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景気が分かる!原油価格から見える未来 第3回

皆さんこんにちは!アメリカ株式義塾です。
原油価格特集の第3回、ついに最終回です。

写真の出典:Investing.com

最近の原油価格は横ばい傾向からだんだんと上昇へ転じるといった具合ですね。いつもそうですが、今後は上か下かどちらに向かうか分からないということにいつも私達は悩まされます。

国際原油価格の予測は常に途轍もないほど高い難易度を誇りますが、前回のnoteでOPEC、EIA、IEAの展望を順番に見るなかで、ある共通点を見つけました。

これまではOPEC諸国とOECD諸国との間での石油の供給と需要のバランスで、国際原油価格が動いていましたが、これからは非OPEC諸国が石油生産の鍵となり、非OECD諸国が石油消費のポイントになるという点です!

OPECやEIA、IEAのレポートのサマリーを復習したい方はこちらからお読みいただけます!

それぞれのレポートのサマリーからインサイトが得られた今、原油を巡る各国の立場を整理しながら、原油価格の未来を予想します。



非OPEC諸国と非OECD諸国

それぞれの報告書については、上記リンクのコンテンツをもう一度復習していただくと良いのですが、ここでまず今後の原油先物価格を読み解くうえで鍵となる非OPEC諸国非OECD諸国を再度定義しておきましょう。

非OPEC諸国
昔からの産油国ではないが、最近急激に原油の生産量を増やし、新しく産油国の仲間入りをした国々

非OECD諸国
昔からの先進国ではないが、驚異的なスピードで経済成長を遂げており、毎年エネルギーの消費量が急増している国々

いくつか例を挙げると、非OPEC諸国の代表格はもちろんアメリカです。他にも、海上油田で大量の原油を掘削しているブラジル、規模は大きいが注目されていない産油国のカナダ、北海油田で利益を得ているノルウェー、そして南米のガイアナなどがあります。

では非OECD諸国はどうでしょうか?
経済大国である中国とインドはもちろん、インドネシア、ベトナム、ナイジェリアなど、東南アジアやアフリカで急速に経済発展を遂げている国々が主にこれに該当します。

非OPEC諸国と非OECD諸国の規模はどれくらいなのでしょうか?

まず、非OPEC諸国の原油生産量が世界の原油生産量に占める割合は約60%です。

次に、非OECD諸国の世界のGDPに占める割合は約42%です。決して小さな数字ではありませんよね?

もしかすると皆さんは当然のように、中東の産油国が原油の大部分を生産し、先進国がその原油を消費していると考えているかもしれませんが、実際にはそのイメージとは大きな違いがあるのです。

米国と中東が互いにじっと睨み合って動かない状況で、彼らは現在の国際情勢や原油の生産・供給環境の中でどのような考えを持っているのでしょうか?今日のコンテンツは、関係する国々の頭の中を覗いてみるところから始めます!


非OPEC諸国の思惑

では、最も簡単なところから始めましょう。
非OPEC諸国は原油を掘り出しながら何を考えているのでしょうか?

非OPEC諸国 「こんなに簡単にお金が増えるの?(≧∀≦)」

2023年の世界の原油生産量ランキングで上位の国々を見てみましょう。
アメリカとカナダが青色、ロシアが赤色、サウジアラビア、イラン、イラク、UAE(アラブ首長国連邦)、クウェートなど、私たちが伝統的な産油国だと知っている中東諸国が緑色です。

この環境下での、アメリカの意図は明確です。現時点でアメリカの最優先課題はインフレの抑制であることをお伝えしましたね。利上げのためであれ、2024年11月の大統領選挙のためであれ、インフレは必ず抑えなければならず、その政策の一環として原油価格は低くコントロールされている必要があります。

しかし問題は、世界の原油生産量の13%を占めるアメリカと4.6%を占めるカナダを除いて、アメリカに協力的な国がほとんどないということです。
各国の立場を説明するとこんな感じです。

ロシア:...
イラク:アメリカの影響で自国の経済が10年もめちゃくちゃになっているので、アメリカに協力する余裕がない。
イラン:言うまでもない(協力するわけがない)。
サウジアラビア:かつては中東でイスラエルと並んでほぼ唯一の親米国家だったが、最近はあまり言うことを聞かなくなってきている。
アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート:一応親米国家に分類されるものの、これらの国は石油が国の経済のほとんどを占める特殊な状況なので、合理的に考えると当然、自分たちの利益に従って行動する。

といったような厄介な状況です。アメリカの言うことを聞かないロシアと中東諸国を含む国々の原油生産量の割合は34%以上に達しているため、アメリカが一方的に圧力をかけるのも難しいのです。これまでは戦略石油備蓄の放出やアメリカ国内の生産量増加でどうにかしてきましたが、これには明らかな限界があります。

アメリカ:頼むからインフレを抑えるために協力してくれ...
中東:インフレのせいでこっちも大変なんだから…。私たちは国のGDPのほとんどを石油に依存しているんだ。なぜあなたの言うことを聞かなければならないの?
アメリカ:それに、ロシアの資金源を断つためには、まず国際原油価格を下げる必要があるんだ...
ロシア:ハッハッハッ!それがそんなに簡単にできると思うのか?

状況を4行でまとめるとこんな感じです。

さて、この状況で非OPEC諸国はどのように考えるのでしょうか?
ここでいう非OPEC諸国は、上記のグラフで「Other」として表記されている国々と、ブラジル、中国です。これらの国々も世界の原油生産量の26%を占めています。

これらの国々はアメリカの目をあまり気にする必要がありません。国ごとに分けて細かく見ると各国の割合はせいぜい2〜3%にすぎず、また、アメリカと特別な同盟関係も、敵対関係も持っていないからです。ノルウェーやブラジルがアメリカと対立したところで、産油量の面ではさほど影響はありませんよね?

それでは、非OPEC産油国の中でもあまりアメリカとの関係が深くなく、それでいて規模が大きい産油国であるノルウェーとブラジルを例に取り上げてみてみましょう。

ノルウェー:アメリカさん、私たち原油を減産しましょうか、それとも増産しましょうか?
アメリカ:ああ、好きにしていいよ...私たちは忙しいんだ。世界の原油市場で君たちにそんなに影響力があるわけでもないし...

したがって、これらの国々は生産量を増やしたり減らしたりする場合、アメリカと駆け引きしなければならない他の産油国に比べて、はるかに自由に動けるということです。結局、アメリカ、ロシア、中東は供給量の駆け引きを行い、供給量をそれぞれが増減させた結果、全体としての変動は±0となるため、その他の非OPEC諸国が鍵を握っているということになります。


ノルウェー・ブラジルのインフレ率

さらに、通常これらの国々のインフレ率はそれほど高くありません。ノルウェーはちょうど3%、ブラジルは約3.7%で、他の産油国もほぼ同様です。これは、インフレを引き起こすものの中で重要度が高いうえに、最も価格のコントロールが難しい原材料である原油を、国内需要のために十分に自給できるからです。 つまり、これらの国々は生産量を増やそうが減らそうがそれほど困ることはありません。

非OPECのノルウェーやブラジルの生産量はどう決まるの?

では、これらの国々の産油量の判断基準は何になるのでしょうか?アメリカの圧力や、同業者であるOPECの圧力が基準ではないことは確かです…。

これを見てください。

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