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【書評】サッカー戦術本「サッカーとは何か」の解説と所感 Vol.11

浦和レッズ分析担当コーチ・林舞輝さんのサッカーの本質を問う書籍「サッカーとは何か」

本書では「戦術的ピリオダイゼーション」「構造化トレーニング」という2つのトレーニング理論に視点をあてて、サッカーとは何かという漠然としていて、抽象的で、壮大な問いを追求していく

Vol.1-4では、戦術的ピリオダイゼーションの「戦術的」の部分を解説してきた

Vol.5では「ピリオダイゼーション」の部分の入り口である意味や方法を解説した

Vol.10からは「構造化トレーニング」を解説し、構造化の意味や理解に迫った

Vol.11では、トレーニングメニューを組む際の4つの条件に焦点をあてて解説していく

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「独自」のものであること

クラブの哲学・ゲームモデル・方針に合わせたものでなければならない

そしてそれは、そのクラブ独自のものであり、オリジナルである必要があるのだ

独自性とそれに伴う一貫性こそ、選手という複雑な構造をチームが司るために必要なものであり、クラブでその教育方針は揃えるべきなのだ

「バルサのサッカーは、ヨハン・クライフが来て以降、20年も独自の哲学、プレースタイル、そしてトレーニング方法を一貫して貫いている。これは数日でできるものではなく、長い年月の積み重ねであり、選手たちが10代から行っているものだ。彼らが20代になりトップチームに昇格する頃には、既に同じサッカー観、同じプレースタイルが完成しているんだ」

                           ーパコ・セイロールー

「特化」していること

当たり前ではあるが、サッカーに特化したトレーニングでなければならない

サッカーというゲームの性質を持ち、サッカーに起こりうる状況・環境・ルール・設定・傾向の中でトレーニングする必要がある

それは、サッカーのゲームに基づくものであり、レフェリーのジャッジや大会規定のボールに至るまで拘るべきである

ここでは、イニエスタがどのようなトレーニングを経て育ってきたかに関するインタビューを紹介しよう

「12歳でFCバルセロナに加わって、それ以降すべての練習は常にボールを使っていたし、U-12からU-19までずっと同じ方法だった。チームが変わっても、サッカーというゲームをプレーし続けることは変わらなかった」

                           ーパコ・セイロールー

「個別」であること

構造化トレーニングの根底にあるのは、トレーニング中に起こることのすべては「サッカー」という構造の中で「選手」という構造を作っていくことだ

つまり、選手ひとりひとりの構造化をトレーニングしていく

セイルーロは、練習はすべて、選手ひとりひとりの発達段階、性格、学習タイプ、どのような才能を持ち合わせているか等に合わせていくことを優先的に考えなければならないとしている

「プロセス」であること

プロセスというのはトレーニングにおける順序のことで、これがプランニングされてなければならない

独立した練習を単発的に行うことは選手の育成では「構造化」には役に立たない

トレーニングは、サッカーという構造の持つ特殊な複雑性のことを考慮しなければならない

つまり、コーンドリブル→対面パス→ポストシュート→ゲームというトレーニングは、それぞれ独立した練習なので全く意味がないのである

すべての構造は相互に関係し合い、複雑に絡み合っている。それぞれを切り離して鍛えることはできないのである

続いてVol.12では、選手一人一人にスポットを当てたコンディショニング管理と、それに伴う負荷の掛け方を解説していく



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