Farmingと健康(Module 6)

こんにちは。
8月ももうすぐ終わり、社会人になって長い夏休みがなくなったのはちょっと残念だけれど、楽しく仕事して、勉強して、充実してる毎日で嬉しい。

今週のModuleは、holistic farmingと人間の健康の関係についてでした。

Holistic Farmingとは

Holistic Farmingとは、生態学的・社会的・経済的に健全で、持続可能な農業を意味します。日本語では、「循環型農業」という言葉が近いかもしれません。

現在、地球では温暖化や砂漠化、海洋汚染などさまざまな環境問題が取りざたされています。農業分野においても、化学肥料や農薬の過剰散布、遺伝子組み換え技術、家畜の排泄物のなどの衛生問題など、環境への悪影響は深刻です。
Holistic farmingは、このような状況において、自然の原理に基づき、資源を再活用・循環させること土壌を再生させ、環境負荷を減らし、生産性を高めることを目的としています。多くのholistic farmingで、土地再生のために家畜が使われているのも、このためです。家畜は、劣化した土壌を修復し、生態系の機能を向上させ、生物多様性を構築するために、野生本来の群れの行動を促すように管理されています。

そのholistic farmingは、個人レベルだけでなく、都市農業として地域や産業レベルで私たちのwell-beingにポジティブな影響を与えています。

今回は、私たち個人の健康との関係性について書きます。

微生物の多様性と健康との関係

Holistic farmingは、多種多様な微生物が生き続けられる土壌を守ります。
土壌中の微生物は、植物が栄養素を吸収するのを助けます。それを食べることで、私たちの体は消化に必要なバクテリアを獲得しています。

つまり、微生物は、私たちに食べ物を消化するメカニズムを教えてくれているのです。

また、土地によって土壌中の微生物の質が異なるため、同じ「健康な人」であっても、何を食べているかによって「健康」という言葉の意味合いは全く異なります。
例えば、Carlotta De Filippo氏は、腸内細菌の量や種類と土壌の関係性を知るため、イタリア・フィレンツェに住む健康な子供と、西アフリカのブルキナ・ファソの部族の健康な子供たちの排泄物を分析しました。
その結果、都市部の子供たちからは砂糖や脂肪から栄養素を吸収するfirmicuteというバクテリアが、部族の子供たちからは野菜や自然の食物から栄養素を吸収するbacteroidesという複数のバクテリアが発見されました。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2017.01979/full?report=reader

ブルキナ・ファソの子供たちの食事は、その土地で栽培された野菜が中心です。その繊維の供給源も、土着の穀物やマメ科植物、ネレやバオバブの葉などの野菜、果物や発酵製品など、独特です。特に、この地域の典型的な穀物であるキビとソルガムは、新石器時代の人間と同様に、平らな砥石で小麦粉に粉砕され、「トー」というお粥になります。つまり、ブルキナ・ファソの子供たちは、伝統的なholistic farmingによって育てられていることになります。

一方、フィレンツェの子供たちは、日常的にジャンクフードや砂糖の入った清涼飲料水を摂取することが多く、ブルキナ・ファソの子供たちが食事を通して得るバクテリアを持っていません。

ローカルなholistic farmingを守るために

このように、食事の違いだけを考慮しても、腸内細菌の量や種類、つまり私たちが消化できる食べ物の種類は全く異なります。マクロな視点では同じ「健康な人」であっても、ミクロな視点では「健康」という言葉は全く違う意味になるのです。

今回の内容から、私は大学の卒業研究で、科学史の観点から遺伝子組み換え技術を扱い、インドの種子市場が単一のGM種子に依存していることを思い出しました。

インドでは、伝統的に1,000以上もの種子が伝統的な製法で栽培されていましたが、1990年頃にアグリテック大手のMonsanto社がインドに進出し、水害に耐性のあるGM種子と農薬をセットで毎年購入する、Monsanto社以外の種子は栽培しないという契約を農民に結ばせました。その結果、現在ではインドで栽培される種子のおよそ97%が、遺伝子組み換えされ、農薬なしでは育てられないもので占められています。また、多くの農民が倒産し、自殺率も増加し、社会問題となりました。

インドだけでなく、世界各地の小規模な地域産業が巨大なアグリテック企業に搾取されている事実は、今でも(普段目に見えないだけで)社会の暗い部分にあります。

もちろん、農業や科学が産業として発展したことで生まれた恩恵も多いけれど、インドや他の地域のローカルなholistic farmingが脅かされ、私たちの「健康」に対する考えが変わってしまったことは、深刻な弊害なのではないでしょうか。

農業が産業という複雑な体制に取り込まれているため、今日の明日で世界を変えることは難しいかもしれない。だけれど、食事において選択をする際、holistic farmingで栽培されたかという新たな判断基準することで、少しは変わるのかもしれません。

個人でできることから、少しずつやっていきたいですね。

今週も読んでくださってありがとうございました。


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