩が上がらない

  • 回らない

  • カタいという状態

  • 痛みが強くて動かしにくい

  • 「夜間痛」という夜の痛みで眠れない

これらの場合、筋肉が緊張しているだけの可能性は少ないです。

SIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration)とは

最近有名になってきた「SIRVA」は「Shoulder Injury Related to Vaccine Administration」の頭文字を取った名前で、ワクチン接種に関連した肩の障害という意味です。
名前からして「ワクチン後に続く肩の痛みは全部コレだろ!」となりそうですが、SILVAはある程度、典型的な病態があります。
ワクチンは三角筋に打つため、三角筋に近い部位に炎症や損傷が起こるのが、典型的なSIRVAです。

三角筋の奥に「滑液包」と呼ばれるクッションのようなものがあります。
SILVAは、そこに水が溜まり炎症するケースと、その奥にある腱板が損傷するまでに至ってしまうケースがあります。

医学論文のなかでも、肩と肘に特化した医学雑誌で世界的に権威がある「Journal of Shoulder Elbow surgery」にも1例、SIRVAの症例報告(*1)があります。
この報告された論文では、MRI画像も提示されていて、三角筋の奥の滑液包にお水がかなり溜まっています。
これは典型的なSIRVAの画像で、それを関節鏡手術で「滑膜切除」という炎症を起こした滑膜をクリーニングする手術で、症状が改善した報告でした。
この典型的なSIRVAは、MRIや超音波検査をすれば見つけられます。

本当にSILVA?

ただし・・・です。
冒頭で僕は、ワクチン後の肩の痛みについて、診察をオススメする症状の患者さんを100人以上(ワクチンとの関連が患者さん自身も自信がないケースを入れれば数百人、数千人かもしれません・・)拝見しています。
しかし、実はまだ一人も、この典型的なSIRVAのMRI画像だった患者さんはおられません。
それは、日本全国的に適切な筋肉注射が浸透しているからではないかと思います。
肩の上の方に注射してしまうと、滑液包に入りやすくてSIRVAの原因となるのは有名な話です。
そのようにならないために、医療従事者間でかなり啓蒙活動が初期に行われたのが功を奏していると思います。

ちなみに僕もこんな動画を出しました。

「SIRVAではないなら、なぜこんなに肩が痛いのか、動かないのか」となりますよね?
そこで、第1位を紹介します。

第1位 五十肩と割り切って治療する

「 え?五十肩?」と思われたかもしれません。
「ワクチンのせいで痛くなった」と完全に思っておられる患者さんのMRIを確認し、症状や肩の動きを拝見した結果、ほとんどの患者さんは五十肩に典型的な所見を示しました。
じつに、僕のこれまでの経験でも、100例以上あります。
「え?なんでワクチン打って、五十肩になるんだよ」と思いますよね。
この状況を作っているのは、五十肩がまだまだ原因不明だからです。

ワクチン後の副反応で肩が痛くなり、そこから痛みが持続したとして、この痛みがワクチンのせいかどうかがわからないくらい、五十肩はありふれた病気です。
日本人の2〜5%が五十肩になると言われています。
日本人の大多数がワクチンを打っていることを考えると「たまたまタイミングが合ってしまった」ということも十分にあり得ます。
これを言うと、怒り出す患者さんもいます。
今まで痛くなかったのに、ワクチン摂取後に痛みが出たら、ワクチンのせいだろうと思いますよね。
ただ現状は、その因果関係は証明のしようがないというのが現実です。

ちなみに、さきほどの「Journal of Shoulder Elbow Surgery」に、(*2)の論文が出ていました。

これは、新型コロナのパンデミック前と後の五十肩の発生率を比べた論文です。

五十肩は、海外でおもに「frozen shoulder」つまり「凍結肩」と表現されることが多いですが、この「凍結肩」で病院を受診した患者さんが、新型コロナのパンデミック後は40%くらい増えたのです。
これは、パンデミック後に増えたというだけで、ワクチンとの関連は不明です。
なぜならパンデミック後と言っても、集計期間が2021年1月までで、この研究の舞台であるドイツでワクチン接種が開始されたのが2020年の12月末なので、ワクチンの影響はほとんどない統計結果だといえます。
なぜ増えたかは、この論文でも不明とされています。
しかし、コロナ禍という社会情勢が、人のマインドやメンタルに悪影響を与え、五十肩の原因になる・・・こともあるのかもしれません。

まとめ|ワクチン後の肩の痛みは意外と五十肩のことが多い

どのような背景があったとしても、オススメしたいのは、第2位で紹介したように、しっかりと肩専門の整形外科医に調べてもらうことです。
そして、肩の痛みがワクチンのせいであろうがなかろうが、現在、肩のなかで起こっていることへの対処に集中した方がよいでしょう。

そして、その多くは五十肩と同様に「関節包」という肩を取り囲む膜に炎症が起こったり、その膜が厚くなり肩が動かなくなっているため、五十肩の治療をしていきます。
五十肩治療については、たくさん動画がありますので、こちらの再生リストをぜひともご覧ください。

「結局、他の動画を見ろはヒドくない?」と思わせてしまったら申し訳ありません。
でも、ここまでの説明をご理解いただいた上で、五十肩の動画をご覧いただくのと、そうでないのとでは治療に向かうモチベーションが全然違うと思い、この動画を作りました。
「ワクチン後だろうが、どうせ五十肩なんだから放っておけ」という意味ではまったくありません。
むしろ、五十肩の症状は辛いし、きちんと治療する必要があると思っています。
そのため、五十肩の治療に向かっていただきたく、今回お伝えしました。

このように論文の紹介も織り交ぜながら、さまざまな症状に対して、原因や治療法の解説をおこなっていますので、症状に悩む患者さんだけでなく、治療家さんが患者さんへ指導する際にも役立てていただければ幸いです。

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参考論文

【*1】Arthroscopic surgical management of shoulder secondary to shoulder injury related to vaccine administration (SIRVA): a case report Willis Wong et al. Journal of Shoulder and Elbow Surgery 2021.

【*2】 The impact of the COVID-19 pandemic on frozen shoulder incidence rates and severity Joachim Demyttenaere et al. Journal of Shoulder and Elbow Surgery 2022.


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