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子ども向けファシリテーションの方法

こんにちは。ワークショップデザイナーの臼井です。今日は、子ども向けワークショップのノウハウをまとめてみました。というのも、仕事で他の人に伝える必要がでてきたのです。そのためのメモ書きをnoteで公開します。

ここに書くことは、とてもニッチな、子どもとの関わり方のポイントです。あとぼくの持論です。あと、長文です。

子どもと関わったことのある方ならば「私はそうは思わない!」と思う部分もあると思うので、そこは是非ディスカッションしたいところです。

ワークショップとは?ファシリテーションとは?という説明や、子ども向けワークショップとは?という定義も省いて、ぼくのメモを公開する感じなので、なんというか、ご了承ください…!

↓↓↓↓↓↓目次↓↓↓↓↓↓

ワークショップの前にやること
・進行台本を自分の言葉に書き直す
・保護者の手出し口出しを抑制する
いざワークショップがはじまったら
・緊張をほぐす
・アイスブレイクには要注意
・子どもに合わせてゴールを変える
・言葉を少なくする
ワークショップのハンズオンの最中
・自由・放任ではなく制限・選択
・困難をかかえている子に寄り添う
・自分の「先回り」を考える
・片付けながら作る
・空間の「見通し」を意識する
ワークショップの終わりに
・最後に一緒に片付ける
・ふりかえる




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ワークショップの前にやること

・進行台本を自分の言葉に書き直す

ワークショップデザイナーとして、ぼくは進行台本を作ります。他人がつくった台本でファシリテーションをすることもあります。他人の言葉で書かれた台本を棒読みすると、場が生き生きしなくなります。

言葉を自分のものにし、場をしっかりと把握し、余白と余裕を用意するためには、設定されたワークショップのテーマ自体から自分の言葉で言い換える必要があります。自分の体験から言い換えられる例えを考えたり、自分の思想にマッチする言葉に言い換えてもよいでしょう。

ただし、ワークショップの企画者とは事前にコンセンサスをとるべきです。ある種の「勝手な解釈」によって、ワークショップの効用を矮小化するリスクありです。そのために、書き換えた進行台本をデザイナーにチェックしてもらうプロセスがあるとベストです。

・保護者の手出し口出しを抑制する

親子ペア型/授業参観型のワークショップの場合、事前に、この場所をどういう場にしたいかを保護者に共有しておく必要があります。保護者は我が子の出来不出来に対して過敏になってしまうものです。そこをほぐし、「子どもがここで何をしても大丈夫な場所にしたい」という旨を伝えると、少し安心してもらえることが多いです。保護者には子どもをよく観察する機会にしてもらうと良いと思っています。スクリプトを配布して読んでもらったり、事前にメッセージを配布物にしておくなど、工夫をしておきます。

ちなみに、最近では親子を切り離し、他人の親/他人の子をペアにすることで、過剰な口出しや出来不出来への問題を解決するという策があるそうです。ぼくはやったことないですが、とっても意味がありそうだし、親としても子どもの新しい一面を見られる素晴らしい機会だと思われます。そういうのは今後やりたい。

いざワークショップがはじまったら

・緊張をほぐす

親に連れてこられるタイプのワークショップの場合、大抵子どもは緊張しています。そんなときは、最初に何かを選び、触れるという体験を用意しておくと、緊張はほぐれやすいです。名前シールに色ペンで名前を書いてもらうときに、色を選んでもらう、バッジの形を選んでもらう。荷物を入れる場所を選んでもらうなど何でもいいのです。

次に、ファシリテーターの名前を名乗り「○○って呼んでね」などと言ってから、子どもの名前を聞きます。年齢を聞いたり、服について聞いたり、その他観察できた事柄から話題を広げておくと、下記の「子どもに合わせてゴールの意味づけを変える」につながります。

ただし、ここでの質問次第では子どもを萎縮させる場合もあるので、意外とセンシティブ。

・アイスブレイクには要注意

よく「アイスブレイク」といって緊張をほぐすためのゲームをする場合がありますが、アイスブレイクが長すぎ/面白すぎてテンションのピークがきてしまったり、アイスブレイクと本題が関係がなく、効果を持たない場合があります。

その場合のアイスブレイクはノイズでしかない。子どものテンションを上げすぎない程度には、受付から待ち時間、あるいは自己紹介の時間までにアイスブレイクすることが可能なので、ぼくはワークショップ中にアイスブレイクはほとんどしません。もしくはアイスブレイクに見えないように、進行台本に仕込んでおきます。

もしそれでもなお緊張しているようであれば、本番中に何かきっかけをつくらなければなりません。

・子どもに合わせてゴールを変える

ぼくは、子どもの年齢、興味、性格、ともすれば発達の段階に応じて、ゴールの意味づけを変えています。具体的には、ふりかえりのときの語り方を変えています。

ワークショップの開始前に子どもの様子を見、年齢を聞き、可能であれば親やその子を知る大人に話を聞いておく。そうして情報を仕入れ、子どもごとに何をゴールにするべきかを想定しておく。という感じです。

そのためには、子どもの発達段階に応じてできること、思考しうることを熟知しておく必要があります。なので認知科学や発達心理学のバックボーンがワークショップデザイナーおよびファシリテーターには不可欠なのだと考えています。

ただし、このような個別対応が可能なワークショップは、ファシリテーター1人に対して90分程度ならば4人、6~7時間の1DAYならば7~8人までです。それを超える場合、個別対応ができないマス対応のプログラムに切り替えています。

・言葉を少なくする

導入で「今日やること」を説明しますが、その説明の言葉は最小限にとどめます。

「話をちゃんと聞きなさい!」と言われた時の子どもは、背筋を伸ばし、目線を向けている場合があります。でも、大体その場合、背筋を伸ばすこと、目線を先生に向けることに意識を集中しているため、話の内容が入っていないことが多いと思います。

子どもにとって魅力的な/聞くメリットのある話であれば、前のめりで聞き、「あれは!?これは!?」と質問が飛び交ったり「わかった!」と早とちりしたりするはずです。それが起きていないのに1分以上の話を聞いている場合は、だいたい話の中身が子どもには伝わっていないと思っても良いと思います。(あるいは、話自体が重厚で面白いすぎる場合)

言葉を少なく、ビジュアルや動作によって伝える、あるいはコールアンドレスポンスを交えるなど、こちらの「伝える時間」を最短にし、子どものハンズオンの時間を最大化するよう努めるべきだと思っています。

ワークショップのハンズオンの最中

・自由・放任ではなく制限・選択

たとえば造形ワークショップの場合、低年齢であればあるほど、造形とは素材の組み合わせであるということを意識しています。

「自由な発想で造形をしてほしい」という思いはありますが、それは実はとても高度なことです。おおまかな基準ですが10歳よりも小さい子どもは驚くほど視覚情報に頼って生きています。なので、紙をみて星型に切ろうとか、ダンボールを見て立体に造形しようなどと瞬時に考えることができる子はかなりの手練れです。目の前にないものをイメージで補えるのですから。

抽象的な思考を最初からしてもらうのではなく、見たものを操作することに着手してもらうのが良いです。なので、素材は生素材ではなく、目的に合わせて使いやすいように加工済みのものを用意することや、加工すること自体をプロセスのなかにしっかり組み込まなくてはなりません。そのなかから「選んでもらう」。ただ、素材の加工はワークショップデザインの工数を増やすため是非は問われます。

加工済み素材を用意し、組み合わせるだけで作れるようにしておけば単純に子どもの達成度が上がる。なので、素材を自由に使えるようにし、子どもの活動を放任するのではなく、ある程度制限したなかで選択肢を随時与えていくような時空間の設計が重要である。ただし、制限が「強制」に陥らないように注意がいる。

・困難をかかえている子に寄り添う

ワークショップのテーマを理解し、大人の意図に従ってくれる子は、まあ正直たいへんありがたいです。しかしそんな子ばかりのワークショップはつまらないし、もしそうだったら強制度が高いものなので反省すべきだと思っています。さまざまな葛藤があり、不安があり、それでもワクワクした気持ちを止められなくなるのが適正なテーマの設定です。

ただ、葛藤や不安の前に身をこわばらせている子がいることがあります。そういうときには、おどける、ひみつをつくる、別の空気をつくる、席を外す、など、いろんなメソッドがあります。

ぼくがよくやるのは「子どもとファシリテーターの関係の逆転」です。何かを作るのは子ども、サポートがファシリテーターという場合が通例ですが、その逆の関係をつくるのが有効な場合があります。ファシが作りたいものを手伝ってもらい、何ならアドバイスをもらい、感謝をします。次第に「やっぱぼくがやる!」となったり「わたしもやってみたい」となったりするし、上手くそうならなければ、ファシリテーターのアイデアがその子のものになるように譲渡していきます。これは超難易度が高いです。

・自分の「先回り」を考える

ファシリテーターが子どもの様子を観察するとき「あ〜、それじゃうまくいかないんだよな〜」とか「こうすればこの子のゴールに到達するだろうな〜」ということを先回りして考えていることがあります。

その時こそ要注意で、焦ってゴールへの到達ルートを省略してしまう場合があります。場合によっては、子どもにとっての大切な経験の時間を奪ってしまう場合があります。

そんなときは「あ、自分はこれを今先回りしようとしているな」と意識し、子どもの世界に目線をぐっと引き寄せます。子どもは大人よりもスピードが速い部分と、遅い部分がある。遅い部分は省略し、速い部分はスローダウンしようとするが、このスピード感に思考を合わせられるように日々訓練しておく必要があるのです。

・片付けながら作る

子どもは悪気なく散らかします。作りながら移動し、途中でやめたものを放置するからです。ですが、夢中になって作っているうちは、それはそうなるに決まっています。

片付けながら作れる子がいたら、それは相当手練れです。なぜなら片付けは本来創作の勢いを止めるからです。料理をしながら煮込んでいる時間に洗い物をするというような手順は造形ではなかなか踏めないのです。

子ども向けファシリテーションの15~20パーセントぐらいが、片付けと物のレイアウトの整理であると言っても過言ではなさそうです。

・空間の「見通し」を意識する

上の「片付けながらつくる」をやると何が起こるかというと、「見通しが良くなる」のです。

ここで問題にしているのは、物理的な見通しではなく、時間的な見通しです。見通しが悪い、つまり「このあと何が起こるか」「何をしたら面白いか」がわからなくなるのは、空間が乱雑すぎるもしくは片付きすぎているからだと思います。

ぼくはちょっと散らかっている方が仕事がはかどるタイプなので、家も散らかり気味です。そんなぼくがやるワークショップも散らかり気味が好きなのですが、ぼくのなかにもいい散らかりと悪い散らかりの基準があります。

素材やツールがテーブルや床に散らばりまくっている場合、「良い散らかり」に落ち着けて、ほどほどに散らかしておくことがあります。その散らかった素材や道具が、次のアクションの予兆として機能する気配を醸し出しているかどうかが、その基準です。

ワークショップの終わりに

・最後に一緒に片付ける

「片付けをやろう」というと逃げる子がいますが、その子はだいたい遊び足りないのです。大人をからかって、もっと遊んでよ!たりねーよ!と誘っているのです。

それが起きてしまった場合はワークショップの満足度が低かったと反省をしなければなりません。ファシリテーターに存分に遊んでもらい、創作や思考をめいっぱい楽しんだ子は、大体片付けに協力してくれます。別れが惜しくなり、ファシリテーターとの時間を大切にし、感謝の言葉を待っています。

子どもが一緒に片付けてくれたとき、自分の仕事も減るし嬉しいし、何より満足してくれたんだなと思えるので、心の底から「ありがとう」と言いたくなります。

ふりかえる

だいたいの物事は、ふりかえりによって「学び」に成ると考えています。仕事も恋愛も、ふりかえれば学びがあるし、ふりかえらなければ同じ失敗を繰り返しますよね…。

それはさておき、リフレクションの方法はいくつかあります。時系列で整理する。最終成果物を教えてもらう。映像でふりかえる。言葉で説明してもらう。感想文を書いてもらう。など。

ワークショップのテーマや時間設定にもよるりますが、ふりかえりのないワークショップはただの作業であり、学びになることは難しいです。子どもたちが何をしたかをふりかえると同時に、親や周囲の大人が子どもたちの活動の経緯を知ることがふりかえりの重要な意味です。


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という感じでしょうか。わーっと書いちゃったな…。これ一個一個整理していこうと思いますし、まだ言語化できていないノウハウがあるはずなので、また火がついたときに書こうと思います。

こうやって書いてみて思うのは、ファシリテーターの能力で最も重要なことは、今起きていることをよく観察し結果を予測することであると言えそうです。(そしてその能力を鍛えるために、ボードゲームは最適っぽいと、#noteボードゲーム部に参加してみて思うのです)

予測に対して言葉がけが失敗した/うまくいった、ということはワークショップ終了後によく反省することで改善していくきますが、そもそも予測をせずに声がけをしていた場合、反省になりにくいです。

はじまる前に想像力をフル稼働させ、起こりうる状況を予測しておくと、ふりかえりの効果が高まります。また、複数人でファシリテーションする場合は、他の人の予測・声がけ・結果の3セットを聞いておくと、自分の予測の仕方の癖などが相対化されるため、これまたふりかえりの効果が高まります。

なんというか、ぼくは超高解像度でふりかえりをする仲間がもっとほしいです。仲間がたくさんいると、ファシリテーションの解像度はバキバキと上がっていくはず。

また書きます。こんな書きなぐりを、最後まで読んでいただいてありがとうございます。

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