usupera
usuperaのショートショートを溜めていきます。
「壊すとまた叱られるよ」 キュウロクの注意なんて聞かずにヨンロクはテーブルにひょいと上がり、 あれやこれやのものを動かした。 「ぼくは壊してるわけじゃない。動かしてみてるだけだよ」 「だからそれで壊したり散らかして怒られてるでしょ」 「壊れるってなにさ。主観の問題だね。 そもそも怒るあの人がおかしい。君もそう思わにゃいか」 「いやいやいや、ねこの理屈なんて通じませんよ」 「お、あれに飛びついたらどうなるだろう」 「やめときなよー」 「気になるなー。飛びついたらどうなる
乗るしかない、というデザインだ。馬は。 馬からしたら、生まれたままだし、そんな気もないだろうに、 ヒトが「オレ乗れそうじゃん」ってことで、乗られるのだ。 それでも乗らせてくれる優しさが あの目には溢れ現れている。口は怖い。 もし自分が馬で、自分とまったく違う形の生物が 「乗せてくれ」とか言ってきたら、 ぜったいに蹴っちゃう。蹴り殺す。蹴り殺さねば。 ねこやいぬたちも、自分より大きい異性物に寄っていくなんて 懐が恐ろしく深い(ヒトが浅いだけかも)。 それにしても馬は、
ギリシア神話の怪獣セイレーンは、 歌声で人を惹き寄せ、殺してしまう。 けれども逆に、その歌声に惹かれない人間が現れると、 海に飛び込んで自殺してしまう。 歌に生き、歌に死ぬ。演歌な怪獣だ。 小セイレーンを育てる場合、 セイレーンの本筋からは外れるけれど、 誰も聞いてくれなかったとしても、 歌うのが楽しければそれでいい と育てた方が良い。 その方が死なないし、 下手かもしれないけど楽しく歌っているほうが ぜったいにかわいい。 ただ、あんまり立派に育ってしまうと、 そ
小さいのが現れたので、 もうそんな時期が来たのかと思った。 ヒトマダムたちは どっかの汚いねことの間にできた子よと 噂ができて嬉しそうだ。 しかし、わたしは知っているのだ。 あれは子ではなくて、 小さなマントのくろねこなのだ。 マントのくろねこは、この世の音の後始末をしている。 あのマントの内では、世界の音は畳まれて、 時間が乱反射しているらしい。 そもそも音をそのままにしておくと、 ヒトマダムがもっとパワーをもってしまうそうだ。 想像するだけで生きた心地もない話
すばらしい船を目の前にトリノ博士は言った。 「すばらしい船が完成だ。これは何しろ速い。ここに光が届く前に、君はその光を見ることができる。それくらい速い。そういう設計だもの」 トリノ博士の助手はパタパタと拍手し、にじむ涙をぬぐった。 タコはボーッとしている! 「さぁ、すばらしい船で旅に出よう。すばらしい旅だ」 博士と助手は今日を祝日とすることに決め、この日のために用意しておいた数々の生活用品を船に積み込んだ。タコはボーッとしている! 「忘れ物があるかないかしっかりチ