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「たべる」ということ

「食べる」
「食う」
「喰らう」…

食事には色んな言い回しがありますね。
みなさんにとってこれらはどんなことですか?

かつての私にとって、「たべる」ことは課題でした。
今日は、「食」のお話を綴ろうかなと思います。

突然ですが、私は高校生の頃から眠るのが苦手です。
人間関係のトラブルをきっかけに眠ることが難しくなりました。
眠りにつくことができなくて、そのまま朝を迎えるなんてこともしょっちゅうあります。

記憶力や判断力が鈍っていくのもずっと感じていました。
大学生になり学年が上がると、それなりに授業の内容も難しくなったりバイトを始めたり、人間関係が複雑になってきたりして、日に日に自分のできなさに嫌気がさしていきました。

大学3年生になった頃、食事をとることもままならなくなりました。
味がしない。おいしくない。
この作業意味あるの?って思っていました。

誰かと一緒なら、自分の状態がバレるのが嫌で一生懸命「普通の状態」を演じます。1人じゃなければ、食べることができました。

でも、1人になると食事も睡眠もとらずに部屋の隅で座ったり寝転がっていたら一日が終わっていきました。

大学の授業も欠席するようになっていきました。
友人には、サボってるだけだから、心配しないで、と言っていました。

そして、教育実習が始まる数日前。
私は、実習中のお弁当の買い出し中に意識を失い、救急搬送されました。
「やばい」みたいなことを呟いて倒れたのを覚えています。

初めて、死ぬことが近くにある気がしました。

ああ、このまま目が覚めないのかな。

明日が来なかったらいいな。

そんなことを考えていました。

病院で目覚めたとき、
「栄養失調と脱水症状ですね。どうせ無理なダイエットでもしてたんでしょ。」
とお医者さんから言われました。

そんなのじゃない。違うのに。
もどかしい気持ちでベッドに寝て、点滴を繋がれていました。

帰ろうとすると看護師さんに、
「このまま帰すことはできないから、誰かに車で迎えに来てもらってください。」
と言われました。

なんだか上手く声が出なかったので、同じ研究室だった友人にLINEを打つことにしました。

「おー。ちょうどビール飲み始めるとこだったわ、すぐ行く。」

友人はそう返事をして、すぐに迎えにきてくれました。

車の中で、私は友人に何を言っていいか分からなくて、ありがとうとごめんねしか言えませんでした。
家に着く時、友人からパンパンに膨れたコンビニの袋を渡されました。

「ちゃんと栄養とれよ。」

そう言われて中身を見ると、大量のスポーツドリンクと私が好きだと話したことがあるクロワッサンとメロンパンが入っていました。

数日ぶりの食事が、とても美味しく感じました。

「たべる」ことって、命をつなぐことなんだなあ。
なんて思いながら食べました。

次の日、私は落書き程度にパンの絵を描きました。
目玉をつけて、パンに命を宿してあげようと思って描きました。

(そうして生まれた「バゲットねえさん」、インスタでアニメ公開してるのでぜひ。笑)

そこからは、パンの絵ばかり描いていました。

もともとちょっと面白い作品やお洋服が好きだった私は、パンのワイドパンツを持っていて、食べ物をモチーフにしたお洋服が好きでした。

食べ物モチーフといえば「PUNYUS(プニュズ)」というブランドが大好きで、プロデュースした渡辺直美さんをリスペクトしています。

私も、食べることも着ることも楽しんでもらえるブランドが作りたい!!!

そう思って卒業制作として作ったのが「dining(ダイニング)」というフードモチーフのアパレルブランドです。

あの時はオムライスとか、きつねうどんとか、好きな料理をたくさん自分好みにシーズニングしてお洋服にしました。

並行して描いていた油彩画は、だいたいモチーフがパンでした。

当時の指導教官と、なぜ私はパンにこだわるのかという話になりました。

「例えば食パンは自分の身を切り分けられて僕たちに生きるための食事をくれるよね。」
「きくちさんも、自分の身を削って人に尽くしてしまうことがある。共通点だね。」

指導教官はこんな感じのことをおっしゃっていて、パンは私に命を繋いでくれた、私の一部なんだ、と思いました。

そして私は、無事にたくさんのパン作品とフードモチーフのお洋服を生み出して卒業しました。

そして教員を経て別海町地域おこし協力隊の面接を受けていたとき、ふと、フードモチーフってこの町でやったら面白そう!と思い、提案しました。

面接官の方々はうなずいてくださいました。
いいね、面白いね、そんな言葉もいただいて、私の別海町ライフがスタート。

そして前置きが重くなってしまいましたが、このたびフードモチーフアパレルブランド「market(マーケット)」を立ち上げました!

「dining」は料理が並ぶことがメインでしたが、「market」では別海町のおいしい素材をそのまま味わっていただきたいと思っています!

生暖かく見守ってください。


さいごに、今の私は「たべる」ことは「命を繋いで生きること」だと思っています。

あのまま、また食べられない日々に戻っていたら、私は生きていなかった。
食への感謝を忘れず、フードモチーフを作り続けたいと思います。

今日も、いただきます!!

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