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【〇〇ゼミ】文系のゼミたち、何が違うの?(1)

 サークルやバイトと並んで大学生活に大きく関わる「ゼミ」。学部が決定してから参加するイメージがあるが、実は1・2年生も入ることができる。堅苦しいものだと感じる人もいるかもしれないが、個性溢れる魅力的なゼミが東大には多く存在する。今回は、文系のゼミ紹介の第一弾。

〜サークル形式〜

・瀧本ゼミ

 創設者は京大准教授の故瀧本哲史氏。政策分析と企業分析のパートがある。前者では論文調査と専門家への取材により、「世の中に知られていないが、実は重要である問題」を分析し、解決策を立案・実行する。後者の主な活動は、各メンバーが好きな上場企業を選び、「買い」か「売り」か判断し相手を説得するゲームと銘柄の発表。「リサーチ→投資判断→発表→議論→再構築」の過程をプロのもとで行う中で卓越した意思決定能力が身につく。東京の瀧本ゼミと京都の瀧本ゼミとで発表を行う東西戦などのイベントがある。

活動頻度:
・政策分析パート 週1回のミーティング@駒場または慶應信濃町キャンパス(2019年度時点)。
・企業分析パート 毎週金曜のミーティング@駒場(2019年度時点)。
・両者ともに発表準備は各自が活動外の時間に進める。
こんな人におすすめ:
・問題分析/解決力をつけたい
・人に伝える力を磨きたい
・法/経済学部進学を目指している
・投資に興味がある

メンバーの声:
 魅力としては、まず判断力(問題解決をする際、情報を集め問題点を特定し良質な意思決定を行う力)や意思決定能力を養うことができる。政策分析はイシューを政策に適用する時、どういう風に人を動かすか・どう伝えるかを学ぶいい機会となる(実際にロビイングなども行う)。企業分析も、刺激的な同期やアラムナイから刺激を受けながら企業分析・上場株分析を学べる。
 大変な点は、どちらのパートでも半年ごとに成果を見直し、結果が出せなければ除名されてしまうFIRE制度があること。求められるレベルが高く、努力が必ずしも報われる訳ではないため、タフな精神を持って望まなくてはならない。


・「法と社会と人権ゼミ」
通称:川人ゼミ

 現職の弁護士を講師とし、現代社会の諸問題を考え学ぶ「現場主義」を掲げる。様々な社会の現場で人々に話を聞きながら学ぶ「フィールドワーク」が活動の中心。ゼミ講義では講師や多彩なゲストが講演する。セメスター末の冊子論考執筆や学生発表で成果を示す。1S/ 1A/ 2Sに開講され、秋は1年生、春は2年生が運営する。各セメスターで4〜5個のテーマ(労働・教育・地方創生など)に応じたパートが設置され、メンバーはそのいずれかに所属。パートリーダーがフィールドワークや勉強会、学生発表を企画する。

活動頻度:金曜5限は駒場で全員参加のゼミ講義があり、その他のフィールドワークはパートの垣根を超え任意で参加できる。
こんな人におすすめ:
・法学部進学を目指している
・社会問題に関心がある
・実際に体を動かして学びたい

メンバーの声:
 魅力は、普段経験できない社会問題解決の当事者からお話を伺い、社会問題が発生している現場に足を踏み入れる機会が得られる点。メンバーの親睦も深まりやすく、身近な社会問題を議論しあえる知り合いができる。ゼミ総会等で、多様な分野で活躍するOBOGと交流できる。
 一方、親睦は深まりやすいが逆にゼミメンバーと打ち解けられないとコミットしづらい。また、メンバーは首都圏出身の文Iの学生が多く、画一的な印象がある。

〜授業形式〜

・総合科目C系列「日本の政治」
通称:竹中ゼミ

 毎年Sセメスターに開講される「日本の政治」の受講修了者を対象に、Aセメスターから開始される自主ゼミ。国内外の政治を主な対象としつつ、AIや自動運転等の新技術、さらには政治学の古典といった幅広い分野の文献を読む。文献の選定は先生と受講者の興味に従って行う。月1のゼミでは報告担当者が文献に関するレジュメを作成し、発表を行ったのちにディスカッションをする。そこで結論を出すというより、議論を通じて考えることを目標とする。年間で1人約1回の発表を担当。

担当教員:竹中治堅先生
活動頻度:Sセメの授業は月曜5限に513教室で行い、Aセメは月1で土曜の午前中に参加任意のゼミを開催(2019年度時点)。春と夏の2回合宿を実施し、大著や古典にじっくりと取り組む。
こんな人におすすめ:
・日本の政治に興味がある
・将来的に政治家や官僚として日本の政治に関わりたい
・熱い政治議論をしたい
・法学部進学を目指している

メンバーの声:
 魅力的なのは、東大でも政治関連のことを話せるコミュニティはあまりないが、ここでは気軽に話せること。先生も日本政治研究のスペシャリストであるため、研究の最前線の本音を聞いたり、政治家と話したりする機会もある政治学関連の文献だけでなく、テクノロジーなど幅広い分野を扱う。政治学という分析視座を用いて、多様な対象にアプローチできる。色々な分野で活躍されているOB・OGとの交流が盛ん(ゼミ後の懇親会やOB訪問も行う)。
 しかし緩いコミュニティであるがゆえに、行く頻度が少ないと関わりは必然的に少なくなってしまう。また、文Iで政治に興味がある人が多いため、しっかりと文献を読もうとしなければついていけず辛くなるだろう。

・全学自由研究ゼミナール「現代世界のグローバル化とメディア(Sセメ)/国際政治・経済・社会の変容とメディア(Aセメ)」
通称:高山ゼミ

 メディアからの情報取得や分析方法を学び、世界でリーダーとなるために必要な知識と情報分析技術の獲得を目指す。受講者をヨーロッパ / アメリカ / アジア・アフリカ地域の3グループに分け、毎週各グループから1人ずつ、担当地域に関する重要な欧文記事の要約と分析を報告し、全体で討論する。また、毎週全員にThe Economistの記事を課題として与え、翌週それに基づく討論も行う。セメスターごとに受講生はレポートを執筆し、その内容も全体で討論する。

担当教員:高山博先生
活動頻度:授業は水曜5限に518教室で行う(2019年度時点)。地域班とは別に4~5人くらいの班「レジュメグループ」に分かれて週1回昼食会を開き、後輩は先輩から文献の探し方等を学ぶ。
こんな人におすすめ:
・海外大学への進学を目指している
・論文の探し方や書き方を丁寧に学びたい
・あえて厳しい環境に身を置くことで成長したい

メンバーの声:
 普段読む機会がない海外の情報をしっかり分析することができる点が魅力。論文の書き方を先輩・先生にしっかり指導してもらえるうえ、興味あることを好きに書ける&同期含め自分の論文を読み込んでもらえる機会はそうそうない。夏合宿では、将来の夢を真剣に語り合うことができる
 ただ、毎週発表や課題があるので締め切りに追われ、徹夜三昧の人もいる。小規模であり、個性的な人が集まるため好みが分かれることも。

・全学自由研究ゼミナール「問題解決のための思考法」
通称:宇野ゼミ

 大和総研に勤めながら東大で非常勤講師を務める宇野先生のもと、慶應のビジネススクールの教材を用いたケーススタディを行う(Sセメスター)。ディスカッションスキルを身につけること・自分のキャリアについて考えること・周囲からの刺激により意識を高め、自発的に自分の将来に向けた行動をとることができるようになることを目標とする。選考があり、年によっては不採択者向けに自主ゼミが開講されることも。例年Aセメスターでは、自主ゼミ形式で各界の著名人を招聘したゲスト講義が行われる。

担当教員:宇野健司先生
活動頻度:ゼミは週1回で、毎週話し合うケースを予習しておく。授業前の時限で自主的に集まって勉強会が行われることも。
こんな人におすすめ:
・経営や投資に興味がある
・経済学部進学を目指している

メンバーの声:
 普段全然違う活動をしている人が集まっており、多様性がある点が魅力。自分の意見を主張するだけでなく、他人の意見を傾聴したり、問題解決のための前向きな提案を行ったりと社会人に必要なコミュニケーションスキルも身に付く。講師の体験談ををもとにキャリア形成についての具体的なアドバイスがもらえることも。双方向のディスカッションであるので、講師・受講者ともに親密になる。
 ただ、履修希望者が例年定員(30名)を超えることが多いため、第1回目の授業に出席した人が優先的に履修を認められるという点には要注意。

 今回は、文系のゼミのうちサークル形式のものと授業形式のうち政治・経済などの分野に関わるものを紹介した。いずれも通常のサークルとは一味違った経験が得られるだろう。次回は、「全学自由研究ゼミナール」の中の国際系・社会学系ゼミをご紹介するのでお楽しみに!

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