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NPS調査のサンプルサイズ、しっかり設計していますか?

1. 概要

NPS調査は、顧客ロイヤリティを測るうえで最もポピュラーな調査です。今回は、このNPS調査の信頼性を担保するためにはサンプルサイズの設計がいかに重要かをシミュレーションを交えながら説明します。

なお、今回のシミュレーションに使用したR言語のスクリプトは有料(300円)で公開いたします。もしご興味のある方はご覧ください。

2. NPSとは?

NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、サービスやプロモーションなどの顧客満足度を測る際、大変ポピュラーなアンケートです。質問項目はたった1つ。「弊社のサービスを、親しい人や会社の同僚に進める可能性はどのくらいありますか?」この質問に0~10でスコアリングしてもらうのです。

NPS調査では、回答者のスコアに応じて次のような分類を行います。
・0-6:批判者 …… サービスに対して不満を持っている人。
・7-8:中立者 …… サービスを積極的に推薦しようとはしない人。
・9-10:推奨者 …… サービスを積極的に推薦したいと思っている人。

さて、NPSは次のようにして計算されます。
NPS = 100×(推奨者の数-批判者の数)/回答者数
例えば、300人にNPS調査をして批判者が240人・中立者が90人・推奨者が30人になったとしましょう。このとき、NPSは100×(30-240)/300 = -70になります。NPSは-100から100までの値でスコアリングされ、スコアが高いほど顧客ロイヤリティが高いと考えることが出来ます。

3. NPS調査でやっていること

さて、あるサービスの顧客ロイヤリティが知りたい場合、お客様全員に調査を行い、NPSを計算する必要があります。しかし多くの場合、調査コストや回答を断られるなどの事情から、全てのお客様に調査することは現実的ではありません。

そこで、NPS調査では事前に協力者を募り、サービス提供後にその協力者の方々から回答していただくのが一般的です。要は、協力者の方々の回答から計算されるNPSで、お客様全体のNPSを推測しているのです。

上の例を見てみましょう。お客様全体に質問に答えて頂ければ、NPSは-24と計算されます。しかし、いま私たちはお客様全体に調査をすることはできないので、このNPSの値も計算することはできません。そこで、予め調査のご協力を仰いだ1番から5番のお客様にご回答を頂き、そこから計算されるNPS = -20をお客様全体のNPSの推定値としています。

まとめると、顧客全体のNPSは-24ですが、これを直接計算することはできません。そこで、一部の人に調査をすることで-20と推定したのです。

4. 調査で推定したNPSと顧客全体のNPSとのズレ

先ほどの例からお分かりになるように、調査で推定したNPSと顧客全体のNPSとの間にはズレが生じます。ここで、皆さんにシミュレーションをお見せしましょう。顧客全体が批判者60%, 中立者30%, 推奨者10%(顧客全体のNPS = -50)とします。このとき、1515名の協力者を募ってNPSの推定値を計算します。これを1000回繰り返した結果、NPSの推定値は次のように分布しました。

シミュレーションの結果、NPSの推定値が必ずしも顧客全体のNPSの値-50と一致せず、場合によっては-55に近い値や-45に近い値も取り得ることがうかがえます。(この分布の平均値は-50.0、標準偏差は1.7でした。)

5. NPSの推定はサンプルサイズに気を配る必要があること

このNPSの推定値と顧客全体のNPSの値のズレは、協力者をより多く募っておくことで、大きなズレを起こしづらくすることができます。先程のシミュレーションを、今度は6060人の協力者(先例の4倍)を募ってやってみましょう。

シミュレーションの結果は、サンプルサイズが十分に大きくなるとNPSの推定値として-55に近い値や-45に近い値はほとんど得られず、ほとんどの場合で顧客全体のNPSである-50に近い値が得られることを示しています。(分布の平均値は-50.0、標準偏差は0.9でした。)

6. 次回のお話

今回は、NPS調査におけるサンプルサイズの重要性が確認できました。次に気になるのは、どれくらいのサンプルサイズがNPS調査には必要なのかでしょう。そこで次回では、NPS調査に必要なサンプル数の設計の仕方のお話をします。それでは、またの機会まで。

謝辞

この度「サンプルサイズ」を「サンプル数」と当初書いていた件について、西原史暁さん(@f_nisihara)からご指摘をいただきました。ここにお礼申し上げます。また、修正するにあたって匿名の相談に応じてくださった方へ、お礼申し上げます。今後とも、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

Appendix. 使用したRスクリプト

Macの場合に生じるトーフ化、ヒストグラムのタイトルに出てくるサンプルサイズ(n=○○)表示の自動変更をカイゼンしました。気づくきっかけを頂いたjustinさんにお礼申し上げます。(2017/12/18)

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