マガジンのカバー画像

雨が止んだら

11
女子中学生のちょっと変わった日常。
運営しているクリエイター

#小説

雨が止んだら -晴れ女は-

雨が止んだら -晴れ女は-

 入梅晴さんは見ていてなかなか面白い。

 彼女の生態はこれまでよく分からなかったけれど、最近分かった事をまとめて表すと「変」だ。普段は無口で、素っ気なくて、本当にただのロボットにしか見えないが、ここ最近私たちの努力により彼女の謎は解明されつつある。

 最初に雨衣がふざけて行った任務、それは単純明快、尾行であった。バレない様コソコソと尾いていくと彼女はトイレへ入って行き、静かに誰かと通話している

もっとみる
雨が止んだら -彼女の生態-

雨が止んだら -彼女の生態-

 これはごくごく普通の、よくある話である。
 ただ我々学生にとってはとても興奮することだ。

 それは、校舎に犬が迷い込むという偶然的イベントである。

 これは毎年あるわけでは無い。もしかすると、学生の間に出くわさない人もいるかも知れない。それくらいレアなことだと私は考えている。
 そう思えば、今こうして突如校舎に現れてくれた犬を見れた我々はラッキーだ。

「巡ちゃん見て!運動場に犬が居るよ!」

もっとみる
雨が止んだら -図書室にて-

雨が止んだら -図書室にて-

「グゴォーーーー……」

 一つだけ言っておく、図書室は眠る場所ではない。

 しかし私の真横では正しく今大いびきをかいている怪獣がいる。
 その爆睡する怪獣を起こそうか迷い、少し考える。周りには迷惑そうにする生徒の視線。
 こんなに見られてしまっては起こす他あるまい。

「雨衣、起きて。……起きてってば。」

 肩を叩き声を掛けるが、なかなか起きないので今度は目一杯激しく揺すってみた。

「グゥ

もっとみる
雨が止んだら -傘がない-

雨が止んだら -傘がない-

……なんてこった、私の傘がない。
 確かに朝持ってきた。そしてこの傘立てに立て掛けておいた。けれども無い。

「くー、やられちまったかぁー!」

 水無月雨衣、十四歳、下駄箱にて絶望。

 今日は午前は快晴、午後から雨の予報だった。それは当たり、なんなら大粒の雨が降り注いでいた。いわゆる土砂降りである。

 この中を傘なしで帰れって?そんな話があってたまるかってんでぃ。こちとら律儀にビニール傘を持

もっとみる
雨が止んだら -ズルをした-

雨が止んだら -ズルをした-


 私はズルをした。

 「ズルをした」といっても、大袈裟なものでは無いし、誰でもするような些細なことだ。
例えば、道に落ちていた小銭で駄菓子を買ってしまうとか。
そういう感覚のもの。

 誰にも責められはしないけれど、なんだか心の中がモヤついて仕方ないというか、神様はそれを見ていていつか誰かに怒られるような気がする、というか。

「……それで、何をしたんだい?」

 誰も居なくなった教室で質問

もっとみる