マントのくろねこ。
小さいのが現れたので、
もうそんな時期が来たのかと思った。
ヒトマダムたちは
どっかの汚いねことの間にできた子よと
噂ができて嬉しそうだ。
しかし、わたしは知っているのだ。
あれは子ではなくて、
小さなマントのくろねこなのだ。
マントのくろねこは、この世の音の後始末をしている。
あのマントの内では、世界の音は畳まれて、
時間が乱反射しているらしい。
そもそも音をそのままにしておくと、
ヒトマダムがもっとパワーをもってしまうそうだ。
想像するだけで生きた心地もない話だが、
原理がよくわからないと言うと、
私にその話をしてくれたマントのくろねこは、
ちらっとマントの内を見せてくれたのだった。
だから、わたしは
あの小さいのが子とかそういう問題じゃなくて、
別の出来事なのを知っている。
ヒトマダムたちがゲラゲラ笑い、花粉がたくさん飛びちった。
マントのくろねこの大小はひゅっと飛び立ち
花粉の雲をさっと切って去っていった。
しばらくすれば、また1匹のマントのくろねこになり、
世界の音を始末してまわるのだ。
ありがたやありがたや。
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