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【完全版】欧州ベンチャーキャピタルの紹介(フランス・イギリス・ドイツ・スイス・北欧)

米国VCと比べた欧州VCの特徴


ベンチャーキャピタル(VC)とは、将来性のある未上場企業に投資を行い、企業価値の向上を支援することで高いリターンを目指す投資会社のことを指します。ただ、一言でVCと言えど、実は国や地域によって特徴があります。


ヨーロッパ全体のベンチャーキャピタル投資動向を見ると、2022年の投資金額は2.5兆円となり、前年比10.4%減少しました。しかし、主要国の中では日本のみが前年比15.4%増の3,403億円の投資を記録するなど、国ごとに明暗が分かれる結果となっています。


ヨーロッパのベンチャーキャピタル(VC)の特徴としては、まず、VC投資額があり、米国に比べて小規模です。2021年のVC投資額は、米国が3,300億ドル超だったのに対し、ヨーロッパは1,160億ドル程度でした。また、ヨーロッパのVCファンドのサイズも米国より小さい傾向にあります。

次に、ヨーロッパのVCは、米国ほどディープテック(量子コンピュータ、ロボティクスなど)への投資が活発ではない、という特徴もあります。フランスは、VIVA Techなどを通してディープテックへの投資が活発になりつつありますが、それでも米国に比べると小規模であることは間違いないでしょう。

一方、ヨーロッパのVCは、フィンテックやエンタープライズソフトウェアなどのセクターを重視する傾向があります。

また、米国と異なり、ヨーロッパのVCは言語や商習慣の違いがあるため、各国の文化や規制の違いに対応する必要があります。ただ、様々な言語や商習慣があることの裏返しで、ヨーロッパには有望なスタートアップ拠点都市が複数存在し、近年はユニコーン企業も増加傾向にあります。 各国政府もスタートアップ支援に力を入れており、フランスでは個人投資家へのVC投資優遇税制の導入で投資額が増加するなど、ヨーロッパのベンチャーエコシステムは発展しつつあります。

続いて、国別に主要ベンチャーキャピタルをいくつか紹介していきます。

フランスの主要VC


フランスのベンチャーキャピタル(VC)市場は近年、急速な成長を遂げています。その特徴としては国内スタートアップへの投資があげられます。2021年のVC投資案件の約7割がフランス国内の企業に対するものでした。フランス政府がスタートアップ支援に力を入れ、起業家に優しい環境を整備してきた成果と言えます。

また、フランスのVCは特にテクノロジー系のスタートアップに注目しています。投資先企業の約8割がデジタル分野やテクノロジー分野の企業となっています。 中でもフィンテックやエンタープライズソフトウェア、AIなどの分野への投資が盛んです。直近では、ディープテック分野への投資を強化しており、フランス政府は2019年、ディープテック分野のスタートアップ支援に特化した10億ユーロ規模のファンドを設立しています。


フランスのVC市場の課題としては、シリーズA以降の大型資金調達の機会が少ないことが指摘されていますが、政府のスタートアップ支援策や大企業のオープンイノベーションの取り組みなどを背景に、フランスのベンチャーエコシステムは引き続き成長が見込まれています。

Omnes capital 

パリに拠点を置くOmnes capitalは、1999年の設立以来、シードからレイターまでの全ステージに投資を行っています。

投資先企業数はフランス国内で4番目に多く、投資先に対するエグジット割合はフランスVCの中で最も高いのが特徴です。

ICTやライフサイエンス分野のスタートアップを中心に投資しており、オンライン決済サービスのPaypalや医薬品開発のPoxelなどにも出資しています。

Orange Ventures


同じくパリのOrange Venturesは、通信大手のOrange傘下のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)です。

Orange Venturesの特徴の一つは、Orangeグループの強みを活かしたスタートアップ支援にあります。 投資先企業は、Orangeの持つグローバルなネットワークやリソース、ビジネスノウハウなどを活用することができます。 これにより、スタートアップの成長を加速させ、シナジー効果を生み出すことを目指しています。

投資戦略としては、シードからレイターステージまで幅広い成長段階のスタートアップを対象としています。 欧州を中心に、中東・アフリカ地域や米国のスタートアップにも投資しており、グローバルな視点でイノベーティブな企業の発掘に取り組んでいます。

これまでにDataiku、Famoco、Morphisecなど、多くの有望なスタートアップに出資してきました。

Idinvest


パリ以外では、リヨンに本社を置くIdinvestがあります。1997年設立の老舗VCで、フランスでは珍しくグロース・バイアウトステージまで投資対象としています。 欧州11カ国でビジネスを展開し、これまでに300社以上に投資してきました。

Idinvestの特徴の一つは、フランスでは珍しくグロース・バイアウトステージまで幅広い投資ステージをカバーしていることです。 シード期からレイターステージ、さらには企業の買収・売却に至るまで、企業のライフサイクル全般をサポートしています。 これにより、長期的視点で企業価値の向上を図ることができます。

投資分野としては、テクノロジー、ヘルスケア、消費財など多岐にわたります。 特にデジタルセクターでの投資実績が豊富で、Talend(ビッグデータ統合ソフトウェア)、Criteo(デジタル広告プラットフォーム)、Deezer(音楽ストリーミングサービス)など、フランスを代表するテック企業を数多く輩出してきました。

Aster Capital


フランスのAster Capitalは、気候変動対策に取り組むスタートアップに特化したベンチャーキャピタルです。

20年以上の経験を持ち、エネルギー、モビリティ、産業、農業などの分野で、脱炭素化が難しいとされるセクターの革新的企業に投資しています。 創業者のビジョンの実現を、各業界に関する深い知見を活かして支援するのが特徴です。

パリ以外にもロンドン、テルアビブ、サンフランシスコに拠点を持っています。フランスでエネルギー分野に投資するVCとしては最大規模です。

Sofinnova Partners


Sofinnova Partnersは、1972年にパリで設立されたヨーロッパを代表するライフサイエンス特化型のベンチャーキャピタル(VC)です。

ヘルスケアとサステナビリティ分野の革新的なスタートアップに投資し、50年以上の歴史の中で500社以上の企業を支援してきました。 現在は、パリ、ロンドン、ミラノに拠点を置き、28億ユーロ以上の運用資産を有しています。

また、同社は大半が博士号取得者で構成され、深い科学的知識が行動や計画、投資の原動力としながら、ヘルスケアとサステナビリティの分野で、世界が直面する最も差し迫った問題を解決する可能性を秘めた画期的なイノベーションに注目しています。

スイスの主要VC


スイスは、ヨーロッパ有数のスタートアップ拠点として知られ、有力なベンチャーキャピタル(VC)が集積しています。


スイスのVC投資額は近年、堅調に推移しており、2021年のスイスのスタートアップへのVC投資額は前年比3.1倍の36億スイスフラン(約4,400億円)に達しました。

特にバーゼルやローザンヌ、ジュネーブ、ツーク等の都市には、有望なスタートアップが多数集積しています。スイスのスタートアップ・エコシステムの強みは、優れた研究教育機関と安定した事業環境にあります。 チューリッヒ工科大学(ETH)やローザンヌ連邦工科大学(EPFL)等の名門校から、多くのハイテク系スタートアップが誕生しています。

一方で、スイスのVCは、シリコンバレーと比べると資金調達の規模が小さく、主に初期段階のスタートアップ支援に注力する傾向があります。 そのため、スイスのスタートアップの多くは、事業の成長段階で、追加の資金調達のためにシリコンバレーを訪れるケースが少なくありません。

それでも、スイスのVC業界は着実に成長を続けており、ブロックチェーンやフィンテック、ライフサイエンス分野を中心に、グローバル市場で存在感を発揮するスタートアップの輩出が期待されています。

CV VC(Crypto Valley Venture Capital)


チューリッヒを拠点とするCV VC(Crypto Valley Venture Capital)は、ブロックチェーン技術に特化したVCです。 スイスの「クリプトバレー」と呼ばれるツーク州を中心に、有望な初期段階のブロックチェーン企業に定額のシード投資を行っています。

CV VCは、スイスの「クリプトバレー」の創設者の一人であり、ブロックチェーン技術ソリューションを構築するグローバルなスタートアップに焦点を当て、主にアーリーステージのベンチャーに投資を行っています。


SIX Fintech


SIX Fintechは、スイス証券取引所グループのSIXの子会社として2018年に設立されたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)です。

フィンテック分野のスタートアップ支援を目的としており、SIXグループの強みを活かしたハンズオン支援が特徴です。

SIX Fintechは、シードからシリーズBまでの幅広い成長ステージのフィンテック企業に投資しています。 投資対象は、決済、デジタル資産、レグテック、データ分析など、金融サービスのバリューチェーン全般に及びます。

SIXグループの持つインフラやネットワーク、ノウハウを活用し、スタートアップの事業拡大を多面的にサポートします。例えば、投資先企業はSIXの取引所インフラやデータフィードを活用したソリューション開発が可能です。 また、SIXの顧客ネットワークを通じた販路開拓や、規制対応に関するアドバイスなども提供します。

SIX Fintechは、これまでにVestr(デジタル資産管理プラットフォーム)、Yokoy(経費管理自動化ソリューション)、PXL Vision(オンライン本人確認)など、有望なスイスのフィンテック企業に出資してきました。 スイスならではの高度な金融インフラという強みを活かしながら、フィンテックの未来を切り拓く革新的な企業の創出に貢献していくと期待されています。

イギリスの主要VC


イギリスは長年、ヨーロッパのベンチャーキャピタル(VC)市場をリードしてきました。過去5年間でイギリス国内のスタートアップに投資された金額は約750億ドル(約10兆円)に上り、ドイツやフランスの2倍に相当します。

イギリスのVC市場は、2016年のBrexit(イギリスのEU離脱)以降、一時的に投資が減速しましたが、政府のスタートアップ支援策もあり、近年は再び活発化しています。 2021年のイギリスのベンチャー投資額は前年比2.3倍の330億ドルに達し、過去最高を記録しました。 フィンテックやディープテックを中心に、引き続き有望なスタートアップが輩出されると期待されています。

Index Ventures


Index Venturesは、ロンドン、サンフランシスコ、ジュネーブに拠点を置くヨーロッパのベンチャーキャピタル企業です。

1996年の設立以来、e-コマース、フィンテック、モビリティ、ゲーム、インフラ/AI、セキュリティなどの分野で、テクノロジーを活用して世界を変革する有望なスタートアップに投資してきました。

これまでに約56億ドルの資金を調達し、Adyen、Deliveroo、Dropbox、Farfetch、King、Slackなど、数多くの成功企業を輩出しています。

投資先は、シードステージから成長期まで幅広い段階のスタートアップに及び、大胆なアイデアを持つ起業家がグローバルなビジネスを展開するのを支援しているのが特徴です。同社は、ヨーロッパ、イスラエル、米国のスタートアップエコシステムに精通したグローバルな視点を持っていますが、特にイギリスを拠点とする企業への投資に注力しています。

また、同社の8人の投資パートナーは、Forbesのヨーロッパとイスラエルのトップテック投資家のミダスリストに名を連ねるなど、経験と実績が豊富なメンバーで構成されています。スタートアップに対しては、資金提供だけでなく、経営面でのサポートやネットワーキングの機会なども提供。シリコンバレーとヨーロッパを結ぶ架け橋として、テクノロジー分野のスタートアップ支援において大きな存在感を示しています。

Balderton Capital


同じくロンドンのBalderton Capitalは2000年設立のVCで、ヨーロッパ全域の有望なスタートアップに投資しています。 これまでに、Balderton Capitalは、Revolut、Betfair、The Hut Group、MySQL、Yoox、Depop、Talend、Recorded Future、NaturalMotion、Kobalt Music Group、GoCardless、CityMapper、Sophia Geneticsなど、多くの企業の成長を支援してきました。

ヨーロッパ全域の初期段階のテクノロジーおよびインターネットスタートアップ企業に投資していますが、近年は、人工知能(AI)やモビリティ、ヘルステックなどの分野に注目しています。

同社の投資戦略は、シード段階からIPOまで、ヨーロッパの創業者を支援し、グローバルなビジネスを構築するための資本と専門知識を提供することです。近年、Balderton Capitalは新たな大型ファンドを次々と立ち上げています。2021年には、6億8000万ドルを運用する初のグロース専門ファンドと、さらに6億ドルのアーリーステージ投資ファンドを発表し、総運用資産は50億ドル以上となりました。

Amadeus Capital Partners


Amadeus Capital Partnersは、1997年に設立されたケンブリッジを拠点とするベンチャーキャピタル企業で、ヨーロッパの有望なテクノロジースタートアップに投資しています。

同社は、シード期から成長期まで幅広い段階の企業に投資し、これまでに3億ポンド以上の資金を調達してきました。インダストリーとしては、特にディープテック、AI、機械学習、サイバーセキュリティ、デジタルヘルス、フィンテックなどの分野に注力しています。

特にケンブリッジ大学発のスピンアウト企業や、英国の大学発ベンチャーへの投資に定評があるVCです。

同社は、これまでにSaffron Technology(インテルに売却)、Icera(NVIDIAに売却)、Graphcore(時価総額22億ドル以上)、VocalIQ(Appleに売却)、Improbable(10億ドル以上の資金調達)など、多くの成功事例を生み出してきました。

また、Amadeus Capital Partnersのパートナーには、創業者のHermann Hauser博士やAnne Glover CBE、Alex van Someren、Pat Burtis、Amelia Armourなどが名を連ねています。 特にHauser博士は、英国を代表する起業家・投資家の1人で、Acorn Computers(ARMの前身)の共同創業者としても知られています。


ドイツの主要VC


ドイツには、スタートアップ企業への投資を積極的に行う有力なベンチャーキャピタル(VC)が複数存在しますが、ドイツが辿ってきた歴史から、ベルリンとミュンヘンでは全くことなるエコシステムを築いています。


ドイツのベンチャー投資額は近年急成長しており、2021年は前年比2.3倍の136億ユーロに達しました。 特にベルリンは、ロンドンに次ぐヨーロッパ第2のスタートアップ拠点として注目を集めています。 フィンテックやモビリティ、エンタープライズソフトウェアなどの分野で、今後もユニコーン企業の輩出が期待されています。

HV Capital


HV Capitalは、ドイツのベルリンとミュンヘンに拠点を置くベンチャーキャピタル企業で、デジタル分野の有望なスタートアップに投資しています。

2000年の設立以来、シードステージから成長期まで、幅広い段階の企業を支援してきました。HV Capitalは、「大胆な挑戦をする起業家を支援する」というビジョンのもと、マーケットをリードする革新的なデジタル企業の構築に注力しています。 これまでに、Zalando、Delivery Hero、FlixBus、Depop、HelloFreshなど、ドイツ発のユニコーン企業を多数輩出してきた実績があります。

特に、大きな市場を狙い、強いテクノロジーを持ち、優れた経営チームを擁するスタートアップを重視しています。


2010年代には、いくつかの大型エグジットを達成しました。例えば、Zalandoは2014年にIPOを果たし、時価総額100億ドル以上の企業に成長しました。 Delivery Heroも2017年にIPOを実施し、時価総額120億ドル以上となっています。 また、Depopは2021年にEtsyに16億ドルで売却され、HelloFreshは2017年のIPO後、時価総額130億ドル以上の企業となりました。

2022年1月には新たに4億3000万ユーロのファンドを組成し、シード期からシリーズAまでの投資に充てる計画です。 優れた投資実績と豊富な経験を武器に、今後もデジタル分野の有望企業の発掘と育成に注力していくことが期待されます。

Earlybird Venture Capital


ベルリンを拠点とするEarlybird Venture Capitalは、1997年設立の老舗VCです。 中東欧やトルコも投資対象に含め、ヨーロッパ全域で有望なスタートアップを発掘しています。 N26、UiPath、Iyzico、Wefoxなど、フィンテックやSaaSのユニコーン企業に多数投資しています。

同社は、ドイツ、オーストリア、スイス、北欧、英国、ベネルクス、フランス、南欧、東欧、トルコなど、ヨーロッパ全域の有望なスタートアップを支援しており、シードステージから成長期まで、テクノロジー企業のあらゆる発展段階に投資しています。


同社の特徴としては、デジタルウェスト、デジタルイースト、ヘルス、Earlybird-Xの4つの独立した専門チームを擁しているところです。 デジタルウェストはドイツ語圏や西欧諸国の初期段階のデジタル企業、デジタルイーストは東欧とトルコの初期段階のICT企業、ヘルスはヨーロッパ全域のデジタルヘルス、医療機器、診断、バイオ医薬品企業、Earlybird-Xはロボティクス、AI、モビリティ分野の企業に投資しています。

これまでに20億ユーロ以上の運用資産を有し、9件のIPOと31件の企業売却の実績を持つ、ヨーロッパで最も確立されたアクティブなベンチャーキャピタルの1つです。 ヨーロッパ全域のテクノロジースタートアップに特化した有力VCとして、多様な分野・ステージの企業に投資し、イノベーションの促進と気候変動対策の両立を目指すことで、今後もヨーロッパのスタートアップエコシステムの発展を支えていくことが期待されます。

Rocket Internet


同じくベルリンのRocket Internet は、ベルリンに本社を置くドイツのインターネット企業で、スタートアップ企業を設立し、さまざまなモデルのインターネット小売ビジネスの株式を所有しています。

同社のビジネスモデルは、スタートアップ スタジオまたはベンチャー ビルダーとして知られており、新しい企業にベルリン本社のオフィススペース、ITサポート、マーケティングサービス、投資家へのアクセスを提供しています。


Rocket Internetは、食品・食料品、ファッション、ホーム&リビング、旅行などの分野のインターネットおよびテクノロジー企業に特に注力しています。 また、同社の主要な投資部門であるGlobal Founders Capitalは、アーリーステージとグロースエクイティ投資に特化しており、2017年1月には10億ドルのファンド最終クローズを発表しました。 これは、欧州のVCファームとしては過去最大規模のテックファンドとなっていました。

過去には、Zalando、Delivery Hero、HelloFresh、Westwing、Home24など、多くの著名なベンチャー企業を輩出してきており、今後も注目のVCの一つです。

KfWキャピタル


KfWキャピタルは、ドイツ復興金融公庫(KfW)グループの一部で、ドイツのベンチャーキャピタル市場を支援するために2018年に設立されました。

KfWは、ドイツ連邦共和国とドイツの州が所有する国営開発銀行で、KfWキャピタルは、ドイツのベンチャーキャピタルファンドに投資し、スタートアップ企業への資金提供を促進することで、ドイツのベンチャーキャピタル市場の発展と強化を目指しています。
具体的には、ドイツ政府の「未来基金(Zukunftsfonds)」からの資金を活用し、KfWキャピタルを通じて民間ベンチャーキャピタルファンドに出資します。未来基金は2021年に設立され、2030年までに100億ユーロの公的資金を拠出する計画です。 KfWキャピタルはその受け皿となり、民間資金と合わせて300億ユーロ規模のファンド組成を目指しています。 これにより、ドイツのスタートアップ企業の初期段階だけでなく、第2、第3の成長段階に必要な資本も支援を行います。


また、KfWキャピタルは、欧州投資基金(EIF)や民間ベンチャーキャピタルとも連携しながら、ドイツのベンチャーキャピタル市場の発展を後押ししています。 例えば、ドイツの若手技術系企業を支援するベンチャーキャピタルファンド「コパリオン」にも出資したりしています。KfWキャピタルの取り組みにより、ドイツのスタートアップ企業は、シード期から成長期まで、段階に合わせた資金調達が可能になるでしょう。これが、ドイツのイノベーション力強化と経済成長の促進につながると期待されています。

北欧の主要VC

北欧諸国は、スタートアップ企業の育成とイノベーション促進に力を入れており、有力なベンチャーキャピタル(VC)が活躍しています。


北欧諸国は、高福祉・高負担の社会モデルと、変化に柔軟なビジネス文化の両立で知られます。 教育水準が高く、英語の浸透度も高いため、グローバル市場を目指すスタートアップを多数輩出しています。

また、デジタル化や環境分野での先進的な取り組みも、北欧発のイノベーションを後押ししています。 今後も、北欧のベンチャーエコシステムから、ユニークなビジネスモデルを持つスタートアップが登場すると期待されています。

Creandum


Creandum(クレアンダム)は、ストックホルムを拠点とする著名なベンチャーキャピタル企業で、北欧地域で最も活発なベンチャーキャピタル企業の1つです。

2003年に設立され、デジタルテクノロジースタートアップへの初期段階の投資に注力しています。

同社は、グローバルな野心を持つデジタルテクノロジー企業を支援しており、iZettle(現PayPalの一部)、Spotify、金融サービスプラットフォームのTinkなどに投資してきました。 これまでに200以上の投資を行い、38社のエグジットを達成しています。

アーリーステージの投資家として、Creandumは通常、シードラウンドとシリーズAラウンドに参加しています。グローバルに拡大する可能性を持つ革新的なテクノロジー企業を支援しており、具体的には、ソフトウェア、フィンテック、eコマース、ゲーム、ヘルステックなどの業界に特化しています。2016年に2億6500万ドル、2019年に3億ドルのファンドを立ち上げ、引き続きアーリーステージのベンチャー企業を支援しています。

Northzone


Northzoneは、1996年にノルウェーのオスロで設立された著名なベンチャーキャピタル企業です。


その後、ロンドン、ニューヨーク、そして北欧各地にオフィスを展開し、その存在感を拡大してきました。同社は、シードステージからグロースステージまで、米国とヨーロッパ全域で起業家を支援するマルチステージ投資戦略で知られています。また、業界としては、ソフトウェア、ヘルスケア、ハードウェア、半導体、ブロックチェーン、ゲーム、人工知能などに投資しています。


設立以来、Northzoneは175以上の投資を行い、€1.5億以上の資金を調達しています。投資範囲は通常€1百万から€40百万で、特に$15百万が投資の中心となっています。

同社の特徴としては、独立した思考と個人的な経験を重視する協力的なチーム文化を重要視していることがあげられます。また、正直さとキャラクターの強さに焦点を当て、起業家と、相互理解と信頼に基づく関係を築くことを目指しています。


Tesi


Tesi(正式名称:Finnish Industry Investment Ltd)は、フィンランドに拠点を置く国営のベンチャーキャピタルおよびプライベートエクイティ企業です フィンランドのスタートアップ支援とベンチャーキャピタル市場の活性化を目的に、2014年に設立されました。 直接投資とファンド・オブ・ファンズ投資の両方を行っています。


約12億ユーロの資産を管理しており、ポートフォリオ企業にはM-Files、Visedo、Verto Analytics、Enevo、Rightware、Eniram、ICEYE、Oura、Kaiku Health、IQM、Swappie、MariaDB、Nosto、Varjoなどがあります。

基本的にはプライベート投資家と同じ条件で共同投資を行いますが、アクティブな少数株主として投資し、最大で50%の持分を保有します。

投資対象としては、幅広い業界を対象としているものの、高成長でスケーラブルなフィンランド企業に焦点を絞って投資を行っています。


Sunstone Capital


デンマークのコペンハーゲンを拠点とするSunstone Capital は、ライフサイエンス分野に特化したVCで、2007年にVaekstfonden(デンマーク成長基金)と民間の利害関係者によって設立されました。 バイオテクノロジーやメディカルデバイス、デジタルヘルスなどの領域で、ヨーロッパ有数の実績を誇ります。


約30億デンマーククローネ(DKK)を管理しており、初期段階のライフサイエンス企業に投資し、新しい治療法の開発を支援したりしています。ポートフォリオ企業としては、Chempaq、Action Pharma、M2Medical、Evolvaなど、200以上の企業に投資しています。

Survac(Merckに売却)、Neurodan(Otto Bockに売却)、AudioAsics(AnalogDevicesに売却)などの成功したエグジットケースもあります。


NordicNinja VC


そして近年、注目を集めているのが、日本の国際協力銀行(JBIC)と産業革新機構(INCJ)が出資するNordicNinja VC です。

2019年にフィンランドのヘルシンキに本社を設立以降、エストニアのタリンやスウェーデンのストックホルムにもオフィスを展開し、北欧・バルト諸国のスタートアップに特化して投資しています。 北欧とアジアのブリッジ役として、イノベーティブな企業の発掘と育成に取り組んでいます。


最初のファンドは€101百万で、2023年に第2ファンドも立ち上げています。主にシリーズAおよびシリーズBに焦点を当てていますが、プレシード投資も行います。

投資対象インダストリーは、ディープテック、サステナビリティ、デジタル社会に関連する企業で、今までにBolt、Einride、Veriff、Voi、Starship、ClimateView、Kognic、Mavenoid、Pactum、Varjo、DappRadar、Ready Player Meなどの企業に投資を行っています。

実際に、これまでに3つのユニコーン企業を輩出し、他にも同様のポテンシャルを持つ企業がいくつかあります。

投資チームに、北欧と日本の元創業者が入っていたり、日本の大手企業(ホンダ、パナソニック、オムロン)および日本国際協力銀行(JBIC)との強力なパートナーシップを持っていたりと、かなり日本とのつながりも深いVCとなっています。

いかがでしたでしょうか?

こちらのNoteでは、MBBといった戦コンやBIG4の転職体験談、ワンコイン企業分析、誰でもコンサルに入れる転職準備セット、USCPAの科目まとめノートや、簿記2級のまとめノート、大学院留学・海外生活体験談を紹介しています。



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