見出し画像

米財務省とFRB:内戦の始まり

こんにちは。アメリカ株式義塾です。

今回の連載「米財務省とFRB:内戦の始まり」では、大局観に基づき、マクロ経済などの動向を徹底解説します。「アメリカ株式義塾」の読者の皆様にも、普段は見られないアングルからお金の流れをとらえていただければ幸いです。

さらに、2024年現在での今年の見通しを立て、米国株への投資で利益を上げるために活用できるノウハウをいくつかご紹介します。

第1回は米財務省と米国連邦準備制度理事会(FRB)の関係性について取り上げていきます。実は、両者の確執には長い歴史があるんです。

えっ?両者ともアメリカの国益のために存在するはずなのに、なぜ互いに譲り合わないのかって気になりますよね?

まあ、この見事な駆け引きを見守ることも米国株投資の学びを深めていく上での醍醐味です。近頃は、米財務省の勝利が割とあっさり決まっているようにも見えますが。

早速今日の解説に入っていきましょう!


FRBの金融引締めと米債務上限の複雑な関係


面白いことに、米国連邦準備制度理事会と米財務省の姿勢はプラスとマイナスくらいに真逆なんです。

どん!


余計なところは省略して、シンプルに説明しますね。2022年、FRBは方針を大転換し、量的緩和(QE)にピリオドを打ちました。この地殻変動が起きて以来、アメリカ経済は米国連邦準備制度理事会と財務省とのせめぎ合いの物語となっています。つまり、以下のような二つの軸がぶつかり合っているのです。


量的緩和(QE)とは?

量的緩和は各国の中央銀行が市場に大量に資金を供給することで、デフレの脱却や景気を刺激することを目的として行うものです。

量的引き締め(QT)とは?

簡単に言えば、中央銀行(米国ではFRB)が保有する資産を圧縮することで、市場に出回るマネーの量を減らしていくことです。


・米国政府(特に財務省)の能天気な「金融緩和政策」
・FRBの薄情すぎる「金融引き締め政策」

そもそもFRBも米財務省も、結局は米国の国益を増進するために存在する機関です。そのため、両者の間で繰り広げられる綱引きは、第三者の視点から見ると、アメリカがまるで一人芝居をしているように見えることがあります。しかし、実際にはこの駆け引きは皆さんが思っている以上に大きな影響力があります。

アメリカの経済を見守る投資家なら、米国政府の財政政策とFRBの金融引き締め政策を無神経に一括りにして見ることは禁物です。この二つの軸は全く異なっているからです。両者の違い、そしてその違いから生まれる力の優位性がどのような推移をたどっているのかを理解することで、「アメリカ株式義塾」の読者の皆様も株投資における有意義な情報を得て王道を進むことができます。それでは、用語から解説します。

・米国政府の財政政策:一言で言うと財政赤字の状態である。膨らみ続けている政府債務の背景にあるものとされる。
・FRBの金融引き締め政策:バランスシートに代表される。銀行向けの流動性供給措置

こういうわけで、米国政府とFRBがまるでそれぞれに個人プレーをしているように見えることは珍しくも何ともありません。

2018年の事例を踏まえて分かりやすく解説していきましょう。


画像の出典: wolfstreet・急速に増加する米債務

国際発行の増額

トランプ政権:まあ、そんなケチケチしないで。使うところがたくさんあるんだから、発行を増額するよ。いいよね?


画像の出典: the world economic forum


パウエル議長:誰が構うもんか。こっちだって利上げのペースを落とさないから。
2017年から2019年にかけて、米国政府は、債務上限をさらに引き上げ、国債発行などで借金をどんどん増やしてきました。ところが、FRBは全く揺るがず、政策金利を0%余りから2.5%まで引き上げました。このように、国債を発行しまくってまでお金が市場へ行き渡るようにしたいと考える米国政府と、利上げで流動性の吸収を図りたいFRBの対立が浮き彫りになっています。


画像の出典: CNBC


2018年の末、ドナルド・トランプ大統領は国債の発行規模を一段と増やし、量的緩和を期待する心中を察してもらおうとしました。しかし、そんな大統領に見向きもせずパウエルFRB議長は政策金利を引き上げたのです。決めゼリフ、「お前はクビだ!」で有名なトランプ大統領は激怒し、パウエル議長の解任をちらつかせました。数年後、バイデン氏の当選が決まった2020年から2021年にかけて、FRBはまた忙しくなりました。


画像の出典: Google

バイデン政権:パウエル議長、自由気ままにしていいからね。温かく見守るよ。
2022年は、米国株の投資家にとっても、米国政府にとっても、FRBにとっても、みんなにとって悪夢のような年でした。その間、パウエル議長は自らの任務に最善を尽くし、バイデン大統領はそんなパウエル議長を支持しました。パウエル議長は政府の後押しを受けて特に葛藤することもなく政策の実行に踏み切ることができました。

バイデン大統領:債務の上限、もう一回引き上げるね?
パウエル議長:えっ???

バイデン大統領はパウエル議長を支持していなかったのでしょうか?

いえ、バイデン大統領がパウエル議長を支持する立場にいようがいまいが、結局は、米国政府とFRBは磁石の同じ極同士が退け合うかのごとく、反対方向に動きました。政府の負債額は膨らみ、FRBは渾身の力で金融引き締め政策を行いました。
米国ではこうした米政府とFRBの方針の対立が頻繁に起こっています。


本日のポイント

  • 米国では、債務上限を引き上げたい米政府と金利を上げて金融引き締め政策を行いたいFRBという2つの軸が時に対立している

次回予告
「米財務省VS FRB 対立の勝者は?」


当ウェブサイトにおける投資関連コンテンツは、情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。当ウェブサイトの情報を基に行われた投資の結果については、いかなる保証も致しかねます。投資は市場の変動により元本が減少するリスクを含みます。投資を行う際には、投資家ご自身の判断で、独自のリサーチや専門家の助言を基に行うことをお勧めします。 また、当ウェブサイトの情報は、最新のものであるとは限らず、予告なく変更されることがあります。当ウェブサイトの情報を利用することによって生じたいかなる損害についても、責任を負いかねます。投資を行う際には、必ず最新の市場情報や財務資料をご確認いただき、ご自身の責任と判断で行ってください。

免責事項

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?