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クロードと一緒に

2021.07.09
『The Last 5 Years』からのハシゴ。
水田さんからの、みぞたく。ハンサムハシゴ。
何気にみぞたくの舞台、初観劇だった。
DVDばかりで観た気になってた。

そして、また遅刻した。8分くらい。
池袋内で行きたいお店があって、それは劇場とは真逆の方向にあって、「まぁ、同じ池袋だし?大丈夫だろう。」って思ってたらあかんでした🤷‍♀️
公演に遅刻するのも珍しいのに、この日は連チャンして遅刻してしまった。

思い出そう。数時間前に、余裕持って行動しようと言っていた自分を。変に自信を持った甘ちゃんな考えはやめよう。【今日の教訓part2】


初めての東京芸術劇場。
めちゃくちゃ焦って走ってたけど、建物の美しさに感動した。建築美!!!マジマジと見ていたいけど、そんな余裕はないから急いでシアターイーストへ。

初見だったけど、行きのバスであらすじや解釈を読んでたから、今どんな状況かは把握することができた。でも、The Last 5 Yearsは2回目だったけど、これは初見なんだから。走って汗だくになって、着席しても汗が止まらなかった。でも、公演始まってるんだから、このとても緊張の糸が張ってる世界観を壊すまいと必死だった。「余裕」って大事。教訓を噛み締める。

1967年 カナダ・モントリオール。判事の執務室。
殺人事件の自首をしてきた「彼」は、苛立ちながら刑事の質問に、面倒くさそうに答えている。男娼を生業としている少年=「彼」に対し、明らかに軽蔑した態度で取調べを行う刑事。部屋の外には大勢のマスコミ。
被害者は、少年と肉体関係があった大学生。
インテリと思われる被害者が、なぜ、こんな安っぽい男娼を家に出入りさせていたか判らない、などと口汚く罵る刑事は、取調べ時間の長さに対して、十分な調書を作れていない状況に苛立ちを隠せずにいる。
殺害後の足取りの確認に始まり、どのように二人が出会ったか、どのように被害者の部屋を訪れていたのか、不貞腐れた言動でいながらも包み隠さず告白していた「彼」が、言葉を濁すのが、殺害の動機。
順調だったという二人の関係を、なぜ「彼」は殺害という形でENDにしたのか。
密室を舞台に、「彼」と刑事の濃厚な会話から紡ぎ出される「真実」とは。

(クロードと一緒にHPのstoryより)

でも、本当に。
あらすじや解釈を読んでてよかった。
何も予習せずに挑んでたら、頭の中??????でいっぱいになってたと思う。

彼はひたすら真実を話してるんだけど、どうしても彼の言ってることがハッキリと見えてこない。取調べしてから、36時間も事件の動機、彼の名前でさえもわからないままだなんて、刑事に同情しちゃう。真実に近づくための重要な事はうやむやにされて、男娼である彼を差別視して、何も進まないもどかしさから乱暴的になってしまうのも、「こうなんだろ?どうなんだ?」と、彼の動機を決めつけてしまってて、それはいかんだろう〜!って思うけど、そんな状況が36時間以上続いてるなら、そんな気にもなっちゃうよね〜、お疲れ様です〜ともなる。しかも、刑事は夜から休暇に入るから、この日の17時までに決着つけないといけない焦りもあるし。取調べを中断させて、家族に連絡してた姿から、休暇は家族との時間を大切にしたいって言う刑事の家族想いの一面も伺われた。刑事がまるで悪者のようにも思えない。

私も仕事してる時についつい業務的になってしまうことあるから、刑事の姿を見て、「今、目の前にいるこの人のことを、ちゃんと見ているのか?心を向けているのか?本質を知ろうとしてるのか?理屈だけで見出そうとしていないか?自分の頭で考えられる範囲で、その人を決めつけていないか?」と、自分と向き合う機会が持てた、そんな気がする。



彼の動機について。
結論としては、「同情はできるけど、共感はできない。」しかし、それは何故か美しく、純粋にクロードへの愛の表れだった。

祖父母の時代は裕福な家庭であった、でも今の彼は男娼としてしか生きていく道がない。男娼として生きることはとても苦しかった。教育は多分受けてないが、本質は賢い人。
クロードも裕福で、優秀で、エリート大学に通う文学青年。だけど、金銭的に危うくなった。学生運動に参加していたけど、そこでの活動も苦しいものになっていた。

ある日、彼はクロードと出会い。本当の愛を知った。クロードは自分の一部であるように、何を考えているのかも不思議とわかった。2人は愛し合った。

そして、自分の今までの人生を踏まえて、クロードの未来を考えると、それはまた苦しくて辛い可哀想な未来しか見えなかった。自分のような人生を辿ってほしくない、クロードが1番幸せだと感じている時に、クロードの人生を終わらせたかった。愛しているから、苦しまずに、幸せのままでいてほしかった。そして、クロードがそれを望んでいることもわかっていた。だから、やった。

ステーキナイフで喉を切り裂いた時も、クロードはずっと彼を抱きしめていた。微笑んでいた。彼はクロードの全てを愛しんだ。

心がズーンと重くなる。辛すぎる。

クロードが幸せの中で亡くなったことを願った。
それで彼も幸せだと思った。でも同時に、愛したクロードがいない世界を知った。

確かに彼はクロードを愛し、クロードも彼を愛していた。そのことを誰かにわかって欲しくって自首した。記者も呼んで、たくさんの人にこの事実を知らしめたかった。でも、クロードとの愛の日々を言葉で語るには難しくって、伝えてるのに伝わらないことも嫌で、この感情をどう表せばいいのかわからなくって、書記が記録してるんだけど、そんな言葉で簡単に表せるものじゃないんだって苛立って。

最後に20分にもわたる彼の自白、事件の真実を語る彼を、息することも忘れるくらいに緊迫感に溢れてて、尚且つあたたかい愛にも溢れていて、艶かしい彼の姿に釘付けになった。彼が全てを語り、退室して、終わる。

130分の上演が終わり、自分を含めて、周りの方々も肩を揺らしたり、身体をズドンと落としたり、緊張を解く姿がとても印象的だった。彼が語る言葉を汲み取ろうとしていた。真実について知ろうとしていた。見入っていた。ものすごい疲労感。

みぞたく、すごかった。

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