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📰 365 SUOMI vol.3 ヴァップの歴史を紐解く

フィンランドの気になるニュースや面白そうなトピックスを日本語に翻訳して「 365 SUOMIシリーズ 」として記録します。

第3回は、春の到来をお祝いするお祭り「ヴァップ」をご紹介します。フィンランドの国営放送 yle が2010年5月に公開した内容を翻訳しました。


原文はこちら




春、労働、学生たちの祭り


5月1日は ヴァップ / Vappu のお祭りです。春の訪れに感謝し、カーニバルでお祝いするのが象徴的ですが、労働者や大学入学試験に合格した高校生たちのお祭りでもあります。ヴァップには、フィンランド各地で公式に国旗が掲揚されます。

■ ヴァップの起源

フィンランド語で vappu(ヴァップ)は、〈 Walborga 〉〈 Varpuri 〉という言葉に由来します。7世紀にドイツに住んでいた尼僧の Walborga が聖人になった記念日として、中世の時代には既にお祝いされていました。

フィンランドでは、ヴァップは農耕に関する古い記念日でもあります。家畜は各地で varpuri として牧草地を作っていました。
北の地域では、居場所がわかるように牛の首につけられているカウベルのまわりを子どもたちが走り回り、家畜が元気に育つようにと音を鳴らしました。

沿岸地域ではお祝いの火が焚かれます。焚き火のまわりでは、ビールやシマ / Sima を飲んだり、踊りを踊ったりして楽しく過ごします。ベルを鳴らしたり、ラッパを吹いたりすると悪い気を追いやり、良い気が入って来ると考えられていました。焚き火の煙や騒音には、牧草地に放牧された家畜を肉食動物から保護する役割もありました。

■ ヴァップ - 春の到来を祝う–

ヴァップは中世ヨーロッパでは春の到来を祝う古いお祭りで、ゲルマン諸国では夏の始まりを意味します。ヴァップの夜は、春の気や良い力が、冬の気や闇の力に打ち勝つと考えられていました。

かがり火を焚くこともお祝いの一つで、家畜の繁殖能力を高めると信じられていました。ヴァップは他にも様々な伝説や魔法、魔女に関連があります。

現在ヴァップを特徴づけるアイテムには、風船や紙吹雪、カーニバルやお祝いの衣装などが挙げられます。

伝統的なヴァップの飲み物、シマ / Sima は自宅でも作ることができます。シマと一緒に楽しみたいのが、ティッパレイパやムンッキなどの軽食です。スパークリングワインやシャンパンも、大人たちには欠かすことのできないヴァップの相棒です。

■ 労働者たちのお祝い

5月1日は労働契約の更新や職場を異動する日です。労働運動の日として、アメリカではデモ行進の日として、スタンダードになりました。

フィンランドにおける労働者たちのヴァップの行進には長い伝統があります。ヴァップの行進では、労働者たちの状況改善がスローガンに掲げられています。ヴァップは1944年に祝日に制定されました。

■ 学生たちのお祝い

既に18世紀には、学生たちは春の到来を熱心にお祝いしていました。当時学生たちは5月13日のフローラの日を春をお祝いしていましたが、徐々に5月1日に移行されました。
ヘルシンキでは、ヴァップに参加する学生たちは前日にマンタの帽子を被り、当日はウッランリンナンマキに集合します。スウェーデン語話者の学生たちはカイサイニエミに集合します。

yle が2010年5月17日に公開した記事を翻訳


ヴァップ in ヘルシンキ


ヘルシンキ市のアーカイブに当時の記録が残っていました。いくつかご紹介しますね。

Kuva: Helsinki phots fi. /Kajantie Arvo (CC BY 4.0)

この写真は1959年に3人の鍛冶屋像の前で撮影されました。ヘルシンキを訪れたことがある方には見覚えのある景色のはず、ストックマンがあるところです。風船や色紙で作った花飾りなどでデコレーションされています。背景には大学寮が映っています。


Kuva: Helsinki phots fi. /Kajantie Arvo (CC BY 4.0)

学生たちが集合するウッランリンナンマキって一体どこかな?と思っていたら、写真の天文台に見覚えがあることに気付きました。町の南側にあるカイヴォプイスト公園のことでした。この写真は1950年に撮影されたものです。頭に被っている学生帽、これがマンタの帽子なのかなぁ。


Kuva: Helsinki phots fi. / Tunnematon  (CC BY 4.0)

こちらはヘルシンキ大聖堂に集まった労働者たちのヴァップです。1980年代に撮影されました。黄色い風船に何か印字されてるように見えるのですが、スローガンでしょうかね。


Kuva: Helsinki phots fi. / Tunnematon  (CC BY 4.0)

ヴァップのご馳走を前に、グラスに目が釘付けの女の子。もっと注ぎたい、なんかその気持ちもわかる!1950年代に撮影されました。

食卓に飾られたキャンドルにも目がいきました。小さな子どもの近くに火があっては危ないからと遠ざけるんじゃなくて、大人と対等に特別な時間を演出しているみたいに思えました。

その他にも、当時の映像をyleのサイトから確認することができますよ。


記事に登場するヴァップの行進の映像はこちらがおすすめ。


ヴァップ in 我が家


カルダモンもたっぷり練りこんだ


フィンランドのヴァップにこれまでは「食」で参加していましたが、今年はさらに一歩踏み込むことができました。農耕にも関連しているとは全く知らなかったし、数年前にオンラインで試聴したヴァップのコンサートでトランペットや打楽器が象徴的だったのは、音を鳴らして悪いものを追い出す古い慣習を示唆するものだったのかなぁとも思いました。


今年もムンッキを揚げる予定です。


思いっきり砂糖をまぶして食べるぞ!





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