見出し画像

ぼくにしかできない「紙面」のプレゼント

ぼくには人前で披露できるような特技がない。例えば、ギターが弾けたり、手品ができたり、歌がうまかったりといったもので、普段社会でほとんど披露することはないのだけれど、ここぞという時に結構大切であったりする。

特技のない自分

例えば、誰かの結婚式の時、送別会の時など、大切な人に感謝を伝えたい時にそういう能力を発揮することができる人は羨ましいし、かっこいいと思う。

特技がないぼくは、こういう時に、自分の「おめでとう」とか、「ありがとう」という気持ちを伝えることに苦労していた。何かプレゼントをあげようと思っても、なかなかセンスの良いものが見つからないし、高価なものは気を使わせてしまう。

見つけた二つの能力

でも、ある時、ぼくにはある能力があることに気づいた。それは

印刷物を見たままそっくりに作ることができる能力。
人の良いところをたくさん見つけることができる能力。

この2つである。

1つ目の能力について説明すると、ぼくは学生時代、印刷物に関わる作業を4年程度していたため、いわゆるDTPソフトをそれなりに触ることができるのだ。きちんとしたデザインの学校に行ったわけではないので、おしゃれなレイアウトとか、色使いとかは理解していないのだけど、レイヤー設定や切り抜き、文字詰の大切さなんかは理解している。

だから、それなりに時間はかかるが、実際に作られた印刷物を見様見真似でそっくり作り出すことができるのだ。

そして、2つ目の能力については、ぼくは基本的に人と話して、その人の本質、考え方を知ることが好きで、その中で、その人の良い部分をどんどんと見つけていくことができる。もともと、人間の本性は善だという性善説を信じていることも原動力になっていると思う。

だから、その人のことを文字にしてくれと言われればいくらだって書けるのだ。

ぼくの作れるもの

この2つを掛け合わせてぼくが思いついたのは

その人の新聞記事を作る。

ことである。

具体的には、スポーツ紙の号外や「人もの」のコラムを作ることが多い。たまにいわゆるベタ記事(下の方の小さな記事)を書くこともある。

残念ながら、どの記事も個人情報が満載なので、ここに掲載することはできないので、雰囲気だけ伝えておきたい

例えば後輩の結婚式には、スポーツ紙の号外のようなレイアウトで、大見出しに「○○担当結婚」、サブ見出しに「○○部のコナン君、幸せに」という感じで、彼の普段のキャラやあだ名をふんだんに盛り込み、もちろん「結婚」の文字は、特大のフォントにゴールドで飾り、赤白の枠も忘れない。そして、記事には、彼の人柄や良い部分がわかるエピソードをたくさん書いて、コラムには新居の外観写真や新婚旅行の行き先までと盛り沢山にする。本人のエピソードについては、みんながギリギリ笑えるレベルを攻める点には注意しているが、それは、結婚式での友人挨拶と似ていると思う。

人もののコラムは、新聞の中面によく載っているもので、優勝した監督とか新社長とか、その人が何かを成し遂げた時に、それまでの経緯や人柄を記すものである。ぼくが作るのもこれを真似して、退職をされる方に、それまでの経歴や人柄を振り返る記事を書くことが多い。もちろん有名な方ではないけれど「45年勤め上げた」など、新聞に載っている方と同じくらいぼくらの職場にとって功績がある人も多いので、敬意を込めながら、結構しっとりとした内容に仕上げる。

何よりもこだわること

そして何よりも、ぼくがとにかくこだわっているのは、

絶対に本物に見えるように作ること。

記事中の広告や編集部の連絡先から、左上枠外の「第三種郵便認可」まで、とにかく手を抜いてはいけない。少しでも手を抜いたら安っぽくなってしまう。そんな作品なら渡さないほうがマシだ。

まさに、「神は細部に宿る」なのである。

これらの作成は、いつもAdobeのイラストレーターを使っている。昔はソフトの値段が高くて、とても趣味で購入できるものではなかったけど、最近はサブスプリクションができたので、気軽にこれらのソフトで作成できるようになった。特にフォントがたくさん選べることで、まさに本物そっくりな紙面が出来上がるのだ。

なおかげで、みんな最初は本物だと信じ込んで読んでいることが多い。少し読み進めてから「これ作ったん!?」と言われる瞬間が何よりも楽しみである。そして、細部に仕込んだ「ネタ」を見つけてもらえるのが嬉しい。例えば、結婚号外の場合、編集部の住所は、二人の思い出のお店に、第三者郵便認可日は新婦の出会った日など、所々記事の主人公に由来するものを忍び込んでおくのだ。

そして、記事を読み進めながらみんな「そうそう、こんなことあったなぁ」とみんなで盛り上がっているのをみると、本当に作ってよかったなと思う。退職される方の記事を書いた時には「ちょっとうるっときました」と後で話してくれる人もいる

でも、結婚式で配ったりするときは要注意だ。号外に感動した司会者の方に「ぜひ一言」と話を振られることがあるのだが、うまく話せたことがない。やっぱり、ぼくには、人前で話をして人を感動させる才能はないようだ

でも構わない。ぼくには、DTPを駆使することで、人の心を少しだけど動かすことができるのだから。


#つくるのはたのしい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?