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いま、改めて「school food punishment」というバンドを語りたい。

[俺とsfp]

突然ですが皆さんは、
school food punishment(以下、sfp)というバンドをご存じだろうか。

2004年に結成され、残念ながら2012年に解散したバンドです。もう10年近く。時の流れは速い。自分が歴代好きなアーティストを挙げるとして、確実に5本の指には入るかなり思い入れの強いバンドです。

何を隠そう実は自分が高校生の時に初めてアーティストのライブに行ったのがsfpで。宮城の田舎出身でライブハウスに行くためには電車で都市部(仙台)まで行かないといけないため、仙台で大学生するまでは頻繁に行ける環境でもなく。あと当時軽音部に名を連ねておきながら「ライブハウスって怖い」のイメージがあったりで。
その環境のなかではありますが、このバンドが地元に来るのであれば「今しかない」と思い意を決するきっかけになったバンドです。その理由も下記で。(実際やってる音楽性もあってか初めてのライブハウス体験全然怖くなかったです)

上記の通り結成が2004年、メジャーデビューしたのが2009年で。一応メジャーに来た時点で名前は知ってはいたのだけれど、4枚目のシングルの「light prayer」という曲で完全に脳天やられてハマってしまいました。自分がハマったこの曲についてやバンドの音楽性については下記で。


[どういうバンドか。]

school food punishmentのメンバー構成は、内村友美(Vo・G)、蓮尾理之(Key)、山崎英明(Bass)、比田井修(Drums)からなる男女混合バンドで(2012年解散時点)、いわゆる「女性ボーカルバンド」の枠組みです。

バンド名を訳すと「給食とかマジ懲罰」でしょうか。この4人は給食制度に何か強い恨みでも持っているんでしょうか。それとも意訳して「お残しは許しまへんで」的な忍たま乱太郎のおばちゃんのアレでしょうか。
実際の所はどうか知りませんが、上記は全部冗談です。すみません。特にバンド名に意味は無いらしく、「英単語の響きで決めた」らしいです。

たまに外国の方で「なぜその漢字をプリントした」ってTシャツ着てる人いるじゃないですか。多分あれと同じ理論です。日本人がでっかく「給食 罰」とでっかくプリントされた服着て街を歩いてたら今の時代ネットで晒されることうけあいです。まぁバンド名ってそんなもんよね。
俺も高校時代付けてたバンド名の意味紹介しろって言われたら困る。


そしてこのバンドの代表曲を紹介。代表曲と言ったら、、、

言ったら。。。どれだ?

言ってしまえば「これめっちゃヒットしたわ」って抜きん出た曲がないのでファンであればあるほどこの質問の問いが難しい。

強いて選ぶなら多分これ...?です。メジャーデビューシングルだし。自分は観てないですが『東のエデン』というアニメのEDに使われてました。「Netflixのいつか観ようマイリス」に入り続けてます。

Spotify聴ける環境にある皆さん、どうでしょうか。正直結構好き嫌いが分かれる音楽かと思います。電子音キーキー鳴ってるし。シンコぺ多かったりで難解な曲調だし。
バリバリに鳴ってるストリングスはプロデューサーの江口亮(いきものがかりとか手掛けてる人)と「入れろ」「やだ」でメンバーとちょい揉めした経緯があるみたいですが。メンバーも「バンドサウンドのみでどうにかならんか」と試行錯誤した上で、「でも結局この編曲が一番完成度高ぇわ、納得」となったみたいです。実際この編曲はすげえと思うので、自分は良し派です。そこからバンドサウンドの幅も広がったし。

で、そもそものバンドサウンドなんですが、めちゃ尖ってますよね。当時は「洗練された野蛮」なんてキャッチコピーが掲げられていたみたいです。(正直この表現はあまり好きじゃないけど)
基本は4ピースバンドの音楽なんだけど、ギターがあまり目立っていなくて。あくまでギターはコードを奏でる割合が多く、このバンドの核はキーボードで。キーボードがいわゆるリードギターの役割を果たしており、ピアノのメインリフに加えシンセでシューゲイザーみたいなノイズ入れたり、その他の電子音・SEも含めもう好き勝手やってまして。ベースとドラムもなかなかエグいプレイしてますがとにかくKeyの蓮尾さんがやばいです。ライブでは全盛期の小室哲哉かってくらい機材が彼を囲んでました。

ジャンルで言うとポストロック(ギターをいわゆる一般的なギターリフ的なサウンドとして扱わないバンドサウンド)(と解釈している)だと思うのですが、そこにこのKeyが乗っかってエレクトロサウンドを軸にちょっとしたプログレになってます。
そこに内村さんの綺麗で癖が無く聴きやすいけどちょっと無機質なボーカルが乗っかる形で。歌モノではあるんですがこのバンドはどこかボーカルも他の楽器と並列扱いされた一つの楽器として、5つの楽器が奏でるバンドサウンド、といったコンセプト・サウンド作りな気がします。

また、sfpは作曲は共作ですが歌詞は内村さんが書いており。メッセージとして何かを届ける詞、というよりはどこか心象風景を散文チックに音とメロディとのマッチングを重視している作りかと。この淡々とした感じもまた自分好みで。メジャー後の曲はタイアップに合わせて多少前向きなメッセージも書くようになりましたが。
ちなみに内村さんが影響を受けたアーティストが「Spangle call Lilli line」「椎名林檎」とのことで。確かに両者の要素が色濃く出てる。そんな感じのバンドです。
メジャー時代はソニー系列レーベルでアニメタイアップ多かったし、何だかんだで名前は売れてたかと思うので2010年付近のロキノンファンには知名度高いのでは。今のティーンが知ってるかは微妙ですが。

結成から8年の歴史、メジャーに行って3年での解散。そんなsfpの決して長いとは言えないディスコグラフィを以下、書いていこうと思います。

(以下、文体が常体になります。承知の上なので突っ込まんといて)

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インディーズ 1st mini album
「school food is good food」(2007.4)

記念すべき初円盤。サウンド的にはベースとキーボードが引っ張っている。いや今改めて聴くとめちゃくちゃ良いなこのアルバム。

バンド名のpunishmentをリカバリーするかのように、「給食おいしいよ(意訳)」とのタイトル。ただ某獄門会みたいに「日本の米は世界一」とか言う感じの作品では勿論ない。

インディーズならではの荒削りな音でありつつも、sfp特有のエレクトロサウンドの基盤は出来上がっている印象。
この時点ではまだいわゆる「ポストロック」バンドの枠で音を鳴らしている気がする。キーボードもシンセというよりピアノがまだ強い印象。良くも悪くも数年後これがああなるのかという。「snap」とかバラードと見せかけてのアウトロで片鱗はめっちゃあるけど。

全体的にやはりインディ然としてるというか、浮遊感がありつつも作品を通してダウナーな雰囲気を纏っている。唯一MVが作られた「pool」「浮かび上がる」はサウンド自体は明るめなのだけど。

総じてこの作品は内村さんのボーカルと詞が他作品と比べても内に内に向かっており、心象風景が非常に抽象的。要は暗い。ラストの「遠い箱の中」で「辿り着くのは 後退」の一節で締めてるからね。
とにかくメンバーがやりたいことを初期衝動で一つのサウンドに突き詰めたような音楽。
一般受けはしにくいだろうけど、これはこれで個人的に好きな音楽。

オススメ曲:M1.「close,down,back,to」

(好き度:☆☆☆☆☆☆)

インディーズ 2nd mini album
「air feel,color swim」(2007.11)

前作から半年の短いスパンで発売されたインディーズ2nd。
タイトルが「空気を感じる、色を泳ぐ」との直訳で、その名の通り前作のノスタルジックでダウナーな雰囲気に比べ「art line」などポップネスを全面に押し出した曲もあり、外に開けているアルバム。ロックを聴き慣れている人は結構聴きやすいアルバムなのでは。

前作の「snap」では「狭い道に滑り込んで倒壊感に酔いしれる」「増していくのは失意の夢と目障りな妄想」とか歌っておきながら、今作の「sky step」で「過ぎ去っていくのは過去 見えないのが未来 それだけ認めたらいいよ タップダンスしよう?」とか言ってる。半年で何があった。

とは言っても前作に近い雰囲気の曲も多く、むしろバンドサウンド的にはかなり激しくなっている。コード感やピアノのリフが全体的に焦燥感に溢れており、蓮尾さんのキーボードもかなり暴れている。バンド全体がメジャー時のサウンドにかなり近くなっている印象。

このアルバム、M1「you may crawl」から中々に飛ばしており、ゴリッゴリのベースラインとエレクトロがロックサウンドに見事に組み合っている。詞も完全にメロとの親和性を重視しており深く考えずに聴けるどこか記号的な内容。sfpで一番好きなのがこの曲、という人もいるかも知れない。
以降、M2・M3で強めのピアノロックを出した後にM4~M6と3曲連続で前作に近いダウナー寄りの曲、そしてM7「art line」で一気に開けたポップサウンドになる。(M8はボーナストラック扱い)
音だけを聴くと割と唐突に見えて、詞に目を向けると前作の内へ内へという流れとは違い、ある種の自己完結的な開き直りを含みつつではあるが序盤のやや挑発的な詞、中盤で内省的になり沈みつつも、バラード「曖昧に逸れる」でサウンドとは裏腹に詞では確かな意識の変動を描写しており、「art line」で「流れは 掴めた」と高らかに歌いポジティブに帰結する。読後感が非常に爽やかな作品。
例えるなら情緒面のグラフがナイキのマークみたいな軌道を描くアルバム。

そしてこのアルバム後にベースの上田さんが脱退。山崎さんも勿論好きなのだけど、前作の「close,down,back,to」、今作の「you may crawl」とブリッブリな音を聴かせつつ一音一音が攻撃的ですごい好きな音。
あとTwitterの文がすごい自分好み。→@jabasunu

オススメ曲:M1.「you may crawl」

(好き度:☆☆☆☆☆☆☆)

インディーズ 3rd mini album「Riff-rain」
(2009.1)

(このアルバムだけSpotifyに無かった)
感想:名盤。聴け。飛ぶぞ。以上。

としたいくらいなのですがそういう訳にもなので。
インディーズ3部作の中では一番好きです。6曲のミニアルバムだけどとんでもない完成度。大傑作メジャー1stと比べてもどっちを選ぶか迷う。邦楽でも屈指の作品だと思うぞこれ。当時林檎姐さんもお勧めしてた。

雰囲気的には前作よりも1stに近いのだけど(ダウナーな感じ)、今作は王道のポストロックの枠から外れ、骨太なロックサウンドに変わりバンドとして一つの完成形に至った印象。

まず圧巻で美しいロックバラード、M1の「flow」が最高。A・Bメロで5拍子、サビで6拍子を行ったり来たりで変拍子マニア歓喜。sfpの曲の中でも詞とボーカルが屈指に情熱溢れており、それを活かすバンドサウンド。実はサウンド的にはむしろ王道ロックというこのバンドでは異色作。

M2の「feedback」もこれまた最高で、sfp王道のエレクトロロック。MVも作られており、自分がこのバンドを知って2番目にハマった曲だったな。

ドキャッチーな上記2曲を経て、アルバムはこのバンドの音の深淵へと。

M3「egoist」では全体的な浮遊感を漂わせつつ、でも捉えきれない雰囲気を醸し出し、かつ音自体は裏に回り抑え目ではあるけど曲の枠を逸脱しないギリギリを攻め好き勝手やってるシンセ。

そしてM4「killer」。タイトルの通りリスナーを殺しに来てる楽曲。この曲に関してはエレクトロ要素は裏のシンセノイズで、全力のピアノロックを鳴らしてくる。決してBPMは高くないのだけど、約3分半ずっと緊張感と焦燥感を与えてくるサウンド。

M5「二人海の底」はホッと一息つけるバラードかと思えば、全くそんな事はなくA・Bメロの左右のボーカルのPAN振りがエグい。間奏の音飛びしてるようなキメも気が抜けない。是非イヤホンかヘッドホンで聞いて欲しい。系統的には過去作のバラードに近いのだが、前々作、前作の内省的な内容とは違い、この作品は通じて「君」へ抱く感情を描いている。ただそれは強い情念のようなものなのでポジティブな意味合いとは違うけど。

そしてM6「over」。素直に聞けばアルバムを穏やかに締めるエピローグ的な曲なのだけど、このアルバムのタイトルは「Riff-rain」。作品自体が循環構造になっており本曲のアウトロでM1の「flow」に繋がるのだ。リピート再生すると「overflow」という曲が出来上がる。何なら本人達は当時このスタイルで2曲をくっつけて演奏していた。これがまた圧巻。というか詞の内容的にoverflow(溢れる)のが曲のテーマとして近いと思う。

気になる方は「school food punishment overflow」ってYoutubeで調べてみてください。このテイクが自分はこのバンドの最高到達点だとも思っています。(確か1st Singleで特典映像的な感じで円盤化してたような)


オススメ曲:全部。(強いて選ぶなら)M6+M1.「overflow」

(好き度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆)



メジャーデビュー

そして、2009年5月、彼らはメジャーシーンに活躍の場を移し上記でリンクを貼ったシングル「futuristic imagination」でデビュー。
アニメタイアップも付き、インディ3枚で培った元々の地肩もありアップテンポかつ焦燥感溢れるこの楽曲の完成度が評価された(当時あんまり自分はこの曲のヤバさにピンと来てなかったけど)。
元々内村さんのボーカルも芯はソリッドではあるが、パッと聴いてキュートな受け入れやすい声でもあり、アニソン向けの親しみさがある。しかしこの曲、Riff-rainのサウンドをメジャー仕様にチューニングしたような内容で今聴いてもバランスが良い。全く古くない。むしろ時代を先取りしすぎている。

2nd Singleの「butterfly swimmer」は化粧品のCMで起用され、その箇所だけ切り取るとバンド史上ポップなサビだが、曲全体を通すと緩やかなイントロとボーカルのA・Bメロの導入後に情熱的なバンドサウンドが入り、再びA・Bメロを繰り返しサビでここぞと音を爆発させる。
そこから間奏→Bメロ→大サビの流れからのラストDメロの畳みかける譜割。凝った一つの組曲のようになっており「ただのポップサウンドで終わらない」というバンドの矜持を見せつけた。

3rd Single「sea-through communication」は異作だった。「art line」を遥かに超えるポップス。まるでアイドルが歌うかのようなテクノポップ。Perfumeが歌っても成立しそう。
ただ勿論トラックは洗練されており、インストだけでも余裕で聴ける。軽快なリズムに乗せアコギとハウストラック、シンセのSEが非常に高い完成度で絡み合っている。
正直昔ながらのファンはこの曲でセルアウトと思ったかも知れない。ただ下記に記すが、この曲は次のアルバムでかなり重大な役割を果たしている。

4th Single「light prayer」は上記でも書いた通りこのバンドに自分がハマったきっかけの曲。何度今までの人生で再生したか分からない。
疾走感溢れるロックチューン、メロディも爽やかで詞も前向きではあるのだが冷静・クールさを失わないサウンド。まるでこの曲自体をメタで捉えている見えない存在がいるような、楽曲の熱情とは裏腹に俯瞰でどこか突き放しているような空気感というか、その温度感にやられた。
もしこの曲を聴いて「良い曲」を超えて自分と同じ上記の気持ちになった人とはたぶん友達になれる。

5th Singleは両A面「future nova / after laughter」。タイアップ先の「東のエデン」の監督に音楽性が大変気に入られたそうでタイアップがトータル4曲も作られている。その作品の完結を担う2曲。
「future nova」は3rdと4thの中道を行くようなエレクトロかつポップでもあるロックサウンド。インディの頃を思うとめちゃくちゃ分かりやすいサウンドになっている印象。
「after laughter」は作曲が主にバンド全体であるこのバンドで作詞作曲ともに内村友美という珍しいタイプの曲。ここまで振り切ったらむしろ気持ちいい、とばかりにポップなサウンド。
「light prayer」を更に明るい曲にしたらこうなったって感じの曲。この曲に関しては「明日は来ると 雨のち晴れだと」「君の笑顔 みとれるほど眩しい未来 あぁ世界は変わる」と常時ポジティブなメッセージを歌っており、そのサウンドもボーカルも今までのタイアップ曲の流れを汲み取り清濁併せた上でそれを飲み込み、嘘が無い純粋なメッセージを感じる曲。個人的にはfuture novaよりこっちのが好きだな。

バンドはそんな感じで順調にメジャーシーンを駆け上がっていった。ここまで書くと察する人がいるかもだが、
いや音楽性めっちゃ変わってね、昔のが良かった」というファンも当時かなり散見された。ただsfpはシングルのカップリングで結構やりたい事をやってる印象で、インディ時代に近い楽曲も多かった。

実際カップリング曲もかなりの高水準で、「A面はタイアップ曲、B面はコアファン向け」といった感じで住み分けがされていた。自分はA面を超える破壊度のバキバキのロック曲「deviswitch」が好き。

そんな感じで、5枚のシングル、既存曲6曲と中々のボリュームがある中、新規も古参も「アルバムどうなんの大丈夫か」と思ってた中、満を持してメジャー1stアルバムがドロップされた。

メジャー 1st full album「amp-reflection」(2010.4)

感想:大傑作。期待以上。聴け。

基本線はメジャーシーンで出したシングルを余すことなく収録し、そのサウンドが軸になっている。それらのピースを余すことなく回収し、新たなsfpの金字塔を作り上げた。

インディ時代よりポップ・カラフルになってはいるがロックバンドとしての矜持は高く持ちつつ「J-POP」に戦いを挑んでいるような作品。
この頃「洗練された野蛮」というキャッチコピーがやたらと宣伝されていたがあんまり自分はこの文言が好きじゃない。単純に言葉としてだせぇ、と言うのもあるだが、sfpは「無茶苦茶に見えて計算された音楽」と言うよりも「制御できない個々の才能が核融合して化学反応が起きた音楽」だと思うからだ。洗練された過程は計算ではなく、あくまで結果である(と思う)。

それが大爆発したのがこの作品。
SEかつ次曲へのブリッジのM1を経て、実質の1曲目であるM2「goodblue」。これまでの全シングルの中道を取ったようなキャッチーで聴きやすいロックサウンドで耳を惹き、上記で挙げたシングル曲でもキャッチー寄りの上記M3、M4でつるべ打ち。

そしてここまでポジティブな意識の上で他者との関わりを謳っていたが、次曲ではその他者との別離を描く。それがテクニカルなサウンドだがスッと耳に入ってくる聴きやすいミディアムチューン、M5「電車、滑り落ちる、ヘッドフォン」である。続いてこれまた上記で触れた『東のエデン』曲のM6、M7で再度エンジンをかける。

ポジティブなメッセージの2曲を経て、一旦日常に戻った風景を切り取ったミディアムバラードM8「04:59」、そしてリード曲扱いされていたM9「駆け抜ける」。大仰なストリングスに軽快なリズムが乗り走るというよりはスキップで駆け抜けるようなサウンド。

以上を経て辿り着くのがメジャーデビュー曲のM10「futuristic imagination」。これがアルバム仕様になっておりイントロで壮大さを増幅させるストリングスが加えられている。
このアレンジはファンの中でも好き嫌いが分かれるが、個人的にはアルバムの中のInterludeみたいなものだと割り切れば非常に合っていると感じた。作品の流れで聴くこの曲は新鮮でもあり、より説得感を増幅させる。
これまでは比較的ポジティブなメッセージを持つ楽曲が続いてきたが、ここでシングルの中ではかなりシリアスなこの曲を持ってきた事により、強い焦燥感とサビのラストで度々使われる「未来の根を切っても構わない」というキラーフレーズにある種危うさをリスナーは感じ取る。

そこからの恐らくこのアルバム一の問題作、M11「line」。難解な散文調の詞、バッキバキのベースとシンセ、攻撃的なロックサウンド。シングルのカップリングだと上記で挙げた「deviswitch」が近い。インディ盤のファンが大歓喜しそうなそれこそ「野蛮」な曲。ただサウンドは盛り盛りの電子音とロックサウンドでこのアルバム仕様にアップデートされている。

トム・ブラウン布川ばりに「どうなっちゃうんだ~!」と言いたくなるブリッジを経てからのM12「パーセンテージ」。既存曲で例えるとインディ2ndの「煙に白」「曖昧に逸れる」のようなバラード。詞に着目すると様々な経験を経てからのある種の他人に対する諦観、虚しさのようなものを感じる切なさを漂わせている。次曲でアルバムは終局だが、このとっ散らかった有様をどう解決するか。

そこに応えたのが3rd Singleとして賛否を分けたポップソング「sea-through communication」
ここで「世の中は無限のツール(ガジェット)で溢れている。それは視認できない糸のような存在かも知れないが、可能性を信じてコミュニケーションを諦めない」と高らかに謳う。作品としての完璧な帰結。
そして、彼らが電子音を軸にするバンドだからこそ、この楽曲に対する説得力を強く持たせている。正直この曲がこんなに化けるとは。驚嘆。

そしてこの作品のタイトルが「amp-reflection」。正直ジャケットを最初見た時は目を疑った。「売る気あんのか」と。目おかしなるわ。
ただこの曲群を踏まえると、「あらゆるツールによってコミュニケーションがamp(増幅)されそれがreflection(反響)する」という意味合いになる。昔のサウンドも、今のサウンドも、マイナスな意見も、ポジティブな意見も、「それら全ての反響がバンドとしての私たち」と宣言しているようなこのタイトル、見事。

メジャーシーンで課せられたハードルを軽々と飛び越えたこのアルバム、自分は発売と同時に入手しリアルタイムで聴いたが衝撃を受けたと同時に大変な感銘を受けた。そして、絶対に彼らの姿をこの目で焼き付けたいと思い冒頭で書いた通りライブに足を運んだ。本当に好きなアルバム。

オススメ曲:M6.「light prayer」M11.「line」

(好き度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆)


だが、このアルバムを聴き終えて同時にこんな危惧も抱いた。

「こんな才能の爆発見せてくれたは良いものの、こんなの今後も続くか?早くもやれる事はやり切った感あるのでは…」


「このバンド、解散しちゃうんじゃね?」


だがツアー後、彼らは新たな札を切った。配信シングルとしてリリースされた「flashback trip syndrome」。

今までのサウンドはそのままに、アルバムに多かった明るい曲調の楽曲とはまた違うシリアス寄りで、新たなバンドの始まりを予感させる楽曲。自分の心配は杞憂だったな、と思った。

だが、この配信シングルを出して間もなくバンドは半年間以上に渡り実質上の休止に入った。

そして、2011年3月、2ndフェイズとの冠を掲げ、バンドが再始動した。
で、何故かバンド表記が「School Food Punishment」と頭文字が大文字表記になった。「小文字表記のが良かったな―オシャレだし」とその時は何となく思っていたのだが。
それを踏まえて発売された6th Single「RPG」。『C』というアニメのタイアップにもなっている楽曲である。

一応このバンドの代表曲の一つではあるし、比較的知名度も高い。
だがあんまり自分はこの曲を好きになれなかった。
サウンドとしては大きく変わっていないのだが、今までのような熱量を感じないというか。全体的に編曲が定型的なJ-POPに寄せているというか。(その他のアーティストと比べれば断然尖った音であるのは間違いないのだが)
「RPG」というタイトルもそうだが、露骨にバンドの方からアニメに寄せまくっている。言葉を選ばずに言うとシーンに媚びた印象を持ってしまった。
「次作(アルバム)を作る気はあるんだな」と思いつつ「でもやっぱり前作(1st)で出し切ったんじゃないか?」と思い、自分のsfpモチベがダダ下がりした。
このシングルは買ったが、次回は一旦レンタルで済ますか、といった感じに(当時は大学生で若くお金が必要でした)。

そして収録されるシングル曲は1曲(配信含めると2曲だが)と自分の思ったより早いペースで2ndアルバムがドロップされた。

メジャー 2nd full album「Prog-Roid」(2011.7)

「そう来るか…」「そう来ちゃったか…」ってアルバム。

1曲目の「free quiet」は良かった。ほぼピアノとボーカルで構成されるストロングスタイルなミディアムバラード。シリアスな曲調でインディ時代を思わせるような良い感じに暗い曲。
「コミュニケーション」を掲げた前作、その上で他者と自分、互いの違いを認識し「人間と人間だ」と達観したようなスタンス。サウンド的には諦観ともとれる印象。

そこから本格的にバンドサウンドがスタートするM2「RPG」でアニソン(大衆)に寄り添うのはまぁ流れとしては面白いな、と。あと前曲の流れもありアップテンポ曲というのも有りでシングルで聴いた時よりテンション上がる。
で、次のめっちゃストレートでキャッチーなラブソング、M3「in bloom」。すげー良い曲なんだけどこれsfpでやる必要あるのか…と思いつつ。得意のシンセも控えめだし。あと上記の2曲の流れでそう来るか、高低差で耳キーンなりつつ迷子になるわ。

で、以降の曲は正直あまり感想が無いです。このアルバムを考察して欲しいって人は申し訳ですが。冒頭3曲がピークでした。後は毒にも薬にもならないエレクトロ寄りのポップソングで。
曲の要所で「おっ」となる箇所はあったけども、総じて量産型J-POPに電子音が気持ち入ってるだけのバンドになっちゃったと言うか。
申し訳程度に入ってた上記の配信シングル「flashback trip syndrome」は名曲だと思いますが。他の曲とカラー違いすぎて浮いてたけど。

誰かのレビューで「洗練された野蛮」から「飼いなされた猛獣」になった、という評を見たけど言いえて妙だなと。そもそも今作は猛獣ですらなかったような気もしたけど。

前作が「動」なら今作は「静」。前作が完璧すぎたからそうなるのは致し方ないのだけど、もうちょいやりようなかったのかと。
別に激しいサウンドとは言わずとも、インディ1st、2ndの曲は確かに輝いていたので。「人間になった」というテーマと言えども完全に角が取れてしまったサウンドにしか聞こえなくて。その感想に尽きるかな、このアルバム。
M5「≠」とかブラス入りまくりのシャッフル曲だしね。こんなんsfpで聴きたくなかったわ。いっそM1の重苦しい雰囲気で突き進んでくれた方が好感持てた。結局アルバムとしても何が言いたいのか分からんかったし。とりあえず「人間なんだ」なという感じ。

確か何かのメディアで西川の兄貴がsfpに触れてたのだけど、「1stAL(amp)はめっちゃ良かった!でも2ndなー…2ndはなー…」とめっちゃ憂いていた。共感しすぎて笑っちゃった。

結論として、自分の中で「sfp」と「SFP」は別物という考えに至りました。

オススメ曲:M1.「free quiet」M9.「flashback trip syndrome」

(好き度:☆☆☆☆)


~解散まで


そんな感じで、バンド活動を続けてくれるのは嬉しいけど「SFP」は自分好みじゃないなー、と距離を置こうと思い。2ndアルバムツアーも見送り。

そんな中、ツアー後に坂本真綾にSFPが提供したこの曲「Buddy」がめっちゃ良くて。いやこれをバンドでやれよ!って当時は思った。


そして、2011年末に発売された8th Single「How to go」。これがまた良い曲で。sfp時代のサウンドを残しつつ、その先のフェーズを見通したかのようなこの曲に確かな前進を感じていて。2ndアルバムでダダ下がりになったモチベが「sfp復活や!」と戻った記憶。

この曲を経て、「2ndはまぁ…産みの苦しみというか…そんなこともあるよね、SFPも引き続き応援していこう!」

そんな感じで気持ちを切り変えた矢先、
School Food Punishmentは2012年2月に突如無期限の活動休止を発表した。

そして、2012年6月にSFPから内村友美の脱退、そして解散が発表された。
内村は解散時のインタビューでこんな言葉を残した。

School Food Punishmentは、とっても歪だからこそ、素晴らしい音楽をCDに収めることができたと思います。
ですが、あるとき確信したことがあります。
歪なものは、長く形を保てないということです。
素晴らしいものが素晴らしいうちに終わりにしたくて、私はメンバーとスタッフに解散の相談をしましたが、ひとまず休止という形をとることになりました。(後略)

彼らの曲「RPG」に例えるなら、いくら周りのメンバーが強烈な個性を放っていたと言えども、フロントマンである勇者を失ったパーティを同じ冠を掲げたまま続けるという選択肢は選ばず、2012年6月にその幕を閉じた。

その理由は上記の内村の言葉に尽きるのだと思う。彼らは恐らくメジャー1stで「歪」を出し切ったのだ。
そして、その次のフェーズを模索しようとしたのだろうが、偶然が重なってビックバンのように起きた才能の核融合は結局形を保てなかった。
何とか耐えていたそれが取り返しのつかないところまで顕在化してしまったということなのだろう。


以降の活動

以降、ボーカルの内村はSFP解散と入れ替わるように2012年に「la la larks」というバンドを結成している。
内村以外のメンバーがこれまた豪華で、いきものがかりなどの編曲を手掛けている江口亮(Key)、LOST IN TIMEの三井律郎(G)、元sadsのクボタケイスケ(Bass)、元GO!GO!7188のターキー(Drums)という構成。

数曲の配信、2枚のシングルを経て2017年にこのアルバムが発売された。

la la larks「Culture Vulture」(2017.8)

ん―…悪くはないのだけどそうじゃない…そうじゃねぇんだよ…っていう。
終始「RPG」みたいな曲群というか。でもこれはこれでアリ、Prog-Roidよりは全然聴ける。
だがこのバンド、中途半端にsfpサウンドを受け継いでいる分どうしてもその幻影を追ってしまう。

「さよならワルツ」の方向性はsfpとはまた違う、ジャズロックに電子音を加えた新機軸で大好きなのだが。むしろこの方向性で行くなら応援のしがいもあるのだが。

このla la larksもボーカルの内村の結婚と体調不良との報が同時に出され、2019年のライブを以って実質活動休止となっている。

バンドとしての活動は今なお凍結中だが、今年、久々に坂本真綾とのコラボ曲が発表されたため、内村友美の音楽にまた触れられる機会は近いのかも知れない(この曲に関しては作曲は江口亮だが)。



Keyの蓮尾理之、Bassの山崎英明はアニソン歌手として活躍していたAnnabelをボーカルに迎え新しいバンドメンバーと共に2016年に「shiraph」というバンドを結成し活動している。
どちらかというとAnnabel側から結成を持ち掛けたバンドとのこと。

決して多作なバンドではないが、今年は配信シングルを2曲発売するなど音源のリリースは行っている。

音楽の方向性としては、主にジャズロックといったところか。
時折蓮尾さん節の牙を向いたキーボードが聴こえる瞬間はあるが、才能のありのままをぶつけていたsfpとは違い、あくまでバンドの一員としてアンサンブルを奏でることをプライオリティにしている印象。山崎さんも同様。



ドラムの比田井修は、現在今をときめく『緑黄色社会』のサポートメンバーで活動している。たまにこのバンドとsfpサウンドが似ているとの評が散見されるのだが、それは違うと思う。
緑黄色社会は良い意味で上質なJ-POPをハイクオリティのバンドサウンドで作りあげる見事なバンドだ。良くも悪くも歪のsfpとは全く違う。


last

やっぱり自分が好きだったsfpのサウンドは、あの4人、特に内村友美と蓮尾理之という2人の天才が邂逅しない事には始まらないと思った。

かといって自分はsfpに再結成して欲しいとは思っていない。あの歪でかつ美しい音楽は彼らのライフステージのあの瞬間の中でこそ出せた音だと思うからだ。
各メンバーがsfpとは違う全く新しい音楽を始めるというなら興味も湧くが、自分が好きだったsfpの劣化版のような音楽は聴きたくはない。

だからこそ、自分は「school food punishment」を解散して10年近くになっても「好き」のままでいる。青春時代に感銘を受けた素晴らしい音楽が素晴らしい形で残っているからこそ、自分はそれを聴き続ける。

上記にも書いた通り、大文字改名以降の楽曲など彼らのキャリア全ての音楽を気に入っている訳ではない。ただ、メジャー1stであれだけの傑作を生みだした後にバンドとしてあがいた歴史そのものは尊いものであったと思う。そのものを否定する気にはならない。むしろ、解散した今となってはそれもバンドの歴史としてひっくるめて肯定したいと思う。


ただ、一つだけ言える事があるのならば、
あの歪な音楽は間違いなく美しく、今なお自分の中で輝きを放っている。

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