【書評】サッカー戦術本「サッカーとは何か」の解説と所感 Vol.12
浦和レッズ分析担当コーチ・林舞輝さんのサッカーの本質を問う書籍「サッカーとは何か」
本書では「戦術的ピリオダイゼーション」「構造化トレーニング」という2つのトレーニング理論に視点をあてて、サッカーとは何かという漠然としていて、抽象的で、壮大な問いを追求していく
Vol.1-4では、戦術的ピリオダイゼーションの「戦術的」の部分を解説してきた
Vol.5では「ピリオダイゼーション」の部分の入り口である意味や方法を解説した
Vol.10からは「構造化トレーニング」を解説し、構造化の意味や理解に迫った
Vol.11では、トレーニングメニューを組む際の4つの条件に焦点をあてて解説した
本記事Vol.12では、選手一人一人にスポットを当てたコンディショニング管理と、それに伴う負荷の掛け方を解説していく
3段階のコンディションレベル
パコ・セイロールはトレーニングを「選手個人」の為であると考え、一人一人のコンディショニングを管理し、分類してトレーニングすることを重要視した
そしてセイロールは、1シーズンでアスリートには3つのコンディションレベルがあるとした
・一般アスリート状態
一般的な負荷によりフィジカル面での向上が望まれる状態
・高アスリート状態
サッカー特有の技術や判断を伴い、サッカーというスポーツに適応できる状態
・最適アスリート状態
テクニック、判断、フィジカル、すべての面でその選手の最も高いパフォーマンスをサッカーの試合の中で発揮できる状態
シーズンを通して最適アスリート状態を維持することが理想ではあるが、サッカーのシーズンはとても長く、9ヶ月も10ヶ月もそれを維持することは困難である
従って、サッカー選手に必要なのは、高アスリート状態を維持することであり、シーズンの中で3ヶ月ほどの最も大切な時期に最適アスリート状態に持っていくことである
このように、構造化トレーニングでは、1年間で2つのレベルを行き来するようなコンディショニングを理想としてモデルを作ることが必要である
構造化マイクロサイクル
サッカーはシーズンを通して65-75試合を行う非常にハードなスポーツの為、コンディショニングを維持するには、緻密にオーガナイズされたトレーニングメニューをプランニングしなければならない
それを1週間単位で落とし込んだものが構造化マイクロサイクルである
先ずこの理論は1シーズンを3つの期間に分けて考えている
・プレシーズン(シーズン前)
・シーズン(リーグ戦、大会期間中)
・移行期(次シーズンまでの期間)
構造化マイクロサイクルでは、そのためのトレーニングの負荷を必要とされるアクションを考慮した以下の5種類の負荷に分けている
そしてこの負荷は、フィジカル面だけの負荷ではなく、頭やメンタル、社会的な負荷も考慮されている
構造化マイクロサイクルにおける5種類の負荷
・基礎負荷
このレベルの負荷はまだスポーツとは呼べない、一般的な基礎体力を上げるようなレベルの負荷である
例として挙げるならば、非常に低負荷の有酸素運動のような負荷である
・一般負荷
フィジカルのみにフォーカスし、ストレングスや持久力のような、単独の身体能力のみの負荷である
トラックを走ったり、決められた本数を決められた時間内で走るような、判断を伴わず頭を使わないで済むレベルの負荷とされる
・直接負荷
サッカー特有のプレー要素が入り、簡単な判断を必要とされる負荷である
例えば、グリッドの中でドリブルするサーキットトレーニングなどこれにあたる
・特有負荷
4対4のようなサッカー特有の要素に加え、認知・判断を伴うサッカーのGAMEに限りなく近い負荷である
・競争負荷
一番強度の高い負荷で、サッカーの試合で必要とされる要素を部分的に再現した状態でのプレーした際の負荷である
3/4コートでの11対11や、戦術的なルール・設定が入ったゲーム形式のトレーニングなど
この5つの負荷を3つのシーズン(プレシーズン、シーズン、移行期)に合わせて適切なタイミングでかけることが必要なのだ
そして3つのコンディショニングレベル(一般アスリート状態、高アスリート状態、最適アスリート状態)で最も相応しいレベルに持っていくのだ
次回Vol.13では、3つのシーズン(プレシーズン、シーズン、移行期)の中で、それぞれどんな準備・トレーニングが大切なのかを探っていく
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