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【Twitter連携企画】クイズ★進振りケース(CASE03)

 オンライン授業が始まって早1ヶ月。新しい生活様式での「大学生活」に慣れてきた人も多いのではないだろうか。しかし一方で、定期試験や成績評価、そして特に、進学選択、いわゆる「進振り」には不安を抱えているだろう。コロナ禍の影響を完全に取り除くことはできないが、我々にできるのは進学条件を今一度確認し、問題なく志望学部・学科に進む準備をすることだ。
 UT-BASE公式Twitter( https://twitter.com/UtBase )で行われている、進振りのあれこれを具体的な例を用いて理解する「クイズ 進振りケース」。第3回は進振りの次に待ち構えている関門についての問題だ。解説もあるので、ぜひ参考にしてみてほしい。なお、断りの無い限り、既習外国語(英語)と初修外国語を選択した非TLP生を想定しているので、これに該当しない人は適宜、『履修の手引き』を見て確認してほしい。

CASE03 【前期課程修了要件の充足】

【問題】
入学して2年目、理科三類の君茶さんは進振りで医学部医学科に内定し、このまま進学するつもりだが、取得単位数が不安の種だった。彼女の2Aセメスター終了時の成績表は画像の通りだった。君茶さんの今後として正しいものはどれか。

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【選択肢】
① 医学部医学科に進学
② 内定を維持で留年
③ 内定取り消し・降年
④ 内定取り消し・留年

Twitterでの出題はコチラ

知識の確認

 前回、「進学選択が可能となる条件」と「前期課程修了要件」の違いを説明したが、今回はその「前期課程修了要件」についてだ。前回の記事をまだ読んでいない人はココをクリックして先に読んでほしい。

 さて、空恐ろしいことではあるが、履修を失敗したり、予定外の落単をしたりして「前期課程修了要件」(『履修の手引き』9ページ)を満たすことができないと、それはそれは大変な目に遭う。実際に、自分もそのような人を知っており、その人はひどく悔やんでいる様子だった。そんなことにならないに越したことはないが、もしものために、そして、そうならないためにも、留年と降年についてみていこう。

■留年と降年の概要
 留年と降年の違いは何であろうか?その一番の違いは、「どのタイミングから学校生活をやり直すか」である。

留年:自分が今いるその学年をもう一度繰り返すこと。自主留年と強制的な留年がある。
降年:学年が強制的に1年生に戻され、1Aセメスターからやり直しになること。自主的に降年することも一応は可能。

スライド11

 進振りで内定先が決まってもまだ留年の危機は存在する(図のロ)。進振りで失敗した(…内定先が決まらなかった、進振りにそもそも参加できなかった)ら降年だ(図のハ)。

 それでは、以下では留年や降年について、それぞれ詳しくまとめていこう。便宜的に〔自主的なもの〕と〔強制的なもの〕に分けて説明するが、両者の内容が若干被ることがある点についてはご了承いただきたい。

■留年・降年の条件
 ここでは分かりやすさを優先して要素を捨象し、簡単に留年や降年の条件を書いていく。例外的な条件は省くので、『履修の手引き』の44・45ページを見てほしい。

〔自主留年
・1年次は3月下旬に「自主留年届」を教務課に提出
・2年次は1月上旬に「進学内定辞退届」を教務課に提出
・上記の場合、当該2年生は当然に進振りには参加不可
・進振り未内定の2年生は自主留年できず、降年

〔強制的な留年
・1年次での休学(例外について但し書きあり。詳細は『履修の手引き』を参照)
・2年次のAセメスター・A1タームでの休学(但し書き等あり。詳細は『履修の手引き』を参照)
・2年次において「前期課程修了要件」(『履修の手引き』p.9)を満たすことができないことが確定したタイミング

 3点目が全員に共通して言える一番気を付けなければならないところである。これを事故で満たせずに撃沈していく東大生が毎年と言ってよいほど存在する。教務課もこの点について口酸っぱく注意喚起をしている。
<参考>
「【注意喚起】Aセメスター/A1・A2 タームの履修登録について」, 2019 年 10 月 3 日, 教養学部前期課程教務課, https://www.c.u-tokyo.ac.jp/zenki/news/kyoumu/Caution_2019AA1A2_risyu_2nd_grade.pdf, アクセス日:2020年5月22日)

〔自主的な降年
 本来、自主降年という制度はないが、条件を満たすことで半ば自主的に降年することもできる。
・「進学選択が可能となる条件」(『履修の手引き』8ページ)を意図的に満たさない
・2年次の4~8月の期間中で休学し、その後復学した
・進振り時に「不志望」を選択した

〔強制的な降年
2Aセメスター開始の時点まで…
・「進学選択が可能となる条件」(『履修の手引き』8ページ)が満たせない…つまり、2Sセメスター終了時点でこの条件を満たすことができないことが確定した時点で降年が決まる。なお、この時点では『履修の手引き』9ページの「前期課程修了要件」を満たしている必要はない。
・進振り先が内定しなかった…進振りで志望した進学先に全部”お祈り”された場合も降年する。
・進振り先の内定取り消し(不正行為を行うなど)…内定後、2Aセメスターの間に不正行為をしてしまったら降年する。

なお、前期教養学部での在籍期間は、休学期間を除いて4年間を超えることができないので、それを超えてしまう場合は留年・降年にはならずに退学になる。
<参考>
『履修の手引き』5ページ

■留年・降年するとどうなるか
 留年と降年の要件が分かったところで、それでは、留年や降年の効果はどのようなものであるか。

留年の効果〕
・留年した学年を、最初からやり直す。進振りはやり直し
・今までの成績は保存・引継。したがって、以前に単位を取得した科目は再履修できない。
・留年以前の総合科目・展開科目・主題科目での「欠席」は、進振りではノーカウント。ただし、留年前の2Aで履修した基礎科目、総合科目・展開科目の単位は進振りでカウントされる。(『履修の手引き』56ページ)
・別クラスに編入され、新しい学生証が交付される。
・留年前に不可・欠席だった科目はUTASで履修登録をすることで再履修できる。
・再履修は新たなクラス番号に基づいて、クラス指定された科目を受講する。そのため、他クラス聴講に該当せず、不可・欠席の科目の再履修の点数の上限は100点
・なお、英語二列・基礎実験の再履修は別途確認事項が存在。『履修の手引き』を要確認
<参考>
『履修の手引き』37ページ(再履修)

降年の効果〕
・1年のAセメスターからやり直す。進振りはやり直し。年度途中で同クラよりも学年が下がる。
・今までの成績は保存・引継。したがって、以前に単位を取得した科目は再履修できない。
・ただし、降年以前の総合科目・展開科目・主題科目での「欠席」は、進振りではノーカウント(『履修の手引き』56ページ)
・1Aと2Sで足りない単位の補充や追い出しを行い、進振り点を底上げする。
・別クラスに編入され、新しい学生証が交付される。
・降年前に不可・欠席だった科目はUTASで履修登録をすることで再履修できる。
・再履修は新たなクラス番号に基づいて、クラス指定された科目を受講する。そのため、他クラス聴講に該当せず、不可・欠席の再履修の点数の上限は100点
・なお、英語二列・基礎実験の再履修は別途確認事項が存在。『履修の手引き』を要確認。


☕Coffee Break~前期課程の長老を目指す~
 学生時代は社会進出までの「モラトリアム」であるとか、「人生最大の夏休み」とか言われる。東大生からしてみれば大学生活はむしろ多忙で、「何が夏休みだ!」という感情に襲われるだろうが、どうにかしてその「夏休み」とやらを伸ばし、様々なことにトライすることはできないだろうか?学籍を維持したまま後期課程に進学できることを条件に、前期課程に最長で何年いることができるか計算してみよう。
 上述の通り、前期課程は休学期間を除いて最長で4年間在籍することが可能である。ひっくり返せば、休学を経れば4年以上在籍できることになるが、休学は4年の長さまでに限定されているので、この枠の中でモラトリアムすることになる。では、具体的に見ていこう。
 2020年4月 現役で一般入試を合格し入学。19歳。
→2020年4月 「初年次特別休学」(cf. FLY Program)を利用して1年間休学する。これは例外的に休学期間には算入されない。<在学期間:0年、休学期間:0年>
→2021年4月 自動的に留年になり新しいクラスメイトができる。<在学期間:1年>
→2022年9月 成績不振から進振りを断念し降年が確定する。
→2022年10月 1年生として新クラスに編入、春を迎える。<在学期間:2年>
→2023年4月 2年生。国家的大事業に参加。4年間休学。<休学期間:4年>
→2027年4月 2年生として復学。
→2027年秋 進振り先が内定するも第1志望ではなく不満を抱く。
→2028年1月 内定辞退、自主留年を行う。<在学期間:3年>
→2028年4月 2年生として再スタート。新しいクラスメイトと出会う。
→2028年秋 進振りで無事第一志望の医学部医学科に内定する。
→2029年3月 東京大学教養学部前期課程を修了。27歳。<在学期間:4年>
 前期教養学部には、再入学することなく最大で9年間学籍を置くことができる。なお、後期課程でも4年間(医学部医学科・農学部獣医学課程・薬学部薬学科は8年間)東大に居座ることができ、さらに、医学部医学科・農学部獣医学課程・薬学部薬学科は追加で2年まで休学できるので、上記の例の学生はさらに最大10年間、東大に居座ることができる。
<参考>
『教養学部便覧Ⅰ(前期課程)』より「東京大学学部通則」)

問題の解説

さて、茶番は置いておくとして、今日の問題の登場人物、君茶さんはどうなってしまうのか、解説していこう。
【問題】

スライド10

【選択肢】
① 医学部医学科に進学
② 内定を維持で留年
③ 内定取り消し・降年
④ 内定取り消し・留年

【解答】

【解説】
 画像と「前期課程修了要件」(『履修の手引き』9ページ)を照らし合わせていくと、合計取得単位数は足りているが、総合科目A~D系列の要件「2系列以上にわたり6」が満たされていないことに気がつくだろう。君茶さんは総合科目A~D系列ではA系列の科目でしか単位を取得していない。これでは1系列になってしまう。それだけではない。君茶さんの単位数を見ていくと、全ての科目区分で「前期課程修了要件」の表に記載された最低単位数しか履修していないことが分かる。「基礎科目・展開科目・総合科目・主題科目の最低単位数の他に取得しなければならない単位数」である2単位がどこにもないことに気が付くだろう。すなわち、全体の単位数も不足しているのだ。残念ながらこれは、履修ミスにより「前期課程修了要件」を満たせていない例だ。
 したがって、君茶さんは医学部医学科への内定が取り消され、総合科目B~D系列で最低1単位と「基礎科目・展開科目・総合科目・主題科目の最低単位数の他に取得しなければならない単位数」の2単位(※)を取るためだけに留年し、再度進振りに挑まなければならない。
(※)ここには、総合科目B~D系列の取得により追い出された総合科目A系列、あるいは総合科目B~D系列のその科目自身の単位数を含めることができる。(この説明がややこしいのは特殊な追い出しを理解しないと分からないと思うので今のところは無視して、単に、余分に撮った単位分がその他に必要な2単位に充当できると思っていてください。)したがって、総合科目B~D系列で2単位を取得するだけで全ての条件を満たすことができる。

 なお、以下に補充問題として、文科一類の「前期課程修了要件」の問題を用意した。文科一類以外の人も余裕があれば『履修の手引き』片手に解いてみてほしい。 
(終)

 以上のことは基本的にほぼ全て『履修の手引き』に掲載されている。万が一履修条件の抜け漏れがあった場合は、すぐに手引きを参照しよう。特殊な成績計算方法を採用している学部・学科もあるため、各位志望に合わせてチェックしてほしい。
 また、進振りに関する詳細な情報を掲載しているUTaisaku-Webや成績を入力すると自動で基本平均点を計算してくれるUTESなどのサイトを活用するのも有効だろう。
もちろん、UT-BASEでも進振りに関する耳より情報をご提供していく予定なので、参考にしていただければ幸いである。次回のクイズは「重率と基本平均点」をテーマに出題する。お楽しみに!

補充問題

【CASE03 補充】
文科一類の「前期課程修了要件」に関する記述として最も正しいものはどれか。

基礎科目の社会科学において「前期課程修了要件」を満たすには…
① 「法Ⅰ」、「法Ⅱ」、「政治Ⅰ」、「政治Ⅱ」の全部で8単位を取らなければならない。
② 「法Ⅰ」、「法Ⅱ」と「政治Ⅰ」または「政治Ⅰ」、「政治Ⅱ」と「法Ⅰ」の6単位は最低でも取らなければならない。
③ 「法Ⅰ」と「法Ⅱ」または「政治Ⅰ」と「政治Ⅱ」のセットで、4単位は最低でも取らなければならない。
④ 「法Ⅰ」と「政治Ⅰ」の4単位は最低でも取らなければならない。

【解答解説】
 基礎科目の社会科学に係る「前期課程修了要件」は、「『法Ⅰ、法Ⅱ』4、または『政治Ⅰ、政治Ⅱ』4を含め8」である。したがって、これに符合するのは③しかない。このように、科目区分の中に取得条件が付されているものがあるので注意したい。特に総合科目、文系の社会科学と人文科学には注意が必要だ。

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