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広告プロダクトを作る会社が見る、広告の未来(2022年版)

広告プロダクト開発をやっているフリークアウト代表の本田です。

年イチでnoteにまとめている、広告プロダクトを開発する会社が見つめる広告の未来についての考察ですが、5回目となりました。ここにまとめた内容はフリークアウト社のグループ総会で私が話した内容を元に構成されています。今回のフリークアウトの総会では、全世界のグループ社員に向けて話したこともあり、これまでの日本人向けオンリーな内容と比べると、若干ライトな仕上がりにはなっています。ですので、物足りなさはあるかもしれませんが、その分、簡素にまとまっているため、広告の世界にいらっしゃらない方にもわかりやすくなっていると思いますので、さくっと読んでいただけるとありがたいです。

それと!読んでいただいて、広告の世界に興味を持たれ、フリークアウトで働くのも面白そうと思われた方、フリークアウトのグループでは、こういった広告の未来を作る仕事をいくらでもやってますので、最後までこちらを読んでから、エントリーください。

ー[では、ここから]ーー

業界トレンド?そんなものはない。

広告業界の外の方からよく聞かれるのが、「広告業界のトレンドを教えてほしい」という質問だ。これについて正直に答えると、もはや広告専業の事業会社がトレンドと言えるような画期的なプロダクト(かつてのRTBのようなもの)は作れていない。

一方で、広告会社が何に気をつけて動いているかと言えば、「GAFAに代表されるような、ビッグプレイヤー達に潰されない動きができているか?」の一点に尽きる。彼らの起こした変化に適応し、自らも変化を起こさなければ、それは巨象達に踏み潰されたかのような死を迎えるわけで、なんとか踏み潰されないニッチを探し出すようなアクションが取れれば、最低限生きながらえることは出来る。それはニッチといっても、ビッグプレイヤーにとってのニッチなのだから、そこら辺のビジネスよりはよほどTAMが大きいのもまた事実だ。

であるのだから、もし彼らビッグプレイヤーの痛いところを突くようなビジネスが作れれば、それはさぞや大きなビジネスとなるのは間違いない。よって広告会社が何をすべきかは、広告ビジネスにおけるこの4プレイヤーの覇権争いの動きを理解することから始まる。

広告覇権における、GoogleとAppleの関係

広告ビジネスにおいては、広告主、メディア、そして広告会社の主要3プレイヤーがいるが、その中においてGoogleが脅威であるのは、彼らは世界最大の広告会社であると同時に、メディア企業としても、検索エンジンのみならず、世界最大の動画プラットフォームであるYouTubeを作り上げたことで、世界一のメディア企業とも言える立場となったことだ。

このことは、Googleのコンペティターはもとより、何より広告主にとっても大きな不都合となる。本来なら広告主とメディアの中間にたつ役割をすべき広告会社が、一方的にメディア側に寄り添った動きをするようになるからだ。そしてそのような動きを広告会社がしたとしても、広告主からしたら、確認する術すら持てなくなるのだ。

この状態をよく思わないのが、何よりAppleだ。AppleとGoogleの関係は、iPhone、Androidでシェアを争うライバルでもあるのはもちろんだが、Appleは世界でも最大規模の広告予算を扱う広告主として、広告会社、メディア企業としてのGoogleを見る立場でもあるからだ。

そのAppleが「広告主」の立場でGoogleに仕掛けたのが、「消費者のプライバシーを守る」という名目で展開した大キャンペーンだった。

Appleにとってこのキャンペーンは、iPhoneの販売促進と自社製品ブランドの確立を目的としただけでなく、真の狙いは、Googleのような広告会社が、ユーザーデータを使って広告ビジネスをすることが悪しきことであるかのように世論を操作する、プロパガンダを目的としたものであることは、2社の関係からも明らかだ。

世論操作に長け、世界一のブランドを築き上げるほどの広告主Appleの戦略は見事なまでに、ユーザーデータを扱う企業のイメージを下げさせるに至り、またスマートフォンの度重なる仕様変更により、Googleのみならず、あらゆる広告会社、メディアが、ユーザーデータを使って広告収益を伸ばすことが困難となった。

メタバース志向宣言のタイミングは正しかったのか?

その中でも、Appleのアクションにより、Google以上に負の影響を受けたのがFacebookだ。その名の通り、顔図鑑(face book)と自社グループの名を語りつづけることの負のイメージが高まり、収益面でもユーザーデータに依存しない広告収益の確保を求められ、追い込まれるように自社グループをMetaとリブランディングしたのが昨年の2021年10月だ。

もちろんメタバース時代へ向けては、莫大にして長期の先行投資が必要であろうが、だからといって、このタイミングで自社グループのブランドを丸ごと変更するほどの性急なアクションは、メタバース事業にとって必要だったのか、それともユーザーデータ依存企業イメージの汚名隠しなのか、どちらを優先したのかは、なんとも言えないところだ。

広告シフトの動きが強まるAmazon

面白いことに、ユーザーデータへの過度な依存を下げていく必要が、Appleのたった一手により、業界全体で高まったことで、広告ビジネスを展開しやすくなった立場なのがAmazonだ。

ユーザーデータよりも、良質な広告エリアの重要性が、相対的に高まる中、「購買直前のラストモーメント」こそが、最高の広告枠としての認知が高まることとなった。検索をして商品を見つけるまではGoogleのテリトリーであるが、商品が陳列されるECサイトの中に入ってから、Googleのテリトリーではなく、Amazonのものだ。ユーザーデータに頼れなくなったことで、「ECの広告媒体化」の開発が業界全体で急速に進むこととなるが、もちろんその先陣を切るのはEC最大手Amazonというわけだ。USでは、アマゾンの広告収益は、すでにデジタル広告全体の12%を超えると言われ、当然まだまだ伸び続けるだろう。

ECにとって広告事業の可能性

Amazonのような最大手ECにとっての広告事業のポテンシャルは、GMVの4〜5%程度になりえるという試算もある。

これは利幅がそれほど高くないEC事業者にとっては、十分魅力的な数字だ。ECにとっては、「出来るだけ消費者を迷わせずスムーズに購入させて、取扱高を高めそこから手数料を取る」モデルから、「じっくり検討させ、ECサイト内でしっかり比較をさせ、サイト滞在時間を伸ばして、最後にしっかり購入してもらう」モデルへの変換が迫られる。つまりECのメディア化(EC|Retail as a Media)だ。

もちろん全てのECがこれを出来るわけではない。理想は限りなくトップティアのモール型ECであり、さらに言えば、マーケットプレイス方式かどうかにより、セルフサーブの売上が見込めるかどうかの違いもある。そう考えると米国だったら、最も売上高が見込めるのは当然Amazonで、そこにWalmartがどこまで食らいつけるかというレベル感のトップティアの戦いとなる。

このモデルへの変換が進むと何が起きるか?それはGoogle検索から購買アクションまでの距離が遠くなり、結果として、Google検索が購買関与に与える影響が弱まることとなる。Amazonにとっては、EC内で回遊させればさせるほど、広告売上が上がり、Googleの影響が弱まるのだから、巨人たちの戦いにおいて強めない手はないというわけだ。

Amazonでの購買検討が長くなるほど、Google検索の購買関与が薄まる


4プレイヤーの動きをまとめると

つまり、Google x Appleの戦いにより、Metaの立場が弱まり、Amazonの広告事業が急激に伸び、更にはGoogleの主力事業にとっても嫌な相手となってきたのがAmazonである、というのがビッグプレイヤーたちの広告レイヤーにおける戦いということになる。

やはりこの4プレイヤーの中でも、歴史的な経緯も含めた上で、Amazonの動きは格段に興味深い。

というのも、かつてのAmazonは、欲しいと思ったものが一瞬で手に届くような世界観を目指していたはずだ。私も、そのことは過去にもこのnoteに書いたし、その戦略上に、ボタンを押せばすぐに商品が届くAmazon Dashのような製品も過去には存在した。あたかも広告の存在を否定し、広告のない世界を作り出そうとしていたかのようであった。

それが今や全く真逆の戦略にシフトさせ、自社の持つECサイトを、出来るだけ広告媒体として機能させるよう、何度も何度も消費者に購買検討をさせて、あえて時間をかけさせて買わせるようなやり方に変わった。当然今はDashのような製品は無くなった。そのことが、創業者CEOが昨年退任したことと、どう関連があるのかはわからないが、ただ明らかに目指す元来のビジョンに変化があったかのような、広告事業への強いシフトを感じる。もはやファウンダーの後光は、頭皮だけとなったのかw、もしくは本来のビジョンが劣後するほどに、ビッグプレイヤー同士の戦いは熾烈なのか?

これらから導かれる、広告会社が見つめるべきこと

ここからが重要で、このような巨人たちの戦いが繰り広げられる中、広告会社は何をすべきで、また何を手放すべきだろうか?

1.良質な広告媒体は、ユーザーデータよりも重要

品質の低い広告媒体を、ユーザーデータを使って広告収益を高めるような広告事業は今後は成立していかなくなる。漫画村事件のような極端な事例は言わずもがなであるとして、媒体品質と広告収益力の正の相関は、ユーザーデータが使えなくなるほどに高まることとなる。つまり良い媒体を押さえていき、よい媒体となる場所を見つけていくという、アドテク登場以前からあたり前にあったはずの広告ビジネスとしての使命がより見直されることとなる。

2.広告会社の王であり、メディア王でもある、歪な立場のGoogle

すべての広告会社にとって、Googleはとてつもなく巨大で恐ろしい存在ではあるが、上述の通り、AppleからもAmazonからも攻め込まれているように、立場的には、攻め込まれやすくはなっている。特に広告主に対して誠実であると言いづらい立場であることは、ビッグプレイヤーに限らず、付け入る隙を作られやすいとも言えよう。

3.検索後、購買直前までの媒体価値が高まる

前述の通りだ。Google検索から購買までの時間は、より広告メディア化していくこととなり、検索後のECサイト内の回遊時間が長くなることで、消費者の購買意思決定にとってのGoogle検索の意味合いは、薄まっていくこととなる。広告会社としては、これから益々ユーザー滞在時間が長くなるであろう、アフターサーチから購買までの間に何ができるかが問われることとなる。

ー[ここまで]ーー

ここまで、いかがでしたでしょう。例年よりもかなり平易な内容でわかりやすかったのではないでしょうか?フリークアウト社内では、こちらの内容を業界背景理解のベースとした自社事業戦略について、グループトップの私からグローバルの全社員に伝え、グループ全員に対して、事業への深いレベルの理解と思考を求めるようなことをやっております。(このペースで1時間くらい英語で話し続けてます・・)

全グループ向けにこのようなイベントをやりますと、海外グループ会社の皆さんに受けが良いのはわかっていたのですが、あまり想定していなかったのが、日本の皆さんにも、「グローバルカンパニーとしての自覚が芽生えた」というポジティブな感想を多くもらえたことでした。

フリークアウトも12年ほど続けてきて、ようやく日本で作ってグローバルで売っていく会社基盤が作れてきたかなという実感が最近もてるようになりました。広告の世界がここまでテクノロジーありきとなった中、広告業界におけるソニーやホンダみたいな、「日本発メイカーにしてグローバルカンパニー」を本気で目指しているので、そのような会社で一緒に世界を攻めてみたい方、どうせ新しい世界を作るのだから、広告未経験でも全く構わないので、ぜひフリークアウトの採用ページへ!

2022/06/09 本田


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