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ピッコロ頭部管~不具合の顛末

ひと月ほど前、知り合いが SNS に次のような投稿をしているのを見掛けた。

ピッコロについての質問です。生徒さんが修理に出した学校の備品、修理から引き取った後に高音域のFより上が全く、全く音が出ない状態!であることが判りました。メーカーで調べたところ頭部管の「経年劣化」によるものだとのことです。割れなどは特定されていません。

私が見たところ本体は修理を含め問題ありません。メーカーの話では違う頭部管をつければ音が出るそうです。こちらの不手際ですが修理前の状態を見てはおりません。学校の備品ですので扱いが雑であることは否めませんが、大手のメーカーさんなので、もしこのような事例が他にもあるとしたら原因を特定してもらいたいと思いました。

さらに

本社の方から「いち顧客とは話をしない」と一旦断られましたが、先ほどやっと技術者と話ができました。

結論から言うと頭部管の問題とほぼ特定できているのですが、原因の徹底究明にはコストがかかり、しかも直る保証がないのでやらないそうです。頭部管を買い替えた方が安いということです。

古い楽器の上学校の備品で、おそらくこれまでの扱いも丁寧とは言えないのでそこは理解するのですが、現状はタンポ交換をして修理代を支払ったのに音が出ないということで、学校の生徒さんや学生などが知識もなく泣き寝入りとなるのはよろしくないので、今後のために全国的にも症例をシェアし、タンポ交換前に頭部管の状態もチェックして欲しい旨をお願いしました。

同じ症状が出ているのなら、一度徹底的に調べて今後のメンテナンスに役立てたら良いのにな…というのは私の愚痴です

これを読んで、メーカーのあまりの対応の酷さに驚いた。

高音が鳴らなくなる経年劣化ってどんな症状なんだろう?

頭部管を買い替えるよりコストのかかる原因の徹底究明・・って一体何をするんだ!?

という疑問と共にどんな状態なのか見てみたいという衝動に駆られ、連絡してみた。

既に別の頭部管に買い替えることにしたということなので、問題の頭部管を送ってもらうことにした。


吹いてみると、確かに3オクターヴ目の F から上が全く鳴らない。
今までも最初から高音が鳴りにくいという楽器を見たことがあるが、それとは全く違ってうんともすんとも鳴らない状態だった。

このような状況は一体どのような状態になっていると起こるのだろう?
半ばわくわくドキドキしながら外側も内側も隈なく観察したのだが、何も問題となるような箇所は見当たらなかった。
むしろ過去に扱った具合の悪い頭部管に比べるととても良い状態だった。

一瞬途方に暮れたが、とりあえずヘッドコルクを外してみることにした。
修理店でもコルクの確認はしていたらしいし、ましてやコストの掛かる徹底究明が必要だと言われた原因がまさかそんなところにある筈が・・・

まさかの状態だった!

取り出した状態
別角度から

何でこのような状態になるのかは不明だが、コルクの端面が斜めになって反射板に届いていない。

取り敢えず新しいコルクと交換してきちんとセットすると

問題なく高音が鳴るようになった!

たったこれだけのことで問題は解決してしまった。

そもそも何でこんな状態を修理店が見逃してしまうのだろう?
変だと思ったら先ず確認すべきところではないのか?
確かにタンポ調整では高音域を吹いて確認することは少ないかもしれない。
それでも最終確認で気付いて欲しいレベルの異常さである。

それより何よりもメーカーの対応には納得がいかない。
これを経年劣化と結論づけた根拠は何なのか?
メーカーの言う原因の徹底究明とは何なのか?
これを見つけるのに頭部管を買うよりも高いコストが掛かる???

要は学校備品の安い楽器など真剣に調べて対応する気もなく面倒だから門前払いしているに過ぎないのだろう。
そう受け取られても仕方ない対応だと思う。


どうやら同じような例は楽器店でも確認しているらしいので、もし身近で同様の相談を受けた場合にはアドヴァイスしていただきたい。

もしこれをご覧いただいたリペア関係の方がいらしたら、症状と原因について認知していただき適切な対応をお願いしたい。
今後周知の事実となるよう拡散もお願いしたい。


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