Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew
2018 Summer Selection(7月9日〜8月26日)
橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」
詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/
橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto
夏、光あふれる季節の思い出を彩る素敵なサウンドトラックとなることを願って、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に計34時間分を新たに選曲した。
金・土・日トワイライトタイムの特集は、「usen for Cafe Apres-midi」版2018年上半期ベスト・セレクション。本当に大豊作の中から6時間に厳選したが、推薦盤を一枚だけ特筆するなら、7/27にアプレミディ・レコーズからCDリリースも決まった、前々回のこのコラムで「最もヘヴィー・ローテイションだったかもしれない」と紹介したカリフォルニアを拠点とする若きSSWマイケル・セイヤーの『Bad Bonez』。21世紀版シュギー・オーティス×マイケル・フランクスというか、マック・デマルコやホームシェイクのような脱力系ローファイ・ポップとも親和性が高い、揺らぐエレピのメロウネスもひたすら気持ちよいスウィート・サイケデリアに溶けだす甘美な極上ベッドルーム・ソウル〜チルアウト・AORで、そこはかとなく漂うブラジル風味と“ひとり感”にも強く惹かれる。アイスクリームとろけるような暑い暑い夏にこそ聴きたい、ある種の酩酊感をたたえた名作だ。ジャケットのポートレイト・ぺインティングもとても印象的なので、ぜひ盤を手に取ってみてほしい。
ニュー・アライヴァルのアルバム群も相変わらず充実しているが、曲単位ではやはり上半期ベストに選んだDamian Lemar Hudsonの「Voyager Drive」にとにかく夢中だ。昨年のLogicとの共演・共作で知られるようになったLAの男性ブラック・シンガーで、この曲はひたすら気持ちよさそうにカリフォルニアをドライヴしているMVも最高。歌もグルーヴも聴いていて何か思いだすなと思いをめぐらせていて、「そうだ、シャーデーだ」と気づいたときの感激もひとしおで、僕はシャーデー「Love Is Stronger Than Pride」を好カヴァーしたAmber Markにリレーせずにはいられなかった。
僕が2015年のNo.1アルバムに選んだドニー・トランペット&ザ・ソーシャル・エクスペリメント『Surf』の延長線上にあるような心疼くサウンドとなった、SoXのキーボード奏者Peter CottonTaleの新曲「Forever Always」も大好きすぎる。あの名曲「Sunday Candy」の続編と言いたくなるような、イントロから胸がキュンとするサマー・スウィート・ヒップホップにして、多幸感あふれるゴスペル・コーラスが至福へと誘うラヴ・ソング。お馴染みチャンス・ザ・ラッパーにダニエル・シーザーやレックス・オレンジ・カウンティーといったフィーチャリング陣も、僕好みの組み合わせとしか言いようがない。
以上2曲に続くこの夏の個人的アンセムになるに違いないのが(つまりいま最も聴いている3曲ということなのだが)、オスカー・ジェロームのニュー・シングル「Do You Really」だ。彼はトム・ミッシュ/ジェイミー・アイザック/プーマ・ブルー/ルーシー・ルーそして何よりもコスモ・パイクと並び称したい、サウス・ロンドンのブライテスト・ホープ。若さと才能に満ちたギタリスト/ヴォーカリストで、ジョー・アーモン=ジョーンズ&マックスウェル・オーウィン『Idiom』への参加に象徴されるように、活況を極めるUKジャズ・シーンでも重要な役割を果たしているが、これはポップ・アーティストとしての飛躍さえ予感させる、キャリアの中でも決定的な一曲。涼しげなギター・ワークが映える極めつけのグルーヴィー・チューンだ。
前々回〜前回と大プッシュしたジェイミー・アイザック『(04:30) Idler』の1週間後には、やはり発表前から話題を呼んでいたジョルジャ・スミスのファースト・アルバム『Lost & Found』もサウス・ロンドンから到着(同様にこのコラムで以前からレコメンドしてきたserpentwithfeetやKieferも同日リリースだった)。「グライム以降に現れたローリン・ヒル」という形容もうなずける、僕はディジー・ラスカル「Sirens」を引用したデビュー曲「Blue Lights」から好きで、この夏には来日ライヴも決まっている英ウォルソール出身の21歳になったばかりの女性シンガー。ドレイク「Get It Together」(原曲は南アフリカのハウスDJ=ブラック・コーヒー)にフィーチャーされ注目を集め、ケンドリック・ラマー監修の『ブラックパンサー』サントラに参加して名を上げ、その両者から讃辞の声が寄せられるという好状況の中で、客演陣も華やかなメジャー・シーン/メインストリーム・ヒットを狙ったアルバム制作も可能だったはずだが、潔いくらい等身大の歌とストーリーテリングにフォーカスした内容で、好感を抱かずにいられない。トム・ミッシュみたいなギターだなと思ってクレジットを見たら、やはり彼の名前があった「Lifeboats (Freestyle)」も、いい感じのアクセントになっている。
サウス・ロンドン・コネクションでは、昨年から「usen for Cafe Apres-midi」ですでによくかけていたルーシー・ルーのファーストEPも登場。プーマ・ブルーとの共作でチェルシー・カーマイケル(プーマ・ブルー「Want Me」でもサックスを吹いている)を迎えた「Outlines」や、プーマ・ブルーとの共演でシーラ・モーリス・グレイ(Nubya GarciaやKokorokoの作品でも活躍)らのホーン隊が彩りを添える2018年上半期ベストにもエントリーした「Fakery」も収録。まるでモノクロームの短編映画のようで、すっかり真夜中の愛聴作となっており、聴くたびにイギリスに行きたいなと思ってしまう。
サウス・ロンドンらしいUKジャズ〜ビート・ミュージック〜アフロ・ラテン・トライバルを結ぶハイブリッドな3枚として、前回ジャケットを掲載したMo Koloursのビート・アルバムと併せ、22aレーベルから相次いで届いたJames 'Creole' ThomasとTenderloniousにも触れておこう(僕はどれもアナログ盤を購入したので、自分の部屋にいま3枚を並べて飾っている)。ここ数年12インチ・シングルも含めてレーベル買いしているTenderlonious率いる22aとFive Easy Pieses(Mo Koloursの新作や僕が2017年ベスト10枚に選んだReginald Omas Mamode IV『Children Of Nu』をリリースしている)周辺のクルーほど、サウス・ロンドンのクラブ〜ストリートの空気を感じさせてくれるコレクティヴはない。Tenderloniousとの交流も深い3兄弟Reginald Omas Mamode IV/Mo Kolours/Jeen Bassaを含むセクステットが支えるのが彼らの従兄でもあるJames 'Creole' Thomasで、その生演奏スタイルのジャズを評して「ソウルフルでパーカッシヴな“ディラ・ジャズ”」という声も上がるほど。一方アビー・ロード録音によるTenderlonious(自身プロデュースのバンドRuby Rushtonも現在進行形の伝説と言っていいだろう)は、その名も22archestraと共にスモーキー&ダビーなUKクラブ・サウンドと隣接しながらジャズ・ファンク×アフロビートの未来を奏でている。
ジャズ・ファンク〜フュージョン色の濃かったサウス・ロンドンのもう一方の雄Kamaal Williamsやジャイルス・ピーターソンが設立した「スティーヴ・リード基金」のファースト・リリースでの好評を礎にJazzmanから発表されたEmanative(今回はNat Birchallも参加)のニュー・アルバム、ジョー・アーモン=ジョーンズも絶賛するオーガニック・ソウル風味のEgo Ella Mayやよりヒップホップ〜ビート・ミュージック寄りのJesse James SolomonのニューEPも見逃せないが、シングルとして抜群の輝きを放っていたのがJude Woodheadの「Beautiful Rain」。サウス・ロンドンのニューカマーとして注目のDJ/プロデューサーで、祝祭感があって恍惚・陶酔へと誘われるこの曲はサマー・アンセムになること間違いなし。フローティング・ポインツやフォー・テットの影響、ポール・サイモンとジェフ・バックリーの邂逅といった評を見かけるが、何よりイギリスとアフリカのミックスが伸びやかにフレッシュに感じられるところがディス・イヤーズ・モデル、いかにもペッカム周辺らしいと思う。
サマー・ソウルという観点でさらに曲単位で挙げていくなら、Sunni Colonの「Summer Blu」「Technicolor」を筆頭に、デニース・ウィリアムス〜ミニー・リパートンを彷彿させるCecily、スティーヴィー・ワンダー「As」をナイス・カヴァーしたJesse Fischer、ロード・エコー印の心地よさのFabulous/Arabia、コリーヌ・ベイリー・レイを思わせるオランダとガーナのハーフの女性歌手Nana Adjoa、ジャイルス・ピーターソンお墨つきの歌姫Yazmin Lacey、ゆったりとソウルとジャズが溶け合うSatchy、モッキーと来日経験もあるまろやかなブルー・アイド・ソウル・フィーリングのJoey Dosikといった感じだろうか。そして大推薦したいのが、『Free Soul ~ 2010s Urban』コンピ・シリーズでもお馴染み、現代のニーナ・シモン(マッドリブの女性版?)とも言われるLAのシンガー/トラック・メイカー、ジョージア・アン・マルドロウのBrainfeeder移籍第1弾シングル「Overload」。ヒップホップ×ジャズ×アヴァン・ソウルというLAらしさを踏まえた気持ちのよいビートと涼しげなエレピが最高で、プロデュースは西海岸屈指のコンビ、マイク&キーズが手がけている。そのジョージア・アン・マルドロウの「Blackman」を、ジャズとポスト・ロックを股にかけトータスなどのギタリストとしても活躍しているジェフ・パーカーがカヴァーしたのも、嬉しい驚きだった。現行シカゴ・ジャズの名門International Anthemからの一昨年の傑作『The New Breed』以来の新作で、フィジカル・リリースは何とソノシート限定333枚。彼らしいギターのトーン、娘のルビー・パーカーのヴォーカル、ビート・メイクやシンセ・ワークも印象的だ。
2018年のサマー・ソウルという意味では、一般的にはドレイク×マイケル・ジャクソンの「Don’t Matter To Me」にも触れないわけにはいかないだろう(ドレイクのニュー・アルバムでは「Ratchet Happy Birthday」も夏向きで好きだった)。フィーチャリングされているマイケルの原曲は1983年にポール・アンカと共作していた未発表曲と知って、僕はマイ・サマー・クラシックとなっている4年前に陽の目を見た「Love Never Felt So Good」を思い浮かべずにいられなかった。ドレイクがたびたび公言している「性別や国境をこえた音楽を作りたい」という願いも、マイケルに通じるアティテュードだと思う。
ヒップホップの新作では、エイサップ・ロッキー『Testing』とジェイ・ロック『Redemption』をかなり愛聴している。もはや東海岸を代表するラッパーにしてNo.1ファッション・アイコンと言っていい前者は、攻めた音作りもカッコいいが、ラストに置かれたフランク・オーシャンとのフォーキーな「Purity」に泣けてしまう(しかもローリン・ヒルのアンプラグド音源「I Gotta Find Peace Of Mind」使い)。『ブラックパンサー』サントラでも活躍していたTDE/ブラック・ヒッピー所属のLAの人気ラッパーの後者は、ケンドリック・ラマー/J. コール/フューチャー/ジェレマイも参加してカラフルな充実ぶりで、ジャジーなピアノやメロウなシンセにSZAの最高の歌声と曲もトラックも歌詞も素晴らしいタイトル曲に、とりわけグッと来てしまう(90sヒップホップ好きにもたまらないのでは?)。そして多作すぎてじっくり聴ききれていないが、毎週リリース・ラッシュのカニエ・ウェスト関連ワークスも、Pusha T〜Nas〜Teyana Taylorといったプロデュース・ワークも含めもちろんエントリー。最初に出た『Ye』の最後3曲の流れ(スリック・リック〜トレイド・マーティンのサンプリング曲からソウルフルな女性ヴォーカルと共に解き放たれるラスト・ナンバーへ)は特に気に入っている。さらに、いよいよ8/3発売とアナウンスがあったマック・ミラー(僕は2010年代初頭のデビュー時から好きな白人MCで、2016年の前作『The Divine Feminine』のアンダーソン・パークとの「Dang!」はスーパー・ヘヴィー・プレイしていた)の新作『Swimming』からも、先行公開されたとびきりのフェイヴァリット「Small Worlds」を。アリアナ・グランデとの恋仲が終わってから初めてのアルバムということで、期待と不安が入り混じっていたが、リリースが楽しみでならなくなってきた。
※この文章は大変長文になっているため、続きは7/22に公開させていただきます。
Michael Seyer『Bad Bonez』
Damian Lemar Hudson「Voyager Drive」
Peter CottonTale feat. Rex Orange County, Chance The Rapper, Daniel Caesar, Madison Ryann Ward & YEBBA「Forever Always」
Oscar Jerome「Do You Really」
Jorja Smith『Lost & Found』
Lucy Lu『Lucy Lu Vol.1』
James 'Creole' Thomas『Omas Sextet』
Tenderlonious feat. The 22archestra『The Shakedown』
A$AP Rocky『Testing』
Jay Rock『Redemption』
Project Pablo『Come To Canada You Will Like It』
Javier Santiago『Phoenix』
Jon Hassell『Listening To Pictures』
Thomas Bartlett & Nico Muhly『Peter Pears: Balinese Ceremonial Music』
Olivia Chaney『Shelter』
The Milk Carton Kids『All The Things That I Did And All The Things That I Didn't Do』
Silva『Brasileiro』
Andre Luz『Tempo』
Chancha Via Circuito『Bienaventuranza』
Humblesmith『Oshinachi』
本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda
「usen for Cafe Apres-midi」では選曲した記憶がないカット・コピーというバンド。ここのベーシストのBen Browningの2作目となるソロ・アルバム『Even Though』は、エレクトロ・ポップ~ドリーミー・ポップのカテゴリーに入るようなサウンドですが、自分的には他のそれとは一味違う内容で、お気に入りの作品となりました。初ソロ・アルバムの『Turns』よりもドリーミーでバレアリックな雰囲気が濃くなっていると感じていて、まさに夏に選曲しないでいつするの? というような内容なので、ここから選んだ数曲をイメージの軸に2018 Summer Selectionの木曜~日曜のお昼のセレクションを完成させました。ぜひ聴いてみてください。CDも7/27にリリースされますよ。
Ben Browning『Even Though』
中村智昭 Tomoaki Nakamura
ジャケットには、海とピアノと笑顔の主役。全体の設計はいわゆる“イージー・リスニング”と呼ばれるものと、そうでないものとの紙一重の世界。この優美なストリングス・アレンジに彩られた1958年の贅沢で幸福な音楽は、誕生から60年を経た2018年の夏にも多分に有効だ。
Ray Hartley, David Terry And His Orchestra
『The Trembling Of A Leaf (And The Sound Of The Sea)』
Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00
添田和幸 Kazuyuki Soeta
夏本番ですね。今回はMinnie Ripertonを思わせる素晴らしい歌声を持ったワシントンDCの歌姫、Cecilyのファースト・アルバムをご紹介します。4月にリリースされた『For You, For Me Too』が良作だったDrew Kidや、Aaron Abernathyが参加しているのにも注目ですが、白眉は同郷のColumbia Nightsのメンバーをプロデューサーに迎えた「Pisces」。波の音で始まる古きよきヴィンテージな香りを残した極上のメロウ・ソウルです。
Cecily『Songs Of Love And Freedom』
Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00
中上修作 Shusaku Nakagami
デンマークの名門レーベル、スティープルチェイスからリリースされていたにもかかわらず、ジャケットのデザインで損していた女性シンガー、アレグラ・レヴィーのセカンド・アルバム。一度聴いてみると、彼女のやや鼻にかかったような独特な声が「クセ」になるのだが、本作はジャケットのデザインも秀逸で持っていて嬉しくなる。中でもラテン調の「Soy Califa」が白眉。今年の夏の選曲では本曲のようなアップテンポなナンバーに少し、私の好きなニュー・ウェイヴ色を加えてみたが、さてはてリスナーの方の御評価は。お楽しみいただければ幸甚である。
Allegra Levy『Cities Between Us』
Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00
髙木慶太 Keita Takagi
7月末に発売される21世紀ブラジル音楽のディスクガイドの執筆をするために00年代以降に聴いたアルバムの数々を引っ張り出しては再評価、再発見を繰り返した。そんな楽しい時間を経て今回の選曲にあたったので、懐かしくも新鮮に響く楽曲、アーティストがずらりと並んでいる。
00年代のブラジルは二世アーティストが台頭した時期で、マックス・ヴィアナもその一人。父ジャヴァンの才をそのまま受け継いだかのような若きメロディー・メイカーとして現在に至るまで良曲を量産している。新譜も出たばかりだが、今回はセカンド・アルバムから数曲をピックアップした。中でも19時台の最後に配した「Voce Nao Entendeu」は最高にブリージンなサンバAOR。夏の夜についさっきまでそこにあった黄昏どきを思いだしながら耳を傾けてもらいたい。
Max Viana『Com Mais Cor』
Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00
FAT MASA
前作も素晴らしかったYoung Gun Silver Fox待望の新作。期待を裏切らない夏を突き抜ける西海岸サウンド。新譜と思えない往年のAORを回想するアレンジに、嬉しくなる。映画『波の数だけ抱きしめて』の現代版リメイクをするなら、ぜひセレクトしてほしいと思ってしまう。ちなみに、輸入盤やアナログはメンバー二人のポートレイトだが、日本盤CDの前作を踏襲したヤシの木ジャケに軍配。
文句なしホワイトデニム・クラシックに認定いたします(笑)。
Young Gun Silver Fox『AM Waves』
三谷昌平 Shohei Mitani
Stones Throwの傘下レーベルLeaving Recordsから2017年にリリースされた『Kicknit Alone』が「usen for Cafe Apres-midi」でも話題となっていたキーファー・シャッケルフォード。僕もこのアルバムから収録曲「U R What U Repeatedly Do」を何度かセレクトさせていただきましたが、今年、満を持して本家本元のStones Throwから彼の最新作『Happysad』がリリースされました。ロサンゼルス出身で、ジョナ・レヴィーン・コレクティヴやMndsgn、テラス・マーティンのライヴ・バンド・メンバー等、ミュージシャンとしての顔を持つトラック・メイカーの彼ですが、本作では極上のピアノに絡めた最高のビート・ミュージックを披露しています。そのジャズ×ヒップホップの音楽観はロバート・グラスパーやサンダーキャットなどに続く、まさしく次世代のジャズ・ビート・ミュージックを牽引するアーティストという感じです。2018 Summer Selectionでは「What A Day」をピックアップさせていただきましたが、興味のある方はぜひアルバムも聴いてみてください!
Kiefer『Happysad』
Dinner-time 金曜日18:00~22:00
渡辺裕介 Yusuke Watanabe
関東が先に九州が後に梅雨明け。また熱い夏。
以前は微炭酸が流行りましたが、今は強炭酸の時代。強烈な刺激と共に夏を吹き飛ばしたいのであります。
夏にリリースされる夏アルバムは、春前に想像の夏設定でアルバムを作っているので、実際は、寝かさねば、この暑さにマッチした作品は、なかなか見つからない気がします。
昨年6月にリリースされたまだ無名のコンポーザーGarcon de Plageのアルバム『L'ennui』は今年の夏のBGMにベストだと断言させてください。
見事な繊細なボサノヴァにソウルを“Roomic”に構成してまして、ヴォーカル・コーラスを含みモンパルナスのJanko Nilovicライブラリーのような印象。涼しくも夏バテさせないエネルギーを吸収できる作品なのであります。
刺激的には、微炭酸ですが、寝起きにも寝る前にも移動中にもどこでも楽しめる作品であります。
永遠の夏バテ防止作品認定です。
Garcon de Plage『L'ennui』
Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00
富永珠梨 Juri Tominaga
2018 Summer Selectionは、ブラジルはミナス出身のSSW、セザール・ラセルダが2017年末にリリースしたソロ3作目『Tudo Tudo Tudo Tudo』をピックアップしました。アルバム全体の雰囲気は、耳に心地いい柔らかく素朴なアコースティックMPBという印象ですが、まろやかで伸びやかなストリングスに包まれた「Por Que Voce Mora Assim Tao Longe?」や、インディー・ポップ・マナーのアレンジが爽やかな「O Homem Nu」など、ひとつひとつの楽曲がどれも味わい深くドラマティック。セザールの穏やかに語りかけるような甘くほろ苦い歌声に、心まで溶けてしまいそう。真夏の昼下がりにゆったり聴きたい、まるで風鈴の音色のような、涼やかな聴き心地のアルバムです。
Cesar Lacerda『Tudo Tudo Tudo Tudo』
小林恭 Takashi Kobayashi
昨年から「Caught Up」「Fault Line」の2曲を「usen for Cafe Apres-midi」でも選曲した、メロウでダンサブルな歌ものハウスをリリースするアムステルダム出身でメルボルンを拠点とする新鋭Meeka Katesのニュー・シングル「Locked」をピックアップしました。Tom Mischにも通じる時代感や、Michael Franksのようなソフトな歌声がとても心地よく、DJでかけていても評判がよく、前作のシングルと共にぜひ聴いてもらいたいアーティストです。
もう一枚、プエルトリコのサンファンを拠点とするIFE。デビュー・アルバム 『IIII+IIII』の先行シングル・カット曲「Higher Love」「Umbo (Come Down)」をピックアップしました。キューバ・ルンバ、ヨルバの賛美歌、ジャマイカン・ダンスホール、R&Bなどのハイブリッドでチル+ブロークンビーツなどを通過した打ち込みなしのエレクトロ・サウンドが心地よく、オートチューンを適度に用いたメロウ・ソウルな歌声は英語からスペイン語、ヨルバ語とシームレスに移行し、夏の終わりに切なく胸に響きます。
Meeka Kates「No / Locked」
IFE『IIII+IIII』
ヒロチカーノ hirochikano
夏は一年で最もアヴァンチュールでアグレッシヴな選曲をお届けできる季節。そんな夏選曲を象徴する1曲目として選んだのは、Violents & Monica Martinの会心のデビュー作品から「How It Left」。Rhye好きならグッとくる前衛サウンドと、往年のSadeを彷彿させる天性の声質とがマッチした本作は、「usen for Cafe Apres-midi」のリスナーなら必ず「この曲誰?」って思える一曲です。次に紹介するRaveenaの「Love Child」は、アナログ時代のR&Bの質感と、ソフトで抑制の効いたオーガニックな歌声が素晴らしく、今夏の選曲の中で個人的には一番のお気に入り。終盤クールダウンに選んだJoey Pecoraro「To Be Happy」は、どこか懐かしい気持ちにさせてくれるブレイクビーツとループの旋律が秀逸。ラストのインタールードに、どうしても選びたくなったAso の「Seasons」は、『Two / Seven』(Nujabesの誕生日である2/7)と題されたEPタイトルが示すとおり、オリジネイターへのオマージュとサウドシズモあふれる“Chill Hop”のベスト・トラック。偶然街でこの曲が流れてきたら、きっと多くの音楽好きが足を止め、その美しく切ないメロディーに耳を傾けることでしょう。
Violents & Monica Martin『Awake And Pretty Much Sober』
Raveena『Shanti』
Joey Pecoraro『Tired Boy』
Aso『Two / Seven EP』
吉本宏 Hiroshi Yoshimoto
白昼夢のようなミネソタの夏空。JoshとSamuelによるユニットVansireの「Halcyon Age」の気怠い歌が流れてきたときに感じたいつかの遠い夏を思い出す。
Vansire『Angel Youth』
高橋孝治 Koji Takahashi
2017年の初秋選曲コメントで書きましたが、昨年の秋にスコット・マシューズの通算6枚目となる最新スタジオ・アルバムが2018年の4月にリリース予定であるとのお知らせが、なんと本人直筆の手紙で我が家に届きました。そしてその数日後に登録してある彼のウェブサイトよりメールが届き、ミュージシャンがアルバムなどの制作費の出資を事前に募り、目標額に達したら作品を制作し、完成後に出資者に作品が提供されるという、音楽に特化したクラウドファンディング・サーヴィスであるPledgemusicを通して準備していると連絡がありました。そこですぐに最新アルバムのオーダーを入れ楽しみに待っていたところ、無事に目標額を達成したと報告があり、予定通り4月に配信音源のダウンロードコードがメールで届き、そして先の5月にCDが無事に郵送されてきました。『The Great Untold』と名付けられた最新アルバムのCDジャケットにはサインが書かれていて、さらに(Pledgemusicからの購入特典だとわかっていましたが)またしても直筆の感謝のお手紙が添えられていたのには感激しました。そして肝心のアルバムの内容ですが、前作、前々作がアメリカン・ルーツ色漂う乾いたテイストの作品だったのに対し、今回のアルバムは彼が持つしっとりとした「静」の部分がアルバム全体を覆っていて、今までの作品の中で一番内省的で静謐な作品に仕上がっていると思います。唯一無二の存在であるニック・ドレイクを比喩の対象として使うのは好きではありませんが、この作品を聴いて思い浮かべたのが、「飾りはいらないんだ」と言ってシンプルにギターとピアノだけで制作されたニック・ドレイクの遺作である『Pink Moon』でした。
そして今回のディナータイム・セレクションはこのスコット・マシューズの新譜からアルバムのタイトル曲である「The Great Untold」を選んでスタートしているのですが、その前にアメリカはポートランド出身のリズ・ハリスのソロ・プロジェクトであるグルーパーの最新アルバム『Grid Of Points』よりセレクトした「The Races」を、ビーチ・ボーイズ『Smile』のオープニング・ナンバーである「Our Prayer」的感覚で配置してみました。他には前回の初夏セレクションのコメントでお伝えした、オーストラリアはメルボルン出身の淡い木もれ陽フォーク・サウンドを奏でる5人組バンド、ペイパー・カイツが4月にリリースした最新アルバム『On The Train Ride Home』より「Nothing More Than That」やタイトル曲の「On The Train Ride Home」などもセレクト。このペイパー・カイツの新譜はスコット・マシューズの作品同様に全編を通して素晴らしいものでしたが、こちらは残念ながら今のところ配信だけのリリースなので、この先にフィジカルな形でのリリースがあることを切に希望します。そして個人的には夏を強く感じる、ブルックリンを拠点に活動する Matthew Houck によるソロ・プロジェクトPhosphorescentが2013年にリリースしたアルバム『Muchacho』収録の「Song For Zula」や、べス・オートンによる最高にクールなジョナサン・リッチマンの名曲カヴァー・ソングである「That Summer Feeling」など、マイ・セレクションにおいて夏の定番ソングとなった作品もいくつかちりばめてディナータイム・セレクションの前半を構成してみました。
続くディナータイム・セレクション後半は、ヴァージニア州はノーフォーク出身のシンガー・ソングライター、イアン・ランドール・ソーントンの昨年発表されたデビュー・アルバム『Lineage』より、ドリーミーなまどろみ系フォーク・ナンバーの「Do You Rise」をピックアップ。それに続きボン・イヴェールでも活躍するS. Careyのソロ作品から、こちらもイアン・ランドール・ソーントンの作品同様にメランコリックな響きを放つ「Brassy Sun」や、ソロ作品繋がりでリアル・エステイトのフロントマン、マーティン・コートニーが2015年にリリースした唯一のソロ作『Many Moons』より「Before We Begin」などをセレクト。チルウェイヴ/グローファイ系の作品ではKa$troの「HereToWasteAway」やイタリア出身のアーティストKisnouがヴェネズエラの首都であるカラカス出身のブルーレという女性アーティストを迎えて制作したアンビエント色強い「Falling Deeper」などを選んでいます。他にはニューヨークを拠点に活動するシンガー・ソングライターのジョーダン・リー によるプロジェクトMutual Benefitの、ヴァシュティ・バニヤン『Just Another Diamond Day』をまるごとカヴァーしたアルバムよりピックアップした「Diamond Day」や、前回のセレクションで取り上げたSYMLの「Leave Like That」というナンバーでゲスト・ヴォーカルに迎えられていた、シアトル出身のジェン・チャンピオンという女性アーティストによる、イギリスの大御所プログレッシヴ・バンド、イエスが1983年に発表し大ヒットを記録した「Owner Of A Lonely Heart」の少しダークでエレポップなカヴァー作品、そして大好きなアメリカの夫婦デュオ、ウィーピーズの「World Spins Madly On」をロマンティックにシンプルなギターの弾き語りでカヴァーしたジョシュア・ハイスロップの作品など、選曲のアクセントとなるカヴァーもいくつかセレクトしています。
24時からのミッドナイト・スペシャルは、夏の選曲ということで、レゲエやスカ、そしてロック・ステディーやカリプソなどの雰囲気を持つ、この季節にピッタリの作品を集めて構成してみました。まずは今年1月の来日公演も最高だったキティー・デイジー&ルイスによる涼しげなロック・ステディーのリズムが心地よいインストゥルメンタル・ナンバー「Sweet Ivy」をイントロとしてセレクト。日本盤CDだけのボーナス・トラックとして収録されたこの作品のタイトルは、デイジーの赤ちゃんの名前であるIvyから付けられていると思いますが、今回の来日公演の会場前でベビーカーの中で抜群の笑顔を振りまいていたIvyちゃんと遭遇し、思わず心の中で「Sweet Ivy!」と叫んでしまいました(笑)。そしてそれに続くのがジャパニーズ・レゲエ界のパイオニアであり、レジェンドであるナーキ(NAHKI)が、80年代初頭に松竹谷清を中心に結成された日本のレゲエ/カリプソ/ロック・ステディーなどを演奏するバンド、トマトスや、ミュート・ビートのこだま和文などのサポートを得てリリースした記念すべきファースト・シングル「Do What You Want」。この最高な作品はリリース当時に愛読していた「FOOL'S MATE」にスタイル・カウンシルを例えに挙げて紹介されていたので、レゲエに詳しくない自分でも当時から思い入れのある作品でした。もちろんB面の「Do What You Want (Dub Mix)」も素晴らしいので、ミッドナイト・スペシャル後半戦に繋げるインタールードとして収録してあります。このシングル盤のプチ・トリヴィアをひとつ言いますと、以前デザイナーの相馬章宏くんとの会話で判明したのですが、このシングル盤にはペラ・ジャケ+インナー・スリーヴという形態のものと、ジャケットが袋状になっているものの2種類が存在していると思います。そしてその「Do What You Want (Dub Mix)」にテイストが似ている作品として、ヤング・マーブル・ジャイアンツ解散後にモックスハム兄弟が結成したザ・ジストのオリジナル・アルバム未収の傑作ネオアコ・レゲエ・シングル「Fool For A Valentine」(昨年発表された未発表曲集『Holding Pattern』にはA面だけ収録されました)のダブ・ミックスであるB面の「Fool For A Version」をナーキの作品に繋げ、その『Holding Pattern』からこちらもナイスなネオアコ・レゲエ・ナンバー「Night By Night」も選んでいます。そして実はこの曲が一番2018年のリスナーの耳には馴染みのあるメロディーかもしれない、傑作グルメ漫画をTVドラマ・シリーズ化して人気を博している『孤独のグルメ』のサウンドトラックより、主人公の井之頭五郎の食事シーンで必ず流れるこれまた涼しげなレゲエ・インストゥルメンタル・ナンバー「レゲエ season 3」を隠し玉としてセレクト(笑)。原作者である久住昌之率いるスクリーントーンズによるこの作品はTVではほんの一部しか流れませんが、全編を通して素晴らしく、真夏の夜の清涼剤としてピッタリな素敵なナンバーです。それに続くのがヴィヴィアン・ゴールドマンの「Launderette」ですが、この作品は彼女の1981年にリリースされた唯一のソロ名義の作品です。そしてこのナイスなレゲエ作品に関わった面子が凄いのでご紹介しますと、タイトル曲のプロデュースがPILのジョン・ライドンとキース・レヴィン、パーカッションにはロバート・ワイアット、トイ・ピアノは49・アメリカンズのスティーヴ・ベレスフォードが担当し、B面のプロデュースはエイドリアン・シャーウッドという豪華なメンバー。それというのも彼女はもともと「NME」「Sounds」「Melody Maker」といった音楽雑誌のライターとしてパンクやレゲエの記事を書いており、同じ時期に「NME」でライターをしていたプリテンダーズのクリッシー・ハインドとは親交が厚く、そこから人脈を広げてフライング・リザーズや49・アメリカンズの作品などに参加するようになりました。またここでひとつプチ・トリヴィアを言いますと、2016年にリリースされたオブスキュアなガールズ・インディー作品を集めたグレイトなコンピレイション・アルバム『Sharon Signs To Cherry Red』の解説で書かれていて驚いたのが、アヴォカドスというオブスキュアなインディー・ガールズ・バンドの唯一作で大好きな作品である「I Never Knew」にもヴィヴィアン・ゴールドマンが参加しているということです。言われてみればこのアヴォカドスの作品は49・アメリカンズの作品と同じChoo Choo Trainレーベルからリリースされていたので、この点と点が線として繋がったときは個人的にかなり驚き、嬉しくなりました。そして話は選曲から少し脱線して、なぜこのアヴォカドスの作品に思い入れがあるのかといいますと、このレコードは学生当時、デザイナーの相馬章宏くんから高田馬場のOpus Oneというレコード屋の100円コーナーが最高に面白いとの情報を聞き、その箱の中から救出した1枚なのですが、今やちょっとしたレア盤になっているこのようなレコードがなぜか複数枚この箱の中に入っており、相馬くんがすでに購入していたこのレコードも「このレコード、スゲーくだらなくて面白いよ」との確実な情報(笑)をもとに購入し、二人で夜な夜なお酒を呑みながらゲラゲラと笑って聴いていた青春の一枚だからなのです(笑)。さて、話を選曲のことに戻しますと、続けてニュー・ウェイヴ繋がりでレインコーツの可憐なレゲエ・ナンバー「No One's Little Girl」をセレクト。2010年に彼女たちが奇跡の来日公演を行ったときに、このナンバーが披露されたときはとても嬉しかったですね。そしてキティー・デイジー&ルイスがファーサイドのオリジナル・メンバーSlimkid3を迎えてリミックスした「Baby Bye Bye (KDL VS Slimkid3 From The Pharcyde)」や、今年に入って何度目かの自分内ブームが起きているロバート・ワイアットのカリプソ・テイストが味わえるポップな名曲「Heaps Of Sheeps」、エリザベス・ミッチェルの「ABCDEFG……」と歌われるABCソングをキュートにダブ処理し、時折入る赤ちゃんの声がカオスに響く(笑)「Alphabet Dub」、スウェーデンの女性シンガー・ソングライター、エル・ペロ・デル・マールのコケティッシュなスカ・ナンバー「Do The Dog」などを織り込むことで自分なりに「usen for Cafe Apres-midi」とレゲエ・サウンドとの接点を探ってみました。そして以前チェレンジしたレゲエ特集のときにもご紹介した名古屋が誇るオーセンティック・スカ・バンド、 ルード・プレッシャーズが2016年にリリースしたシングルから、清涼感あふれる涼しげなインストゥルメンタル・ナンバー「Last Resort」もセレクト。先に挙げた久住昌之のスクリーントーンズや、このルード・プレッシャーズの洒落たインストゥルメンタル・ナンバーを挟むことで、夏のセレクションに心地よい風が舞い踊ります。
ミッドナイト・スペシャルの後半はスティール・パンの音色が南国へ誘うペイル・ファウンテンズ「Crazier」や、ウッド・ビー・グッズのキュートなラップ(?)が心地よい「Fruit Paradise」などのトロピカル・ネオアコ・サウンドも織り交ぜつつ、ソフトなダブ・サウンドにウィスパー・ヴォイスを絡めるテイクン・バイ・トゥリーズ「Highest High」や、熱いサウンドを聴かせるクラッシュの作品の中でもひときわ涼しさを感じるレゲエ・ナンバー「If Music Could Talk」をアクセントとして選曲に織り込みました。セレクション終盤にはアラフィフ世代においてラヴァーズ・レゲエの三種の神器であるキャロル・トンプソンをフィーチャリングしたムーヴメント・98「Joy And Heartbreak」やコートニー・パイン「I'm Still Waiting」、マッド・プロフェッサーのリミックスしたシャーデー「Love Is Stronger Than Pride (Mad Professor Remix)」をセレクト。そして最後にアウトロとしてデニス・ボーヴェルのピアノの音色が美しいダブ・インストゥルメンタル「Castro Brown Speaks To Dennis Bovell (Piano Dub Of Emotion)」がゆったりと流れて今回のセレクションは終わります。最後にプチ・トリヴィアをもうひとつだけお話しますと、自分が学生のときに初来日したエドウィン・コリンズをサポートするベース・プレイヤーとして日本に来ていたデニス・ボーヴェルと一緒に回転寿司に行ったことがあるのですが、彼の好物はマグロでもサーモンでもなく、イカでした(笑)。
Grouper『Grid Of Points』
Scott Matthews『The Great Untold』
The Paper Kites『On The Train Ride Home』
Ian Randall Thornton『Lineage』
S. Carey『Brassy Sun』
Martin Courtney『Many Moons』
Mutual Benefit『Just Another Diamond Day』
Jenn Champion「Owner Of A Lonely Heart」
Nahki & Tomatos「Do What You Want」
The Gist「Fool For A Valentine」
The ScreenTones『孤独のグルメ Season3 O.S.T.』
Vivien Goldman『Resolutionary』
Kitty, Daisy & Lewis「Baby Bye Bye (KDL Slimkid3 From The Pharcyde)」
Robert Wyatt『Shleep』
El Perro Del Mar「You Gotta Give To Get」
The Rude Pressures『Ska City』
The Clash『Sandinista!』
Movement 98 feat. Carroll Thompson「Joy And Heartbreak」
Courtney Pine feat. Carroll Thompson「I'm Still Waiting」
V.A.『Relaxin' With Lovers Volume 1 ~ Deb Lovers Rock Collections』
Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00
山本勇樹 Yuuki Yamamoto
毎年、楽しみにしている夏の選曲。今回も、新旧問わず、いつもよりややテンション高めで、ジャズやブラジル、ラテンを織り交ぜながら並べてみました。ただ、全体的に意識したのは、「心地よい洗練」だったり、「ロマンティックな雰囲気」であって、飲食店や商業施設で、ふと耳に入ってきたときに、安心感をもたらしてくれるような選曲をめざしました。そんな中でピックアップしたいのが、シルヴィア・ぺレス・クルースとの共演でも知られるハヴィエル・コリーナと、カタルーニャを代表するピアニスト、チャノ・ドミンゲスの共演作。軽やかで洒脱な演奏が、夏の午後にぴったりです。冷たいスパークリング・ドリンクを飲みながら、聴きたなくなる最高の曲だと思います。ぜひお楽しみください。
Chano Dominguez & Javier Colina『Chano & Colina』
Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00
武田誠 Makoto Takeda
季節ごとに入れかわる「usen for Cafe Apres-midi」の選曲も、特にSummer Selectionのときだけはとりわけ個人的な記憶(エアポケットのような静けさに包まれた遠い夏の日の出来事だったり)を重ねるようにして、曲を選出する際の判断のようなものとしている気がします。ニュー・リリース作品においてもそんな匂いを感じさせるものを求め、そしてそれらがとりたてて強いイメージを押しつけず、空間がゆるやかな時間の流れと芳しい空気でさりげなく満たされるようにと、配置してみました。
では今回も選曲の並びに沿って、8枚の作品をご紹介させていただきます。
ニック・ドレイクやジョン・マーティンを引き合いにブリティッシュ・フォーク的、とも評された前作から2年ぶりのセカンドとなる、ブラジルはミナスジェライスの州都ベロオリゾンチから登場したMoonsの『Thinking Out Loud』。ミナスの音楽シーンを受け継いだ遺伝子が現代に奏でる、まどろみにも似た夢見心地な浮遊感に包みこまれるアルバム。
International Anthemからの傑作『The New Breed』に収録された「Cliche」で抜群のヴォーカルを披露していた愛娘ルビーを今回もフィーチャーして、ジョージア・アン・マルドロウの「Blackman」のカヴァー・シングル(フィジカルはフレキシ・ディスクのみ!)をリリースしたJeff Parker。「Cliche」同様に自身によるスピリチュアルでグルーヴィーなサウンド・デザインの素晴らしさに今作も翻弄。ちなみにジャケットのイラストは息子エズラによるもの。
トロ・イ・モアことチャズ・ベアーを共同プロデューサーとして迎えたAstronauts, etcの新作『Living In Symbol』からの先行リリース曲「The Border」は、プロダクションのアイディアとして構想していたというデヴィッド・アクセルロッド的なオーケストレイションが効果的に施された、確実にステージが上がった感のあるメロウな好ナンバー。アルバム全体が聴ける日が楽しみでなりません。
ジャズ・サックス奏者としてキャリアをスタートさせた京都生まれシカゴ在住の日本人アーティストSen Morimotoによる、生演奏をベースとしたしなやかで風通しのよいビート・メイクがカラフルなラップ・アルバム『Cannonball!』。コーネリアス級の世界レヴェル、と感じてしまう内容、とジャンルは違えど思えないでしょうか。
Melody's Echo Chamberなどのライヴ・メンバーとしても活動するドラマーでもあるStephane Bellityのソロ・プロジェクトRicky Hollywoodの新作EPは、夏のシーンとも寄り添うようなバレアリックな感覚を併せもった、独Sky系の作品を思わせるシンセ使いが幻惑的な、フレンチ・ヴォーカルの甘い耳触りもいい80sニュー・ウェイヴ風好ポップ・チューンが並ぶ。
1986年のシンセ作品「...Keyboard Fantasies...」の再発によって注目を浴びたカナダの黒人女性アーティスト、Beverly Glenn-Copelandのファーストとなる1970年発表のGRT盤が昨年再発。こちらはジョニ・ミッチェルのような佇まいさえ感じさせるフォーキーなアルバムで、ギターにレニー・ブロウ、そしてフルートにジェレミー・スタイグといったジャズ・サイドからのミュージシャン(レニーはジャズとして括れませんが……)が名を連ね、ビートニクな雰囲気も漂わせる。
今や注目の的となったイスラエルのRaw Tapesより登場したiogiことYogev Glusmanは、レーベルのこれまでの趣向とはひと味違った爽やかなアコースティック・ポップ系のシンガー・ソングライターでマルチ・インストゥルメンタリスト。この『The Ceiling』は、覚醒的な揺らぎをもった60s風のヴィンテージな音像に甘いメロディーがのったサマー・サイケデリアの傑作と言えそうな一枚。
ケンタッキー州の水路の保護のための寄付を目的として制作された、同地出身の女性SSW、Joan ShelleyのカヴァーEPから、ここではBonnie "Prince" Billyとのデュエットで聴かせるドリー・パートン「The Bridge」をピックアップ。他にもニック・ドレイク「Time Has Told Me」やJ.J. ケイル「Magnolia」といった選曲も素敵な本作は、自然の風や光と同化してしまうようなナチュラルな雰囲気が心地よい。
というところで、それではどうかみなさまのもとへ素敵な夏が訪れますように(ちなみに余談ですが、僕のiTunesで最近再生した回数が最も多かった曲を見てみたら、SPANK HAPPY「夏の天才」でした……)。
Moons『Thinking Out Loud』
Jeff Parker「Blackman」
Astronauts, etc『Living In Symbol』
Sen Morimoto『Cannonball!』
Ricky Hollywood『L'aventure Interieure』
Beverly Glenn-Copeland『Beverly Glenn-Copeland』
iogi『The Ceiling』
Joan Shelley『Rivers And Vessels』
Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00
waltzanova
ヴァカンスで5年ぶりに訪れた港町。海に面した真っ白なホテルのラウンジ。目の前に広がる海は、真昼の陽光を浴びてきらきらと輝いている。サマードレスの女性やシアサッカーのジャケットを着た男性が目に入る。案内された席に腰を下ろし、濃い色のサングラスを外すと、この街での思い出が脳裏によみがえってくる。もう10年近い昔、ガールフレンドとここに来たことがあった。あの頃、僕と彼女は旅先から手紙を書くのがお互いの約束のようになっていた。一緒のときでも、一人旅でもそれは変わらなかった。彼女がこの街から送ってくれたポストカードを今度探してみよう、と僕は思った。
子供の頃は夏休みが待ち遠しかった。大人になってだいぶ経つ今でも、その余韻は残っていて、夏の始まりは少しわくわくした気分になる。市民プール。赤いシロップのかき氷。照りつける夏の陽射し。河川敷で見上げた花火。高校野球。ひんやりした森の空気。夕立ちのあとの路面のにおい。8月の半ばは沖に漕ぎ出して帰れなくなった舟のようだ、と僕の好きなエッセイストが書いていた。それはちょうど、泳ぎ疲れて帰り、思わず眠り込んでしまうような感覚。そんな気だるいまどろみを音にしたようなヒップホップを聴きながら、そんなことを考えていた。
メロウなレイジー・アフタヌーン。炭酸水を飲みながらひとりで短編小説を読んでいるが、なかなかストーリーは頭に入ってこない。ターンテーブルの横には、ギターを抱えた黒人男性のジャケット。バックに写るインテリアはいかにも70年代然としている。黄昏どきにぴったりのブルージーなギター・インスト。そういえば数年前の夏、友人のギタリストが海沿いのカフェでライヴをやったときにこの曲を演奏していたが、ショートパンツとビーチサンダルの似合うリラックスしたムードがとても良かった。目を閉じると、マイアミの甘やかな潮風が流れ込んできたような気がした。
久しぶりにサバービア風文体で書いてみました。個々のアルバムや曲の紹介よりは、Summer Selection全体としてのイメージをリスナーの方にお伝えしたいと思ったからです。あえて1曲について書くなら、オープニング・クラシックの「牧神の午後のための前奏曲」。ラヴェルの「水の戯れ」とも迷ってこちらにしました。ベタすぎるほどベタな選曲ですが、やはりタイトルに「Apres-midi」と入っているからには外せませんよね。この曲からマイケル・フランクスの新作からの「Suddenly Sci-Fi」への転換は、自分でもとても気に入っています。僕は今年の夏に向けて、サングラスを買いました。最初のエピソードのようなシチュエイションがあるといいのですが(笑)。
Kiefer『Happysad』
Michael Franks『The Music In My Head』
Parttime『In Time』
Gilberto Gil『O Eterno Deus Mu Danca』
Ady Suleiman『Memories』
The Pharcyde「Otha Fish」
Young Gun Silver Fox『AM Waves』
Little Beaver『Party Down』
Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00