薬を飲むこと
わたしは過去10年間のあいだに癌摘出で2回、脳腫瘍摘出1回の計3回手術をしました。なので当然ながらたくさんの薬にお世話になりました。
わたしは異常なほどの針恐怖症なので、検査に必要な採血や点滴も、それがある日は食事も喉を通らなく、回数をこなせば慣れるだろうと勝手に周りが思っていることも知っていたので3回目くらいからは泣き言も吐けなくなり勝手にひとりで追い詰められて苦しみました。
もちろん主治医や看護師さんはそんなわたしの不安に対してもきちんと向き合ってくれていました。太めの点滴を入れるときは貼る麻酔シールを貼ってくれたし、足の動脈から管を通すという書いているだけでもゾッとする検査のときは痛み止めの点滴を入れてくれました。
それまで、わたしは大病をしたことがなく入院はおろか市販薬のお世話になることもありませんでした。多少の生理痛は我慢をし、薬局には日用品を買いに行くくらいしかなかったのです。
それが一転、処方箋を持って薬局に行き必要な薬をもらうことになるなんて。お薬手帳なるものももらい、通院のたびにそこにわたしに必要であるお薬の情報が足されていく。
毎日朝晩絶対に飲み忘れしないように管理して、わたしは薬を飲み続けています。前回の通院のときには減薬してみようということになり、一歩完治へと近づきました。嬉しい!
家庭環境もだし対人関係も影響していたのだと思うのですがわたしは自然派志向だったので、最初の癌が見つかるまで服薬することに強い嫌悪感を持っていました。みんなそれぞれの選択肢の中で選べばいいという当たり前のことが、あのころのわたしは、こと薬の話になると過剰に反応してしまい「薬が人を殺す」という思考に囚われていました。だから、例えば職場の人が片頭痛の薬を飲んだり悪寒を感じて葛根湯を飲んだりすることが考えられなくて、もちろん直接言いはしませんがどこか上から目線で「そんなん飲んでるから自然治癒力なくすんじゃないの?」と思っていました。
ところが自身が病気になってたくさんの薬に助けられている今、なんて無知でなんて傲慢な考えをしていたのだろうと猛省しました。
特に、痛み止めと吐き気止め!!病室のお布団の中で涙が出るほど感謝しました。
主治医や担当医師の方々もそうだし、看護師さんや看護助手さん!
当然ながら(?)同じように嫌悪感を抱いていた病院という施設に一歩入ったら、外界とはまったく異なった世界が粛々と営まれていて、わたしは混乱しました。
「あれ?世の中の人ってこんなに優しいんだっけ?」
本当に驚いたのです。なににって、自分の攻撃性に。
ずーっと、ケミカル=悪 自然=善
という二極思考だったので、ケミカル≠悪になるとわたしの価値判断の土台がグラグラになってしまうのです。大混乱しました。
実際、自然派な生活(呼吸法とか感謝するとか普段からオーガニックを心掛けたり運動したり)をしていれば病気にならないと言われ続けていたのになってしまった。おおよそオーガニックとは思えない病院食なのに毎分毎時間ごとに回復していく。それまで“していた”感謝が、入院中は毎日毎日湧いてきて噛みしめていました。吐き気が起きたら呼吸法で、みたいな対処法を試したけれどとてもじゃないけどやっている心の余裕がない。点滴で吐き気止めをしてもらったら数分で落ち着く。眠れなくなって、その話を看護師さんにしたら軽い軽い眠剤をくれたけどそれこそ「飲んだら終わり」だとそのときは思っていたので飲まずにいました。そしたらいろんな症状がではじめてしまって、諦めて飲んだらすごくよく眠れて、目が覚めたとき生まれ変わったようなとてもすっきりとした気分だったのを覚えています。
入院退院を繰り返すたびに、わたしの中の価値観が崩れました。読書以外することがないしほとんど声が出ない状態だったので話すこともできなかったため気がつくと内観していました。ただ、内観をすればするほど暗い沼に落ちていく気がしていました。自分の傲慢さや短絡的な幼い考えに身が縮む思いがしたのです。
そんなときにわたしを救ってくれたのは夫の存在でした。毎日夫は夕方から面会に来てくれました。絶対使わないスマホホルダーとか尋常ではない甘さのカフェオーレとかサイダー大福とかわけわからないものを買ってきて笑わせてくれました。すごく忙しい仕事の中どうやってあの時間を捻出していたのか・・・夫にも迷惑をかけたことも多かっただろうし、ほんとうに心から感謝しています。
現在のわたしはというと、少し前に書いたかと思うのですが仕事を辞めてから働けなくなって、恐らく本格的に勤めるということはもう無理なのかな?と感じています。フリーランスでなにをしていくにしても、わたしは手に職もないので0から身に着けていくしかないですね。
ただ決めているのは、今までたくさんもらった感謝を今度は恩返ししていく人生にしていきたいです。そのために自分を含め半径1mから幸せにする生活を心掛けています。その輪をどんどんと大きくしていきたいです。そのための手段として仕事をしていきたいな、と。そんなふうに考えています。
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