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会社売却のリアルガイド!起業家が伝えるM&Aで失敗しない売り方の流れ【戦略編②】

今回は一番相談が多いM&A戦略についてまとめます。
特に買う側ではなく売り側目線で会社売却の話になります。

僕自身、人材会社を起業して同業の上場企業へ売却しているので、その経験を元に何をどう考えてきたかをまとめますね。
※機密保持情報もあるので個別具体的な情報は差し控えます。


✅M&Aの統計

まずイグジットの一つとしてM&Aがありますが、件数としては年間4,500件前後みたいです。
IPOが100件ちょいだとしたらイグジットをしたい起業家からしたら数が多く狙いやすいと言えるでしょう。
公表していないM&Aを想定したら年間1万件はありそうですね。

ということはIPOを狙うよりもM&Aの方がハードルは低いと言えます。
なので、まずはIPO狙いでダメだったらM&Aは分かりやすい戦略の一つです。

中小企業庁でもM&Aの統計も出してます。

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shokei_ma/001/005.pdf


✅売るためのM&A戦略で考えるべきこと

会社売却を狙う際に考えておくことをまとめます。
まず会社を売るというのは経営の中で一番重要な決断になります。
これまでコミットしてきた時間、そして考え抜いて来た戦略、心を込めて口説いた仲間、心血を注いで作っていた決算書と離れることになります。

そのため会社を売るというのは、あなた起業家人生を売ると同じになるのでかなり慎重に動きましょう。

そもそもなぜ会社を買うの?

前提として相手側の立場になってなぜ会社を買うのか理解しましょう。
主に下記になります。
・事業シナジー
・買って事業スピードを早める
・上場企業なら評価を高めて時価総額を上げるため
・スモールM&Aならあなたのアクハイヤー

で理解しておくのはスピードで、買い手からしたらあなたの事業を買うか、それとも自社で内製して立ち上げた方が早いかを考えます。
特にあなたがスモールM&Aを狙う場合、あなたが一人で数年かけて立ち上げてきた事業を買い手の社員10名で3ヶ月で立ち上げられるケースも全然あります。
だとしたらわざわざ会社を買わなくて自社でやればいいだけです。

そのためスモールM&Aの場合、話に行くとノウハウを真似される可能性も高いので、どの事業規模で動くかは非常に重要な戦略になります。

また、スモールM&Aであるあるですがアクハイヤーも全然あります。
あなたを社員として採用したい場合は、あなたの会社ごと買っちゃうこともあります。この場合の交渉はちょっと特殊なので個別にご連絡ください。

なぜ売るのか?

そしてなぜ売るか?を深堀りしてください。
どう売るか?よりも、売った後に何をするか?の方が大事です。
これがないと売った後に未練タラタラになったり、何もやることがなく鬱になる起業家も見てきました。

下記の考えの方が多いので内省の記事含めて参考にしてください。
・シナジーがある会社でもっと事業を伸ばしたい
・株主からのイグジットプレッシャーがある
・まとまったお金で安定した生活をしたい
・次の起業のために資金とシリアルアントレプレナーの肩書が欲しい
・自分の特性がゼロイチのタイプで1→10は得意じゃないから任せたい
・正直疲れた。今の事業が伸び悩んできて他の事業をしていきたい。


どこに売るか?

売ることを決めたら、次に考えるのはどこに売るか?です。
◯◯億円で売りたいです!という話を多く聞きますが、いくらで売れるかはどこに売るかで金額が変わります。

なので、まずは売れそうな会社、狙いたい会社をリストアップすることをおすすめします。
例えばこんな感じで縦に会社名、横に検討する条件を書いて数字で重み付けをするとスッキリしますよ。
点数が高いところから攻めるとか色々戦略練れます。

いくらで売るのか?

それであなたの会社がいくらで売れるかの相場感はざっくり把握をしてください。
計算方法としてはDCF法とマルチプル法などありますし、金額は事業内容でかなり振れ幅もありますが下記が一般的と言われています。
これは自社に合った計算をして欲しいので専門家やM&A経験者に相談をするのがおすすめです。
※金額は交渉で全然変わるのでホントに参考までに。

  • 純資産(時価)+営業利益(3~7年分)

  • 時価評価後の資産から時価評価後の負債を控除した金額に、3年分程度の期待収益を加えた金額

例:
純資産: 1億円
営業利益(年平均): 2,000万円
期待収益(3年分): 2,000万円 × 3 = 6,000万円

■最終評価額
最終評価額 = 純資産 + 期待収益
最終評価額 = 1億円 + 6,000万円 = 1億6,000万円

実は僕はこれ以外の計算も加味しているので、どのような計算したかは個別に伝えるので連絡ください。

タイミングを見極める

売却のタイミングは非常に重要です。
市場の状況や経済環境、自社の成長ステージを考慮して、最適なタイミングを見定めましょう。
経済が好調な時や業界が成長している時期は、買い手からの需要が高くなり、好条件での売却が可能です。
基本、直近の営業利益を見られるので、事業が好調なうちに進めることをおすすめします。

✅仲介会社を使うメリット・デメリット

M&A仲介会社を使うかどうかはメリデメがあります。
結論、僕は知り合いの会社に売ったので仲介会社やアドバイザーを使わなかったのですが、活用した方が会社をよく見せてくれたりもして金額が上がりそうとも感じました。
ただ、細かい交渉ができない+知らない会社だと売った後のシナジーに不安があったりします。

なので、僕の意見としては取引先や事業連携している会社や、起業家先輩の会社は話も早いし交渉も楽なのでおすすめです。
メリットデメリットもまとめてみますね。

仲介会社を使うメリット

  1. 専門知識の提供:仲介会社はM&Aに関する豊富な知識と経験を持っており、適切な買収先の選定、価格交渉、契約締結までのサポートをしてくれます。

  2. 時間と手間の削減:M&Aプロセスは複雑で多くの時間とリソースを必要としますが、仲介会社を利用することで、経営者自身が取引に割く時間や負担が軽減されます。

  3. 多様なネットワーク:仲介会社は広いネットワークを持っており、買収の可能性がある企業や投資家にアクセスできます。自社だけでは見つけにくい買収先ともマッチングが可能。

  4. 売却価格の向上:専門的な交渉力や適切なバリュエーションができるため、売却価格が適切に設定されやすく、より良い条件での売却が期待できます。

仲介会社を使うデメリット

  1. コストがかかる:仲介会社に支払う手数料や成功報酬がかかります。成功報酬は売却価格の5~10%程度が一般的で、特に中小企業にとっては負担が大きいです。。

  2. 情報流出リスク:M&A仲介を通じて複数の買い手と交渉を行うため、自社の機密情報が意図せずに広まる可能性があります。信頼できる仲介会社を選ぶことが重要です。

  3. プロセスの長期化:仲介会社が関与することで取引プロセスが複雑化し、予想以上に時間がかかる場合もあります。

  4. 買い手との直接交渉が難しい場合がある:仲介会社を介することで、買い手との直接的なコミュニケーションが減る場合があります。けっこうここも大事で、結論トップ同士の相性もあるので直接交渉ができないと前に進まないパターンも多いです。

仲介会社に公平性はあるのか?

不動産もですが、M&A仲介会社が売り手と買い手の両方から手数料を取る場合、公平性について疑問を感じてます。
この二重手数料の構造は、このような懸念があるので注意してください。

  1. 利益相反の可能性:売り手と買い手の双方から手数料を受け取る場合、仲介会社がどちらの利益を優先するかが曖昧になりやすく、どちらか一方に有利な条件を提示する可能性があります。たとえば、早く成約させたいがために、売り手に不利な条件で合意させるとか。

  2. 仲介の目的とインセンティブ:仲介会社にとっては「成約すること自体」が最優先になりがちであり、成約までのスピードや売買価格よりも取引自体を成立させることが報酬に直結します。そのため、売り手にとって必ずしも最適な価格や条件での売却にならない場合もあります。

  3. 契約内容による透明性の確保:仲介契約の中には、売り手側に不利な要素が含まれることがあります。たとえば、一定期間内に売却できなかった場合のペナルティや、成約の有無にかかわらず仲介料を支払う必要があるなどです。こうした内容は売り手にリスクを与える可能性があります。

公平性を確保するための対策

なので、仲介会社を使うならこのあたりを押さえてください。

  1. 信頼性と実績の確認:公平で誠実な仲介会社を選ぶために、過去の実績や評判を確認することが大切です。他の売り手や買い手からの口コミや、M&A業界の第三者評価なども参考になります。

  2. 手数料体系の確認:二重手数料制ではなく、一方のみに手数料を設定する仲介会社も存在します。仲介会社との契約時に、どのような手数料体系が適用されるかをよく確認し、納得した上で契約するのが重要です。

  3. 交渉や条件設定に慎重になる:仲介会社に完全に依存せず、自社としても交渉に関与し、条件の確認を行う姿勢が大事です。契約書を外部の専門家にチェックしてもらうのも良い方法です。

適切なアドバイザーを選ぶ

M&Aプロセスは複雑で、専門的な知識が必要です。
仲介会社になるM&Aアドバイザーや弁護士、会計士など、経験豊富な専門家をチームに加えることで、スムーズに進行させ、適切な価格交渉やリスク管理を行うことができます。
僕は特に実際にM&Aをした起業家に相談することをおすすめです。
なぜなら一番全体を見てきて良いところやリスク管理を知っています。

アドバイザーももメリデメあるのでまとめますね。

アドバイザーの利点

  1. 売り手側に立った支援:アドバイザーは通常、売り手のみから依頼を受け、売り手側の利益に専念します。利益相反のリスクが少ないため、公平で信頼性の高いアドバイスを得やすいです。

  2. 専門的な戦略的サポート:アドバイザーは財務や法務、税務などの専門的な知識を駆使し、売却戦略の立案から交渉までを支援します。仲介会社が「成約」自体を重視するのに対して、アドバイザーは「売り手にとって最適な条件での成約」を目指します。

  3. 交渉力の強化:アドバイザーは売り手の交渉力を強化する役割も担い、売却価格や条件面でのサポートを提供してくれます。特に、M&A経験が豊富でない売り手にとって心強いサポートとなるでしょう。

アドバイザー利用の際の留意点

  1. コスト:アドバイザーのサービスは仲介会社よりもコストが高くなる場合がありますが、その分、専門的かつ売り手に有利なサポートが期待できます。ここも天秤ですね。

  2. 仲介会社との違い:アドバイザーは買い手の探索や交渉に直接関与するわけではないことが多く、特定の条件に応じて仲介会社と併用する必要があるかもしれません。

✅M&Aの進め方

続いて売却までの進め方になります。
僕の進め方は下記のような形でした。

候補社選定と交渉

デューデリが始まるまでは複数社にあたれるので、売りたいという意思表示をして必ず1社ではなく複数社に話に行ってください。

NDAを結んで、財務諸表を出せばざっくりな金額が出てくるので交渉しましょう。
交渉内容は金額やロックアップあるかなしかなどあるので、漏れ無く詰めてください。
ちなみに僕は引き継ぎサポートはありましたが、ロックアップ無しで交渉してます。

意向表明

話が進むと買い手企業が売り手企業に対して事業の譲り受けや会社買収の意思を示すために提出する意向証明書を発行してもらいます。

ここに事業シナジーとか金額やクロージングまでのスケジュール感が書かれています。
これに同意したらデューデリが終わるまでは他の企業とは交渉ができなくなるので注意です。

デューデリジェンス

買い手企業から士業の専門家が来て、あなたの会社の隅々まで調査されます。
事業概要から、法務リスク、人事労務リスクなど幅広く資料の提出が必要になります。

僕は上場企業に売却をしたのですが、非上場企業の場合だとちょっと変わるかもです。

クロージング着金

デューデリが終わり問題なければクロージングになります。
僕の場合、トップ同士の口頭合意してからクロージングまで6ヶ月ほどかかりました。

✅リスクとして考えておくこと

会社を売却してみてリスクとして感じたことをまとめます。

破断する可能性はある

当たり前ですが、破断する可能性は全然あります。
買い手からするとデューデリで想定外のリスクが発見されたとか、外部環境が変わり資金を準備できなくなったなど、買わない理由がゴロゴロ出てきます。

僕もクロージングまで6ヶ月ほどかかったので、途中で外部環境が変わりやっぱり買いませんと言われるリスクは考えていました。
意向表明から後は1社としか交渉できなくなるので、破断したらまた別会社と意向表明からやり直しになります。

その間の事業のモチベーションをどう保つかを考えておくのをおすすめです。

社内のハレーション

社員がおらずスモールM&Aなら気にする必要はありませんが、
そこそこ大きな売却を狙うなら社内にも目を向けることが必要です。

と言うのもこれまで頑張ってきた社員からすると会社売却は寝耳に水の話です。
両手を広げて「やった!」というかは、「これまで信じてきたのに。。」というマイナスになる声が多いことでしょう。

なので、社員にどのようなコミュニケーションを取るかが、売却後にスムーズな引き継ぎをするために大事なわけです。

ちなみにいつ社員に話すかは、クロージングしたその日に話すか、売却前に話すがありますが、僕は売却前に話しました。
これまで頑張ってきた社員が今後もスムーズに仕事ができるようにサポートしたかったし、何より僕が会社売却を決めたらなら隠さず正直に伝えることが大事だと考えました。

ここも社員との関係性もあるし、いつ話していいかは買い手との相談もあるので一概に決められませんが、仲間や社員がいるなら是非サポートできるようなに考えてください。

企業価値の過小評価

売却の際に企業価値が過小評価され、想定よりも低い価格での取引となるリスクはあります。
これに対処するには、適切な評価基準や専門家の助言を得て、正確な企業価値を算出してください。

秘密情報の流出

売却プロセス中には多くの企業内部の情報が公開される可能性があり、機密情報が意図しない相手に渡るリスクがあります。
秘密保持契約(NDA)の締結や、情報開示の範囲を制限するなどの対策が必要です。
とは言っても、情報を出さないと前に進まないところもあるので、公開する企業は数社に絞るようにしてください。

買い手の資金不足や信用リスク

買い手が想定通りに支払いを完了できないリスクもあります。
買い手の財務状況や資金調達能力を十分に調査し、支払い条件を明確にしておくことが重要です。

 文化や経営方針の不一致

売却後、買い手との文化や経営方針の違いが原因で、従業員の士気が下がったり、事業運営がうまくいかなくなるリスクがあります。
買い手の文化や経営スタイルとの適合性は時間をかけてもすり合わせすべきです。

✅※補足:これから会社売却狙いで起業する方へ

これから起業する方向けですが、創業時から売却狙いで起業するのも全然ありだと思います。
そのために必要なことをまとめます。

社員にも株を渡す

初めから会社売却を狙うなら社員にも株を渡して上げてください。
※もしくは会社売るなら報酬を渡す。

大きな売却を狙うなら社員の力を必須です。
で、社員に株を渡さずに自分100%の起業家に優秀な人材が集まるのは見たことがありません。

なぜならば起業は所詮あなたのエゴなので利己的な考えはすぐにバレます。
特に優秀な人材ほどすぐに見抜くので、いくら表向きに素晴らしいビジョンを語ったとしてもあなたに見向きをしません。
で結果、社員も定着せず成長できず会社売却も見向きもされず僕に相談が来る方がいらっしゃいます。

なので創業時から売却狙いで起業するなら下記がおすすめです。
・社員を雇わず業務委託の組織を作り会社を売る※スモールM&Aになりがちで良ければ
・社員にも株を渡すなり報酬を還元出来る仕組みにする

人系のハードシングスは早めに経験する

そしてもう一つは、人系のハードシングスは早めに経験することです。
嬉しいことに僕をロールモデルと言ってくれる方も増えてきて、売った後に同じように起業家支援やエンジェル投資を考えていると話を聞くのですが、正直ハードシングスを経験してない起業家は弱いです。

特に人にまつわるハードシングスです。
組織崩壊、横領、労基に駆け込まれるなど経験している起業家ではないと起業家支援はできないと考えてます。

なので、自分の会社のうちに小さくてもいいので、まずは頑張って社員を採用してハードシングスを経験して成長しましょう。
ハードシングスについては下記の記事を参考にしてください。

✅最後に

繰り返しですが、会社を売るというのは経営の中で一番重要な決断になるので慎重になりましょう。
また、選択肢として会社売却ではなく事業売却の方向もあるので、事業状況で柔軟に考えてみるのもおすすめです。

僕は幸せなM&Aだったので少しでも同じように会社売却を考えている方の力になれればと考えています。
経験シェアは出来るので、何かあれば下記に連絡ください。


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歌川貴之@企業顧問/シリアルアントレプレナー
最後まで読んでいただきありがとうございます! モチベーションになるので応援よろしくお願いします。