ワーママ 「手が3本欲しい」と願った日

息子が8ヶ月の頃、保育園に通い始めた。
彼はまだ座ることしか出来ず、ベビーカーも断固拒否。移動は必ず抱っこだった。

当時の私は母親として未熟。
息子を「抱く」ことしか対処法を知らない。
仕事帰りにお迎えへ行き、夕飯を作る気力も無ければスキルもない。8ヶ月の彼はいつでも泣いていて、数センチ離れようものなら転がって悲しんだ。
私はいつも独り。(どうにかしたい)そう思うだけで精一杯で、夕飯のほとんどはデリバリー。もしくはテイクアウトだった。

帰り道、お弁当屋さんに寄ることが増えたが、息子を抱きながらの会計は想像以上に大変だった。(手がもう1つあればいいのに)バカなことを真剣に考えていた。
雨の日は、最悪なんて言葉じゃ表せない。ますます手が足りず、お弁当を地面に置くことでしか対応出来なかった。
そんなある雨の日、またお弁当屋さんに寄った。会計が近づいてまた思う。
(手が足りない)
息子を抱きあげようとして、
ピーーーンッ と閃いた。
(コノコアルケルシタテル)

この子、歩けるし立てる。 

雨で床は濡れていた。そんな事は関係ない。私には手が足りないのだ。まだ靴を履かない息子を手放し、排水溝に興味を持った彼を見て見ぬふりしてお弁当を受け取った。

懐かしい。
今となっては笑い話で、私の手はちゃんと足りてる。

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