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五十肩を最短で解消するための入門講座【専門医解説】

五十肩(四十肩)は適切な治療を受けられなかった場合、何年も痛みやカタさに悩まされてしまう可能性があります。そして、その「適切な治療」というのが想像以上に難しいのが五十肩だったりしますので、ぜひ、こちらの肩専門医が徹底解説した記事を熟読していただければと思います。


「ん?、まだ五十肩まだ治らないの?」

「こらこら、まだ四十肩!」

「どっちでもいいじゃん。で、もう上がらなくなって何ヶ月?」

「何ヶ月って、もう1年だよ!」

「なに?それ本当に五十肩なの?俺なんて2ヶ月で上がるようになったぞ」


「だから、あなた・・・四十肩・・・」


夫婦のよくある一場面を切り取ってみましたが、日本中、いたるところで行われ、40歳から60歳の間の人たちで圧倒的に多い会話かもしれません。

五十肩はこの夫婦のように比較的すぐ良くなる人と、何年も苦しまれた後に結局、若干の後遺症を残すという人と、一言で言えば、個人差が大きいのが特徴です。


風邪だったら数日から、こじらせても数週間ですよね。もしくは長らく付き合っていかなくてはいけない高血圧や糖尿病などなども薬をちゃんと飲めば、日常生活に困らない状態が続きます。


しかし、五十肩で運悪く治りが悪い人は、相当にツラい数ヶ月、数年を送ることになるわけです。特に仕事でどうしても肩を挙げないといけない、遠くに手を伸ばさないといけない、そんな人にとって死活問題です。


そんな人たちに対して、

「ああ、五十肩だね。動かさないとカタまるから痛いけど動かしといてね」

とか、

「五十肩は動かしても痛みが増すし、いつかは良くなるから安静にしておいてね」

とか、

「とりあえず5回、ヒアルロン酸注射を打ちましょう」


とか、一言で片付けてしまう。

そんな熱意がない治療をする先生がいらっしゃいます。もちろん、そんな先生ばかりではないですが、これでは「医者に行っても意味ないな」と思われても仕方ありません。

そうやって医者に見切りをつけた患者さんは次に整骨院や整体院、鍼灸院などに行きます。しかし、そこで行われる治療で改善する五十肩は実はごく一部であって、ある程度、進行した五十肩を治療するのは厳しい・・・そして、その厳しい五十肩が80%くらいあると僕は個人的に考えています。(80%の根拠は後に述べます)

にもかかわらず、責任感が強い整骨院、整体院の先生方(柔道整復師と整体師は資格としても全然違うモノですから、並列に並べては本来いけませんが、お許しください)は多少無理にでも可動域を拡げようと、様々な徒手療法を施されます。その結果、痛みが増して、遠方から僕の外来を受診される。そういうケースが、本当に多いんです。

しかし、

僕のところにやっと到達してくれた人は、みんな速やかに治っちゃいます!

なんて、誇大広告みたいなことは言いません。

僕の外来に来ても、「まずはセルフリハビリですね」と言われて、「なんだ、すぐ治してはくれないのか」とガッカリさせてしまうこともあります。

そこで、丁寧に五十肩について1時間でも2時間でも説明できれば良いのですが、それは非現実的ですよね。だからこその、この講座です。


この講座は流し読みをしていただければ、30分。丁寧に読み込んでいただければ60分。そして、参考として実践的な動画をご紹介しているので、そちらまで徹底的にご覧いただければ2時間くらい。そういう学習時間になります。

その学習時間を投資していただければ、その後から、五十肩との付き合い方はきっとかなり変わりますし、結果、解消までの時間は大幅に短縮する可能性があります。

【1】五十肩を放置したらどうなるのか?

まずはここからハッキリさせておきましょう。五十肩、自然に治ったっていう人の話、よく聞きますよね。実際、そういう人もいますし、逆にものすごく長引いて、後遺症のようになってしまう人もいます。

1-1)五十肩は炎症期・拘縮期・回復期と決まり切った経過を辿るわけではない

典型的には、まず痛みが強い炎症期から始まり、その後、肩の可動域が狭くなる拘縮期、そして、回復期というように3段階で治ってくるなんて言われます。

それぞれが、例えば、炎症期が1ヶ月、拘縮期が3ヶ月、回復期も3ヶ月みたいな目安期間も言われることがありますが、これは全然アテにならないなというのが僕の実感です。

炎症期と拘縮期が同時に来ることもあれば、炎症期から拘縮にならずに治ることもあり、また、期間も個人個人で全然違います。

1-2)五十肩を放っておけば自然と完治するという説は統計的に証明できない

それを研究して論文にしてくれたのがこちらです。

Natural history of frozen shoulder: fact or fiction? A systematic review
C K Wong et al.Physiotherapy. 2017 Mar;103(1):40-47.

こちらの論文では結論として、こう締めくくっています。

Contradictory evidence and a lack of supporting evidence shows that the theory of recovery phases leading to complete resolution without treatment for frozen shoulder is unfounded.

意訳すると「エビデンスを探ってみると、五十肩の治療をしなくても回復期に入って完全に治るという説は根拠がないことがわかります。」


さらに、JBJSと略される整形外科で世界的に有名な医学雑誌に投稿されたこちらの有名な論文もあります。

Frozen shoulder. A long-term follow-up
B Shaffer  1 , J E Tibone, R K Kerlan
J Bone Joint Surg Am. 1992 Jun;74(5):738-46.

こちらの論文は3~11年という長期にわたってFrozen shoulder(凍結肩≒五十肩)を観察した報告です。重要な結果としては50%以上の患者さんにおいて、痛みや可動域制限が残ってしまっていたということです。

1-3)五十肩が自然に完治する人は運が良かった…と考えるべき

五十肩を放置しての完治は統計的には厳しい、時に後遺症すら残りかねないという事実を受け入れ、次に進むこと、これが大切なファーストステップと考えます。

そのために、まず、「五十肩が自然に完治した」という冒頭の先輩みたいな人は、単に「運が良かった」ということにすべきかなと思っています。

なかなか医師としては思い切った言い方で、ご批判もあろうかと思いますが、それはこれを伝えたいからです。

あなたの肩の未来を「運」に任せますか?

ってことです。


いや、できることをやりたいですよね。良い未来を自力でたぐり寄せたいですよね。

そのためのこの講座です。

この講座では五十肩という「曖昧な診断」の中で迷子になっている可能性が高い、あなたの「現在地」を知ることと、その上で最短で治癒まで持っていくための「治療法」について徹底解説します。


申し遅れました、わたくし、整形外科専門医の歌島大輔と申します。
こちらのYouTubeチャンネルをきっかけに多くの方に知っていただき、日本全国から肩関節鏡手術について相談に来ていただいています。

詳しいプロフィールはこちらからご覧ください。

現在もフリーランスではありますが、現役で診療を行い、肩関節鏡という内視鏡の手術を年間300件以上行っております。その手術で多いのは、腱板断裂と五十肩です。

そうです、五十肩も内視鏡手術で治療することがあるんですね。そんな手術のお話もしますが、基本は手術以外でどう治していくか?というお話が中心です。

僕の五十肩治療の集大成として、他では聞けないお話をしたいと思っていますので、ぜひ続きをご覧ください。特に治療迷子から脱出するためのツール・考え方として「5 STAGE MAP」というものを使います。これによってあなたが現在、五十肩のどの段階にいて、どういう治療を受ける、行えばいいのかがスッキリします。

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