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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2024 Spring Selection(4月8日~5月26日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする

「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が

それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る

「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」


詳しい放送内容はこちら

D-03 usen for Cafe Apres-midi

http://music.usen.com/channel/d03/




橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

桜咲く(舞う)季節から、新緑香る、若草の萌ゆる頃へ。そんな心の高鳴りを素晴らしい音楽で彩ることができたらと、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間分を新たに選曲しました。
月〜日を通してのTwilight-timeの特集は、自分にとって“人生の春”だった1994年4月21日にリリースされた、Free Soulシリーズの最初のコンピCD『Free Soul Impressions』から30周年を記念して、「Free Soul 30th Anniversary」と題してのスペシャル企画を、チャンネル・ディレクターのリクエストに応えてお届けすることに。“Groovy & Mellow Lifestyle”を共に歩んでくれた思い出深い名作の数々からセレクトした、まさに珠玉の名曲群をたっぷりとお楽しみください。
その他の時間帯は、香りと音楽のマリアージュをテーマにした僕の最新コンピレイション『Incense Music for Bed Room』に収録した、“音のアロマセラピー”のような名品もちりばめながら、その9割以上を占めるメイン・ディッシュとして、今年になって発表されたお気に入りの新譜を惜しげもなく投入。セレクションでとりわけ活躍してくれた40作(いずれも3曲以上をエントリー)のジャケットを、まずは『Incense Music for Bed Room』のCDと7インチ2タイトル、続いて最も愛着をもって聴いているピースフルなTurn On The Sunlight、そしてそれ以外のアーティストをABC順で掲載していますので、ぜひそれらの中身の魅力にも触れてみてください。

P.S.
内容的にも前作に続きとても好みだった、リリースされたばかりのBruno Berleの新作に、僕が2010年に編んだコンピ『Brother Where Are You』にも収めた愛してやまない曲、Arthur Russell「Love Comes Back」のカヴァーが入っていたのには、特に感激しました。Dee C Leeの26年ぶりの復活アルバムに、30年前『Free Soul Impressions』と同時にコンパイルした『Free Soul Visions』に選曲して、今では大人気曲となっているWeldon Irvine「I Love You」のカヴァーが入っていたのも嬉しかったですね。
シングルで敢えて特筆するなら、コンピ『Incense Music for Bed Room』にアナログLP限定300枚のマーヴィン・ゲイ・カヴァー集『What's Going On』から「God Is Love」の名演を収録させてもらった、The Vernon Springの新曲「Outswum」。UKジャズのエレクトロニック・アンビエント〜ネオ・クラシカル・サイドを代表する俊英ピアニストで、僕はその独特の美しく沁みるミュート・ピアノの音色や穏やかで温もりのあるアンビエンスに惹かれていますが、これは「Mai」という曲でコラボしていたこともある女性シンガーSaoirse-Junoが1年ほど前に発表していた、知られざる名曲の絶品カヴァーで、いつもながらアートワークも素敵です。以前Beverly Glenn-CopelandやEmahoy Tsege Mariam Gebruの秘宝も取り上げていましたが、The Vernon Springはカヴァーの名手でもありますね。追記で触れたジャケット4枚も、最後に併せて掲載しておきましょう。

V.A.『Incense Music for Bed Room』
Uyama Hiroto + Yoshiharu Takeda「Moon Child + Bliss of Landing」
haruka nakamura + Nobuyuki Nakajima「soiree (take 3) + Valsa de Euridice」
Turn On The Sunlight『Ocean Garden』
Adrianne Lenker『Bright Future』
Amanda Whiting『The Liminality Of Her』
Amaro Freitas『Y'Y』
Bruno Berle『No Reino Dos Afetos 2』
Bryony Jarman-Pinto『Below Dawn』
Carlos Niño, Idris Ackamoor & Nate Mercereau『Free, Dancing​.​.​.』
David Numwami『I Love You』
Dee C Lee『Just Something』
Discovery Zone『Quantum Web』
Emahoy Tsege Mariam Gebru『Souvenirs』
Faye Webster『Underdressed At The Symphony』
foamboy『Eating Me Alive』
Ganavya『Like The Sky I've Been Too Quiet』
Gas-Lab & Kristoffer Eikrem『Foreign Collections』
Golden Brown『Kindness』
The High Llamas『Hey Panda』
Jahari Massamba Unit (Karriem Riggins & Madlib)『YHWH is LOVE』
Jota.pê『Se o Meu Peito Fosse o Mundo』
Julian Lage『Speak To Me』
Kane Pour『The Last Wave』
Kingo Halla『Reflections』
love-sadKid & Erameld『Love Letters』
Mar Pujol『Can​ç​ons de rebost』
Matthew Halsall『Bright Sparkling Light』
The Memory Band『Never The Same Way Twice』
Mo Kolours『Original Flow: Chapter Two』
mystery tea.『Lovesick』
Nectar Woode『Nothing To Lose』
Norah Jones『Visions』
Raphael Gimenes『Dinamarca』
SAM MORTON『Daffodils & Dirt』
Shabason, Krgovich, Sage『Shabason, Krgovich, Sage』
Taylor Eigsti『Plot Armor』
Tiger Braun-White『Tiger』
Tyla『Tyla』
Waxahatchee『Tigers Blood』
V.A.『Brother Where Are You』
V.A.『Free Soul Impressions』
V.A.『Free Soul Visions』
The Vernon Spring「Outswum」

Dinner-time 土曜日22:00~24:00

Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00

Brunch-time 月曜日10:00~12:00

Brunch-time 火曜日10:00~12:00

Brunch-time 水曜日10:00~12:00

Brunch-time 木曜日10:00~12:00

特集 月曜日16:00~18:00

特集 火曜日16:00~18:00

特集 水曜日16:00~18:00

特集 木曜日16:00~18:00

特集 金曜日16:00~18:00

特集 土曜日16:00~18:00

特集 日曜日16:00~18:00




本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

Giorgio TumaとMike Sunの新曲「The Haze Of Age」が夢見心地なサウンドで気に入っている。それとVicky Farewellの「Tern Me On」という曲は懐かしさを感じてこれも気に入っている。どこか長閑で懐かしい曲が、春の麗らかな空気に合うのかもしれない。心地よく眠れそうな春感もすごく良い。暖かい春とそれに合う音楽はすごく好きだが、やはり花粉症だけはつらすぎる。なんとかならないものか。

Mike Sun & Giorgio Tuma「The Haze Of Age」
Vicky Farewell「Tern Me On」

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00

Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00

Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00

Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

本名に「Blossom(木に咲く花またはその開花)」と名付けられた人は、世にどれくらいいるのだろう? しかもその人は唯一無二の可憐な声を持っていて、後にこんなにも素敵な音楽家になるなんて。それはもう、奇跡としか思えない──。ブロッサム・ディアリーの音楽を聴くとき、僕はいつもそうして天を仰ぐ。『フィーリン・グッド・ビーイング・ミー:ザ・ロスト・アンド・ファウンド・ロンドン・セッションズ』は、彼女が渡英しロンドンのフォンタナ・レーベルに作品を残していた時期の未発表音源を27曲も収録した貴重な発掘盤で、昨年になってリリースされたもの。日本国内盤には英文ライナーノーツに対する35ページにも及ぶ丁寧な翻訳が付属していて、僕と同じような熱心なファンの方であれば、これを目にするためだけにでも手にする価値ある逸品と断言できます。そこには、彼女に魅了されてきた30年近くの間にめぐらせた様々なおもいへの答えが、はっきりと、いくつも記されていました。今回の春本番、開花の季節の深夜に選曲したのは「Didn’t We」ですが、これからじっくりと時間をかけて、全ての楽曲を季節ごとにお届けすることになるでしょう。

Blossom Dearie『Feeling Good Being Me: The Lost And Found London Sessions』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00




添田和幸 Kazuyuki Soeta

昨日WWWで観た韓国のサックス奏者、Kim Okiのライヴがあまりに素晴らしくて(幾度となく針を落としたラストの「Our Love」では思わず涙がこぼれ落ちました)、余韻に浸りながらこの原稿を書いているのですが、今回は選曲中に繰り返し聴いていたウルグアイのアコースティック・デュオ、Ensamble Acústicoのリイシュー盤をご紹介。1989年にカセット・テープのみでリリースされていた作品で、アコースティックなギター・アンサンブルを中心にオーボエやマリンバ、ヴィブラフォンといった楽器が奏でる、どこまでも透明感のある美しい名作です。

Ensamble Acústico『Un Exceso de Luz』
Natascha Rogers『Onaida』
FRANK LEONE & hrlum「QUE PEÑA」
Motti Rodan『סמבטיון』
Mar Pujol『Cançons de rebost』
Bridget Kearney『Comeback Kid』
Alison Jutta『hello, I don't know』
Bruno Berle『No Reino Dos Afetos 2』
Bryony Jarman-Pinto『Below Dawn』
Nectar Woode『Nothing To Lose』
Shaé Universe『Love's Letter』
Grégory Privat『Phoenix』
Dekker『Future Ghosts』
serpentwithfeet『GRIP』
Amanda Whiting『The Liminality Of Her』
Alina Bzhezhinska & Tony Kofi『Altera Vita』
Amaro Freitas『Y'Y』
Matthew Halsall『Bright Sparkling Light』
Jon Lloyd Quartet『Earth Songs』
Cornelia Nilsson『Where Do You Go?』
Canberk Ulaş『Echoes Of Becoming』
Adam Bałdych & Leszek Możdżer『Passacaglia』
Små Vågor / Henrik von Euler『Små Vågor 6』
Yirinda『Yirinda』
Lemon Quartet『Lemon Law』
Shabaka『Perceive its Beauty, Acknowledge its Grace』
Charles Esposito『Accidental Music』
Shabason, Krgovich, Sage『Shabason, Krgovich, Sage』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00




中上修作 Shusaku Nakagami

陳腐ないいかたですが、英国においてジャズはまだ「死んで」いません。では米国のジャズ・シーンはどうか、という反論は受け付けませんが、ジャズの故郷とされるネイションでは楽器が電化しようが、ドラムスが打ち込みになろうが「ダンス・ミュージック」という強固な幹が枝をのばしているがために、押しつけがましいところは否めませんが「まあ、これもジャズ、かなあ」と自然に収斂ができるのですね。メディア・コントロールも強固ですし。

英国ではそのような「幹」は見当たりません。見当たりませんが、戦術に長けた百戦錬磨ですから世界各地を植民地化し、各地の音楽を流入させる才能はあります。そのひとつがジャズなのですが、幹がないために数々のハイブリッドを生みだしてしまいます。そして、そのハイブリッドの仕方に抑揚があり、金の卵が小さなコミュニティーから自然的に発生しますので、押しつけがましいところがないのも英国ジャズの魅力なのかもしれません。

このアシュレイ・ヘンリーというひとは、現代における英国ジャズの中心人物です。ピアニストとしての力量やコンポージングも素晴らしく、このシングル曲をお聴きいただければ「どこまでがジャズ?」という閑人の議論が霧散することでしょう。真の意味での「ジャズ」の故郷はすでに英国を中心に、他国へ移っているのです。

Ashley Henry「Who We Are」

Dinner-time 水曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00




高木慶太 Keita Takagi

某雑誌のジャズ特集を読んで、いよいよジャズも同時代の音源とライヴを楽しむジャンルになり、ジャズ黄金期と呼ばれる1950〜60年代の録音物をありがたがることはもはや旧弊もしくはマニアックな嗜好品になったのだと悟った。
主従の逆転現象。
おお、ついに。
グラスパーは知っているが、ハンコックは知らない。そういうこと。
ならば、「新鮮に響くのはどっち?」と考えるのがセレクター脳。
今回の春選曲は、どんなに新しくても10年は経過している「かつての新譜」だけを集めてみた。

Morelenbaum²/Sakamoto『Casa』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00




FAT MASA

北海道の長かった冬が終わり、ずっと残るのではないかと思った雪もとけてなくなり、ゆっくり春が訪れております。そんな今、聴きたくなるのが、オランダの双子デュオTangarine。
70年代のウエストコースト、ソフト・ロックが目に浮かぶような美しいハーモニーに心打たれます。
春は引っ越しシーズンですが、ちなみに私もその渦中に巻き込まれてしまい、疲労困憊なため、引っ越し先にほど近い、支笏湖の丸駒温泉に湯治に行きたい気分です(笑)。

Tangarine『Blank Cassette』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00




三谷昌平 Shohei Mitani

桜の季節から若草香る新緑の季節にピッタリの作品をご紹介。アンバー・ナヴランはネオ・ソウル・ユニット、ムーンチャイルドのメンバーとしても知られるシンガー・ソングライターで、本作は彼女のセルフ・プロデュースによるソロ名義作。アルバムは全編を通してムーンチャイルド同様に心地よい空気感が流れる。Spring Selectionでは本作から「Away From The Noise」「Find Your Lane」をピックアップ。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

Amber Navran『Knock On The Orange Door』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00




渡辺裕介 Yusuke Watanabe

この春に歴史に残るアルバムが2枚リリースされました。
まず、オアシスのリアム・ギャラガーとストーン・ローゼズのジョン・スクワイアによるアルバム。
私の青春の2ページ、OasisとThe Stone Roses。
先行シングルですでに心を奪われる。
そしてLPを1曲目からじっくりと何度も堪能。
素晴らしいブルース・サイケデリック・アルバム。
まさに1960年代後半から1970年代前半のリアル再現タイプのアルバム。
しかし、どう考えてもこのアルバムからセレクションに収録する楽曲はありません。
しかしこのアルバムを全世界のミュージシャンが聴き、間違いなく影響を受けたりカヴァーしたり、あらゆるジャンルで変化して新たなかたちでまた次の時代の音が生まれてくるはずです。
それぐらい素晴らしいアルバム。
セレクションにこそ収録できませんでしたが、やはりこのテイストの60年代後半から70年代前半の音源を久々に蘇らせることができました。
と同時に、なんとDee C LeeがAcid Jazzレーベルから新作アルバムをリリース。
先行7インチ・シングルでレネ・ゲイヤーの「Be There In The Morning」をカヴァーしてまして、アレンジはノーマン・コナーズ・ヴァージョンなテイストですが、もちろん言うまでもなく素晴らしい。
爽やかなノーザン・ソウルなテイストとミディアムな70年代ソウルの魅力がぎっしり。
B面ラストには、ウェルドン・アーヴィンの「I Love You」のオリジナルに忠実なストレートなカヴァー。
この流れ、UKインディー・キッズだった私がフリー・ソウルに衝撃を受けた瞬間を思い出す縮図。
2024年、素晴らしすぎる音楽リリースに自分自身をふるい立たせてもらいました。
今年のリリースは、いろいろ影響を受けそうです。

Liam Gallagher & John Squire『Liam Gallagher & John Squire』
Dee C Lee『Just Something』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00

Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00




富永珠梨 Juri Tominaga

うららかな春の陽射しと、ふわりと鼻先をくすぐる若葉の匂いに誘われて、外へ街へと出かけたくなる今日この頃。そんな心弾む季節にぴったりなアルバムをご紹介いたします。アメリカのインディー・バンド、アイダのヴォーカリスト、エリザベス・ミッチェルがバンド活動と並行しながら制作を続けてきた、チルドレンズ・ミュージック・シリーズの中から2012年にリリースされた『Blue Clouds』を春の1枚にセレクトしました。デヴィッド・ボウイ、ジミ・へンドリックス、ヴァン・モリソン、ビル・ウィザース、さらには日本の「雪」や韓国の童謡など、ヴァラエティーに富んだ楽曲の数々を、愛娘ストレイちゃんの可愛らしいコーラスを交えながらカヴァーした、ハートウォームな空気に包まれた優しい聴き心地のアルバムです。エリザベスの穏やかで透き通るような歌声と、アメリカのフォーク・ソングやカントリー・ミュージックをベースにした、多幸感あふれるドリーミーなサウンドに、心がふわりと温められます。まるで春の妖精をイメージさせるような、愛らしいアートワークにも思わず笑顔がこぼれます。

Elizabeth Mitchell『Blue Clouds』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00




小林恭 Takashi Kobayashi

今回も新譜を中心に季節感に合うお気に入りのメロウでグルーヴィーな様々なジャンルの曲を選んでいますが、今回もその合間に心安らぐ、穏やかで、大らかな音楽をちりばめて選曲しています。特に橋本さんの新しいコンピ『Incense Music for Bed Room』のために新録音されたUyama Hirotoの「Moon Child」や、レコードで愛聴しているフォーキーなMarcus Lowry、アンビエントのSonmi451やShabason, Krgovich, Sage、ジャズ〜アンビエントの色濃いAmaro Freitas等々、緩急を効かせながら配置した素敵な曲たちに耳を傾けていただければ幸いです。

Uyama Hiroto + Yoshiharu Takeda「Moon Child + Bliss of Landing」
Marcus Lowry『Time, Time, Time』
Sonmi451『The Eighteen Minute Gap』
Shabason, Krgovich, Sage『Shabason, Krgovich, Sage』
Amaro Freitas『Y'Y』
Rosie Frater-Taylor『Featherweight』
park hye jin『Sail The Seven Seas』
Irini Arabatzi『She Holds A Song (for I​.​)』
DJ HARRISON『Shades Of Yesterday』
Daymé Arocena『Alkemi』
Tuck Ryan『Moving Towards The Light』
The Vernon Spring「Outswum」

Dinner-time 土曜日18:00~22:00




ヒロチカーノ hirochikano

2024年スプリング選曲を象徴する1曲として、ミニー・リパートンが残したサウンドへのオマージュあふれる現在進行形のソウル・シンガーSy Smithの最新アルバムから、イントロの小鳥のさえずりに溶け合うメロウなフェンダー・ローズとリムショットのアンンジが心地よい「Photograph」を紹介します。昨年から引き続き2024年も、フリー・ソウルやメロウ・グルーヴ嗜好の好リヴァイヴァル・リリースが続いていますが、僕ら世代だけでなく、こうやって新しい世代にもエヴァーグリーンな感性が継承されていることに喜びを感じます。他にも往年のFMラジオのノンストップ選曲を彷彿させるかのようなメロウでスムースな音楽を選りすぐりましたので、ぜひ春の柔らかい陽射しの下でお愉しみください。

Sy Smith『Until We Meet Again』

Brunch-time 日曜日10:00~12:00




吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

日曜日の夜のハイウェイ。平日より人けの少ない高層オフィスビルの間を抜け湾岸線へ入ると、FMラジオからは1957~58年の「国際地球観測年(I.G.Y.)」についての歌のカヴァーが流れてきた。フロントガラス越しにオレンジ色の街灯がほうき星のように流れ去っていくのが見える。世界はあの頃に思い描いていた通りになったのだろうか。ルームミラーに映る都市の光景は早まわしで時間を進めている映画のよう。

DJ HARRISON『Shades Of Yesterday』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00




高橋孝治 Koji Takahashi

春です。日本人には馴染みの薄いイースターという春の行事ですが、キリスト教信者の多い国ではクリスマスと同じくらい重要なもので、春を迎え入れるイヴェントとして大いに盛り上がる日なんですね。イエス・キリストがゴルゴダの丘で十字架にかけられて処刑されたのち、3日後に復活したことを記念する「復活祭」とも言われる行事で、シンボルとされている卵とウサギに関連した料理を食べ、卵の殻をカラフルに色付けするのも定番です。といっても自分はイースターの行事に触れたことはほとんどありません。しかしパティ・スミス・グループの名作サード・アルバム『Easter』は大変思い入れのある作品で、イースターといったらこの作品が真っ先に頭の中に浮かびます。キリスト復活のお話もこの作品に収録されている「Rock'n Roll Nigger」で知り、自分が人生で初めて聴いたパティ・スミスの作品もこのアルバムからのシングル曲で、当時全米で大ヒットを記録したブルース・スプリングスティーンとの共作曲「Because The Night」でした。彼女の作品は4作目の『Wave』までは全てが非の打ちどころがない名作だと思っているのですが、『Easter』だけジャケット写真にカラー写真(リン・ゴールドスミス撮影)が使用され、この作品に何か特別な力を与えていると思います。
さて今回の春選曲ですが、まずはイントロにSleeping At Lastの「Spring」を配置し、オクラホマ州で活動するベッドルーム・ポップ・アーティスト、Ford Chastainのまるで春の訪れを感じる暖かな風のような「No Way」をピックアップしてスタート。その風を紡ぐのが同じオクラホマ州で活動する6人組バンド、Chelsea Daysの「Ego Death」。続いてロンドンを拠点に活動するインディー・バンド、Still Cornersのニュー・アルバム『Dream Talk』収録曲で先行シングルとしてもリリースされた「The Dream」や、オハイオ州マンスフィールド出身の男性アーティスト、Swansea Skagの「The Fundamentals Of Disappearing」、イリノイ州シカゴで活動する男性アーティスト、Huron Johnのアコースティック風味のブレイクビーツ「Pick A Face For It」などをセレクト。先日Caroline Polachekが2023年発表のアルバム『Desire, I Want To Turn Into You』のリリース1周年を記念して、7曲の新たな作品を追加しデラックス版としてリリースした『Desire, I Want To Turn Into You: Everasking Edition』からは、Weyes Blood をフィーチャリングした「Butterfly Net」をセレクトしてみました。他にはロンドンで活動するセルビア系移民の女性アーティスト、Dana Gavanskiの「Let Them Row」や、ミズーリ州セントルイスの男性3人組ユニット、Starwolfのダンサブルな「Get Down Tonight」、ロサンゼルスの男性アーティスト、Conflict At Serenity Poolsの「Rosey Dream I」などが、この時間帯のお気に入りナンバーです。
ディナータイム後半は、サンフランシスコ生まれの女性アーティストで、カーター・ファミリーやティム・バックリーなどに影響されて育ったというJessica Prattの、5月にリリースされる4枚目のアルバム『Here In The Pitch』より先行シングルとしてリリースされた「Life Is」をピックアップしてスタート。この作品の根底に潜む60sな感覚は、ポップな感覚というより、サイケデリックな香りがしますね。そしてオーストラリアはメルボルン出身の女性アーティスト、Candy Mooreの昨年リリースされた現時点での最新アルバム『Anything, Always』収録曲「Headspin」や、アメリカの南東部にあるサウスカロライナ州で活動する男性アーティスト、Okaywillのローファイ感のあるダンス・ナンバー「Potions」、カナダのモントリオール出身の女性アーティスト、Jane Pennyのウィスパー・ヴォイスが心地よい「Messages」、ロサンゼルスで活動する男女デュオ、Veronicavonの「Deep End」などもセレクト。余談ですが、「Deep End」と言えば言わずもがな、わたくしのフェイヴァリット映画のひとつ、イエジー・スコリモフスキ監督、ジェーン・アッシャー主演の『早春』のオリジナル・タイトルでもありますね。もともとの意味は「〔川・湖・水泳プールなどで〕(一番)深い場所」ということですが、映画を観たことのある方なら「なるほど」と思うことでしょう(笑)。他にはロンドン出身の男性アーティスト、Bullionがこの4月にリリースするニュー・アルバム『Affection』収録曲「Rare」や、Radioheadのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッド、そしてSons Of Kemetのドラマーであるトム・スキナーによって結成されたThe Smileの今年1月にリリースされたニュー・アルバム『Wall Of Eyes』収録の深遠な響きを放つ「Teleharmonic」なども素敵な作品ですね。
ミッドナイトからの選曲は、久しぶりのミッドナイト・スペシャルと題して、90年代と2020年代のクラブ・ユースな作品を集めて、その融合選曲をしてみました。90年代の作品はBetty Boo、Life Without Buildings、Mutya Buena、Little Caesar、Julee Cruise、Colour Of Love、Frazier Chorus、Innocenceなど、珠玉のグラウンド・ビートやオルタナ・ラップ・ナンバーをピックアップ。そして2022年代の作品は、U.S. Girls、Jordana And TV Girl、Dad Sports、Mammals、Cassandra Jenkins、Phantom Youthなど、90年代のクラブでかけても話題になり盛り上がるであろう大好きな作品を集めて、90年代の作品とミックスしてみました。
さて今回の映画の話ですが、『ラストエンペラー』の4Kリマスター版ブルーレイが昨年末に発売され、218分の全長版日本語吹き替えが初収録され話題になりました。全長版日本語吹き替えの件は一度このコメント欄で触れましたが、1989年4月2日、3日、4日の3夜連続でテレビ朝日『日曜洋画劇場』において、日本で初めて全長版が放送され(劇場公開版は163分)、そのときに全編吹き替えが制作されました。しかしその後ソフト化されたときには140分程度の短縮版吹き替え音声しか収録されませんでした。そして遂にその全長版がソフト化となったのですが……。何と今回収録されたものは、リマスター版とは別に、映像特典として放送用映像を別途収録という形になったのです。つまりリマスター映像は字幕のみ、放送用吹き替え版は圧縮して特典映像として収録なんですね。それでなぜこのような形になったのか個人的に検証してみました。そしてわかったことですが、リマスター版の素材は微妙に放送用(以前のソフトの素材と同じもの)の映像と異なるのです。例えば刑務所で看守が歩く歩数が以前だと4歩だったのが、6歩になって2歩分の映像が長くなっているとか。これは本当に微妙な差で、ほぼ気づく人はいないと思います。なので吹き替え音声を編集しないと、リマスター版映像には載せ替えられないんですね。このことを不満に思っている方はかなりいると思われますが、検証するとこのような事実が判明しました。そしてこれをきっかけに、以前ソフト(VHS及びDVD)に収録されていた吹き替えがブルーレイ化されたのに未収録となった、スーザン・サランドン主演、共演ショーン・ペンの『デッドマン・ウォーキング』も旧DVD版と検証してみました。すると思った通り『ラストエンペラー』と同様の結果になりました。しかしこちらも本当に微妙な違いなので、全く同じ素材と言ってもほぼ気づくことはないと思います。調べてみると『スリーパーズ』や『ナインス・ゲート』といった作品も、ブルーレイには旧ソフトに収録されていた吹き替えが未収録らしいのですが、これも同じような理由ではないかと推測しております……。

P.S.
『ラストエンペラー』の218分全長版日本語吹き替えの件でもうひとつお話を。ノーカットと言われておりますが、実は映画館での戦争のニュース・シーンが一部カットされていたことも突き止めております(笑)。

Ford Chastain「No Way」
Chelsea Days「Ego Death」
Still Corners『Dream Talk』
Swansea Skag「The Fundamentals Of Disappearing」
Huron John『Indigo Jack & The New World Border』
Caroline Polachek『Desire, I Want To Turn Into You: Everasking Edition』
Dana Gavanski『Late Slap』
Starwolf「Get Down Tonight」
Conflict At Serenity Pools『Rosey Dreams EP』
Jessica Pratt『Here In The Pitch』
Candy Moore『Anything, Always』
Okaywill「Potions」
Jane Penny『Surfacing』
Veronicavon「Deep End」
Bullion『Affection』
The Smile『Wall Of Eyes』

Dinner-time 日曜日22:00~24:00

Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00




山本勇樹 Yuuki Yamamoto

例年では、このコメントを書いている時期に、東京では桜の開花を迎えるのですが、今年はまだその様子ではなさそうです。最近はただただひどい花粉症に悩まされているわけですが、それでもやっと暖かくなってきて、ふと春めいた陽射しを感じると、重たいコートを脱ぐように、フレッシュな気分になれるのが嬉しいです。今回のスプリング・セレクションは、そんなポジティヴな気分を表現できれば、という思いをこめて、新旧問わずとっておきの曲を集めてみました。春の定番サロン・ジャズ・ヴォーカル~ボサノヴァ、フォーキーなシンガー・ソングライターを中心に組み立てながら、少し変わり種も織り交ぜています。その中でも特におすすめなのはベルギーのシンガー・ソングライター、シャンタル・アクダの「The Friends Parade」。この曲は新しいアルバム『Silently Held』に収められていますが、なんと録音はオランダのChallenge Records。しかもビル・フリゼール、トーマス・モーガン、コリン・ステットソンといったECMでもおなじみの熟練ジャズ・ミュージシャンが参加というから見逃せません。曲調は淡々とした滋味深い印象ながらも、どこか強い意志や静かな情熱が伝わってくる名演で、どこか身を委ねたくなるような懐の深さも感じさせます。新しい季節、がんばりすぎで疲れた心もやさしく癒してくれそうです。

Chantal Acda & The Atlantic Drifters『Silently Held』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00




武田誠 Makoto Takeda

Maria HeinやFerran Palauなど、以前このセレクションでも取り上げたアーティストを擁するスペイン・バルセロナのレーベルHidden Trackより登場した、同カタルーニャ州リュサネス出身の1990年生まれの女性SSW、Mar Pujol。彼女の2年前のデビューEPは、シルヴィア・ペレス・クルースを筆頭に、最近ではLau Noahなど、現代カタルーニャの繊細なアコースティック・シーンに位置するようなスパニッシュの伝統的な色合いが漂う滋味深い作風でしたが、初のアルバムとなる本作では、その儚げなカタルーニャ語の歌声が、春に咲く可憐な花のようにほのかなポップ性をはらんだ、静謐としたフォーキーな楽曲に溶けこみ、芽吹きの季節に軽やかに響いてくれました。
今の時季なら、桜の花の間からそそがれる陽の光のことをイメージするかもしれない木もれ陽って、蒼青とした木の葉の間から降り注ぐ陽の光を指した初夏から夏にかけての季語なのかと思っていたのですが、実はそれぞれの季節にあてはめていい言葉らしいですね(たとえばそれが冬の梢であっても)。異なるリズム、ハーモニーの楽曲が連なって、あたかも自然な流れを作りだす選曲は、木もれ陽が作りだす偶然性の美しさとどこか通じる気もします──(ヴェンダースの『PERFECT DAYS』観ながらなんとなくそんなことを考えてました……)。

Reyna Tropical『Malegr​í​a』
Raphael Gimenes『Dinamarca』
Mar Pujol『Can​ç​ons de rebost』
Manami Kakudo『Contact』
LOVING『Any Light』
Maxine Funke「Clear」
Guilhem Flouzat & Isabel Sörling feat. Aaron Parks「Scarecrow」
SAM MORTON『Daffodils & Dirt』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00




waltzanova

今期は新曲も豊作だったのはもちろん、さまざまな新しい音楽との出会いのあったタームでした。まずはボビー・ハケットとビリー・バターフィールド、ルイス・エンリケの『Bobby/Billy/Brasil』です。盛岡のブックストア、BOOKNERDの早坂さんのエッセイ『コーヒーを、もう一杯』で知ったアルバム。これがゲイリー・マクファーランドの『Soft Samba』やパイザノ&ラフのアルバムのように素晴らしきソフト・サウンディングで、すっかり虜になってしまいました。タイロン・デイヴィスも今回のニュー・ディスカヴァリーですね。デビュー40周年を記念して発刊された『カーネーションの偉大なる40年』は、直枝さんと大田さんがこれまでのアルバムを振り返りながら語りまくる濃い一冊ですが、それを読んでいたら、直枝さんはタイロン・デイヴィスが大好きとのこと。彼のことはブランズウィック・レーベルの諸作で知ってはいましたが、なかなかきちんと音源にアクセスしなかったというのが事実。それを聴くと素晴らしいじゃありませんか。バーバラ・アクリンやシャイ・ライツもそうですが、さじ加減が絶妙のセンスです。カーティス・メイフィールドの「Tripping Out」を思わせるようなギター・カッティングの「Overdue」を今回は選びましたが、他にもいい曲がたくさんあって、今後の選曲で活躍してくれそうです。

そんな中でのアルバム・オブ・ザ・セレクションは、LAをベースに活動するプロ・ホイッスラー(口笛吹き)、モリー・ルイスの『On The Lips』。初期サバービアを思わせるラウンジ~エキゾティック~映画音楽テイストは2024年の今に新鮮で、海外の細野さんファンなんかにもウケそうです。僕好みのアーバンなブルー・アイド・ソウルの色濃いアルバムも豊作でした。まずはCosmo Lautaro『Lotus』。声質も含め、爽やかな官能性がこの時期にぴったりで、女性ヴォーカルとの相性もばっちり。中でもNaimaとの「Rumors」が何と言っても良かったです。「イスラエルのベニー・シングス」という触れ込みのSSW、iogiの2023年作『We Can Be Friends』もアルバム全体通して聴ける好作でした。ときどき垣間見せるポール・マッカートニー的なメロディー・センスがナイス。「Bossa Nova Days」を紹介して以来、気になっているジャズ・シンガーのマーク・ウィンクラーも、新作『The Rules Don‘t Apply』からDJ HARRISONもカヴァーしていたドナルド・フェイゲン「I.G.Y. (What A Beautiful World)」と迷いましたが、スウィンギンなサニー・ジャズ・チューン「Sunday In LA」がバッチリでした。素敵な水曜の午後が始まりそうですよね?

オープニング・クラシックは先日亡くなった小澤征爾指揮のラヴェル『子どもと魔法』からです。今年はガーシュウィンの名曲「Rhapsody In Blue」の初演から100年とのことで、それを記念した作品も数多くリリースされそうですが、ジャン=イヴ・ティボーデとマイケル・ファインスタインの『Gershwin Rhapsody』もそんな一枚。二人の名手がデュオ、ソロ、ヴォーカルというフォーマットでガーシュウィンの名曲を聴かせてくれます。最後になりましたが、橋本徹さんの最新コンピレイション『Incense Music for Bed Room』もリリースされましたね。“香り”をテーマにした新シリーズ第1弾で、今作は春の季節にふさわしい柔らかで優しく、ほのかにセンシュアリティーが薫る一枚。喩えるなら朧月夜のごとし、でしょうか。haruka nakamuraさんがビル・エヴァンスに捧げた名曲のオマージュ「soiree (take 3)」をセレクションのエンディングに置きました。今期も楽しんでいただければ嬉しいです。

小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ『Ravel: L'Enfant Et Les Sortilèges』
Jean-Yves Thibaudet & Michael Feinstein『Gershwin Rhapsody』
Mark Winkler『The Rules Don’t Apply』
iogi『We Can Be Friends』
Bobby Hackett & Billy Butterfield feat. Luiz Henrique『Bobby//Billy/Brasil』
Sam Gendel & Fabiano Do Nascimento『The Room』
Dina Ögon『Orion』
Bryony Jarman-Pinto「Moving Forward」
Carole King『Home Again - Live From Central Park, New York City, May 26, 1973』
Tyrone Davis『I Just Can't Keep On Going』
Cosmo Lautaro『Lotus』
Pedro Martins『RáDIO MISTéRIO』
Nectar Woode『Nothing To Lose』
Molly Lewis『On The Lips』
Jâms Coleman & Laura van der Heijden『Path To The Moon』
V.A.『Incense Music for Bed Room』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00


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