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カエルとウサギ

道路の真ん中に何かいる、と思ったら、カエルだった。私が見たことあるカエルの中では、大きめの...たぶんヒキガエルだ。

緑道がある町にはよくこのヒキガエルがいる、という印象がある。昔住んでいたところにも緑道があって、マンションの玄関あたりで、出くわすことがあった。
そうなるともう、私は家に入ることが出来ない。こちらの動きが刺激となって、ひょこっと飛び跳ねて向かってきたりしようものなら、たまったものじゃない!!

幼い頃から、私はカエルが苦手で、見つけると姉に「怖いからやっつけて!」と言った。そのたびに姉は、カエルを追い払ったり、ときには踏みつけたりしながら(カエルたちよ、ごめんなさい)カエルから私を守ってくれた。

当時、身近にいたのは、今日みたカエルよりもだいぶ小さい、緑のアマガエルだった。田舎なので、あちこちにカエルはいたし、車や自転車に轢かれてぺっしゃんこになったカエルの死骸もよく見かけた。
ときには生きたカエルがお風呂に現れて!大パニックになったりもした。日中、窓を開けて換気をしている間に入ってきていたのだろうか。

私は、実物のカエルは嫌いだったが、がまくんとかえるくんが出てくる『ふたりはともだち』というお話は大好きで、大学生時代、アメリカでホームステイをしたときに、自分へのお土産としてその絵本を買って帰ったのだった。

カエルが嫌いな一方で、私はウサギが大好きだった。ウサギのグッズや絵本は、母も姉も私にゆずってくれた。
シルバニアファミリーの収集は、ウサギの一家の担当だったし、━姉はクマ、弟はネズミ、という分担だった━ピーターラビットにも夢中だった。

小学生の頃、学校で飼っているウサギが子供を産んだ。
そのうちの1匹を私は連れて帰った。小学生の手のひらに乗るくらい小さい小さいパンダウサギだった。てのひらに乗せたまま、歩いて連れて帰った。よく逃げ出さなかったなあと思う。

実はその後、家の庭でひと通り草を食べたあと、彼女は一度、脱走を試みたのだが。それ以降は、小屋から出して庭を散歩させていても、逃げ出すことはなかった。

最初のうちは、水槽に藁をしいて、家の中で飼っていた。もう少し成長してくると、犬小屋として使っていた小屋を親戚から譲り受けて、外の小屋で飼うことになった。

いつしか、私はウサギの世話を全くしなくなった。その代わり、姉が世話をし続けた。

小さかったウサギが、すっかり大きく、でっぷりとした大人になったころ、我慢強い姉が、大泣きをした日があった。小屋を掃除している間に、ウサギが脱走して、隣の家の畑にまで行き、見失ってしまったそう。

久々の脱走だ。
当時は、野良猫や野良犬がいた時代。
ウサギの命に保証はない。

姉が泣いていることに気づいた、父と母が協力して、ウサギを連れて帰ることが出来た。その後もウサギが亡くなるまで、姉は大事に大事に彼女の世話を続けた。

大人になって初めてフランスに旅行したとき、あまりにも楽しくて興奮して、旅行の一部始終を姉に報告した。実に5時間、私は話し続けた。
姉は、辛抱強く、私の言葉に耳を傾けていた。
適当に聞き流しているのかと思ったら、「あれ?それってさっきの人のこと?」と話の矛盾をつっこんでくる姉。案外、真剣に聞いてくれているのだなあ、と感心したものだった。

ウサギの肉を初めて食べたら、鶏肉みたいだった、と感想を述べたとき、姉はあきれたような、そして、ひどくがっかりした様子で「私なら絶対にウサギだけは食べない!」と抗議した。

そのとき、私は、「そういえば、カエルの肉も鶏肉に似ている、って聞いたことあるなあ」と思っていたのだった。

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