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今話題の「ザッハトルテ」のほろ苦い思い出

オーストリアのウィーンにあるホテルザッハのザッハトルテが、送料無料で注文できることが話題になっている。

ザッハトルテというチョコレートケーキのまさに発祥の地で、その名前がついたホテルの本場の味を楽しめるのだから、話題になるのもわかる。

そして、実はぼくは、このザッハトルテに関して、ほろ苦い思い出がある。しかも、まさに、このホテルザッハでの出来事である。

20年前の思い出

今から20年くらい前、バックパッカーとしてヨーロッパを回っていた時、ウィーンのユースホステルで知り合った日本人に「是非行っておくべきだ」と勧められ、食べに行ったのだ。

当時は学生でお金もない貧乏旅で、そんなケーキ食べる余裕はないと思っていたのだけど、確か、当時8ユーロ(1000円程度)だし「観光しないならなんのために旅しているの」と少し挑発気味に言われたこともあり、行くことになった。

高級感溢れるホテル

現地についてみると、ホテルは高級感に溢れ、2ヶ月近くヨーロッパを歩き回っていたボロボロのジーンズ姿で、果たして入れるのかと思える外観に少したじろいだものの「せっかくきたんだから」と勇気を振り絞って入ってみると、意外に笑顔で迎えてくれたのを覚えている。そういうお客さんが結構多かったからかも知れない。

とは言え、そもそも、そのころ、日本でもホテルに食事に行ったこともないような男子学生が、本場ヨーロッパの老舗のホテルのレストランに座っているだけで、心臓が飛び出そうで、その優雅な雰囲気とは正反対に、心は全く落ち着かず、絶品と言われるザッハトルテの味も、ほとんど覚えていない

食べながら「こんな緊張するのなら、8ユーロで、おいしい晩御飯を食べられたかな」とすら思っていた。

お支払いの時

そして、今でも忘れられないのはお支払いの時。10ユーロ札を出したのだけど、ついつい日本で支払いをするときの癖で、プラス3ユーロ渡してしまったのだ。ぼくとしては、5ユーロ札のお釣りを期待していたのだけど、なんと、そこの店員さん、チップを弾んでくれたと思って「サンキュー!」と全部持っていってしまった。

毎食5ユーロで過ごしていたぼくにとって、概ね3食分がザッハトルテとともに飛んで行ったのである。あまりにも悲しすぎて、そのあと少しの間ウィーンの街をあてもなくさまよったのを覚えている。

思い出した記憶

今回、20年ぶりにホームページでそのザッハトルテを見て、ほろ苦い思い出が蘇って、ついつい表情が曇ってしまっていたようだ。

甘いもののページを、複雑な表情で見ているぼくに気づいた奥さんに、その話をしたら、大笑いされた。

そして、奥さんと相談した結果、今回は注文するのはやめておいた。本当の美味しさを味わうのは、楽しみに取っておいた方がいいから。

再び海外に行けるようになったら、2人で実際に現地に行って、今度はきちんとした服装で、くつろぎながらおいしく食べたいと思う。今なら、人生経験もそれなりに積んだので、高級ホテルにいったって堂々としてられるはずだ。

当時はほとんど味わっていないので、いまだに本当の味を知らないけど、それを知るのは、再びウィーンの地を踏みしめるときまで我慢しておきたいと思う。


※トップ写真は、20年ほど前に撮ったホテルザッハでの写真です。味が全く思い出せません。

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