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【書評】サッカー戦術本「サッカーとは何か」の解説と所感 Vol.10

浦和レッズ分析担当コーチ・林舞輝さんのサッカーの本質を問う書籍「サッカーとは何か」

本書のタイトルでもあるようにサッカーとは何なのか?という漠然としていて、抽象的で、壮大な問いに対し

“戦術的ピリオダイゼーション” “バルセロナ構造主義”

2つの視点からアプローチをかけて、ここから考えるサッカーの本質を追求していく

そしてその2つを、チームの最適化・個人の最適化に分けている

チームの最適化=戦術的ピリオダイゼーション

個人の最適化=構造化トレーニング

これまでVol.1-9では戦術的ピリオダイゼーション(チームの最適化)を解説してきた

そして本記事のVol.10から構造化トレーニング(個人の最適化)について解説していく

先ずは、構造化の意味や理解に迫る

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構造主義

「構造化トレーニング」とは、パコ・セイロールの唱えたトレーニング理論で、1994年からのFCバルセロナの黄金期を築いたトレーニングにおけるベースとなる理論である

もともとセイロールは陸上競技のコーチをしていたが、当時FCバルセロナの監督をしていたクライフに引き抜かれる形でサッカーの世界に入ったのだ

そんなセイルーロが理論構築と実践を繰り返し体系化させた「構造化トレーニング」だが、そもそも一体「構造化」とはなんなのか説明していこうと思う

構造主義:「全体は要素の総和ではないし、要素を合わせても全体にはならない」という考え方

物事を理解するときには、部分や要素を見るだけではなくその構造そのものを理解しなければならない

オーケストラの曲を楽器のパートごとに聴いていっても、誰も感動しないだろう

つまり、要素を合わせてもそれは全体にはならず、相乗効果などの要素間の関係を統合し、構造そのものを捉える視点がなければならないという方法論だ

サッカーに落とし込むと、ダッシュの練習、クロスの練習というように切り離すのではなく、あくまでサッカーというゲームの構造とそのダイナミクスそのものを捉えてトレーニングするという考え方である

アスリート×サッカー選手

セイロールは「アスリートというハードウェアを作り、そこに後からサッカーを外付けする」という育成方針を批判した

前述したように、サッカーはサッカーという構造の中でトレーニングすることが好ましいように、サッカー選手に最適なフィジカルコンディションを育てるのであれば、サッカーの中で起こるフィジカルコンディションを鍛えなければならない

そこに、そもそもアスリートである必要はなく、サッカー選手を目指すのであれば幼少期からサッカーのトレーニングをする必要がある

「以前考えられていたのは、最初にアスリートとして育て、どのスポーツに向いているかを探りながら選んでいくという形だった。つまり、もし持久力が必要なスポーツならば、グラウンドを走っても山を走っても砂浜を走っても同じように持久力を養うことができ、それによって鍛えられた持久力は将来どんなスポーツをやっても有効である、と。だが、それは嘘だ。それは、時間とエネルギーを無駄遣いしている。すべてのスポーツは、そのスポーツに特化したトレーニングが必要なんだ」

                           ーパコ・セイロールー

続いてVol.11では、トレーニングメニューを組む際の4つの条件に焦点をあてて解説していく


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