情熱とためらいの無限ループ④

一種の職業病でもあり元々の性格でもあるのか、気になることがあると自分が納得できるまで深く調べるたちではあるのですけど、時にほんの気なしに引っ掛かった情報に、とても助けられたり、逆にウンザリさせられたりすることがあるのですね。今回は後者の話。

その人に会ったこともなければ名前すら知らないのに、その人の綴った短い文章に、何故かとても嫌なものを感じてしまうことがあります。
同じようなことを言っていても、何故かすごく、その人の言葉はネチャネチャしたコールタールみたいなものに感じられたり、どこを触ってもトゲが刺さる金属のように感じられたり。
抽象的過ぎて意味がわからないと思いますし、うまく説明ができないのですけど、そんな風に感じることがあるんです。なぜだかわからないけど。

その人のことをよく知らない場合は、先入観でそんなことを思うものじゃない、って自分を戒めるのですよ。でも、その「違和感」みたいなものは結局最後まで消えないんです。


その人の言葉も、そうでした。きっと何気なく綴ったのでしょう。
けど、それは私にはトゲだらけで真っ黒に煤けた金属に感じられた。自分はまともな人間だから、自分の応援している人たちに優しくしてもらえてるんですよ、と自慢かつ他人を嘲笑しているらしいその言葉は。
固有名詞を入れてそんなことをわざわざ言っているというだけでお里が知れるとは思ったけど、人間失言くらいあるだろうし、と流そうと思ったんです。

でも、私の中の何かが危険信号を出してくる。どんなにいい人そうに見えても、正義漢ぶってても、この人を信用してはいけないと。表に出てこない部分に、必ず何かがあるって。

私はその人そのものをもう見たくないと、その言葉を見た時から思ったのだけど、その人は見たくなくても視界に入ってくるようになってしまった。
視界から消そうと思ったけど、それは得策ではないと思いました。最悪の場合、私も裏でこの人に「失笑される」ターゲットになると思ったからです。警戒しておくほうがいい。
それに、自分の「最初の感覚」が間違いであって欲しいとも思ったからです。無闇に人を嫌ったり疑いたくもないですから。

でも、どうやってもダメだった。

自分の好きな相手にだけは美辞麗句を並べているその人を、その人の好きな相手はあからさまに贔屓している。それに気付いた時に、心の底からガッカリしてしまったんですよ。
私はその人の好きな人のことはそれほど好きではないので、わりと冷静に判断できると思うのですが、その私の目にもそう映ってしまうって、これはもうダメだと思ったんです。

自分にどんどんお金を出してくれて、前向きに励ましてくれたら、それは本人は嬉しいでしょう。贔屓もしたくなるかもしれない。人間だから、それは仕方ないと思うんですよ。

その人が裏で何をしていようが、自分のファンを悪し様に言っていようが、自分の応援さえしてくれればどうでもいいんだ、この人。そこまで見抜けないんだ。

いや、見抜く必要なんてないんです。いいところだけ見ていればいい。どうせ応援する側とされる側でしかないんだから。そんなこと求めること自体が筋違いです。
けど、どうしてもモヤモヤした気持ちが晴れない。何かが違うんじゃないか。応援するって、そしてされるって、そういうことなんだろうか。しかも、いかにもファン想いみたいなこと言ってれば言ってるほど、薄っぺらく感じてきてしまう。

程度の差こそあれ、多少なりとも応援していた相手から離れる原因は、相手に飽きることよりも「そのファンにウンザリする」というケースの方が実は多いのではないかと、昔から感じています。これもそのケースでした。現に、私の気持ちもその一件がきっかけでその人からは離れてしまいましたから。


どこの世界もどうやら同じのようですが、何らかの作品なり人間なりチームなりの、いわゆるファンの中には、応援している対象よりもいつの間にかファンに関心が向いていく層が一定数いるようです。

情報が少なかった頃、深く追い求めて辿り着いたファンコミュニティで目にした、ファンによるファンへの監視と罵り合い。時代が変わっても形を変えても、人間のその性根は変わらないらしいと気付いた昨今。

私は昔から趣味が少々マニアックになる傾向にあり、常に仲間のいない状態で勝手にハマっていることが多々ありました。好き過ぎて勝手に発信していたところ、僅かでも仲間が見つけてくれることが大半で、基本ひとりで勝手に騒いでるだけでも楽しい、仲間作りは完全に受け身、というパターンばかりでした。ひとりで平気なので、基本ファンには興味がなかったのです。もちろん一緒に楽しんでくださる方は大切にするけど、わざわざほかのファンの私生活だの行動だの追おうとはこれっぽっちも思いませんでしたね。
ファンとのいざこざが原因で離れたこともありましたが、それはあくまで「作品に対する意見の相違」的なものが原因だったと思います。
そもそも、趣味で繋がった間柄というものは、どちらかがその趣味への熱を失えば自然と消滅していくものです。それは寂しいことですが、仕方ないことでもある。わざわざ追おうとも思わないです。たとえひとりに戻っても、私は変わらずそれが好きだから全然いいんです。

そんな私にとって、ファンの観察に熱心になってしまう人間の存在は衝撃でした。要するに「痛いファン(※あくまで観察している本人がそう思っている)」を見つけて叩いては「自分はコイツよりマシ」と思いたいわけですよ。いじめと一緒です。
さらに言えば、そうやって叩きまくることで、ファンを減らしたいんでしょうね。つまりは独占欲。特に応援している対象が人間の場合にこれが顕著なんじゃないでしょうか。だいたいが、その応援している相手に熱を上げている観察対象を嘲笑しては追い払おうとしているのですが、なんのことはない、熱を上げているのはその本人なんですよ。客観性に欠けるので、自覚できていないだけです。むしろ叶わない想いを抱いている自分が苦しくて、同じ対象を愛する誰かに八つ当たりしてるんですね。どっちが痛いのかよくわからんのですけど。

職場恋愛で結婚した女性が、結婚に至る前に、あくまでも業務上で必要だからその男性に話しかけているだけなのに、話しかけている人物が女性だとすっ飛んできて話に割り込んでいた、なんてケースがあるのですね。
まあ気持ちはわからないでもないんですが、仕事なわけですよ。周囲の人は薄々気付いてて呆れてるんですけど、その剣幕に何も言えないわけですよ。
自分のものじゃないから、約束ができてないから不安で仕方がない。付き合っててもこうなら、それが叶わない間柄なら推して知るべしって話です。

気持ちはわからないでもない。わからないでもないんですが…。
めんどくさい…。

自分はまともだから優しくしてもらえるって自慢するくらいなんですから、大金かけて擬似恋愛に夢中にならなくてもいいんじゃないか?と思うのですが、客観性に欠けるので、そこ突っ込んでも理解してもらえないんだろうなあと思います。
と言うか、たとえ職場で毎日顔を合わせる相手だろうが芸能人だろうが、縁のある人はあるしない人はないし、身近な相手なら恋愛してもいいけど身近じゃないなら恋心すら抱いてはいけないって理屈通じないんじゃないでしょうか。人間の心ってそんなに単純じゃないですよ。もしかして人好きになったことないんでは?と言うか自分がまずはさっさと身近な相手を…。いや、もういいや。

めんどくさい…。
めんどくさ過ぎる。私には無理だよこんな世界!!!!!

そりゃさ、エレベーター降りたらズラッと出待ちが並んでて一斉に視線がこっちを向いてきたり、たまたま隣のテーブルに居合わせた人たちが恐ろしい話をしてたり、「何これ私へのマウンティングっすか?話したこともないですよね?」てなことがあったりするとですよ、ウンザリもしますって。私は基本アホなので、同じものが好きな人はみんないい人だって思いたいんですよ。仲間になれた方が楽しいじゃないですか。
でもなんか、向こうはそうは思ってねええええ!たまたまクジ引きで当たっただけだっつの!そんな睨まないでくださいよ!知らんし!


ファンは叩かなくても、応援してる誰かのライバルを叩いたり、何かを叩かずにはいられない人がこんなにも多いのだなと驚いたこともしばしば。その人がそもそもそういう性格で、応援してる誰かには全然関係ないことが大半なんだとは思うけど、繊細な人や優しい人は、声の大きなファンの言葉に心を痛めて離れていってしまう。何度も見てきた。残るのは結局、自分自身のことを客観的に振り返ることを放棄した人だけ。

「ファン仲間が多い」は判断基準にはならないでしょうね。それは結局、情報欲しさに繋がってるだけですから。
追っかけのプロ的な集団にいたらしい人が「どこにもだいたいそのファンの親玉みたいな人がいる」って言ってたけど、おこぼれ欲しさにその人に擦り寄ってるだけってケースも多々あるんじゃないかと思います。応援されてる側は何も気付かないのでしょうが…。自分のファンには素敵なコミュニティがあるって無邪気に思ってくれてるのかもしれない。むしろそう思わせてるのがいいのだろうか。でも、そこまで気を遣わないといけないものだろうかってのもちょっと思ったりもする。

それでも応援してくれればそれでいいって本人が言うのなら仕方がないけど、静かに見つめて、黙っているだけの優しい人のことをもっと振り返ってあげて欲しいって、いろんな人に対して思ってきた。声が聞こえない以上、その人が気が付かなくても仕方がないんだけど、それでも思ってきてしまった。

それで心が離れてしまうなら、元々そんなに好きじゃなかっただけなのかもしれないけれど、そうであってもやっぱり、モヤモヤした気持ちだけが残ってしまう。

深く好きにならずに、流行りの服にすぐに飛び付いては、1年で飽きて捨てて次の流行りを見つけるくらいのほうが、楽でいいのかもしれない。

私が怖いのはあなたじゃないんですって、当たり前だけど言葉を飲み込んだあの時。あなたは、あなたたちは何も知らなくていいのかもしれない。けど、裏側が見えないまま、闇雲に受け入れたり拒絶したり選別したり切り捨てたりすることを、寂しく思ってしまうこともあるのです。そんなこと求めるのも筋違いだって、申し訳ない気持ちでいっぱいにもなるけれど、ただの偶像ではなくひとりの人間として応援したいからこそ、寂しくなってしまうのかなと思います。

よくわからない文章になってしまいましたが、ずっとモヤモヤしているのです。そんなつもりで、大好きだって言葉にしたわけではないのだけど、難しいですね。

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主にフィギュアスケートの話題を熱く語り続けるブログ「うさぎパイナップル」をはてなブログにて更新しております。2016年9月より1000日間毎日更新しておりましたが、現在は週3、4回ペースで更新中。体験記やイベントレポート、マニアな趣味の話などは基本的にこちらに掲載する予定です。お気軽に遊びに来てくださいね。

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