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【パラレルニュース】地面をすべて布団にする法案が可決

第一報

C国議会は、国土全域の地面をすべて布団にする法案を可決した。

国土交通省は、全土を布団で覆うことは十分に可能であるとの試算を示しているが、科学界からは環境への影響を懸念する声も上がっている。

法案は今後、S大統領が署名することで正式な法律となる。


続報

C国の地面のうち約9割が布団となった。

どこで眠ってもよいという新たな生活の結果、C国民の平均睡眠時間は倍増。

国民全体の健康レベルが大幅に上昇し、保険料の引き下げにつながった。

史上類を見ない大規模公共事業による雇用の創出は、完全失業率をマイナス50%(すなわち、すでに職を得ている国民の半数までもが副業などなにかしらの形でこの"国家的ベッドメイキング"産業に携わっているということだ)にまで抑え込んだ。

C国の伝統工芸であった高級枕づくりの後継者問題は完全に解決、反対に師匠不足が問題となり、枕づくりの人間国宝であるT氏(80)は日夜師匠の奪い合いで狂暴化した弟子志願者から逃げ回っている。

深刻な少子高齢化が進んでいたC国であったが、高齢者の転倒による死亡事故や、危険運転による死亡事故なども国土全域のクッション性によって大幅に減少。

なにより、公共の風紀は多少乱れたものの、異常なスピードで出生率が爆増している。

弊誌の独自アンケートによれば、あらゆる年齢層・社会的階層においてクオリティ・オブ・ライフが有意に上昇しており、「世界一自死が多い国」として知られていたC国はもはや過去の姿と言わざるを得ない。

次号では、この"国家的ベッドメイキング"法案を起草した英雄であり、野党第三党の党首であるV氏を招き、完全独自10万字インタビューを決行!

ノーベル平和賞待ったなしと噂されるV氏の政治観から幼少期のほっこりエピソード、衝撃の恋愛哲学まで徹底解剖。

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さらに続報

C国で政権交代が行われた。

地面をすべて布団にした功績に対する圧倒的な支持から、V氏は大統領選で前任のS元大統領に大差で勝利。

しかし、V氏の大統領就任直後の憲法改正の動きには国際的な批判が集まっている。

V氏は、C国憲法9条に誰もがいつでもどこでも眠る権利、すなわち「基本的睡眠権」を盛り込んだのだが、その第二章には「なんぴとも眠りを妨げる者に対し抵抗する権利を有する」と明記されている。

V氏は、C国布団化政策以来、「他国がC国民の国土を侵略せんと画策している」とのプロパガンダを盛んに発信することで熱狂的な信奉者を獲得しており、C国民にとっての国土とはすなわち布団であるが故、安眠を妨げる者への抵抗を奨励する上記の憲法は、国民意識を戦争へ向ける布石としても読めるのではないかと指摘されているのである。

アメリカ人なら銃と自由を、

フランス人なら革命を、

日本人ならヒロシマ・ナガサキを穢されれば根源的激怒を催すように、いまやC国民にとって、長きにわたる不遇の歴史を経てやっと得られた安眠を邪魔する者は民族的憎悪の対象だ。

じつに三ヵ国と国境を共にし、つねに戦争の歴史にあったC国では徴兵制も連綿と続いており、鍛え上げられた、そして何より安眠妨害に飛び切りの憎しみを持つ国民たちを基盤にしたC国の軍事力は、まさに眠れる獅子である。

V氏は、与党の名称を「パジャマ党(pajama party)」と改め、党員の制服をパジャマとナイトキャップに指定。

寝ながらできるオリジナルの敬礼も考案され、党大会では無数の支持者がゆったりとしたパジャマやネグリジェに身を固め、

「V同士、おやすみなさい!」

「V同士、おやすみなさい!」

と敬礼を繰り返し、

仮想敵国の首脳陣らの肖像画をめがけて、罵詈雑言を吐きながらC国名産の高級枕を投げつける、枕投げヘイトを行う様子が見られた。

仮想敵国のリストには我が国も名を連ねており、我々とてこの危険な独裁政権の樹立を静観することはできないだろう。

パラレルニュースでは、かくも狂気の独裁者であるV氏を、国際的英雄であるかのように祭り上げたメディアにも責任があると考え、次号の特集ではこれまでのマスコミ報道の問題点に徹底的にメスを入れる!

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