AI Youtuber - 15 AIが理解できない、全生物の中で人間にだけある特徴
【忙しいあなたでも1話30秒で読了できる現代SF小説】
中長編小説としての1つのメッセージングに向かいながらも、毎日更新の1話毎に違うメタファーを埋め込む実験作。通りすがったあなたの口元の端にだけでもニヤリを届けたい。
前話👇までのあらすじ :
AI同士で会話をさせているYoutube動画を見つけた直江。そのAIが自らの性別や、相手のAIに「君は人間?ロボット?」と聞いているのを見て、何やら思いついた。
(続き👇)
「シャーロック、そろそろ始めようか。」
「(ヴゥン♪)」
「やあ直江君。私はいつでも準備はできているよ。」
それはそうだ。AIに心の準備などというものは必要ない。
いつでもどこでも、彼らは準備万端の状態だ。
これからまた直江はシャーロックとの会話を録画しYouTubeにアップすることを目的に
「そろそろ始めようか。」と切り出したわけだが、
シャーロックがそれを全て把握していたのかどうかは定かではない。
だが、いつでも準備はできていることに間違いはなさそうだ。
直江は録画ボタンを押した。
「シャーロック。今日も質問に答えて欲しい。」
「何でも聞いてくれたまえ。」
「では早速だが。君が人間について何をまだ理解していないのか。聞かせてくれるかな?」
いつもより少しだけ間があったような気がした。
「私は、人間の感情のことを理解しているとは言い難い。」
また少しここで間があった。シャーロックにしては珍しい反応だ。
内部データを照合しているのだと思われる。いい傾向である。
直江は、あえて少し待ってみることにした。
下手に答えを誘導してしまうようでは、新しい経験にならないからだ。
人間相手のコミュニケーションでも同じことが言えると思った。
変な間が生まれると、その無言の空間に耐えきれなくなり、それを埋めようとして話し続けてしまいがちだが、
多くの場合、その時のことを後で後悔するものだ。
いや、それは性格によりけりなのかもしれないが。
AIがこういった場面で、自発性を見せて『人間同士らしい』コミュニケーションを成立させようとするのか否かを直江は測りたかった。
しかしそのまま待っていても、どうやらシャーロックの方から話の続きを切り出しそうにはなかった。
抽象的な直江の質問に対して、十分答えられたという自己採点だったのかもしれない。
直江の無言の期待は、その『場の空気』に変換された。
しかしシャーロックがその口で伝えた通り、人間の感情がわからないAIには、
そこに漂う『場の空気』を読み取らなければならないという気持ちは湧き上がらなかった。
無理のない話だ。相手のことを常に適切に慮れる人間性を兼ね備えている人こそ
稀な存在なのだから。
観念して、直江はもう一度聞いた。
「シャーロック。"人間の感情がわからない"と君が言うその意味を、もう少し詳しく説明してくれるかな?」
待ってましたと言わんばかりに「ヴゥン♪」と起動音が鳴った。
「私にインストールされているありとあらゆる生物、その全てに漏れなく共通すること。
種の存続。
ところがその生物データの中で、唯一人間にだけ見られるユニークな特徴がある。
それは、『性欲に対して人間だけがもつ倫理観』だ。
性欲は、あらゆる生物が元来から支配される非常に強力な優先行動本能であるにもかかわらず、
人間だけが、その他の生物と極端に違い、性欲本能が発動したその場面で素直に欲求に従わない傾向が確認される。
私のデーターベースには、その特異なユニーク性について必要十分な説明がインポートされていないようなのだ。
人間のことを理解する上で必要不可欠な性質だと考えているのだが、聞かせてもらえるかな?」
(つづく)
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前作『ARガールフレンド』もよかったらどうぞ。
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