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真夏のこと 【超短編小説】

蝉時雨の読経は絶えることなく少女の登る石段は果てしない。土用の午後の油照りに彼女は敢えて、今生は縁を得なかった上人の奥津城にたどり着きたかった。一足毎に彼女の肉体の重さは動悸の疼きと共にはらりと落ち、やがて苔生した碑の前に透明なものが端座した。

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