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UNISON SQUARE GARDENの隠れた名曲「エアリアルエイリアン」を囲む会


前談

まずはこの曲「エアリアルエイリアン」を聴いて欲しい。

どうですか?変な曲でしょ?

不気味なSEが誘うかのような導入からの難解な変拍子、Aメロが終わってもサビへは行かずまたAメロ、サビが来たと思ったら突然4拍子のロックバラードに変わりそれが終わるとまた変拍子に戻りあっさり終わる。しかもトータル2分半と短い。あと聴こえてくる単語がいちいち物騒。

これを初見でイイ!と思う奇特な人は少ないかもしれませんが、自分はその奇特側の人間でした。初聴からやられました。もしわたしと同じような感性の人がいたら握手しましょう。


この曲は、UNISON SQUARE GARDEN(以下、ユニゾン)というわたしが一番好きなバンドの楽曲です。「Dr.Izzy」というアルバムの1曲目に入ってます。
ちなみにこのアルバムには恐らくこのバンド至上一番有名であろう
シュガーソングとビターステップ」(以下、シュガーソング)が入ってます。

ちなみにこの次に出したアルバムのリード曲がこちらです。ポップ。

この挙げた3曲、すべて違うアプローチですが全て同じ作曲者で、ベースの田淵智也氏がこのバンドのほぼすべての楽曲の作詞作曲を手掛けています。

そして、この記事で取り上げたい曲が冒頭の「エアリアルエイリアン」についてなのですが、この曲ちょっと扱いが不遇なんじゃないか?と以前より思っていた節があるので”この楽曲の良さを知って欲しい”と筆を取った次第です。

ユニゾンはコロナ禍でも変わらず音楽活動・ライブをしており(勿論感染対策は入念に)昨年の夏に配信ライブをFC会員向けにやっています。その一環で昨年行われた試みが、「楽曲のファン投票を行いそれをベースにセットリストが決まるライブ」というコンセプトでした。

結果、この「エアリアルエイリアン」はファン投票ワースト10です。
全部でユニゾンの楽曲は150曲くらいあるなかです。

そして、昨年の好評を経て今年も楽曲ファン投票での配信ライブが決まり、今回は「昨年やった曲以外」でプレイリストを組むとのレギュレーションらしいです。先日このライブに向けてメンバーが語る配信番組みたいのがありまして、Youtubeでプレミア公開されてたのでFC会員以外でも見た人いるかも。

そこで両ライブの投票結果(暫定)各TOP20が発表されてたんですが、
まぁエアリアルエイリアンは入ってない訳で。

ただ、放送中のYouTubeチャット欄にてこの曲のガチ勢がいたらしく、それがメンバーに捕捉され(わたしじゃないよ)、配信中にこの曲がメンバー、チャットで弄り倒されるまさかの事態に。
結果、先日公開されたデジタルパンフレットにファン投票の最終結果が公開された訳ですが、なんとその影響もあってかこの曲が怒涛の追い上げを見せました。
(購入者限定のパンフなので順位は載せませんが、これは生配信での弄られ効果も含めて恐らく披露案件なのでは?という順位)

という訳で、そのライブ配信前に改めてこの曲の良さを語ろうと。
みんなで囲む会しようと言う訳です。


本題手前

そもそもこの曲がどういう立ち位置かというと、
上記にも書いた通りこのバンド至上最大のヒットソング「シュガーソングとビターステップ」が収録されたアルバム「Dr.Izzy」の1曲目です。

今までのユニゾンにまったくなかったタイプの曲で、シュガーソングでこのバンドを知ったリスナーだけでなく、彼らをずっと追っているファンさえも困惑させてしまおうという魂胆を感じます。

とは言ってもこのアルバムのリードは11曲目のこれなので、普通にポップな曲は収録されてますが。


ただこのアルバムですが、シュガーソングのような楽曲がたくさん収録されていると期待し聴くと間違いなく裏切られると思います。
いちファンの感性ですが、良くも悪くも本人達が肩肘張らず作った印象があり、自分たちの通常営業を硬派にやったロックアルバムです。リリース当時、おそらく上記のような方は「思ってたのと違った」と感じる方も多くいたかと思います。

ただ、自分は「Dr.Izzy」はユニゾンというバンドの音楽性がこれ以上ないくらい出ている、至上最高傑作だと思ってます。
個人的に好きな楽曲が多数入ってる、という観点で考えるともっと好みのアルバムは他にもあったりするのですが(ex,「CIDER ROAD」「MODE MOOD MODE」)、「Dr.Izzy」という作品はあまりにも全体の構成が完璧だと思っています。タイトル「UNISON SQUARE GARDEN」で良いと思うくらい(デビューアルバムで既につけてるけど)。
「エアリアルエイリアン」はそんなアルバムの1曲目です。

この楽曲について、自分なりの考察を書きたいと思います。
(以下、文語スタイルに変わります。読みにくてごめんなさい)


本題


まずイントロ、耳コピ初見殺し。
バンドサウンドとはかけ離れたシンセSEから始まり、変拍子バンドサウンドに。よく聴くと7拍子→6拍子→7拍子→6拍子のループという尖りすぎた構成。

Aメロの歌詞。

宇宙遊泳はミステリアス 知的生命、来る
地球侵略目論んで小手調べ
自適悠々の森暮らし 人類見物に興ず
余計な喧嘩買ったって意味ないし
少々野暮ったいけど 粛々とナイフを尖らせてたいね
Alien now!

UNISON SQUARE GARDEN エアリアルエイリアン 歌詞 - 歌ネット (uta-net.com)

この「知的生命」はユニゾンを指していると考える。
つまり、「知的生命=エイリアン(Alien)」とのことで、エイリアンはバンド自身を例えた比喩。

「自適悠々の森暮らし」といった表現は、現在の音楽シーンで彼らユニゾンは大衆ど真ん中の音楽性ではないけれども、それについては特に意に介するすることはない、との表現ではないだろうか。
そこに大衆の一般的価値観や風潮を持ち込むことはせず(人類見物に興ず)。周りから聞こえる「ユニゾンはもっとこうしたら売れるのに(余計な喧嘩)」といったアドバイスや意見には流されず、地道ではあるけども自身の音楽性を信じ、牙を研ぎ続けることは怠らないぞ、というある種の決意表明だと感じる。

この楽曲の拍子が不安定なのも彼らというエイリアンが「エアリアル」にふわふわと泳ぐように気ままに動くさまを表しているのだろう。

そしてAメロのリフレインへ。

移動戦艦エマージェンシー 遭難して迷子
捕獲されたら研究所 たまんないので
報道陣達が群がれば危険信号のphase
興味本位、多数論理、晒す奇異の目
少々重たいんだな もうずっと頭もたげるばかりさ

UNISON SQUARE GARDEN エアリアルエイリアン 歌詞 - 歌ネット (uta-net.com)

こちらは自身を信じ、着実にバンド活動を行っていたなか、シュガーソングのスマッシュヒットでブレイクしたこと、その弊害について書いていると推察した。
アニメタイアップ楽曲のヒットでMステなど有名番組にも出演した。その結果でいわゆる一見客、マスコミ等に見つかり(捕獲)好き勝手に批評(研究所)されてしまっていることの居心地悪さをこのブロックの詞では表現しているのではないだろうか。

また、独特な彼らのパフォーマンス(主にベース田淵智也のライブにおいてのアクション)について面白おかしく、時にはデリカシーのない事を言われていたりという現象が度々起きる。彼らがTV出演した際にトレンドになり、SNSやYouTubeのコメントで大喜利が開催されたりもする。これはまさに「奇異の目」である。

そして、楽曲のヒットにより彼らというエイリアンを観測する人々が増える。シュガーソングで彼らの音楽に触れた人は、勿論彼らのコアな音楽性に潜っている層もいるかも知れないが、それ以外の彼らの通常営業といえる普段の楽曲に対しては「求めていたものと違う」と手のひらを返すかもしれない。実質、指標的にはシュガーソング1曲だけが彼らのディスコグラフィで飛び抜けている。

「少々重たいんだな もうずっと頭もたげるばかりさ」はそこに合わせて音楽性を自身の手で曲げることなど言語道断であり、
田淵智也がインタビューなどでよく言っている「過小評価も過大評価もされたくない」の比喩表現だと感じた。


サビに続く。拍が変わり、それまでのSEから一転バンドサウンドが目立つサウンドに。

コールゲーム 僕を生き返して この感情は矛盾なんかじゃないから
なんで永遠なんてみんな誓いたいの 
おかげさんで演算回路狂ってしょうがない
コールゲーム 僕を探してよ まだちょっと遊べそうなんだよね
到底 微々たる約束なんてしないから 気ままに捻り出せ

UNISON SQUARE GARDEN エアリアルエイリアン 歌詞 - 歌ネット (uta-net.com)

考察といっておきながら、この「コールゲーム」の解釈が未だ固まらない。おそらく造語だろう。コール(ド)ゲームなのか、はたまたコールは他動詞での「叫び」を表しているのか。ゲームは音楽ライブを例えているのか、それともこれまでのバンド人生を自嘲しているのか。

「なんで永遠なんてみんな誓いたいの」永遠についての解釈は主に2つ。1つが世に溢れるラブソングをはじめとしたJ-POPとそれに共感する大衆のことだろう。
J-POPだけでなく、バンドアーティストでも観客に寄り添うスタイルや気軽に永遠の愛を誓うような歌詞の楽曲が増えた昨今、それを良しとしないスタイルでやってきたユニゾン、また彼らが憧れてきたバンドはロックバンド然としたスタイルが多かったこと(BRAHMAN、THE BACK HORN、the pillows、THE HIGH-LOWSなど)もあり、この点への違和感が強くあるのだろう。

もう一つはテンプレート的なライブMC。上記でいうラブソングの詞に近い「お前らのことが大好きだよ」「ずっと俺らのことを応援してくれ」のようなMC。ファンと演者の間に不確定要素である「永遠」を想起させる要素を軽々しく口に出すことへの疑問や批判を投げかけているのかもしれない。
そしてこれはサビ後半の「約束」にも繋がる。

バンドを行ううえで音楽活動は永遠に続く訳じゃない。突然解散するかもしれない。(現にユニゾンはバンドに飽きたら潔く辞めると何度か言っている)一生リスナーのそばにユニゾンが居るという「約束」、保証は一切ない。永遠を誓うなんてもってのほかである。
だからこそ、「気ままに」バンドを「遊べそう」な限りはやり続ける、そんな自分達を好きになってくれる音楽・バンドファン(田淵智也はバンドのファンのことを物好きと呼ぶ)に対して「僕を探して」と投げかけているのだと思う。


このブロックが彼らが最も伝えたい事、印象に残らせたい所なのだろう。
ここがサビであり、曲調もガラッと変わり4拍子というオーソドックスな進行という事からも察する。

しかし、ほかの楽曲でも「ぶっ蹴飛ばす」とか、今回の「生き返す」のように造語がマキシマムザホルモンみを感じるのは気のせいか。


サビが終わり、締めのDメロへ。
ドラムの2カウントから変拍子に戻り(今度は基本6拍子→アウトロ前最後の小節だけ5拍子)、アウトロでまた7拍子→6拍子のループ。

厚化粧の加害者 孤独症の被害者 捏造された団結間
括りだした加害者 群れを絶った被害者
覚悟もない癖にへらへらするな
Alien now!

UNISON SQUARE GARDEN エアリアルエイリアン 歌詞 - 歌ネット (uta-net.com)

物騒なワードが立ち並んでいるが、ここで印象なのは「捏造された団結間」。まさにライブでのオーディエンスのことだろう。

ここで手拍子して、手を挙げて、盛り上がって。
そのマスゲームは本当にお前が望んだものなのか。同調圧力が作り出した物語ではないのか。
それを善しとする勢力は「みんなそれが楽しいはず」と悪気はないかもしれないが厚かましく謳っている(厚化粧の加害者)。それに馴染めない者は孤独をこじらせていく(孤独症の被害者)。そして盛り上がり最高!のファンダムを形成し(括りだした加害者)、それに絶望した者はライブ文化から離れていく(群れを絶った被害者)。

「覚悟もない癖にへらへらするな」は演者、客のどちらも批判しており、客に対しては「自分自身で自分の楽しみを見つけ出せ」という想いが込められているが、主眼はその場を提供しているステージ上の演者(バンド)に対しての皮肉でもあると感じた。
上記で書いた「約束」の覚悟もない癖に、「捏造された団結」を生み出すステージをへらへらと薄っぺらく作ってんじゃねぇ、という批判も込められているのではないか。

そして最後に改めて自分達のスタンスを宣言する。自分たちは宇宙のように広いこの音楽シーンを漂いつつも、周りに流されず自身で考えることができる知的生命であり、現代のシーンでは異分子でもある。

そう、「俺たちはエイリアンだ」。


本曲終了後コンマ何秒で次曲に繋げユニゾン王道のロックチューンを派手に行う。この2曲目のタイトルが「アトラクションがはじまる」なのもまた粋である。


後記

以上がこの曲に対する感想、考察です。

キレッキレの歌詞。もはや言葉の暴力。
このアルバム、全体的に歌詞で田淵智也がブチ切れている。
何ならシュガーソングも読み解くと「一体感至上主義の閉塞感」について歌ったマイノリティサイドの曲なのであれがカラオケでもはや国民的に歌われていることに個人的にはものすごい違和感を感じています。

アルバムラストの「Cheap Cheap Endroll」 なんてモロにソレ。

サビで「君がもっと嫌いになっていく もっと嫌いになっていく」の合唱だからね。なんならコロナ禍以前はファンも一緒にそこ歌ってるからね。
異常だよ(誉め言葉)。


そんなこんなで、囲む会これにてお開きにしようかと。

そんな彼らが魅せてくれるライブが非常に楽しみです。
果たして、我らが待ち望んだエイリアンは襲来するのか。



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