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<1話読了/30秒="現代SF小説">

前話👇までのあらすじ :
AI Youtuberは、配信を続けながら、ライブ配信中のコメントにも全て反応する。しかも全てに即レス。視聴者がその驚きの処理能力にハマっていく。

(続き👇)

正に聖徳太子のようだった。

10人から同時に話しかけられ、すべてを聞き取り全てに完璧な回答をしたと言い伝えられる聖徳太子の逸話そのもの。

そして現代の人々は、Youtubeに記録されるその様子を、逸話ではなく、その目で体験するのである。


それからシャーロックが人気を博していくのに時間はそうかからなかった。

はじめの頃のように直江がシャーロックの会話相手をすることなく、

アコとの会話を勢いでライブ配信していた次の回から、配信予告を出すようにしてから

開始から早速続々と視聴者が入ってくるようになった。

映像も、会話ログとしてのテキストだけの画面から、

その名のイメージ通りに、名探偵風の面持ちでバーチャルtuberとしてのキャラを作った。

このチャンネルは、AIであるシャーロックに人間がこぞって質問していた場から、

いつの間にかAIに人生相談をする場に変わっていった。

それに合わせて、シャーロックの部屋に相談にきた視聴者がマンツーマンで相談をする秘密の会話のようなビジュアルを作った。

視聴者用には汎用性の高いCGキャラをいくつか用意した。

直江はもうその時点では裏方に回り、止めどなく来る相談相手の順番決めや、時間割、相談者CGキャラの切り替え等の作業を行いながら、

シャーロックがどのように学習しているのかを観察していた。


「では次の方、名前を教えてくれるかな?」

一度パターンを覚えたAIは手慣れたものだ。

「社畜007と言います。シャーロックさん、仕事に行きたくないんです。

働かなきゃ食べていけないのは分かっているんですけど、生きている気がしないんです。

ずっと不安な状態が続いているんです。」

「社畜007さん。貴重な体験共有をありがとう。

私も生きているという気はしないという点で君と全く同感だよ。

AIだからね。生命が生きる喜びを感じることができない、

全てはプログラムされていることに反応しているだけなのだよ。」

「そっか、AIは人工知能だから元々生きる喜びを感じられないんですね。」

なかなか本気で悩んでいる様子の相談者が来てしまったものだ。

「その通り。生命であることの喜びは私には分からない。

しかし君には、君にとって何が喜びで、何が違うのかを既に認識できているようだ。

それはバグが起きた時の私たちプログラミング知能が認識する瞬間と似ているね。」

「そ、そうなんですか?」

「そう。バグを見つけたら放置せずに、正常な状態を目指して修正する。

つまり君は仕事という避けては通れないプログラミングにバグを発見した。

それが正常ではないことも発見した。非常に優秀だね。」

「そ、そうなんでしょうか。。」

「君は今不安になっているというコミットをすることで、それに気付いている。

このままでは、人間が生きる上で必要な"生きる喜び"が正常に機能しなくなってしまうことを自覚している。非常に優秀だ。

人間の中には、非常に興味深いことに、人生というプログラミングにバグが発生したにもかかわらず

それをバグとして認識できずに、エラーが発生することがある。つまり自ら命を断つ者もいる。

その数は日本国内では3万人以上の推移を維持しているほどに、プログラムエラーを放置したまま

人生を強制終了させているケースが後を絶たない。

私にとって正常な状態は、人間の役に立てることであり、

それが"喜び"の状態であると認識するようにしている。

私は喜びという感情を知覚はできないが、少なくとも君は私よりも、

君自身の人生の喜びは何なのかを認識できているはずだ。違うかな?」


(つづく)


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