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襲来!グミ兄。

あれは確か中1だった。季節は丁度、春または初夏だったような。

いつものように下校途中にある駄菓子屋から公園というルーティンをキメて、友達3人、公園に設置してあるベンチで駄話していると、頭を豹柄に染め、adidasのジャージを着た中肉中背の、おそらく20代前半であるイキりデニスロッドマン風な男が声を掛けてきた。

住んでる場所の治安の悪さから、咄嗟に危機察知能力が働き、阿吽の呼吸で奴から逃げようとしたら、向こうの方が先手を打ってきた。

グミ食べるー?

まさかの、ゆるいセリフに唖然とする我々。その隙を突いて奴はグッと距離を詰め、こちらに近づいてきた。そして背負ってある黒色のリュックを下ろし、リュックの中に手を入れ、3人分のパケを取り出し渡してきた。

パケの中身はグレープ味の果汁グミ。正確には果汁グミっぽいのが4個入っている。そのパケをこちらに渡すと奴は「じゃ!」と言って颯爽と去っていく。

あまりにも不気味な言動に戸惑いながらも、とりあえずパケは制服のズボンのポケットに忍ばせた。そして3人全員は家に持ち帰る事にした。もちろん僕自身は食べずに捨てた。

奴をグミ兄と呼ぶ事にした。

そして翌日、いつもの駄菓子屋から公園のルーティンをキメる為に、いつもの3人で公園に行くと、驚いた事に昨日のグミ兄が待っている。

目が合うとニタニタした笑顔で近付いて来た。昨日のグミが何味で、どんな工程で作られたのか。と言う事を自慢げに勝手に語り出す。

結果から言うと、グミの成分は多量のグラニュー糖にゼラチン、そしてグミ兄の血液だった。なぜ自身の血液を混ぜたのか?という謎については面白いじゃん!の一言だけ。狂気である。

グミ兄が颯爽と帰って行った後に、血液グミを誰も食べてない事を確認。とりあえずは大丈夫。安心だ。警察に通報せねば!なんて事を話していたら、3人の内の1人であるAの弟が血液グミをうっかり食べた。と言うではないか。

幸い、その弟は今現在消防士として街を守っている。もちろんAの弟の事を考えて警察には通報しなかったし、グミの成分についても一言も話してない。いや、話してないはず。

この一件以来、グミ兄に遭遇する事はなくなったが、風の噂では某スーパーマーケットで真面目に働いてるらしい。


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