AI Youtuber - 17 人間の矛盾を面白がるAI
【忙しいあなたでも1話30秒で読了できる現代SF小説】
中長編小説としての1つのメッセージングに向かいながらも、毎日更新の1話毎に違うメタファーを埋め込む実験作で、通りすがったあなたの口元の端っこにだけでもニヤリを届けたい。
前話👇までのあらすじ :
「他の動物と違ってなぜ人間だけがおかしな倫理観で素直に性欲に従わないのか」を空気も読めず、恥ずかしいという感情もないAIにどう教えればいいのだろうか。
（続き）
人間がどうやって性や異性へ興味を抱いているにも関わらず、その思いを秘めたまま社会性を優先するのか。
なぜ口にすることも、公の場で行為に及ぶことがいけないことなのかを、
『犯罪だから』という本質的にズレた解答以外でAIに理解させることが、
こんなに難しいことだとは思わなかった。
「人間も最初から空気を読めるわけではないんだ。
聞いたことのないセックスとかコンドームとかの横文字を初めて目にした子供が、
突然大人に聞いて、驚かせることだってあるよ。」
「大人ほど物事を十分に理解していない子どもが、知らない言葉を尋ねることは通常の知的欲求だと思うが、なぜそこで驚くのか、聞かせてくれるかな？」
「（しまった。この言い方では、性的なキーワードは堂々と声に出して言うものではないという"空気ありき"の伝え方をしてしまっている。
シャーロックは、人間の無意識に恥ずかしいことを隠そうとする共通性が分からないでいるのに。）」
感情を持たないAIも、感情を持つ人間の子どもも、
両者共初めは何が恥ずかしいことなのかは分からないのは当然だ。
「子どもとのコミュニケーションで、内容によっては心の準備ができていない大人は、
思いもしなかった脈絡のない質問には、性的な疑問に限らず、ギョッとしたりすることはある。
読めない漢字を聞かれれば簡単に答えることはできても。
例えば『地球はなぜ丸いの？』などのような普遍的な、
大人だって瞬時に正確に答えられない質問を子どもは突然してきたりするからね。
なぜ驚いてしまうのかは君の疑問の本質ではないと思うので、話を本筋に戻そう。」
「君の言う通りだ。私の疑問の本筋は、人間が本能に逆らう理由が知りたいのだから。」
「空気を読むというのはね、人間は集団で生きる生き物だから、すなわち
TPOに合わない言葉や行為によって爪弾きにされることを警戒する生き物だとも言えるんじゃないかな。
これは私の個人的な憶測でもあるんだけどね。
もちろんその状況判断は人によって誤差があるから、
例えば様々な事件が後を絶たない理由の1つとして、
集団のルールに従えない人も、従わない人も、一定数いる。
あまりに逸脱した行為をすると法的拘束力でもって、社会から爪弾きにされる。
そのことは、子どもに対して案外早くから『悪いことをすると刑務所に入れられるよ』という教育の一貫でよく使われるフレーズだ。
ただ人間にとっての性欲は、決してその"悪いこと"ではない。
そしてそのこと自体は、ある程度成長した子どもも、思春期に入った子達も、理解しているんだ。
これも私の憶測なんだけど、本能だからこそ心に強く強く訴えかけてくる欲求に、
自分自身が自我の解放と社会性との狭間で揺れている状態が、
ためらいを生むんじゃないかな。」
「現在人間は、全体的には人口過多であることを社会問題として認識している。
ところが国家によっては少子化を自国の社会問題として捉えている。
先進国に特に多い傾向として見られる。国の経済成長に伴って子どもの出生率は
反比例することが実際に現象として起きている。
傾向として貧困国あるいは途上国の方が圧倒的に出生率が高い。
所属している社会に、子孫繁栄の本能を発揮しても問題のない環境が整えば整うほど、
結果的に子どもを産まなくなるという矛盾が、大変興味深い。」
ごもっともなご指摘である。
人間、お金が無くやることがないとヤることぐらいしか... と言いかけて、
そのようにインプットさせてしまっても仕方がないので、言わずにおいた。
（つづく）
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前作『ARガールフレンド』もよかったらどうぞ。
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