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Juglans regia 胡桃


我がテラスに出没する生き物に栗鼠がいる。
毛並みの色や体格で三匹の常連が確認できた。(もっといたのかもしれないが、私には見分けがつかない)
その小柄な栗鼠は胡桃や榛の実をカリカリと齧っていたり、あちこち飛び回っては咥えていた胡桃をプランターの土の中に埋める。春になって、植栽の用意に土を返すと、スコップにコツンとあたる物があり、それは胡桃だったり、榛やアーモンドだったりした。胡桃などは太い根がグンと伸びており、胡桃林をテラスに作るわけにはいかないので、私は栗鼠の仕事をことごとく潰していく。
芽の出る前にちゃんと食べてくれるなら良いものだが、忘れさられて埋まったままの胡桃の実は100%の確率で発芽してしまうのだ。掘り起こして皿に並べておいても何故か興味がなさそうだ。多分充分に食べ物が見つかる環境だからなのだろう。
せっせと胡桃を供給している人間たちが近所にも数人いることを知っている。
友人宅で栗鼠が植えた胡桃があっという間に大樹になって、持て余していたのを見て胡桃には恐いほどの生命力を感じた。

胡桃といえば、澁澤龍彦の“胡桃の中の世界“という本のタイトルを思い出した。当時面白がって読んだ記憶はあっても、希薄になった私の記憶はうっすらとしか呼び出せない。探せば本棚の奥に見つかるはずだから、久しぶりに本棚の整理をする傍ら探してみることにする。

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