最強の経営者 アサヒビールを再生させた男
2020年に11年ぶりにビールのシェアトップの座をキリンビールに明け渡したものの,近年ずっとトップを走り続けていたアサヒビール.そんなアサヒビールにもシェアが下降し続けて「夕日ビール」と言われていた時代がありました.そんなアサヒビールを「スーパードライ」の大ヒットによって立て直したのが本書の主人公,樋口廣太郎です.
樋口氏が社長に就任して取り組んで行ったことは大きく次の2つです.
社員のモチベーションを上げる
商品のクオリティの向上させる
樋口氏は全社員に社長の朝礼のスピーチを見られるようにしたり,それまで問屋に対して弱気な態度を取らざるを得なかった営業マンに「喧嘩してこい」と檄を飛ばすことで営業マンを勇気づけたりしました.これによって社員の士気高揚に成功しています.
また商品のクオリティを向上させるために,樋口氏は競合企業の幹部に教えを請い,それを実行に移しています.樋口氏が学んだのは,(1)品質が第一であること(2)商品は常に新しくしなければならないことです.ビールの品質を高めるために彼は巨費を投じて新工場を建設しました.さらに一商社に任せていたビールの原料の仕入れを複数社にして競争原理を働かせることで,原料の品質を向上させました.また商品を常に新しくするために,古いビールを買い戻して廃棄するという荒業を実施しています.古いビールを買い戻すという前例のない施策に社内の抵抗の影響も大きかったようですが,「前例がないからやるんだ」という言葉とともに放った樋口氏の次の言葉がとても印象的です.
世の中に「お客様第一」「顧客第一」を掲げる企業は多いと思いますが,本当に実行できている企業ばかりではないと思います.樋口氏の実行力には凄みを感じます.
小説として楽しめるだけでなく,経営者ではない私にとっても仕事をよりよくするヒントが詰まった本でした.
余談ですが,この本の後半で中山素平氏が登場します.中山素平氏については以前城山三郎著「運を天に任すなんて~素描・中山素平~」を読みましたが内容を覚えていないので再読したいと思います.また高杉良著「勁草の人 中山素平」も合わせて読みたいと思っています.
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