吉野次郎「2020狂騒の東京オリンピック」の読書感想文4

 前回鹿児島市長下鶴氏は、「県外からアウェー客を呼ぶ、アウェー・ツーリズム」を考えていると書きましたが、すでに実行している県があります。それは沖縄県です。

 沖縄でキャンプを張るプロ野球チームは10チームありますが、「温かい沖縄なら調整が進む」という理由以外に、キャンプを誘致するために施設を整備して、チーム誘致に取り組んでいるようです。メリットとして、沖縄では観光の閑散期にキャンプ地に来るファンを呼べるし、「プロがキャンプをした」という強力な殺し文句があるので、3月はアマのキャンプを呼びやすいそうです。

 プロがキャンプを張ると、必然的に2月は沖縄の地名がニュースに載ることになります。これだけで相当な宣伝効果があるでしょう。観光客を呼ぶとき、「どこどこのキャンプ地です」というだけで、地名をわかってもらえるので、これも相当な殺し文句と言えるでしょう。

 プロ野球チームがキャンプを張ることの経済効果は、2015年では88億円に達したそうです。つまり、沖縄はスポーツで稼ぐという意識が高く、日本におけるスポーツビジネスの最先端を走っているといってもいいでしょう。

 Bリーグ、琉球キングスが使う沖縄アリーナは、NBAのような四面スクリーンがあって、凄くカッコいいのです。カッコいいハコ物を作ることで、県外からのアゥエー客は呼びやすくなるし、県民の自信にも繋がるでしょう。ホントに沖縄が羨ましい!!

 Jリーグ、FC琉球にも新スタジアムの構想はあるそうです。画像を見る限りカッコいいですし、報告書にも「アゥエー・ツーリズムなど新たな誘客に繋がる」と県外からお客さんを呼ぶのが前提というのが羨ましいのです。他の県なら、「スポーツを通じて健康の増進」という言葉だけで、ビジネスに繋がる言葉は出てこないでしょう。(ただ、新スタジアムにはキナくさい動きもあるようです)

 これからの箱モノは「ビジネスになるか否か」が主題になるでしょう。「建てたけど、アクセスの悪い郊外にあるし、チームの身の丈以上の収容人数を想定してしまった」残念な箱モノになってしまうと、負け組として莫大な建設費から相当な維持費まで背負うことになるので、注視していくことが必要ですし、自治体のセンスが問われるでしょう。まず、鹿児島の専用スタジアムは注視していきたいです。

 余談ですが、鹿児島の県立体育館の新築の話が進まないのはどうかと思っています。(wikiに類を見ないほど議論すら進んでいない状況と書かれたらダメでしょ)県知事も代替わりしていますし、塩田知事もコンベンション施設を造りたいといっても、県立体育館においては発言した節が見られません。つまり、今の県立体育館は老朽化しているから、建て替えないといけないということは誰もがわかっているけど、歴代の知事が方向性を出せないまま退任しているので、なかなか進まず迷走していると思うんですよね。

 現在、新築予定の県立体育館は観客8,000人規模の体育館を想定しているようです(現在の県立体育館の収容人数は4,400人)。鹿児島最大の屋内箱モノ西原商会アリーナ(鹿児島アリーナ)の収容人数は5,700人だそうです。大都市とは言えない鹿児島に二つも大きいハコ物を建てて、大丈夫なのでしょうか? 

 個人的にはプロがやる興行は西原商会アリーナ(鹿児島アリーナ)にまかせて、県立体育館はアマが使うというコンセプトでコンパクトに作って欲しいのです。正直、県立体育館をデカい規模で作ると、西原商会アリーナと共倒れになる未来しか見えません。共倒れを回避するために、今以上にイベントを誘致する覚悟が鹿児島県にあるでしょうか?

 余談、これで読書感想文を終わります。全四回、約6,000文字(原稿用紙15枚)になるとは思わなかった。東京五輪の今だから読む本という思いは変わらないので、読了して読書感想文を書けてよかったです。


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?