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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2021 Spring Selection(4月12日〜5月30日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

心待ちにしていた春が訪れ、例年なら最も心浮き立つSpring Selectionの季節ですが、昨年からのコロナ禍は続き、今年も手ばなしで春を祝福できるような感じではありませんね。それでも、音楽で少しでも時代の空気や街の雰囲気を軽やかに色づかせ、多幸感や(村上春樹さん言うところの)小確幸を感じられるものにできたらという希いをこめて、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間分を新たに選曲しました。
月〜日を通してTwilight-tmeの特集は、20周年を迎える「usen for Cafe Apres-midi」の集大成となるセレクションを意識して、「Music City Lovers」と題して。セレクター仲間と選んだ20周年記念コンピCDもリリースを予定していて、現在制作進行中ですので、ぜひ楽しみにお待ちいただけたらと思います。
その他の時間帯は、いつものように選りすぐりのニュー・アライヴァルを中心に。特に活躍してくれた32作のジャケットを掲載しておきますので、その中身の素晴らしさにも触れていただけたら嬉しいです。
個人的に愛聴したアルバムという観点なら、クラブ・シーンと密接する部分がクローズアップされがちなUKジャズに、こういうネオ・クラシカルでエレクトロニック・アンビエントな側面もあることを強調しておきたい、Neil CowleyとThe Vernon Springが2トップでしょうか。いや、スイス拠点のマルティカルチュラルでBLMとも共鳴するジャズ・コレクティヴNoumusoの、アフロビートやコラ〜ジャンベ〜カリンバといったアフリカ由来の楽器をまじえた名作『Freequency Of Da Sun』は、それ以上に聴いたかもしれません。
シングルも気に入った作品が多く、Free Soulファン必聴のSunni Colónの名曲、ブラジルの伝説Arthur Verocaiとの共演に歓喜したHiatus Kaiyote、好感を抱かずにいられないMVに自分にとっての“Superhero”たちのレコードも登場していて嬉しかったKiefer、NYジャズの大好きな3人が集ったTaylor Eigsti × Becca Stevens × Gretchen Parlatoを、代表としてリストアップしておきましたが、他にも聴き逃せない傑作が目白押しですので、ぜひとも選曲リストをトータルでチェックしてみてください。

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Neil Cowley『Hall Of Mirrors』
The Vernon Spring『A Plane Over Woods』
Yasmin Williams『Urban Driftwood』
Alice Phoebe Lou『Glow』
Sunni Colón「Provide」
Hiatus Kaiyote feat. Arthur Verocai「Get Sun」
Kiefer「Superhero」
Taylor Eigsti & Becca Stevens feat. Gretchen Parlato「Play With Me」
Petros Klampanis『Rooftop Stories』
Pino Palladino & Blake Mills『Notes With Attachments』
Andris Mattson『North』
UMI『Introspection Reimagined』
Mia Doi Todd『Music Life』
Konradsen『You Can Be Loved』
Figmore (Juicebox & 10.4 Rog)『Jumbo Street』
Conor Albert & Alice Auer『Smile』
Benny Sings『Music』
serpentwithfeet『DEACON』
Vegyn『Like A Good Old Friend』
Nappy Nina & JWords『Double Down』
Yeahman『Ostriconi』
Kaleema『Útera』
Katy Kirby『Cool Dry Place』
Renée Reed『Renée Reed』
Sun June『Somewhere』
JIM『Falling That You Know』
Joe Barbieri『Tratto Da Una Storia Vera』
Rogério Botter Maio『Por Um Triz』
Orquestra Afrosinfônica『Orín, a Língua dos Anjos』
Ballaké Sissoko『Djourou』
Caravela『Orla』
Noumuso『Freequency Of Da Sun』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
特集 月曜日16:00~18:00
特集 火曜日16:00~18:00
特集 水曜日16:00~18:00
特集 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

待ちに待った暖かい春だが、今回2020 Spring Selectionで取り上げるのは、早くも夏を先取りしてしまうかのような一枚。1985年サンフランシスコ生まれブルックリン在住、イェール大学のギター修士号を得た後フォーダム大学でギター教授をするマックス・ザッカーマンの『The Corner Office』は、ブギーでディスコな曲満載の都会的な作品で、サウンドはエレクトロニックな聴感があるにはあるが、カフェの音楽としても流せそうなソフトな聴き心地があるAOR。知らなかったのだが、東京のAdult Oriented Recordsというレコード・レーベルとCity Baby Recordsから初のコラボ・リリースとのこと。楽曲タイトルはじめ歌詞の中にたまに日本語も登場するので、完全に日本のリスナーに向けたものなのか。Free SoulやCity Popが好きな自分にとっては、間違いなく素直に好きになってしまうタイプの音楽だ。

2021spring_本多

Max Zuckerman 『The Corner Office』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

スウェーデンの大好きなシンガー・ソングライター、ホセ・ゴンザレス5年ぶりの新曲。自身のルーツ、アルゼンチンの公用語であるスペイン語で「私たちは誰なのか、どこへ行くのか、そしてなぜなのか」と歌われる美しいメロディー、そして優しく爪弾かれるギターのアルペジオは、まるで春風のよう。彼の穏やかな日常のシーンを切り取ったヴィデオ・クリップには、幼い娘と、生まれて間もない雛鳥の声が加えられている。

2021spring_中村

José González「El Invento」

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

春らしい色のジャケットが多く並びましたが、前作の『Unwind』が素晴らしかったヴァージニア州の女性ギタリスト、Yasmin Williamsの新作をピックアップ。 カリンバやコラを織り交ぜたアコースティックな響きが心地よい、春の陽射しの中でまどろみながら何度もリピートしてしまう作品です。

2021spring 添田

Yasmin Williams『Urban Driftwood』
JIM『Falling That You Know』
David Walters『Nocturne』
Omar Sosa『An East African Journey』
Peter Collins『Love And Mind』
Madelyn Grant『Purpose』
Hubbabubbaklubb『Drømmen drømmerne drømmer』
Alex Siegel『Shifting Scenery EP』
Alex Ferreira『TANDA』
Tomemitsu『Sun』
Carousel Casualties『Static Electricity Dreams Of Longevity』
Doohickey Cubicle『Don't Fix Anything ;)』
Ferran Palau『Parc』
Benny Sings『Music』
Bobby Renz『Eat A Rainbow』
Figmore『Jumbo Street』
Glue Trip「Água de Jamaica」
Michael Kirby『The Lion Inside You』
37MPH『Lerato』
Wenawedwa『Wenawedwa (You Alone)』
Silk Sonic「Leave The Door Open」
Liam Mockridge『Goodie Bag』
Nubiyan Twist『Freedom Fables』
Mia Doi Todd『Music Life』
Joe Dyson『Look Within』
Sika『Nubu』
Sam Gendel『Fresh Bread』
One Million Eyes『Brama』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

すでに桜は花筏、本格的な春の訪れにこころおどります。COVID-19以降はなにかと暗い話題が先行して鬱々とした気分が続いておりましたが、ワクチンで集団免疫が確保されることでいくらか希望がみえてきたように思います。コロナを克服し世界中で往来が再開された途端、爆発的な消費活動が勃発して数か月は世界的な好景気にみまわれるのは明白ですが、まずは身のまわりのことや家族を含めた隣人のことを大切にしニュー・スタンダードな世界に身を委ねたいものです。

ハービー・ハンコックが率いたヘッド・ハンターズのベーシスト、ポール・ジャクソンが逝ってしまいました。昨年はタワー・オブ・パワーのロッコ・プレスティア、元キング・クリムゾンのゴードン・ハスケルも鬼籍に入り、音楽史上重要なベーシストが次々と旅立っていくのは残念のひとこと。歳を重ねるというのは左にあらず。致し方ないと諦めるしかありませんが、コンポの至近で必死になってベース・ラインをコピーした中学生の頃を遠い目で想い出します。

ヘッド・ハンターズもHH、ハービー・ハンコックもHH。偶然とはいえリオーネル・ルエケの新譜『HH』にはおどろきました。タイトル通りハービー・ハンコックの曲ばかりを取り上げたコンセプト・アルバムですが、ヴォーカルとギターの絡め方、特にタイム感などは西アフリカ出身の彼ならではの粘り気があり、ギター1本とはとても思えない複雑かつカラフルなハーモニー。もし「弾き語りジャズ」というジャンルがあるとすれば、まさしくニュー・スタンダードに相応しいのではないでしょうか。

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Lionel Loueke『HH』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



髙木慶太 Keita Takagi

どんな楽曲にもついついほろ苦さを求めてしまう僕でも、新緑の季節にはその眩ゆい光線と解像度の高い色とりどりに素直に身を任せたくなる。エヴァーグリーン。ラヴ、ラヴ、ラヴ。

2021spring_高木

Donny Hathaway『Extension Of A Man』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

やっと長い冬が終わり春をせっかく迎えても気分がなかなか上がらない今日この頃にマルチナリアの新譜がすこぶる良くて、気持ちを取り戻せる。
「Feel Like Makin' Love」のカヴァー「Bom Demais」も心地よく、さらに今回最もテンション上がるのは、僕がDJ始めた1995年のバイブルとしてよく聴いた『Free Soul '90s』シリーズに収録されたBabyfaceの「Rock Bottom」のカヴァー「Tocando a Vida」に尽きる。
泣ける胸キュンBabyface節がポルトガル語と相まって、さらにグッときてしまいます(泣)。
駆け出しDJ当時、学生の頃に住んでいた下宿やアパート、行きつけのレコード店にクラブの匂いまで回想してしまう。免許なかった僕はバンド仲間だった2歳上のギター担当の先輩の愛車であるボロいスターレットでテープ作ってドライヴしてもらったなあ(笑)。
片思いしていたレコード店の女性スタッフへの恋バナを「Rock Bottom」で盛り立ててもらう、お世話になった一曲との思いがけない再会に、“出会い頭に感じたバイブレーション”にも似た、いいことありそうな気がしてならない予感大です!

2021spring マサ

Mart'nália『Sou Assim Ate Mudar』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

本年2月にリリースされたセカンド・アルバム『An Overview On Penomenal Nature』が話題のNYのシンガー・ソングライター、カサンドラ・ジェンキンス。今回のSpring Selectionでは彼女が2019年にリリースしたシングル「Hotel Lullaby (Acoustic)」をオープニングにセレクトしました。アメリカの作家、シュリーカーント・レディの詩からインスパイアされた本曲、2017年リリースのデビュー・アルバム『Play Till You Win』が初出なのですが、このシングル・ヴァージョンでは内省的な歌詞を際立たせるべく、ヴォーカルとアコースティック・ギター、そして弦楽四重奏以外を取り除き、よりシンプルなアレンジに生まれ変わらせています。可憐な歌声と心にすっと入ってくるような美しいストリングスが印象的な作品です。ぜひ耳を傾けていただければ幸いです。

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Cassandra Jenkins「Hotel Lullaby (Acoustic)」

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

春といえば桜の開花とともに毎年恒例だったFree Soulパーティー・モードに(橋本さん、コロナが過ぎ去ったら、Free Soulパーティーやりますので!)。
世の中が自粛と言えども身体はFree Soulなのであります。
先日、大学時代からの友人が単身赴任から自宅へ引っ越しということで、大量にあるレコードを段ボールに詰める作業を手伝いながら、当時のレコードを懐かしみながら、全然段ボールに入ることなく思い出話に話が弾み、レコードが部屋中に散らばるばかり。
これだけレコード/CDを買っても、やはり1枚1枚想い出が刻まれていて、これだけ盛り上がれるとは、改めてレコード/CDというモノの価値を再認識。
あのころ「どれだけ俺たちのFree Soul」を探し求めたことか。
コンピレイションが出るたびに、答え合わせのように、「こういうのもあるんや。ていうか、全然知らん」と安い焼酎で夜をあかしたものであります。
ということでマンチェスター・インディー好き永遠の一枚、Edna Wright名曲「Oops! Here I Go Again」サンプリングのIntastellaの名曲「Drifter」。
1982年USカンザス・ローカル盤にして美しくも心強いピアノが印象的なRuss LongのFree Soul、A面1曲目「Never Was Love」。
生涯の一枚として忘れてはならないShrineレーベルShirley Edwards「It's Your Love」のB面、感動を越えたヴォーカルとアレンジの「Dream My Heart」。
そうなるとブラジルのベーシストAlberto Continentinoのソロ・アルバム『Ao Som Dos Planetas』から、ピチカート・ファイヴ~インスタント・シトロンな「Sessão da Tarde」を。
楽しすぎます。
Free Soulテイスト多めの夏直前の楽しい金曜の夜をお楽しみください。

2021spring_渡辺

Intastella「Drifter」
Shirley Edwards「Dream My Heart」
Russ Long『Long On Jazz In Kansas City』
Alberto Continentino『Ao Som Dos Planetas』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

長い長い冬を越えて、わたしの住む北海道にもずっと心待ちにしていた大好きな季節がやってきました。ふわりとそよぐ春風と、さわやかな若葉の匂いに誘われて、ここ最近の休日は、朝起き抜けのまま(かろうじてパジャマではないけど、髪はボサボサ、顔はすっぴん)、ふらりと当てのないドライヴに出かけることがふえました。

行き先や目的などはとくに決めず、いつもその日の思いつきで車を走らせているのですが、あてずっぽうのわりにはときどき、ハッとするような絶景スポットや、心安らげる自分だけのパワースポットを発見したりして、地味だけどそう悪くない「ひとりレジャー」をひそかに満喫しています。

ふいに通りがかった新緑が美しい森の中で、胸いっぱい深呼吸をしたり、春の陽射しが躍る静かな海辺をゆっくり散歩したり、ただただ好きな音楽を聴きながら、運転席から流れる景色をぼーっと眺めたり。誰に会うわけでも、なにするわけでもなく、起き抜けのさえない姿のまま、どこか居心地のいい場所をみつけては、ひとりぼーんやりするだけなのですが、これがまた格別なのです。たとえばその帰り道に、温泉にでも寄って、ひとっ風呂浴びることなんかできたら、もうその時点で「完璧な休日」のいっちょ上がりです。

2021 Spring Selectionは、そんな肩肘張らない休日のドライヴをイメージしながら、ゆったりとした気分で選曲をしてみました。気づけば昨年のSpring Selection同様、今年もひとり勝手に「春のインドネシア祭り」を開催していました。この10年近く、インドネシアのポップスやジャズ界隈が、ほんとうに素晴らしくて、ずっと心奪われっぱなしなのです。どこか懐かしさを感じさせるナチュラルで爽快なサウンドと、素直でフレンドリーなメロディーが、胸の奥に仕舞い込んでいた、甘酸っぱい記憶をやさしく刺激しくれるよう。そんな愛してやまないインドネシアの音楽は、「usen for Cafe Apres-midi」の選曲においても、なくてはならない存在になっています。

今回選曲したインドネシア作品のなかで、とくにお気に入りだったアルバムをご紹介いたします。ヴォーカル&スネア・ドラム、ヴァイオリン、アコーディオンからなるインドネシア出身の女性トリオ、NonaRia(ノナリア)のデビュー・アルバム『NonaRia』。スウィング・ジャズやラグタイムなどをベースとした、ノスタルジックな雰囲気に包まれた、心温まるレトロ・ポップス。どの楽曲も愛らしく、ほがらかで、ハッピーな気分になれるものばかり。昔から聴きつづけてきたスタンダード・ナンバーのように、耳に心にすーっと馴染む優れた楽曲の数々は、なんとすべてメンバーによるオリジナル作品。レトロな空気感を演出するために、あえてモノラル録音で制作されたというエピソードにも驚きです。

ブラシでスネア・ドラムを叩きながら歌う(ときどき口笛も披露します)ヴォーカルの姿も、なんだかとってもユニークでチャーミングでなにより新鮮。サウンドはもちろん、カラフルでポップなファッションやメイク、そしてMVの中でまるで少女のように、屈託のない笑顔ではしゃぐ彼女たちの姿に、すっかりハートを鷲掴みされました。オフィシャルYouTubeチャンネルの動画を貼り付けましたので、よかったらチェックしてみてくださいね。ちなみに、このアルバムのなかで、わたしの一番お気に入りは、ヴォーカルのネシア・アルディと、男性ヴォーカリストによるデュエット作「Sebusur Pelangi」。昭和の日本を代表するデュエット・ソング、橋幸夫・吉永小百合「いつでも夢を」を思わずイメージしたくなる、「古きよき」感に満ちたハートウォームな名曲です。うららかな春にぴったりな一曲。ぜひ聴いてみてくださいね。

2021spring ジュリ

NonaRia『NonaRia』
Fadhilonn「It All (Happens Suddenly)」
Vira Talisa『TNF STUDIO LIVE (Live)』
Mondo Gascaro「April」
Vira Talisa『Vira Talisa』
Candra Darusman『Indahnya Sepi』
Ify Alyssa「Seirama」
Dhira Bongs『Head Over Heels』
Ardhito Pramono & Detik Waktu Quartet「Waktuku Hampa」
Dua Empat「Happiness Under Your Nose (feat. Benny Benack III)」

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

最近出会った素晴らしい音楽をメインに、このチャンネルと時間帯にあった選りすぐりの曲を4時間お届けします。
ただいま評伝「細野晴臣と彼らの時代」を読んでいるのですが、その一説で妙に納得した言葉がありました。
「自分がいいと思ってつくってきたものは、自分が生まれる前からすでにあったのだと。僕は歴史の一点にいて、それを流れのなかから汲み取ることによって先人から受け継ぎ、次に渡すだけなのだと。もちろん、そこで何もやらないわけでもなく、自分のサインをちょんと入れて渡す──それこそがポップスに関わる醍醐味なのだ」。自分が行っているデザインの仕事もまさにそうだし、ここで選んだミュージシャンたちもポップスに関わる醍醐味を感じながら、次につないでいるのではないかと。選んだ曲たちは、それぞれのサインがちょんと入っているから、聴いてみるとどこか懐かしいけど新鮮に響くのだと思います。なのでみなさまにも新鮮に響くかどうか、耳を傾けていただければとても嬉しいです。

2021spring 小林

Ferran Palau『Parc』
Gretchen Parlato『Flor』
Mindchatter『Imaginary Audience』
D'aguera『D'aguera』
Danny Keane『Roamin'』
Walker「Sweet Thing」
Sjava『Umsebenzi』
a l l i e「Bet」
Alle『Alletiders』
Konradsen『You Can Be Loved』
Jerome Jennings『Solidarity』
Figmore「Rosie」
Antonio Loureiro「Saudade」
Snowpoet『Wait For Me』
Men I Trust「Tides」
Nubiyan Twist『Freedom Fables』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

今回の「春」選曲の中で紹介するのは、ブルーノ・メジャーのサウドシズモ溢れる名曲の中から、サビの終わりで囁くように繰り返される「I’ll say goodby on a beautiful spring day」の歌詞が深く心に染み入る、美しい春の日の別れの情景を描いた「Regent's Park」。この特別な曲は、かつてバーデン・パウエルとピエール・バルーが残してくれた奇跡の録音で教えてくれたように、今はもう会えなくなってしまった大切な人を想うときに心に灯る“Saudade”という言葉の真意を、あなたに優しく教えてくれるでしょう。

2021spring_野村

Bruno Major『To Let A Good Thing Die』

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

静かに光りが降り注ぐような厳かなホーンの音に包まれながら「Song Of Trouble」のSufjan Stevensの淡い歌声が切なく響く。Bon IverやPaul Simonのバンドで活動したニュージャージーのトランペット/フレンチホルン奏者のC.J. CamerieriのプロジェクトCARM。Bon IverのJustin Vernonや、Yo La TengoのGeorgia Hubley、Ira Kaplanなどさまざまなヴォーカリストをゲストに迎えてホーンでの新たな音の可能性を探求している。Sufjan Stevensの穏やかな歌声は、どこか映画のエンドロールを思わせる。

2021spring_吉本

CARM『CARM』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

もう春なんです。と、はっぴいえんど風の言いまわしで始まりましたが、単におっさんになったからなのか、それともコロナの影響からなのか、この1年は普段の3倍くらいのスピードで時が過ぎていった気がします。特別何をしたわけでもなく、ただ引きこもっていただけの1年間でしたが、ふと、もしこのコロナによるパンデミックが自分の大学時代に起こっていたら、果たして今と同じ自分がいるのかと考えてしまいました。このチャンネルに参加していることもそうですが、長くお付き合いしている大切な友人の多くは、名古屋から大学生活を送るために東京に上京し、毎日のようにいろいろな場所に出向き、そのときにしかできなかった特別な経験をし、そこで人生においての宝である大切な友人たちとの出会いが生まれました。しかし当時、今現在世界に蔓延しているコロナが流行し、そのような特別な機会を奪われたらと考えると、今と同じ自分は存在しないのではと思うのです。だから若者たちのことを考えると、とても心が苦しくなります。本来なら素晴らしい出会いが生まれ、将来の自分にとって大切な人にめぐり合っている可能性があるのに、今はその機会が奪われ、本来は存在していたであろう人生の大切な交差点が遮断されているのです。しかしスピードが遅いとの意見もありますが、コロナのワクチン接種がここ日本でも始まりました。コロナの終息が確実に近づいていると思います。近い未来には旅行に飲み会、カラオケやライヴにスポーツ観戦、演劇、芸術鑑賞など楽しいことが山ほど待っています。誰しも我慢には限度があるでしょうが、もう少しだけ辛抱しましょう。

ということで、今回の春選曲は先に見えてきた希望の光を表現しようと、優しく暖かな流れを意識して構成してみました。
まずはイントロにスリーピング・アット・ラストのインストゥルメンタル・ナンバーで「牧歌的」という意味を持つ「Almost Idyllic」を配し、コロナの今、とても響く「普通」という言葉をタイトルにしたフィラデルフィアの4人組バンド、Besphrenzの「Ordinary」に繋げてスタート。次に最近の選曲では常連となっているアリシア・クララのスウィートでメロウな「Stones Like Eyes」、ロンドンのシンガー・ソングライターのシュラが、サウス・ロンドンで活躍するシンガー、ロージー・ロウをフィーチャーしてリリースしたニュー・シングル「Obsession」、フロリダはマイアミ出身のアーティストMayeの最新シングル「Yours」など、ソフィスティケイトされた女性アーティストの作品を挟み、イギリスはブリストル出身のロビ・ミッチのほんのりとサイケデリックな香りが漂う「Brother」や、オレゴンのドリーム・ポップ・バンド、ブルー・キャノピーのソフトなダンス・ナンバー「Banji」などをセレクト。
ディナータイム後半はフランス・パリ出身の2人組、シャルロット・フィーヴァーのコケティッシュなヴォーカルが可愛らしい「JTM」や、ロサンゼルス出身のドリーム・ポップ・シンガーSonia Gadhiaが、カナダ出身でカリフォルニアを拠点に活動するアーティストのキャッスルビートとタッグを組んでリリースした「Be Mine」、ニュージャージー州レッドバンクで活動する4人組、ヤング・ライジング・サンズの「Sunday Sunshine」、ペンシルヴェニア州ランカスター出身のシンガー・ソングライター、Tyler Burkhartのほんのり切ない「Only Yesterday」、テキサス州オースティンを拠点に活動するSloan Strubleの音楽プロジェクト、デイグロウの新作「Close To You」などをピックアップ。

ミッドナイトからの選曲は、ニューヨークはブルックリン出身の2人組、Toledoの暖かな春の訪れにぴったりなニュー・シングル「Sunday Funday」や、カナダのアーティスト、アーロン・パウエルの音楽プロジェクトFog Lakeのニュー・アルバム『Tragedy Reel』収録曲の「Jitterbug」、ロサンゼルスのサイケデリック・インディー・ロック・バンド、アンダーカヴァー・ドリーム・ラヴァーズのニュー・シングル「Maybe It's Just Rare」、ミシガン州出身のデュオCal In Redのメロウな浮遊感が心地よい「Pool」、そしてサンディエゴで活動するローファイ・アーティスト、ヘザーがリリースした新作EP収録の「Oidar」などをセレクト。
ミッドナイトの後半も春らしい柔らかな風を感じるヴァージニア州シャーロッツヴィル出身のドリーム・ポップ・バンド、Stray Fossaの「Orange Days」や、ロサンゼルス出身のサイケデリック・バンド、ゴールデンサンズの「Eazy Love」、南アフリカはケープタウンで活動する4人組バンド、イヤー・オブ・ドッグスの「Sweet Red」、ニュージーランドのアーティストMerkのニュー・アルバム『Infinite Youth』よりピックアップした「Gold」などを選んで、春をイメージした選曲を構成してみましたが、今回のセレクションが先に述べたように、コロナの終焉が見えてきた希望の灯りに寄り添うBGMになってくれたら幸いです。

さて、ここからはいつものようにくだらないお話をお届けするのですが、今回もどっぷりハマっている吹き替え映画の豆知識ということで、新たに発見した吹き替え映画に関するトリヴィアをご紹介しましょう。先日の3月10日にBSテレ東でソフト化されていないレアな1986年にバブルガム・ブラザーズが吹き替えを担当した『ブルース・ブラザース』が再び放送され、吹き替えファンの間でちょっとした話題になりましたが、今回は昔のTV吹き替え音声がソフト化されたにもかかわらず、残念なことにセリフの一部が欠落しているものがあるので、そのことについて書いてみようと思います。欠落が見つかった1つめの作品はマイケル・チミノ監督、出演はクリント・イーストウッドとジェフ・ブリッジスの1974年作『サンダーボルト』です。クリント・イーストウッド役をご存じ山田康雄、ジェフ・ブリッジス役を歌手としても有名な佐々木功が担当したこの作品ですが、3か所のセリフが欠落しています(これはアマゾンのカスタマー・レヴューで知りました)。
まずは冒頭のライトフッドが中古車屋から車を盗む場面で「俺、片足義足なんだ」とディーラーと会話をする部分。2つめはライトフッドがサンダーボルトに車中で初めて名前を言うシーンでの「インディアンか?」「いや、普通のアメリカ人」といったセリフ。3つめがラスト近く、ジョージ・ケネディーがショッピング・モール内で番犬に襲われて死ぬシーンで、駆けつけた警察官が「嫌なもの見ちまったな」と言うセリフ。なぜこのセリフが製品化されたときに欠落したのかはわかりませんが、ちょっと残念な話ですね。しかしこの吹き替え版が嬉しいことに今年の1月9日にBS-TBSで再放送されたので、そのときにこの3つのシーンを確認してみたところ、全てのセリフは欠落することなくちゃんと放送されていました。ということで、この放送版は永久保存版としてDVDにしっかりと焼いておきました(笑)。
そしてもうひとつ吹き替えセリフの欠落を確認した作品が、1970年に公開された戦争コメディー映画の『戦略大作戦』という作品です。この映画は吹き替えで観るべきとの意見が圧倒的に多いほど、豪華声優陣の見事な仕事が話題の映画で、吹き替え収録のソフトのタイトルも『吹替の帝王』と名付けられているほどです(笑)。中でもドナルド・サザーランド演じるオッドボール軍曹を担当した名俳優、宍戸錠の台詞まわしが素晴らしく、吹き替え版の魅力のひとつに挙げられていますが、そのオッドボール軍曹のシーンで、爆破された橋の復旧を味方の軍曹に電話で依頼するシーンでセリフの欠落が見つかりました。それは、味方軍曹のセリフがブルーレイ版では突然オリジナル英語音声になり、「精神病院じゃあるまいな」という字幕に切り替わってしまうのです。実際TVで放送されたときは、ここに「ちょと待てよ、お前また精神病院に戻ったんじゃねーんだろうなあ」というセリフがあるのですが、なぜかこの部分だけが欠落していました。しかしTV放送時のこのシーンが、ありがたいことにYouTubeにアップされているので、吹き替え音声を無事に確認することができました。さらに細かい箇所ですがもう1か所、映画の冒頭にTV版では「上官の特命を受けたケリーは、折からの雨と、闇に紛れてドイツ軍の最前線をひそかに突破」というナレイションが入るのですが、この「ひそかに突破」というセリフの「突破」の一言がブルーレイ版では欠落しています。そしてこの欠落部分もTV放送当時の吹き替え全体を音声だけ(おそらくカセットテープで録音したのでしょう)YouTubeにアップしている方がいらっしゃったので、そちらで確認することができます。

と、今回も吹き替え映画の魅力について語っておりますが、今回も自身の覚え書きの意味を込めてもうひとつトリヴィアを語ってみましょう。昔のTV放送の吹き替え音声収録は今ではソフト販売において貴重なコンテンツのひとつになっていますが、綺麗な映像に音声を載せ替えているだけで、別の映像を作らなければいけないTV放送独自で行われていた映像編集の再現は施されていません(注・素晴らしい仕事で定評のあるスティングレイ社の製品には特典映像でTV放送を完全復元している商品もあります)。ということで、今回独自調査で判明した、TV放送時にシーンの入れ替えを確認できた作品もいくつかご紹介しましょう。

まずは何度もこのコメント欄でご紹介している通称「サスペリア版」と呼ばれる「木曜洋画劇場」で放送された『ゾンビ』です。こちらはネット内でもファンの方が指摘をしていましたが、暴走族がショッピング・モールに侵入するシーンで、オリジナルの映画は、「ドアの鍵をマシンガンで破壊」→「暴走族のバイク進行」→「警報装置が鳴る」となっていますが、TV版は「暴走族のバイク進行」→「ドアの鍵をマシンガンで破壊」→「警報装置が鳴る」に変更されています。これはTV版の方が流れとしては良いですね。
次の作品は『遊星からの物体X』や『エスケープ・フロム・L.A.』といった作品で有名なジョン・カーペンター監督の1988年作『ゼイリブ』です。この映画では、主人公のナダがサングラスの特殊な機能を発見し、本屋を後にした直後のシーンで、オリジナル版では「肉眼では見えないレーダーが付けられた信号」→「空を見上げながら歩くナダ」→「美容室で黒髪をとくエイリアン」→「ナダのアップ」→「パーマをかけるエイリアン」となっていますが、TV版では、「空を見上げながら歩くナダ」→「肉眼では見えないレーダーが付けられた信号」→「ナダのアップ」→「美容室で黒髪をとくエイリアン」→「パーマをかけるエイリアン」となっていました。
そしてもう1作品、美しき若きデヴィッド・ボウイが主演した、ニコラス・ローグ監督が1976年に制作したイギリス映画『地球に落ちてきた男』です。なんとつい先日、テレビ東京で放送された貴重なTV放送版がニコニコ動画にアップされたので、このTV版を隅から隅まで検証してみたところ、冒頭ボウイが雑貨屋で指輪を売却した後のシーンにTV版独特のシーン入れ替えの編集作業が見つかりました。オリジナル版では、「川辺でボウイが水を飲む」→「ボウイがポケットの中から大金を取り出し数える」→「トラックに乗った牛の群れ」→「洋服の中から売却した指輪と同じものを大量に取り出す」という流れになっている箇所がTV版では、「洋服の中から売却した指輪と同じものを大量に取り出す」→「トラックに乗った牛の群れ」→「ボウイがポケットの中から大金を取り出し数える」となっていたのです。これはこの部分にTV版独自の、宝石商の店員による「20ドルですって? そいつは酷い。ひとつ500ドルはするなあ。全部引き取ります。いいでしょう?」というナレイションが入るので、指輪は大量にあって、それを全て売り払い大金を手に入れたという流れを表現しているのだと思います。テレビ東京版は放送枠のために1時間ほど映像をカットしているのですが、大胆にシーンをカットするのではなくかなり細かなカット作業が施されており、さらにシーンを入れ替えることによって自然な流れを作るという日本人ならではの事細かい繊細な編集作業が確認できたことに感動しました。

最後に実はこの「usen for Cafe Apres-midi」チャンネルにおいても、優秀なスタッフによる細かな編集作業が随所に施されているのです。以前自分の選曲を放送日に聴いたときに感じたことですが、曲と曲の繋ぎの繊細さに感動したのは言わずもがなで、他に一例として曲のエンディングがブツっと切れる作品をピックアップしたときに、その部分がフェイドアウトで滑らかに終わるよう、違和感のない細かな編集がされていたことにも感心しました。これは商業施設で流れるときにお客様に戸惑いを与えるのを避けるためだと聞きましたが、いやはやなんとも素晴らしい考えですね。毎度しっかりとした確認と編集作業をしてくれているUSENのスタッフには感謝しかありませんが、第1回めの緊急事態宣言が出されたときから、編集作業のために出社をし、しっかりとした仕事をしてくれたスタッフの方々には本当に頭が下がります。

2021spring 高橋

Besphrenz「Ordinary」
Shura feat. Rosie Lowe「Obsession」
Maye「Yours」
Robi Mitch「Brother」
Charlotte Fever「JTM」
Sonia Gadhia「Be Mine」
Young Rising Sons「Sunday Sunshine」
Dayglow「Close To You」
Toledo『Jockeys Of Love』
Fog Lake『Tragedy Reel』
The Undercover Dream Lovers「Maybe It's Just Rare」
Cal In Red「Pool」
Stray Fossa『With You For Ever』
Goldensuns「Eazy Love」
Year Of Dogs「Sweet Red」
Merk『Infinite Youth』

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

4月は新しい季節の始まりです。今年は昨年同様に、より一層に特別な思いが宿ります。先日、東京は桜が満開を迎えましたが、その毎年変わらず咲き誇る様子を眺めていると、ふと心の拠りどころのようなものを感じました。音楽もまた、そんな存在になればと思い、気持ちも新たにして、春の陽気に似合うとっておきの曲を集めてみました。瑞々しい輝きを放つミナス音楽~ボサノヴァ、そよ風のように心地よいフォーキーなシンガー・ソングライター、そして優雅な趣のあるサロン・ジャズなど、どれもランチタイムのひとときにぴったりの曲ばかりです。中でも、最近よく聴いているサラ・ワトキンスの新作『Under The Pepper Tree』から、大好きな「Pure Imagination」をエントリーしました。こちらはダイアナ・パントン、イノセンス・ミッション、クレア&ザ・リーズンズのようなピースフルな雰囲気に包まれた傑作です。 ぜひお楽しみください!

2021spring_山本

Sara Watkins『Under The Pepper Tree』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

フランスのシンガー・ソングライター、マチュー・ボガート。彼の楽曲が今まで「usen for Cafe Apres-midi」でもよく取り上げられていたことは、セレクターたちの選曲リストに目を通して気づかされていましたが、そんな彼の5年ぶりの新作がリリースされました。なにより、1995年のデビュー作のレヴュー記事をその当時輸入盤紹介欄を担当していた雑誌に掲載させてもらったときから強く推し続けているお気に入りのアーティストなんですが、そんな彼のベッドルーム・ポップ感覚の“ヌーヴェル・ポップ・フランセーズ”な楽曲が、2021年にも変わらず届けられたこと、そしてその歌がけっして古びることなく選曲に馴染んでいることがとても嬉しく思えました。
春宵一刻値千金、なんて古い漢詩もあるように、今回のSpring Selectionではそんな春の甘く芳しい宵闇へと向かう15時以降の時間帯から、Y La BambaをフィーチャーしたDurand Jones & The Indications「Cruisin' To The Parque」を始めとする心静まるメロウなトーンのナンバーを連ねています。日に日に陽が長くなって気温も気分もおだやかですごしやすくなってくる街の風景に、うまく溶けこんでくれたらいいかな。

2021spring_武田

Mathieu Boogaerts『En anglais』
Jérôme Minière「Deux choses à la fois」
Charles Dollé「Morning Commute」
John Andrews & The Yawns『Cookbook』
Durand Jones & The Indications feat. Y La Bamba「Cruisin' To The Parque」
Emawk『Highroad』
WOOM『Into The Rest』
Dino Saluzzi『Albores』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

今回のセレクションは、NYジャズの歌姫、グレッチェン・パーラト10年ぶりの新作『Flor』がインスピレイションのひとつの核になりました。結婚と出産を経て届けられたのは、まろやかなアコースティック・メロウネスに満ちた“音楽の花束”。クラシカルとブラジリアン・ミュージックのフィールを強く感じさせるのも印象的でした。Bandcampでオーダーしたクリア・ピンクのアナログ盤を我が家のDJブースに飾っているのですが、春の気分を演出してくれています。アルバム収録曲はもちろん、ジョアン・ジルベルトで知られる「E Preciso Perdoar」の坂本龍一+カエターノ・ヴェローゾのヴァージョン、デヴィッド・ボウイの生前最後の録音曲「No Plan」(この曲の素晴らしさを遅ればせながら実感しました)など、カヴァーされていた曲も盛り混ぜ、さながら『Flor』をめぐる小特集といった趣になっています。アイアート・モレイラを迎え、ブラジリアン・リズムでアレンジされた「Roy Allan」は、2018年に亡くなったロイ・ハーグローヴの曲。大空へと広がっていくような伸びやかなスキャットを聴きながら、彼への追悼の思いに胸が締めつけられました。

サンパウロのベーシスト、フィ・マロスティカの『Visão do Mar』も素晴らしいブラジリアン・ジャズ・アルバムでした。朝や午前中に流していると心洗われるすがすがしい作品で、思わず窓を開け放ちたくなります(花粉が心配なのでやりませんが・笑)。娘さんの手によるという、水彩で描かれたジャケットもいい感じですね。今回はタチアナ・パーハとヴァネッサ・モレーノを迎えた爽やかな「Borboleta」をセレクトしましたが、モニカ・サウマーゾの歌うタイトル曲など、どの曲もオススメです。

ミナスが生んだ至宝、ロー・ボルジェス『Dínamo』も推薦しておきたい一枚。彼はここ数年精力的に活動していて、つい最近も新作『Muito Além do Fim』がリリースされたばかりなのですが、今回ご紹介する『Dínamo』は2020年のリリースです。最新作はロックっぽさが比較的前面に出ていますが、『Dínamo』では彼の無二の個性である抜群のソングライティング・センスが味わえる(特に「Desvario」は泣ける名曲です!)ので、ぜひ一聴していただきたいですね。『街角クラブ』や彼の初期の2枚のアルバムがお好きな方なら間違いないので、ぜひ!

Spring Selectionにふさわしく、カラフルなヴァイナルがリリースされた作品群も大充実+大活躍。インディー・ショップ限定マスタード・カラーのアーロ・パークス『Collapsed In Sunbeams』、ミルキー・カラーのピューマ・ブルー『In Praise Of Shadows』、そして音源のリリース自体は昨年でしたが、ピンク・ヴァイナルは今春の本命盤? ルース・ヨンカー&ディーン・ティペットと、どれもハイリー・レコメンドです。コロナ禍だからこそ、これらの作品をポータブル・プレイヤーに載せて公園でピクニック……なんて想像をしてしまいますね。まだアナログは出ていませんが、「ウェールズ発のブラジリアン・ミュージック!」という触れ込みで前作が話題を集めたカーウィン・エリス&リオ・18の新作『MAS』もこの流れで紹介しておきたい秀作アルバムです。

マッドリブの新作『Sound Ancestors』を聴いていたことがきっかけで生まれた、春のメロウ・ビーツまつりという感じの時間帯も個人的なお気に入りです。まずは実家の倉庫にあるはずの7インチを探したくなったダドリー・パーキンス問答無用のクラシック「Flowers」、その「Flowers」をカヴァーしたイタリアのプロジェクト、ミックステーパーズによる「Bloom」、デバージ「I Like It」を下敷きにしたLiv.e「You The One Fish In The Sea」、スライ~アル・グリーン的なファンクネスを感じさせるオリヴィエ・セント・ルイス「Serotonin」、SiRのアイズレー・ブラザーズのメロウ・クラシック・カヴァー「Footsteps In The Dark」など間違いない曲ばかり。特にLiv.eは今回のタイミングで聴いたのですが、昨年のアルバム『Couldn’t Wait To Tell You...』がとても良かったです。同郷のエリカ・バドゥやジョージア・アン・マルドロウはもちろん、ストーンズ・スロウやオッド・フューチャー周辺との親近性を感じさせるカラフルなミックステープ的作品で、すっかり最近のヘヴィー・ローテイションです。

最後はオープニング・クラシック周りのエピソードです。ミルウォーキー出身のピアニスト、デヴィッド・ヘイゼルタインによるチャイコフスキー「花のワルツ」の品のあるサロン・ジャズ・カヴァーを選んでみました。グレッチェン・パーラトの曲を挟んでのステイシー・ケントは前セレクションに続けてのエントリー。というのも、タイトルが「I Wish I Could Go Travelling Again」だったからです。歌詞は彼女のクリエイティヴ・パートナーのひとりといえるカズオ・イシグロによるもの。またもう一度旅したい、と歌われる心情に、単なる場所的なものだけでなく心の自由を求めるそれを読み取ることは容易でしょう。もう少し先にはそんな日々があることを信じて、もうしばらくは音の中で旅を楽しみたいと思います。

2021spring ワルツ

Gretchen Parlato『Flor』
Fi Maróstica『Visão do Mar』
Lô Borges『Dínamo』
Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』
Puma Blue『In Praise Of Shadows』
Carwin Ellis & Rio 18『MAS』
Liv.e『Couldn't Wait To Tell You​.​.​.』
David Hazeltine Trio『Impromptu』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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