AI美空ひばりとボーカロイドとディープフェイクと声優の未来

3月20日にNHKにて「AI美空ひばり あなたはどう思いますか?」という番組が放映されていた。

昨年末の紅白歌合戦でAI美空ひばりが披露された直後から、SNSを中心に否定的な意見が噴出したのは皆さんご存じかと思う。

個々の意見にはいちいち言及しないが、私は基本的には「AIであることをきちんと公表すれば問題はない」という立場だ。そもそも、倫理を振りかざして技術革新を止めようとする人にロクな人間はいないと経験上知っているし、表現の自由の観点から言っても、倫理を振りかざしてヤメロと言うのはおかしい。気持ち悪いと思う人が大勢いることは理解できるし、正直私もアレを紅白で披露するのはどうなんだ?と思わないでもなかったが、だからといって法規制しろとかって意見には到底賛同できません

いつの時代でもそうだが、新しい技術には常に否定的な意見が付きまとう。特に旧世代の人達ほどそういう意見に流されやすい。コンパクトディスクが出てきたときも「レコードに比べて音が薄っぺらい」などと言われてたし、ダウンロード販売が出てきたときも色々否定的な意見があった。エレキギターが出てきたときも不良の弾く楽器というレッテルを貼られていたし、シンセサイザーにも否定的な声が沢山あった。そしてインターネットもまさに長年いろいろ否定的に言われてきた技術の代表である。

はっきり言って、そんな声には、まともに取り合う必要など全くない。彼らは何をやっても納得することなんてないのだからほっとけば良いのだ。良いものなら必ず消費者が付いてくる。消費者が付いてくれば市場が生まれる。その市場が大きくなれば否定的だった人も結局しぶしぶ認めるのだ。否定的な人を納得させる方法は他にない。

ただ1つ、番組ではサラッと触れた程度で深く掘り下げてはいなかったが、気を付けなければならないのがディープフェイクだ。よく言われているのが当人が発言してないことを、まるで本当に発言したかのようなフェイク映像を作る技術と紹介されているが、それだけではない。現在我々がアンダーグラウンドでよくお目にかかるのが、モザイクのかかったアダルトビデオのモザイク部分をAIで処理して、まるでモザイクがかかってない性器丸見えの無修正映像のようなフェイク映像だったり、一般に流通しているアダルトビデオのAV女優の顔だけを人気アイドルや人気タレントの顔と入れ替えるフェイク映像などである。

結局、最先端の技術が真っ先に取り入れられるのはエロ分野、というのはいつの時代も変わらない(笑)。

いや、笑いごとではなく、ディープフェイクが犯罪に使われることは誰の目にも明らかであり、ディープフェイクは今すぐ法律で禁止する必要があると思うと同時に、ディープフェイクを使って作られたフェイク映像を解析して見破る技術も、特に警察当局はちゃんと研究しておかなければならない。そしてディープフェイクを使って行われた犯罪には重い刑罰を科すべきだろう。

とはいえ、ディープフェイク技術そのものが犯罪にしか使えない、というわけではないので、技術そのものを禁止するというのは、私は反対である。というか、ディープフェイクとAI美空ひばりは、原理的には同じものなので、技術を取り締まるのは基本的に不可能だと言って良いと思う。

さて、ところで、これも番組では言及がなかったが、AI美空ひばりとボーカロイドは何が違うのか。簡単に言うと、AI美空ひばりにボーカロイドの技術は使われているが、単に声が同じというだけでは美空ひばりにならないのだ。例えば、全然声の違うモノマネタレントがなぜ似ていると感じるのかというと、歌い方や話し方の癖を真似ているからだ。それと同じで、ボーカロイドの音声をただ使っただけでは、美空ひばりが歌っているようには聞こえない。ちゃんと美空ひばりの歌い方に似せないとダメなのだ。そして、AIはその「似せる」という作業を担当しているのだ。と思う。これはあくまで私の想像です(笑)。

さて、ここまでAI美空ひばりとディープフェイクについて考察してきたが、この技術が発達すると、将来「声優」という職業は、消える可能性が高いと思う。だって、声だけならAIに喋らせた方がローコストだもん。

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