ChatGPTブームの今だからこそ読みたい「逆・タイムマシン経営論」

ChatGPTブーム

ChatGPT、大ブームですね。
先週の金曜日にNTTが2023年度中に生成AI開発を発表して、株価が上昇しています。

NTT(9432)が後場に一段高となっている。前日比107円(2.6%)高の4165円まで上昇した。日経電子版が9日正午に「NTTは2023年度中にも独自開発した生成人工知能(AI)を企業向けビジネスとして展開する」と報じた。米テック企業のAIと比べて運用コストを低く抑えたAIを開発するといい、手掛かりとなっている。

https://moneyworld.jp/news/05_00100993_news

「プロンプトエンジニア」なる新たな職種も登場しています。

ChatGPT大熱狂時代。
こんな今だからこそ読みたいのが、「逆・タイムマシン経営論」です。

「同時代性の罠」に気を付けよう

周りの空気や流行によってものの見方にバイアスがかかってしまうこと、これを本書では「同時代性の罠」と呼んでいます。
「同時代性の罠」にかかると間違った意思決定をする可能性があります。
たとえば、「これからはAIの時代だ!」という言説に踊らされてとりあえずAI人材雇ったけど、そもそも使えるデータがなくてAI人材が全然活躍できなかった、みたいなパターンです。
AIを使うには、まずはデータ整備が必要で、もっと言うならそもそもAIによって何を実現したいか決めるのが先なはずです。
それなのに「同時代性の罠」によって、AIの波に乗り遅れるなと言わんばかりにAI人材を採用してしまうのです。正しい意思決定をするためには、時代の空気に流されない力が重要です。
どうすればその力がつくのか。
過去の新聞・雑誌を読み返して、その時点でどのような空気や流行があり、それがどのような思考と行動を引き起こしたか振り返ることで、「同時代性の罠」を回避する力をつけられる、これが逆・タイムマシン経営論の主張です。
「同時代性の罠」ですが、本書ではこのトラップを以下の3つに分類しています。

  • 飛び道具トラップ
    いわゆるバズワードに過大な期待を寄せてしまうトラップです。ChatGPTはまさにこのトラップの可能性がありますね。

  • 激動期トラップ
    大きな変化が起こるという誤った未来予測をしてしまうことで、「今こそ激動期!」と過剰な危機感を抱いてしまうトラップ。「VUCA時代」はまさに激動期トラップを作る飛び道具トラップと言えそうです。

  • 遠近歪曲トラップ
    時間的、空間的に遠い事象を過剰に美化してしまうトラップ。
    最近のアメリカと日本の年収差を嘆く言説が多々ありますが、それはこのトラップかもしれません。

本書では多くの昔の雑誌が引用されていますが、今となっては「なんでそんなことを真剣に特集しているんだ?」と思うようなものがたくさんあって本当にびっくりしました。自分でも古い新聞・雑誌を探して読んでみようと思います。

戦略が先、chatGPTは後

誤解してはいけないことは、「ChatGPT」は飛び道具トラップだから使っちゃいけない、ということではないことです。ChatGPTは(おそらく)革新的な発明なのだと思います。今後大いに導入していくべきだと思います。ただし、それが自社に必要ならば、です。「とりあえず盛り上がっているから自社でも使ってみよう」「よくわからないけれど使ったらいいことあるかも」ではきっとうまくいかないでしょう。冷静に考えれば当たり前のことですが、「同時代性の罠」によってついついこの当たり前のことを忘れてしまう恐ろしさを感じました。
最近私の会社でもChatGPTを活用していこうという気運が高まっています。しかし、弊社に本当に必要なのか、導入によってどんな事業成長ストーリーを描くことができるのか、よく吟味していけたらと思っています。

とてもおもしろい本でした。
おすすめです。


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