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「ファシリテーター」の育成はスポーツ選手の育成に似ているという話

日々「赤ちゃんの探索環境デザイン」を更新していますが、本業であるワークショップデザインや生活の中で感じていることなどについても、ぽつぽつ書いていこうと思います。

今日は、安斎勇樹さんの研究発表を聞きに東京大学情報学オープンスタジオへ。安斎さんはワークショップ研究の第一人者でありながら、ワークショップを活用した価値創造のコンサルティングを行う「ミミクリデザイン」の代表取締役としても活躍されています。

ファシリテーションの「暗黙知」を明らかにする研究

そんな安斎さんが「ワークショップにおけるファシリテーション(参加者の主体的な活動をうながすこと)の熟達者はどのような工夫をしているのか」ということを調べる研究をされていて、ぼくは調査対象として協力をさせていただきました。

研究報告は、まちづくり、アート、教育、社員研修、商品開発などなど、ワークショップの分野ごとによってファシリテーターが「難しい」と感じるポイントがちがうことや、初心者と熟達者による失敗の原因認識の違いなど、示唆に富んだ話の連発でした。

まだ結論は出ていない段階ではありますが原因認識の話の例として面白かったのは、初心者は参加者のテンションや属性などのせいにしてしまうことがあるが、熟達者はプログラムの設計ミスやその前の段階のことなどを考える、という話。

ぼくも思った通りにいかなかったときに子どものせいにしそうになるときがあり、そういうときはだいたい自分がクサクサしているときなので、気分転換が必要になります。実践者からするとハッとすることの数々でした。

この研究によって熟達者が持っている「暗黙知」が言語化され、学習のためのサービスが整備され、初心者がより早く、良いファシリテーションを習得できるようになる、その可能性を感じる研究でした。

ファシリテーター育成はスポーツ選手の育成に近い

ファシリテーターの育成はスポーツ選手の育成に近いと思います。理論と戦略が要るが、何よりそれを体現する「身体」が要る。その「身体」の鍛錬はファシリテーター育成の大きな課題の一つだなと。

ボクシングのスパーリングのように、ワークショップ本番のシミュレーションすることはとても有効です。デメリットは、手間がかかるしファシリテーターや参加者役の心的負担も大きいこと。子ども向けWSの場合は「子ども役」の質が問われるます。実際の子どもと大人が思い描く子ども像のズレがシミュレーションの精度をさげちゃいます。

だが、地道にそれを繰り返していくことで確実に「身体」は仕上がっていきます。また「参加者役」をやることで、本番では参加者の気分に対してより早く正確に共感できるようになっていくというメリットもあります。空間を作ってシミュレーションをしなくても、電車の中でワークショップのスクリプト(進行台本)を見ながらイメージトレーニングをすることもできるはず。

あとは、本人のやる気とそのスポーツを楽しむマインド、もっと言えば実践していくうえでの哲学をもつことができるかどうか。安斎さんはそういったことを「信念」と言っていました。信念を植え付けることはできないが、その人の中から育ってくるのを待つことはできる、とかそんなことを思いました。

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