散歩する鯨

いつからか、上空に一頭の鯨が游いでいた。

鯨が現れた正確な日時は不明のままだ。なぜなら、人によってそれが現れたとする日時がバラバラなのだ。学者によると空を飛んでいること以外、普通の鯨なのだそうだ。そのことで動物愛護の観点から保護しようとする声が上がったが、空を自由に游ぐ鯨を神と崇める者達がそれを拒んだ。

鯨が大々的にニュースで報じられるようになり、人々のほとんどは見上げながら生活をした。色々な意見があることから鯨に直接的に触れることは出来ず、机上のみで話が進んだ。


そして、鯨は潮を吹いた。

鯨の吹いた潮は、人間の創造物を飲み込み、人々を襲い、やがて陸を削った。
人々は鯨を災害と呼び、駆除しようとする声が強く上がった。

そして、鯨を仕留めるために大きな槍が放たれた。大きな槍は鯨の心臓を貫通し、鯨はすぐに息絶えた。それは、多くの血を空中に漂わせながら、上昇していった。遥か上空、目には見えないほどまで上昇した。

数日後、空から無数の骨が落ちてきた。鯨のものだろう。今では、それを集めて厳重に保管してるそうだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?