他職種から事業開発への挑戦 〜直面した3つの課題〜

この記事は BtoB事業開発アドカレ 15日目の記事です。
前回は株式会社LabBase橋本さんによる 『顧客起点で価値を捉える』 でした。

https://adventar.org/calendars/8896

去年までRettyでデータ分析チームのマネージャー兼データアナリストとして働いていましたが、今年1月から社内の営業企画部に異動しました。
(過去の取り組みはこちらをご覧ください)

そこで私が取り組んだ大きな仕事は、商品「Rettyお店会員」のアップデートプロジェクトです。多くの飲食店向けサービスが存在する中で、この商品のポジショニングやWHO(ターゲット)/WHAT(提供価値)の拡張を含む大きなアップデートを行いました。新規事業ではありませんが、ターゲットや提供価値を拡張し、収益向上を目指すこの活動は、事業開発の一環として捉えています。

事業開発という新たな領域への挑戦は、事業ドメインと業務の知識不足、パートナーとの連携・交渉、さらには社内ステークホルダーとのビジネス推進といった、未経験の課題に直面することとなり、多くの困難に遭遇しました。この記事では、そうした課題にどのように取り組んだのかをご紹介します。

課題①:事業ドメインと業務の深い知識

ありきたりな課題ではありますが、異動後にすぐ直面した課題は知識不足でした。不足していた知識は大小様々ですが、主なところだと”事業ドメイン”や”営業やCS、販売パートナーの業務”の知識不足に悩まされました。補足すると、私はRettyに10年在籍していることから、これらについて一定の知識は持ち合わせてはいます。しかし事業開発として成果を出す上ではさらに深い知識が求められました。

事業ドメイン

事業開発では、まず顧客、競合、そして自社の視点から「WHO(ターゲット)」と「WHAT(提供価値)」を定める戦略フェーズがあります。戦略フェーズでは顧客、競合、自社の知識を基に勝ち筋を見立てる必要があります。勝ち筋を見立てる上で、現在の情報だけでなく、過去のデータやトレンドの理解が重要です。また、直接的な競合だけでなく、周辺企業やサービスの動向を把握することも不可欠でした。その点において、私はそこまでの情報を持ち合わせていませんでした。

しかし、必要なレベルにすぐに到達するのは困難で、必要になってからの調査では遅いと感じます。日常からアンテナを張り、継続的に情報を取り入れ、仮説を持つことが重要だと考えます。

これらの深い知識を得るために、短期的には社内で知識が豊富な人にヒアリングを行い物事を前に進めています。長期的には、顧客や競合情報の定期的な収集のために、インタビューや競合勉強会などの仕組み化を進めています。

営業やCS、販売パートナーの業務理解

商品開発が進行し、販売準備フェーズに入った際、これらの知識不足により苦労しました。販売準備フェーズには、営業資料の作成、オンボーディングマニュアルの作成、販売パートナー向けの説明会の実施などが含まれます。これらの業務において重要な観点が不足していたり、適切な表現方法がわからなかったりして、期待通りの価値を提供できないことに歯がゆさを感じました。

根本的な原因としては業務解像度の違いだと捉えています。営業経験やCS経験のあるメンバーと比較すると、飲食店に伝わる言葉選定や情報の抽象度について詳細の部分について差が出ていると感じます。

この知識を習得するために、短期的な取り組みとして営業同行や初期導入の様子を録画したデータの閲覧、SFAでの商談履歴の日々のチェックなどを行っています。長期的には、現場経験の重要性を認識しており、現在これらの業務に少しずつ取り組んでいるところです。

課題②:パートナーとの連携・交渉

今回の商品アップデートにおいては、社外パートナーの協力が不可欠でした。そのため、パートナー候補の選定から始め、ディスカッションを経て経済的な条件を設定し、最終的に契約締結に至るまでの業務を私とセールス担当役員で進めました。交渉に経験に長けているセールス担当役員に大分引っ張ってもらいましたが、その中でも難しかったことに関して下記します。

相手の求めることの理解

交渉時には、相手の発言から彼らが何を求めているのか、何が譲れないのかを理解することが必要ですが、相手が話している内容を十分に理解し、その意図とズレていないかを確認するのが難しいと感じました。この難しさの一因は、社外の人と初対面の場合、相手の立場や前提知識、使う言葉に不明瞭な点が多いからだと思います。そのため、一つ一つ丁寧に前提条件や定義を整理した上で、相手の意図を理解するための質問をすることを心掛けるようにしました。

相手への配慮

交渉だからといって、自分の希望を通すことに一点集中しすぎて、相手の状況を十分に配慮せず、一方的に自分の希望を伝えるコミュニケーションをとってしまったことがありました。相手に無理を強いる内容だったため、win-winの姿勢とは見えないような態度に捉えられてしまう可能性もあり、この点については反省しています。
遠慮は不要だと思うものの、円滑かつ建設的な議論を進めるためには、相手の反応を確認しながら、丁寧に議論を進めることが重要だと気づきました。

課題③:社内ステークホルダーを巻き込んでのビジネス推進

今回の商品アップデートでは経営層から開発、セールス、法務など、多くの社内ステークホルダーが存在しました。多くのステークホルダーが居るプロジェクトにおいて苦労したポイントは、合意形成、Whyについての理解と納得です。

合意形成

今回の商品アップデートでは、経営層が最終的な決断を下しますが、その過程で担当の執行役員や部長、チームメンバーなど多くの関係者との意見調整が必須です。色んな意見が出る中で、理解と納得を得ながら進めることには大分苦労しました。

社内での合意形成を上手く行うためには、“各ステークホルダーの考えや意見を理解すること“、”判断のための材料を整えること“、”情報をわかりやすく可視化すること“が重要だと私は考えています。この点においては、データアナリストとしての経験が非常に役立ったと実感しています。

考えや意見を深く理解するために、定期的にヒアリングを行い、調査過程で収集した情報をスライドやスプレッドシートにて分かりやすく加工する作業には、十分な時間を費やしました。

Whyについての理解と納得

プロジェクト初期では、「なぜやるのか?」や商品戦略自体に対する開発メンバーからの鋭い疑問質問が沢山発生しました。単純に説明するだけでは理解や納得が難しく、苦労した記憶があります。これは、立場の違いによる視点の違いもありますが、根本的な原因としては顧客の課題やニーズのディスカバリーを営業企画を中心に行ったことによって、顧客解像度の差から起きている問題だと考えました。

そのため、VPoEやPdMと協議し、コストがかかることを承知で顧客インタビューを追加しました。実際の顧客の反応を自分たちで直接確認することが重要だと考えたのです。顧客インタビューを行い課題やニーズを自ら目の当たりにした変化として、開発メンバー自らアイデアや意見が形成されるようになりました。そこからはプロジェクトが一気に推進されたので、理解や納得の醸成にも繋がったのではないかと感じます。

次やるなら、ディスカバリー段階では、事業開発とPdMは一緒に取り組むことを必須とし、エンジニアの中でも興味関心が高いメンバーには同席してもらうことを試したいと思います。

終わりに

新しい職種へのチャレンジにより、この一年間はコンフォートゾーンを離れた状態で過ごし、継続的な不安や緊張感、プレッシャーを感じていました。特に、未経験の領域に何度も挑戦し、上手くいかない時には「自分には向いていないのではないか」と自信を失うこともありました。

しかし、周囲のサポートもあり、様々な困難を乗り越えることができました。結果として、個人の成長につながる貴重なチャレンジができた一年だったと思います。

今年取り組んだ内容について詳しく記述したいところですが、事業情報として公開しづらい内容もあるため、かなり割愛しています。口頭であればもっと詳しく話すことができますので、興味のある方はお気軽にお声がけください。

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