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【Twitter連携企画】クイズ★進振りケース(CASE07)

 オンライン授業が始まって早1ヶ月。新しい生活様式での「大学生活」に慣れてきた人も多いのではないだろうか。しかし一方で、定期試験や成績評価、そして特に、進学選択、いわゆる「進振り」には不安を抱えているだろう。コロナ禍の影響を完全に取り除くことはできないが、我々にできるのは進学条件を今一度確認し、問題なく志望学部・学科に進む準備をすることだ。
 UT-BASE公式Twitter( https://twitter.com/UtBase )で行われている、進振りのあれこれを具体的な例を用いて理解する「クイズ 進振りケース」。第7回はついに、進振りの醍醐味とも言える「追い出し」についての出題だ。解説もあるので、ぜひ参考にしてみてほしい。なお、断りの無い限り、既習外国語(英語)と初修外国語を選択した非TLP生を想定しているので、これに該当しない人は適宜、『履修の手引き』を見て確認してほしい。

CASE07 【追い出しの基礎】

【問題】
理科X類の場瀬(ばせ)さんの、1Aセメスター終了時での総合科目A~F系列の成績表は画像の通りであった。彼女の成績表をみて、このツイートに続く選択肢から、「追い出された」科目を過不足なく含むものを選ぼう。

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【選択肢】
① D1・D2
② D1・E1・F2
③ E1・F1
④ E1・F2

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知識の確認

 今回は進振りという戦争の醍醐味とも言える「追い出し」を紹介する。これを知らないと、厳しい進振り戦争を勝ち抜くのは困難になるだろう。初めて聞いた、全く分からない、という人もいると思うから、丁寧に説明していく。なお、今回は基礎的なことに説明をとどめるので、例外などは極力排除する。

■追い出しの意味
 まずは東大公式のQ&A(http://www.c.u-tokyo.ac.jp/zenki/sentaku2018-FAQ.pdf、アクセス日2020年6月13日)より引用する。

『履修の手引き』に記載のあるとおり、重率1で指定されている単位数以上に単位取得(基礎科目)もしくは履修登録(展開・総合科目)した場合に、当該科目の評点と単位数を重率0.1として基本平均点に算入するものです。(基礎科目の余剰科目については、履修登録だけして単位取得しなかった場合は基本平均点に算入されません。)
点数が低い科目を重率1から重率0.1にしたい場合は、指定された単位の枠組み(科類の要件/単位取得条件を含む)の中で、より上位の点数を取得することで『追い出し』が可能です。詳しくは窓口までお問い合わせください。

 この説明で追い出しの森羅万象を理解した人は一国の大臣クラスなのでこの時点でブラウザバックして大丈夫だ。一方、この説明で少しでも「??」となった人はこの続きを読むことをおすすめする。

 極めて平易に説明しよう。「追い出し」とは、失敗した科目のダメージを最小化するために、別の科目を使ってその科目を”外野”に追いやることである。基本平均点の計算には、重率が1で計算される枠(“内野”)と重率が0.1で計算される枠(”外野”)が存在する。“外野”にいる科目は基本平均点に及ぼす影響が小さいので、もし“内野”に、基本平均点に悪影響を及ぼすような科目がいたら、どうにかしてその科目を“外野”にどかしたいだろう。そこで行われるのが「追い出し」である。追い出しの際には、“内野”は定員で満たされていないといけないという決まりがあるので、不都合な科目を“外野”に追い出した分、別の科目がその“内野”の空いた枠に入らなければならない。その時、まさしく、点数の高い科目が点数の低い科目を玉突きに「追い出す」という動作が実現するのだ。

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この画像は“内野”がすでに定員で満たされている場合だが、次のように、“内野”の補充と追い出しを同時に行うこともできる。

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<参考>
重率:「クイズ 進振りケース CASE04」(https://note.com/ut_base/n/n5e3fc7443fb4

■追い出しの方法
 追い出しの基本的なイメージを掴んでもらったところで、具体的に、どのようにすれば追い出しができるのかを説明しよう。なお、上記では便宜上「科目」と表記したが、追い出しは単位ベースなので、以下では「単位」と記述する。分かりにくければ、適宜「科目」に読み替えてほしい。
 追い出しは基本平均点の計算(CASE04, 05で説明した)と同様に、どの単位が重率1で計算され、どの単位が重率0.1(または0)で計算されるのかを「科目の枠組み」(単位の枠組み)ごとに確定していく作業である。ここでいう「科目の枠組み」は正式な用語ではなくこの解説中で便宜的に用いる言葉だが、『履修の手引き』9ページの各科類の枠組みに対応していて、例えば、「既習外国語」、「総合科目A~D系列」、「社会科学」といったものである。総合科目の「科目の枠組み」は科類ごとに違うので注意してほしい。

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この画像の展開科目と主題科目を除くそれぞれの赤枠に記載された単位数(条件・注も含む)が『履修の手引き』55ページの「重率1の枠」に対応している。

 追い出された科目を確定する作業手順としては
①上記の「科目の枠組み」ごとに、9ページに書かれている条件(例:「2系列以上にわたって6」、「9(注2)」)を満たしながら、成績順で、どの単位が重率1で計算されるかを確定する。※成績順で処理される。履修した時期の早い順でないので注意。
②そして、それ以外の残った単位を「追い出された」単位とする。
③追い出された単位の重率は、『履修の手引き』55ページの定めによる。
たったこれだけだ。
 単純な話で、理系の総合科目A~D系列を例にするならば、総合科目A~D系列の単位から、「2系列以上にわた」って成績上位6単位を選び出し(…重率1)、その後もし余った単位(科目)があれば、それは追い出されたと(…重率0.1)考える、というだけだ。
 以上まとめると、「重率1の枠」を、「科目の枠組み」別・条件付きで成績順に埋めて、その枠からあふれた単位を「追い出された」単位とするのである。したがって、追い出しをするには、「科目の枠組み」ごとに条件を満たしつつあふれた単位を作り出せばいいことになる。

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 逆に、この「科目の枠組み」をまたいで追い出しをしたり、個別に付された条件を無視して追い出したりすることはできない。

 また以上のことから、「科目の枠組み」内で余る単位の発生する余地がない、基礎科目の「初修外国語」や「既習外国語」、「初年次ゼミナール文科」などは追い出しをすることが制度上不可能であるとわかる。(再履修はできる。)例えば、既習外国語は「英語一列①」、「英語一列②」、「英語二列」の計5単位を過不足なく取得することが求められていて、逆に5単位より多くを取得する術はない。このような科目は、(落単して再履修した場合を除いて)一度取った点数が進振りにそのまま使用されることになるので、できるだけ高い点数を狙った方がよい。

■追い出しの意義
 当然、追い出しに成功すれば基本平均点は高くなる。今まで基本平均点を下げてきたできの悪い科目を良い成績の科目で置き換えるのだから、その効果は絶大である。しかし、追い出しに成功した利益がそのまま全部、基本平均点に反映されるわけではないことには注意が必要だ。というのも、追い出しは、悪い成績の科目を「より影響の少ない」“外野”に追いやることであり、悪い成績自体を“抹消”するものではないからだ。“外野”に重率0.1として残った科目は最後まで悪影響を及ぼし得る。

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 基本的に、追い出された科目の重率は0.1であって0ではないから、その科目の点数が基本平均点より低ければ、全体の平均点を押し下げる働きをする。そのため、追い出しで点数を上げた分がほんの少しだけマイナスされる。よく、「追い出しできるから適当に履修して無理だったら撤退すればいいや~」と言っている人を見かけるが、このように、少しだけ損をしてしまうことは留意すべきだろう。

☕Coffee Break ~追い出しの達人~
 文系のYさんは、総合科目A~F系列と任意のL系列で計14単位履修し、各50点であった。それ以外の科目は計36単位で、各80点であった。Aさんは追い出しに勤しみ、総合科目L、A~F系列の14単位を、各80点で全て追い出すことに成功した。もし、追い出された科目の重率が0ならば、追い出された科目は考慮しなくていいので、算入される50単位全てを80点でそろえたYさんの基本平均点は80点である。一方、追い出された科目の重率が0.1である場合、Yさんの基本平均点は、
  ( 80点 * 50単位 * 1 + 50点 * 14単位 * 0.1 ) / (50単位 * 1 + 14単位 * 0.1 )
  ≒ 79,18点
である。重率が0.1であるがために、約0.8点も基本平均点が下がってしまった。0.8点なのでほとんどの場合は大した影響はないが、これが進振りで致命傷になる場合もないわけではない。

問題の解説

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【選択肢】
① D1・D2
② D1・E1・F2
③ E1・F1
④ E1・F2

【解答】

【解説】
 さて、もう一度、東大公式のQ&A(http://www.c.u-tokyo.ac.jp/zenki/sentaku2018-FAQ.pdf、アクセス日2020年5月10日)を読んでみよう。

『履修の手引き』に記載のあるとおり、重率1で指定されている単位数以上に単位取得(基礎科目)もしくは履修登録(展開・総合科目)した場合に、当該科目の評点と単位数を重率0.1として基本平均点に算入するものです。(基礎科目の余剰科目については、履修登録だけして単位取得しなかった場合は基本平均点に算入されません。)
点数が低い科目を重率1から重率0.1にしたい場合は、指定された単位の枠組み(科類の要件/単位取得条件を含む)の中で、より上位の点数を取得することで『追い出し』が可能です。詳しくは窓口までお問い合わせください。

 今までの説明を理解できていれば、この文章の意味もよく理解できるだろう。それでは、実際に問題を解いていこう。

 追い出された科目が何かを確定するための手順は、
①上記の「科目区分」ごとに、9ページに書かれている条件(例:「2系列以上にわたって6」、「9(注2)」)を満たしながら、成績順で、どの単位が重率1で計算されるかを確定する。
②そして、それ以外の残った単位を「追い出された」単位とする。
③追い出された単位の重率は、『履修の手引き』55ページの定めによる。
の簡単3ステップであった。本問の場瀬さんの場合はどうなるだろうか?

 まず、「科目の枠組み」総合科目A~D系列であるが、これには「2系列以上にわたり6単位」の条件が付されているので、この条件の下で成績上位6単位を確定する。といっても、場瀬さんはまだD系列の授業を4単位履修しただけだから、「重率1の枠」(6単位)が満たされてない以上、また、「科目の枠組み」をまたいで、E・F系列から補充することなどはできないから、追い出しは発生しえない。

次に、「科目の枠組み」総合科目E~F系列であるが、これには「2系列にわたり6単位」の条件が付されているので、この条件の下で成績上位6単位を確定する。場瀬さんの成績表を基に、総合科目E・F系列の科目を成績順に並べ替えると(下の画像参照)、成績上位6単位の内にE系列とF系列の2系列が含まれていることが分かる。したがって、条件を満たしている。すると、この時点でまだ残っている2科目は「追い出された」科目である。
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したがって、追い出された科目は「E1」と「F2」の2科目である。
(終)

 以上のことは基本的にほぼ全て『履修の手引き』に掲載されている。万が一履修条件の抜け漏れがあった場合は、すぐに手引きを参照しよう。特殊な成績計算方法を採用している学部・学科もあるため、各位志望に合わせてチェックしてほしい。
 また、進振りに関する詳細な情報を掲載しているUTaisaku-Webや成績を入力すると自動で基本平均点を計算してくれるUTESなどのサイトを活用するのも有効だろう。
もちろん、UT-BASEでも進振りに関する耳より情報をご提供していく予定なので、参考にしていただければ幸いである。次回も引き続き「追い出し」の問題を出題する。追い出しに失敗するとどうなるのかを考えてみよう。お楽しみに!

補充問題

【CASE07 補充問題】
文科N類のZ君は、「中国語初級演習①」が50点だったので、追い出しをしたいと思っている。これを追い出すには、次のうちどれを行えば良いか。
①「中国語初級演習①」をもう一度履修して51点以上を獲得する。
②「中国語初級演習②」で51点以上を獲得する。
③「アラビア語初級(第三外国語)」で51点以上を獲得する。
④そもそも追い出しできない。

【解答解説】
 『履修の手引き』9ページによると、文系の総合科目L系列に関する「科目区分」は以下の画像の通りであって、総合科目L系列には(注2)という条件も付されていることが分かる。(注2)は「L系列の9単位は、任意の科目2単位、既修外国語として履修するものと同一言語の科目3単位、初修外国語として履修するものと同一言語の「○語初級(演習)①・②」4単位を取得する(p. 25)。ただし、英語・日本語以外を既修外国語として履修する場合や既修・既修の組合せで外国語を履修する場合は、選択した外国語により、取得する科目と単位数が異なる場合がある(p. 25)。」であるから、「重率1の枠」において、「英語中級・上級」、「2外初級(演習)①・②」の計7単位は固定されていることが分かる。

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 枠に科目が固定されている以上、その科目の追い出しはその科目を以てのみしか行うことができない。そして、「2外初級(演習)①・②」は一度単位を取得してしまったら二度と履修することができなくなるから、追い出しができないこととなる。よって④が正解。なお、①は「追い出し」と「再履修」を混同しているが、再履修は、成績が「不可」または「欠席」の科目の成績を上書きするものなので、追い出しとはその性質を異にするものである。
<参考>
再履修:「クイズ 進振りケース CASE06」(https://twitter.com/UtBase/status/1270884563477082113

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