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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2020 Early Spring Selection(2月24日〜4月12日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

少しずつ暖かい季節に移りゆく早春の風景と心象をイメージしながら、メロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、今回は計34時間分を新たに選曲した。
Twilight-timeの特集は、月〜日を通して(つまり毎日)、4/17リリースを目標に現在制作している、カフェ・アプレミディ20周年記念コンピ『Cafe Apres-midi Bleu』との連動企画。そのセレクションのために僕が選曲候補としてリストアップした、2010年代に生まれた「新しい時代のアプレミディ・クラシックス」と言える“午後のコーヒー的なシアワセ”を感じさせてくれる名作120曲ほどが、シャッフル・プレイで放送される。
新年が始まったばかりだというのに、時代の空気はやりきれないことばかりに満たされているが、音楽の新作は、さっそく大充実・大豊作という感じで救われる気分になる。Early Spring Selectionで特に重宝した選りすぐりのニュー・アライヴァルを32枚、ジャケットと共に紹介しておくので、ぜひその中身の素晴らしさにも触れてもらえたら嬉しい。個人的なNo.1アルバムはFlanafi、次点はJeff Parkerだった。

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Mac Miller『Circles』
Flanafi『Flanafi』
Jeff Parker『Suite For Max Brown』
Maë Defays『Whispering』
Moses Sumney『græ: Part 1』
Madison McFerrin『You + I』
Okay Kaya『Watch This Liquid Pour Itself』
Raveena『Moonstone - EP』
Soft Glas『Stunned』
Mulherin『Blurry』
Manuel Bienvenu『GLO』
Kyson『Kyson』
Green-House『Six Songs For Invisible Gardens』
Turn On The Sunlight『Warm Waves』
Somni『Home』
Rejoicer『Spiritual Sleaze』
Kota The Friend『Lyrics To Go, Vol.1』
Navy Blue『Àdá Irin』
J Hus『Big Conspiracy』
Steve Spacek『Houses』
Andy Shauf『The Neon Skyline』
The Innocence Mission『See You Tomorrow』
Loving『If I Am Only My Thoughts』
Emily King『Sides』
Marquis Hill『Love Tape: With Voices』
Vula Viel『What's Not Enough About That?』
Gregory Privat『Soley』
Fernando Brant『Vendedor De Sonhos』
Caetano Veloso & Ivan Sacerdote『Caetano Veloso & Ivan Sacerdote』
Cribas『La Ofrenda』
Trío Ventana『Amigo Imaginario』
Gonzalo Levin『Árbol』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
特集 月曜日16:00~18:00
特集 火曜日16:00~18:00
特集 水曜日16:00~18:00
特集 木曜日16:00~18:00
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特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

毎回、そのシーズンに合っているというよりも、少し先の気候に合いそうなサウンドの新作アルバムを気に入り紹介していることがよくあるが、今回のフランスのSSW、Manuel Bienvenu『GLO』もそんな感じの少し先の季節、初夏や夏に合いそうな曲が並ぶ良作でした。でもじっくり聴き込むと、芽吹きの季節であるアーリー・スプリングにも良いかなと思える曲や、あっさりしているようで中々味わい深い曲もあったりと、キャッチーな曲はほぼありませんが、個人的に気に入っています。アプレミディ・レコーズのコンピ『Urban-Resort FM 78.4』にベン・ワットの「North Marine Drive」のカヴァーが収録されていることもあって、Manuel Bienvenuは「usen for Cafe Apres-midi」では名の知れたアーティストで、今回の6年ぶりのアルバムはうれしいリリースでした。

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Manuel Bienvenu『GLO』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

最近では映画『君の名前で僕を呼んで』への楽曲提供も話題となった、米ミシガン州出身のシンガー・ソングライターであるスフィアン・スティーヴンス。過去には5枚組のクリスマス・アルバムも制作するなど多作ぶりはよく知られるところではあるが、そのキャリアの中でもこの『The Decalogue』(モーゼの十戒)は異色の一枚だ。2017年5月にニューヨーク・シティ・バレエで初演されたダンス作品『The Decalogue』のためにスフィアンが作曲したスコアを、ピアニストのティモ・アンドレスが奏でた完全なるクラシック・アルバム。その才能の底知れなさに正直震える。本セレクションでは0時の刻を告げるスワヴェク・ヤスクウケの直後に「Ⅶ」を選曲した。ぜひ耳を傾けてみてほしい。

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Sufjan Stevens & Timo Andres『The Decalogue』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

冬から春へ。瑞々しい「Feel Like Makin' Love」のカヴァーが素晴らしいカナダのシンガー・ソングライター、Katherine Penfoldのセカンド・アルバム。春が待ち遠しくなる一曲です。

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Katherine Penfold『Sweetest Thing』
Andy Shauf『The Neon Skyline』
Flanafi『Flanafi』
Holy Hive「Ice Dreaming (Less Is More Mix)」
Kyson『Kyson』
Emily King『Sides』
Lydwina Simon『Blackout Light In』
Yorkston/Thorne/Khan『Navarasa : Nine Emotions』
Nicolas Godin『Concrete And Glass』
Jeff Parker『Suite For Max Brown』
No Hood, Zablon & La Jota『Journey』
Ethan Gruska『En Garde』
Sam Gendel『Satin Doll』
Mac Miller『Circles』
Kassa Overall『I Think I'm Good』
The Milk『Cages』
Jazzz『Yummy Vibes』
Arjuna Oakes『The Watcher - EP』
Khushi『Strange Seasons』
Organic Pulse Ensemble『The Light Comes Black』
Robert Haigh『Black Sarabande』
Asa Tone『Temporary Music』
Golden Ivy『Kläppen』
Ulla『Tumbling Towards A Wall』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

様々なジャンルの音楽と融合し“カテゴリー”という監獄から解き放たれた感のある現代ニューヨーク・ジャズ。中でも本作のリーダーであるレミー・ル・ブフの作り出す音楽はノスタルジーとフューチャーが綯い交ぜになった、今までに経験したことのないオンガクを聴かせてくれる。古くはジャコ・パストリアス率いるワード・オブ・マウス・オーケストラやハットフィールド・アンド・ザ・ノース(特にファースト・アルバム)のカンタベリー・サウンド、フランスのオーケストラ・ナショナル・ド・ジャズなどの音像が好きな方は、1曲目の「Strata」で間違いなく気絶できます。おいしいハーモニー満載の現代における「ジャズ中間派」といえるでしょう。

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Remy Le Boeuf『Assembly Of Shadows』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



髙木慶太 Keita Takagi

春の初めは別れと出会いの季節。人の出入りがにわかに慌ただしくなって自分だけが置いてけぼりになっているような錯覚にさえ陥る。そんなとき、音楽は強い味方だ。ことさらに良く聴こえ、味わい深く、沁みわたる。無理矢理の未来志向でも自分語りの懐古趣味でもなく、時制から解き放たれてひたすらエヴァーグリーンな響きに身を任せたくなる。

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The Sea And Cake『Oui』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

今年は暖冬と言われながら、きっちり寒くなり雪もしっかり降り、春だなあとは5月か6月頃にならないと思えない釧路です。
選曲だけでも春が近い雰囲気を出していきたいと思い、真夏な南半球ブラジルから昨年出たアルバムが最高だったマルコス・ヴァーリですが、今回の新譜も素晴らしく、前作が陽なら今作は陰。決してネガティヴな意味合いではなくて陰がある、憂いを帯びたメロウな楽曲が満載です。
ホワイトデニムにさりげなく似合う一枚です(笑)。

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Marcos Valle『Cinzento』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

暖冬で例年よりも早く春の訪れを感じ始めた2020年のEarly Spring Selectionは、Jazzinaria Quartet「Pippo Non Lo Sa」の2000年録音ヴァージョン、そしてStacey Kentをヴォーカルに迎えたQuatuor Ebeneによる「I Can't Help It」のカヴァーをオープニングに配しました。今回のセレクションでは、そのほか、優しいヴォーカルが印象的なGisele De Santiの「Ciranda Urbana」をはじめ、花々がつぼみをつけ始めるこの季節に相応しい躍動感のあるアコースティックなブラジリアンやシンガー・ソングライター作品を多めにちりばめました。なかなかいいニュースが聞こえてこない2020年ですが、少しでも春の足音を感じていただければ幸いです。

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Jazzinaria Quartet『Camminando』
Quatuor Ebene『Brazil』
Gisele De Santi『Ciranda Urbana』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

春を前にお店や自宅のCDやレコードを整理整頓。
「よくこんなに買ったな」と。と同時に、「こんなCDやレコード買ってたかな?」と再度聴き直すというルーティンにハマり、整理整頓するどころか新発見で、部屋はもっと大変なことに。
今年は、エネルギー溢れる楽曲を中心に選曲すると心に決めてまして、躍動感ある素晴らしい楽曲4時間。
夏選曲が暑すぎるのではと今から少し不安ですが。
やはり音ひとつひとつ歌・演奏に人の温もりを感じることができるのはいいものですね。ということで。
最近自宅でもよく聴いてます北欧のOrions Belteの新しいCDEPが素晴らしく、ミルトン・ナシメント「Tudo Que Voce Podia Ser」のカヴァーがサイケデリックでフリー・ソウルで素晴らしいインストなんです(プライヴェイトDJではこの後、日本のジャックスの「マリアンヌ」に繋ぎますが……汗)。
そして今年のすでにハイライト、Jarrod LawsonのユニットOrpheus のLP『Visions』からアプレミディ・クラッシクスになるであろう「Follow Me」。そして日本の美人ピアニスト福井ともみさんのトリオの見事なキャロル・キングの「Been To Canaan」カヴァーなど。目の前で演奏しているようなライヴ感のある録音たち。
まだまだCD/レコードの整理はできそうにありません。

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Orions Belte『Slim』
Orpheus『Visions』
Tomomi Fukui Trio『New Dawn Has Come』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

こんこんと振り続く雪を窓越しに眺めながら、「usen for Cafe Apres-midi」早春の選曲コメントをただいま絶賛書いております(1月31日現在)。つい最近まで記録的な少雪が続いていたここ北海道ですが、外の様子を見ていたら、結局いつものように「帳尻が合う」(冬の前半に雪が少ない場合、その埋め合わせをするかのように、後半どか雪に見舞われるという意味。北海道あるある)ような雰囲気になってきたので、この文章を書き終えたら、直ちに雪かきをしなくてはなりません。仕上がりが遅くなればなるほど、当然積雪がどんどん増してゆきます。すなわち筋肉痛と腰痛も増し増しになるということなのです……嗚呼。と、心躍る春の音楽を紹介するコラムのはずなのに、雪やら北海道あるあるやら、挙げ句の果てには愚痴まで、だらだらと語ってしまってすみません。

お話を「usen for Cafe Apres-midi」に戻します。冬には春の、夏には秋の、秋にはクリスマスの風景を思い浮かべながら、選曲をしたり、それについてコラムを書いたりするのは、まるで季節を先取りしているような、ちょっとした優越感に浸れるので、なかなか悪くないものなのです。とくに今日みたいな季節がはっきりと感じられるような日には。

今回はジャンルや国の偏りをあまり気にせず、聴き心地重視で選曲していきました。あらためてざっと選曲リストを眺めてみると、だいたい7割が南米、2割がインドネシアという感じでした。その中から特に気に入っている作品を、いくつかご紹介していきたいと思います。

最初にご紹介するのは、ブラジルはサンパウロ出身のSSW、Chico Bernardesが昨年リリースしたデビュー・アルバムの中から「Distante」をピックアップ。オーガニックな響きを湛えたアコースティック・ギターと、素朴なピアノの旋律、ほんのり憂いを帯びた内省的な歌声が胸に沁みる、味わい深いフォーク・ソング。ジャケットもお気に入りなんです。続いては、巨匠 Caetano Velosoと、ブラジルのクラリネット奏者、Ivan Sacerdoteとのコラボレイション・アルバム『Caetano Veloso & Ivan Sacerdote』から「O Ciúme (feat. Ivan Sacerdote)」を。いつまでも変わらぬカエターノの心震わす甘美な歌声に、イヴァンのまろやかに響くクラリネットがそっと寄り添う、時間を忘れて聴き惚れてしまう傑作。この作品があまりにも素晴らしかったので、選曲を納品し終えたにもかかわらず(リリース日が締め切り直前だったので入れられなかった)、本多ディレクターに無理を言って、なんとか滑り込ませた思い入れのある一曲。続いては、トロピカリア・リヴァイヴァル的SSWとして注目を集めるSessaのデビュー作から「Grandeza」をセレクト。肩の力の抜けた穏やかなヴォーカルと、柔らかなサンバのリズム、ハートウォームなコーラスに思わず顔がほころびます。パンチのあるアートワークが印象的なMãeana「Coração Sereno」は、愛らしく瑞々しい歌声の中に、ふくよかな母性を感じられ、うららかな春の空気がよく似合います。春の雪解け水を思わせる、きらきらと清らかな光をまとったヴィブラフォンと、楽しげに歌う柔らかなトランペット、プリミティヴなパーカッションの響きが心地よい、Ricardo Valverde「Xangô」。心晴れやかになれる爽やかなブラジリアン・ジャズ。口笛とウクレレ、透き通るようなスウィート・ヴォイスと、ジェントルなクルーナー・ヴォイスのユニゾン。音を聴かずともピースフルな雰囲気が充分に伝わってきそうな、Vira Talisa「He's Got Me Singing Again (feat. Bilal Indrajaya) 」は、インドネシアの女性SSWのデビュー・アルバムからのセレクト。次もインドネシアの男性SSWの作品、Ardhito Pramono「fine today」。優しく語りかけるようなジェントリーな歌声と、オーセンティックなジャズ・ワルツに乗せた胸締めつけるメロディーに、思わず涙腺が緩んでしまいます。個人的にもとても気に入っている作品です。インドネシアの才能あふれる女性SSWのひとり、Danillaの「Buaian」は、安定感のある愛らしいジャジー・ポップスと、アンニュイな歌声との相性が抜群。そしてラストにご紹介するのも、インドネシアはジャカルタからの作品。3人組アーバン・ソウル・ポップ・バンド、RANの「Ku Lari Ke Pantai」は、甘酸っぱさ120パーセントのアコースティック・ポップス。親しみやすいメロディー・ラインと、息の合った爽やかなコーラス・ワークは、青春時代によく聴いたスウェディッシュ・ポップを彷彿とさせます。早春のブランチタイムがよく似合う気持ちのいい楽曲ばかりをセレクトしました。ご興味のある方は、ぜひUSENホームページのソングリスト(http://music.usen.com/channel/d03/)からチェックしてみてくださいね!

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Chico Bernardes『Chico Bernardes』
Caetano Veloso & Ivan Sacerdote『Caetano Veloso & Ivan Sacerdote』
Sessa『Grandeza』
Mãeana「Coração Sereno」
Ricardo Valverde『Xirê de Vibrafone』
Vira Talisa『Primavera』
Ardhito Pramono「fine today (Nanti Kita Cerita Tentang Hari Ini - Original Motion Picture Soundtrack)」
Danilla『Telisik』
RAN「Ku Lari Ke Pantai」

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

先日、大切な友人が天国へ旅立った。あまりに突然で理解しがたく、複雑な心に深く沁みるのが、同じく昨年突然旅立った、Mac Millerの遺作である『Swimming』と同時期に録音されていた対になる『Circles』だ。
リリックは痛切だが、暖かくパーソナルな雰囲気のサウンドは心を安らがせてくれる。
そんな二人に捧げる言葉は感謝しか思い浮かばない。どうぞ安らかにお眠りください。

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Mac Miller『Circles』
Monsune「Outta My Mind」
Free Nationals『Free Nationals』
IAMDDB『Kare Package』
JORDANN「Business Solutions」
Faye Webster『Atlantic Millionaires Club』
Luke Temple『Both-And』
Yakul『Getting Late』
Anna Of The North『Dream Girl』
Gareth Donkin「Catharsis」
Vagabon『Vagabon』
Arlo Parks『Super Sad Generation』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

2020 Early Spring Selectionでは、新時代の春の到来を予感させてくれるような、ネット配信から生まれる自由で無着色な表現が愉しめるインディー・ポップの次世代アーティストの注目曲を紹介します。
まず最初に紹介するのは、10代のピュアなメッセージがダイレクトに伝わってくるソングライティングで人気急上昇中のmxmtoonの最新作から、期待感と切なさが交錯するメロディーが心に響いた「fever dream」を。続いて音楽配信チャンネルでのプレイリスト選曲で抜群のサウンド・センスを感じさせるKhai Dreams自身の作品から、平和へのメッセージを感じるメロウでチルな一曲「Peace」を。ドリーミー・ポップを象徴するYumi Zoumaの2020年の最新作からは、どこか懐かしさを感じるポップな音作りが印象に残った「Cool For A Second」を。最後に紹介する2020年代に注目したいKate Bollingerの「No Other Like You」は、いかにもベッドルーム・ポップらしいニュートラルな鼻唄がこの季節にぴったりはまるアンニュイ系名曲です。

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mxmtoon「fever dream」
Ray Ray & khai dreams「Peace」
Yumi Zouma「Cool For A Second」
Kate Bollinger「No Other Like You」

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

色あせたコマ飛びの古いフィルム映画を観ているかのようなカナダのヴィクトリアのグループLovingの先行シングル「Nihilist Kite Flyer」。まどろむような春の靄の中に幻想的でおぼろげな歌声が響く。ノスタルジックでメロウな手触りのアルバムも全編素晴らしい。

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Loving『If I Am Only My Thoughts』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

初春のセレクションということで、ディナータイム選曲は南から吹く暖かく穏やかな風をイメージして選曲してみました。まずはイントロにスリーピング・アット・ラストの太陽系をテーマにした『Space』というアルバム収録曲「Sun」のインストゥルメンタル・ナンバーを配し、ロサンゼルスを拠点に活動するドリーム・ポップ・デュオ、 Zeelandの暖かく穏やかな風を感じるというテーマにぴったりの「Show Me」をピックアップしてスタート。続いてミネアポリス出身のベネット・ブラムバーグのプロジェクト、Dreams We've Hadの「Aiyana (Come Down)」、マサチューセッツ州サマーヴィル出身のアーティスト、ルーク・リードの2017年作のアルバム『Won't Be There』収録曲「Sarah」、テキサス州オースティン出身のSloan Strubleによるソロ・プロジェクト、デイグロウのレイテスト・シングルとなる「Nicknames」など、笑顔が零れるポップなナンバーをセレクトし、カナダのマニトバ州南部にある都市ウィニペグを拠点に活動する女性アーティスト、フロア・クライの爽やかな疾走感が心地よいラヴ・ソング「1-800-Love」や、男2人女1人からなるニューヨークのThe Booyah! Kidsと名乗るポップ・トリオが昨年末にリリースしたセカンド・アルバム『Booyah』収録の「Don't Trust Me」、オーストラリアはバイロンベイ出身の5人組ファンク・ポップ・グループ、パーセルズの「IknowhowIfeel」、カリフォルニア州イングルウッド出身の5人によって結成されたインナー・ウェイヴの「Rose」など、ライト・タッチでダンサブルな作品に繋げます。そして自分の選曲ではお馴染みになったデンヴァー出身のエレクトロニック・ポップ・デュオ、テニスの2月にリリースされた通算4作目のアルバム『Swimmer』より、先行シングルとしてリリースされた「Runner」や、5月に再来日が予定されている新鋭シンガー・ソングライター、アレックス・オコナーの音楽プロジェクト、レックス・オレンジ・カウンティの「Face To Face」、サンフランシスコ出身で現在はブルックリンに拠点を移動して活躍しているアメリカのドリーム・ポップ・バンド、ノー・ヴァケイションの「Estrangers」、柔らかなファルセット・ヴォイスが心地よいイギリス出身のジョーとサムのWoollard兄弟からなるグッバイ・グッバイの「All For It」、インディアナ州ブルーミントン拠点のミュージシャン、ケヴィン・クラウターの「Surprise」をピックアップして、ディナータイム選曲の前半ラストに最近の自身の選曲で大活躍しているキャロライン・ポラチェックの傑作サード・アルバム『Pang』のタイトル・ソングを選び、後半に繋ぐインタールードとして昨年5年ぶりのアルバム『Trillium Killer』をリリースしたフォクシーズ・イン・フィクションのセカンド・アルバム『Ontario Gothic』からタイトル曲をセレクトして後半戦に繋ぎます。
ディナータイム後半はそれぞれの解釈が素晴らしいカヴァー・ソングを3曲続けてスタート。まずはファッション・アイコンとしても注目されている、ニューヨークはブルックリン出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動する美しきチェリスト、ケルシー・ルーのファースト・アルバム『Blood』に収録された10ccの名曲カヴァー「I’m Not In Love」を皮切りに、こちらもチェリストとしてサンフランシスコで活動している、アンノウンのカヴァー・ソング・プロジェクトより、アルバム『Uncovered Volumes 4 & 5』に収録された幻想的なデヴィッド・ボウイの名曲カヴァー「Heroes」に繋ぎ、さらに1984年に世界的に大ヒットしたドイツのポップ・バンド、ネーナの「99 Red Balloons」(邦題「ロックバルーンは99」)をスリーピング・アット・ラストがセンティメンタルにカヴァーした作品もセレクト。そしてそのセンティメンタルな響きを引き継ぐ形でシガレッツ・アフター・セックスの「Don't Let Me Go」や、フィラデルフィアで活動するアジア系の女性アーティスト、The Hidden Shelfの昨年末にリリースされた最新シングル「Absolutely Nothing」、イギリスのガレージ・サイケ・バンドThe Oriellesのキーボード奏者であるアレックス・ステファンのソロ・プロジェクト、ストロベリー・ガイのミニ・アルバム『Taking My Time To Be』に収録されている「Birch Tree」、元リアル・エステイトのマット・モンデナイルのプロジェクト、ダックテイルズの最新アルバム『Watercolors』よりピックアップした「The Curtain's Moon」など、センティメンタルでメランコリックな作品を連ねます。そしてキャロライン・ポラチェックの作品と同じくらい愛聴しているサーシャ・スローンの昨年9月にリリースされた傑作シングル「Smiling When I Die」をセレクトした後に、エレクトロニック系アーティストとして今やイギリスを代表する人気プロデューサーとなったボノボの2013年リリースの『The North Borders』収録の「Antenna」をアクセントとして配置し、クライロをフィーチャリングしたスウェーデンのエレクトロ・ポップ・トリオSASSY 009の「Lara」や、ニュージーランドのシンセ・ポップ・バンド、ユミ・ゾウマの「Right Track / Wrong Man」などのダンサブルな楽曲もセレクト。ディナータイム・セレクションの終盤にまたしてもダックテイルズの『Watercolors』よりピックアップした「Olympic Air」を挟み、昨年活動を再開したロンドンのインディー・バンド、ボンベイ・バイシクル・クラブの「I Can Hardly Speak」と、最近の選曲では常連アーティストとなったJaguar Sunの「Forever And More」をセレクトして、今回のテーマである暖かく穏やかな風を再確認してディナータイム選曲は終わります。

続く24時からのミッドナイト・スペシャルは80年代にインディー・レーベル“コンパクト・オーガニゼイション”を主宰していたポップ・マエストロ、トット・テイラーの最新シングル「Featurette」がとても素晴らしかったので、この曲を軸に、マジカルでカラフルな響きを放つポップな作品を集めて特集してみました。まずは流麗なストリングス・アレンジが素晴らしいニック・ヘイワードの1983年作の名曲「Whistle Down The Wind」の12インチ・シングルに収録されていたインストゥルメンタル・ナンバーをイントロに、先に挙げたトット・テイラーの新曲「Featurette」に繋げてスタート。「十代の僕への手紙」と副題が付けられたこの新曲は、良質なソフト・ロックのテイストを感じる素晴らしい作品ですね。そしてその素敵な作品に続けたのがジェット・セットやスモール・タウン・パレードで活躍していたポール・ベヴォワのソロ・アルバム『Dumb Angel』よりピックアップしたブライアン・ウィルソン色が濃い「Maybe Not」です。『Dumb Angel』というタイトルもビーチ・ボーイズ『Smile』の初期タイトルなので、このことからも彼のブライアン・ウィルソンに対する尊敬と愛情が強く感じることができます。さらにその「『Smile』を抹殺したのは誰だ?」と歌われる、Exhibit Bの「Who Killed The Smile?」に続けます。そして一部のマニアに有名な1992年にロバート・ラフ名義でリリースされた、まるでロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの名曲「Drifter」のようなテイストを持つ「Goodbye Mr. Major」もセレクト。この作品はジャケなしのカンパニー・スリーヴのみのリリースで詳しい情報が記されていないのですが、実はこの作品はトット・テイラーの変名プロジェクトなんですね。続くテリー・ホールがアメリカ人女性2人と組んだテリー・ブレア・アヌーシュカのセカンド・シングル「Ultra Modern Nursery Rhyme」(邦題「ウルトラ・モダーンな子守唄」)は、テリー・ホールが60年代ポップスの良質なエッセンスを自身の作品に取り入れ生まれた素敵な作品で、ニック・ヘイワードのソロ2作目『Postcards From Home』(邦題「あの娘からのポストカード」)よりピックアップした「Teach Till You Reach」共々シャイな甘酸っぱさが薫る良品です。テリー・ホール関係の作品では他に、イアン・ブロウディと初めてタッグを組んだ作品となったカラーフィールドの「Things Could Be Beautiful」なども選び、60年代後半から活動を始め、80年代終わりから90年代初頭には日本盤もリリースされていたオランダのポップ・バンド、G-Raceの1990年作のカリプソ・タッチな「Calypso 'Round The Clock」や、トット・テイラーのコンパクト・オーガニゼイションからデビューしたマリ・ウィルソンの1991年作「The Rhythm (Club Mix)」など、陽気なラテン・テイストの楽曲も織り交ぜ、コンパクト・オーガニゼイションのオムニバス盤『Do They Mean Us』に収録されていたオーシャンズ・イレヴンのAORテイストの極上メロウな名曲「Back To Back」や、この特集のイントロで取り上げたニック・ヘイワードの1983年作の名曲「Whistle Down The Wind」のオリジナル・ヴァージョン、プロデューサーにトミー・リピューマを迎えAORに接近したエヴリシング・バット・ザ・ガールの「Meet Me In The Morning」、柔らかな波に揺れるような優しいワルツのリズムが心地よいライラック・タイムの「Paper Boat」、暖かなエレピのサウンドが黄昏感を演出するファンタスティック・サムシングの「Drawing Rooms」、そしてケイト・セント・ジョンのコーラスも可愛らしいドリーム・アカデミーの「Hampstead Girl」といったネオアコ・オールスターズの作品も続けてセレクトして、ミッドナイト・スペシャルの前半戦は終了します。
ミッドナイト・スペシャル後半もトット・テイラーのナンバーからスタート。ここでは1981年にトット・テイラー・アンド・ヒズ・オーケストラ名義でシングル・カットされた「The Girl With Everything」を選び、ここから前半と同様にポール・ベヴォワとExhibit Bの作品に繋げてみました。ポール・ベヴォワの作品は1985年発表の初ソロ・アルバム『The Happiest Days Of Your Life』収録の「Every Night At Seven」、Exhibit Bの作品はフリッパーズ・ギターが「全ての言葉はさようなら/Camera Full Of Kisses」でフレーズを引用したことでも有名な「Expert From A Hippy Opera」をセレクト。この名曲は以前この作品を取り上げたときにも書きましたが、2007年に日本盤でCD再発されたときに、1分55秒から始まる「クークークー」というコーラスのトラックが丸ごと抜けていて何とも間の抜けた不完全なテイクで収録されてしまいました。未だにこのことを指摘している人を見たことがないので、CD版のテイクが完成形だと思われる方がいるかもしれませんが、このセレクションではアナログ盤から起こした完全版テイクで収録していますので、この素晴らしい作品をちゃんとした形で聴いてもらいたいと思います。そしてこのアルバムにまつわるお話をもうひとつ紹介しますと、このアルバムがリリースされたのは1988年ですが、1989年に当時大学生だった自分が作っていたファンジン(当時で言う「ミニコミ」)にこのアルバムのレヴューを書いていて、たぶんこれがExhibit Bが日本で取り上げられた最初のレヴューだと思います(そしてそのファンジンの読者にはあのお二人もいたことを付け加えておきましょう・笑)。さて選曲の解説に話を戻しますと、こちらも自分の世代ではポップ・マエストロとして名を馳せるルイ・フィリップの傑作ナンバー「You Mary You」から、ネオアコ周辺の数々の名作をプロデュースしたイアン・ブロウディが80年代にワイルド・スワンズのヴォーカリストであるポール・シンプソンと結成したケアーの「Flaming Sword」、ゴージャスなホーン・セクションと転がるようなピアノの旋律がテンションを上げるニック・ヘイワードの「When It Started To Begin」、そのテンションを引き継ぐディスロケイション・ダンスの少しラテン・テイストを加えたソウルフルなナンバー「He's The Man」に繋げ、ここから80年代初頭、イギリスの音楽業界に旋風を巻き起こしたファンカラティーナの作品をいくつかセレクトしていきます。まずは挨拶代わりにブルー・ロンド・ア・ラ・タークのデビュー・シングル「Me And Mr. Sanchez」をピックアップし、次にこちらもファンカラティーナの代表的バンドであるモダン・ロマンスの「Everybody Salsa」に繋げます。そしてこの流れからこの作品を取り上げないわけにはいかない(笑)お約束ナンバーとも言えるヘアカット・100の「Favourite Shirts (Boy Meets Girl)」をエクステンデッド・ヴァージョンでセレクト。次に80年代の流れでトロージャンズのギャズ・メイオールがバンド名の名付け親だというイギリスの7人組ガールズ・ポップ・バンド、ザ・ベル・スターズの「Sign Of The Times」や、ソウル愛に溢れたブルー・アイド・ソウル屈指の名曲、アニマル・ナイトライフのアーバン・メロウな「Native Boy」(橋本さんが1992年に発行した伝説のディスクガイド本『サバービア・スイート』の中で小山田くんがこの作品を紹介していましたね)、流れるようなアコーディオンの響きも素晴らしいフェイク・ジャズ(自分の周りでは“謎ジャズ”と呼んでいました)の傑作、ヴィック・ゴダードの「Stop That Girl」などもピックアップ。そして忘れちゃいけないジャズ・ブッチャーによるネオアコ~ネオ・スウィングの名曲「Who Loves You Now」や、後にペイル・ファウンテンズのメンバーとなるアンディ・ダイアグラムによるトランペットの哀愁ある音色が優しく心に響くディスロケイション・ダンスの「Bottle Of Red Wine」もセレクトし、最後にレスター・スクエア脱退後に後任ギタリストとしてモノクローム・セットに参加したジェイムス・フォスター作のマリンバのアクセントも心地よい日本人好みのギター・インストゥルメンタル「Take Foz」を選んで、今回の特集は終わるのでした。

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Zeeland「Show Me」
Dreams We've Had「Aiyana (Come Down)」
Luke Reed『Won’t Be There』
Dayglow「Nicknames」
Floor Cry「1-800-Love」
Inner Wave「Rose」
Tennis「Runner」
Rex Orange County『Ponny』
Kelsey Lu『Blood』
Unwoman『Uncovered Volumes 4 & 5』
The Hidden Shelf「Absolutely Nothing」
Ducktails『Watercolors』
Sasha Sloan「Smiling When I Die」
Sassy 009 feat. Clairo「Lara」
Yumi Zouma「Right Track / Wrong Man」
Jaguar Sun「Forever And More」
Tot Taylor「Featurette」
Paul Bevoir『Dumb Angel』
Exhibit B『Playing Dead』
Robert Ruff「Goodbye Mr. Major」
Terry, Blair & Anouchka「Ultra Modern Nursery Rhyme」
G-Race「Calypso 'Round The Clock」
V.A.『Do They Mean Us』
Nick Heyward「Whistle Down The Wind」
Louis Philippe「You Mary You」
Care『Diamonds & Emeralds』
Dislocation Dance「What’s Going On」
Blue Rondo A La Turk「Me And Mr. Sanchez」
Modern Romance「Everybody Salsa」
The Belle Stars「Sign Of The Times」
Vic Godard「Holiday Hymn」
The Jazz Butcher Conspiracy『Distressed Gentlefolk』

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

ここ最近、東京も少しずつ春の兆しがみえはじめ、昼間は重たいコートを脱ぎたくなる陽気が続いています。そうなると、音楽も衣替えをしたくなります。心地よいジャズ・ヴォーカルや、洗練されたブラジル音楽やアルゼンチン音楽、それにメロウなアコースティック・ソウルとか、とにかく気持ちも軽やかになるような音楽が聴きたくなります。今回の選曲も、まさにそんな気分で選んだラインナップで、春らしい色合いを感じさせる曲を中心に、午後のランチ~ティータイムにもぴったりな内容になったかなと思います。ちょっと、おろしたばかりの靴を履いて、外に出掛けたくなるような、そういう普段の生活の中での、気持ちの高揚感を意識しました。
どれもおすすめなのですが、あえて挙げるなら、届いたばかりのエミリー・キングの新作でしょうか。これはアコースティックなリアレンジで自曲をセルフ・カヴァーしたアルバムなのですが、とにかく素晴らしい一枚でした。今回は、その中から「Distance」と「Can't Hold Me」を選んでいます。オリジナルとはまた違った魅力を感じる絶品のヴァージョンです。ぜひお楽しみください。

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Emily King『Sides』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

あの人波が薄れたいつもと違う渋谷の風景をみる冬の終わり。そんなそこはかとない不穏な翳りが心の奥底に少しずつ帯びてくるような気分を癒してくれるのは、ブリストルの女性SSW、レイチェル・ダッドの去年の暮れにリリースされたニュー・アルバム。人の手の温もりを感じさせる柔らかで流麗なアコースティック・アンサンブルによって紡がれた、現代的な空間にも馴染む民芸品にも似たトラッドをベースにした空気の清々しい流れを感じる音楽。心落ち着かせ浸りたい。

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The Seshen『Cyan』
Rachael Dadd『Flux』
Elliot Moss『A Change In Diet』
Lonas「Quiver」
Emawk「Tea」
Villagers『Sunday Walker - EP』
Bruna Mendez『Corpo Possível』
Green-House『Six Songs For Invisible Gardens』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

暦の上では数日前に節分を迎えたのですが、東京はちょうど今季いちばんの寒波が到来しているところです。まさに「冬来たりなば春遠からじ」という感じですね。さて、年が変わって最初に編んだ「usen for Cafe Apres-midi」のセレクションはそんな来たるべき季節をイメージし、気持ちがふんわりと軽くなったりほっと落ち着いたりするようなテイストを意識して仕上げてみました。

オススメの新譜やセレクションにまつわるエピソードを今回もいくつかご紹介しますね。まずはマルコス・ヴァーリの新作『Cinzento』。昨年の『Sempre』からショート・スパンのリリースで、御年76歳にしてますますの絶倫ぶりですが、ディスコ~ブギー寄りだった前作に比べ、本作はシンガー・ソングライター的な面が出たメロウな仕上がり。エレピも大活躍ですっかり“Album Of The Month”認定の愛聴盤となっています(アナログ盤も予約しました)。今回セレクトした「Pelo Sim, Pelo Não」では、「Summer Samba」の一節が挿入されるのも心憎いですね。

“フランスのネッド・ドヒニー”ことアル・サニーの『Planets』も期待通りの充実作でした。前作よりもメロウ・グルーヴ度数の増した音楽性も心地よく、ギター・リフが耳に残るアルバム冒頭の「How Does It Feel」だけでなく、スペイシーな広がりを見せるタイトル曲などもオススメです。メロウ・グルーヴ好きの方には、ママズ・ガンの「This Is The Day」のバンド再演ヴァージョンも素晴らしい出来だったので、こちらも併せて推薦です。

マック・ミラーの遺作となった『Circles』についても触れないわけにはいきません。2018年のアルバム『Swimming』も早世した往年のロック・スターやシンガー・ソングライターたちを彷彿させる内省的な作品でしたが、デモ・トラックをベースとしてジョン・ブライオンがプロデュースした本作はよりパーソナルで、亡くなる前の彼の心境が痛いほど伝わってきます。こちらもぜひ全曲を聴いていただきたい名アルバムだと思います。

もう一枚、昨年のリリースですが紹介できていなかった名作を。スティング・バンドのギタリストとしても知られるドミニク・ミラーの『Absinthe』です。彼のギターとバンドネオンの音色が作り出すまろやかな肌触りがとても心地よく、気がつくと延々リピートしているタイプのアルバムです。「Mixed Blessing」はEarly Spring Selectionの隠れベスト・トラックという位置づけだったりします。今回のセレクションを編むにあたってインスピレイションを与えてくれた作品でもあり、穏やかな中にテンションと艶やかさを感じる、まさに春の訪れを前にぴったりの曲ですね。

ラストの30分くらいの時間帯は、いよいよ春は目の前という質感の曲を並べましたが(セレクションの最後はオールタイム・フェイヴァリットのひとつ、パット・メセニー「River Quay」)、その中にカエターノ・ヴェローゾ「Trilhos Urbanos」を入れられたのも嬉しかったです。クラリネット奏者、Ivan Sacerdoteとのコラボ・アルバムからのナンバーですが、この曲は僕にとって最初のカエターノ体験である、ノンサッチ盤のオープニングの曲という意味を持っています。こちらは"ブラジリアン・イン・ニューヨーク"という雰囲気の口笛がサウダージを滲ませるヴァージョンでしたが、新たなレコーディングはクラリネットの音色が春の柔らかな空気を運んでくれる、優しい仕上がりになっています。

最後になりましたが、オープニング・クラシックはベートーヴェンの「悲愴」第二楽章です。雪の大地をバックにしたジャケットがすぐに浮かぶグレン・グールド版も名曲の名演として名高いですが、今回はECMにベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲集を吹き込んでいるアンドラーシュ・シフのヴァージョンを。もともと大好きな曲ですが、じんわりと心に沁みてくるタッチで奏でられる「心の調律師のような音楽」です。

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András Schiff『Ludwig van Beethoven - The Piano Sonatas, Volume II』
Marcos Valle『Cinzento』
Al Sunny『Planets』
Mac Miller『Circles』
Catherine Howe『What A Beautiful Place』
Dominic Miller『Absinthe』
Caetano Veloso & Ivan Sacerdote『Caetano Veloso & Ivan Sacerdote』
Pat Metheny『Watercolors』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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橋本徹(SUBURBIA)を始めとする「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人がそれぞれのセレクトした音楽への思いを綴る 「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」